不動産売買において、物件の引渡し前に買主が支払う手付金・内金・中間金を保全する措置。宅地建物取引業法に基づく措置で、「手付金等の保全」ともいわれる。
保全措置は、物件の工事完了の前後に応じて、次のように行なわなければならない。
(1)工事完了前
・手付金等の金額が代金の5%または1,000万円を超えるときに保全する。
・保全の方法は、「銀行等による保証」「保険事業者による保証保険」のいずれかによる。
(2)工事完了後
・手付金等の金額が代金の10%または1,000万円を超えるときに保全する。
・保全の方法は、「銀行等による保証」「保険事業者による保証保険」「指定保管機関による保管」のいずれかによる。
引渡し
物を支配する権能(占有権)を相手に移転すること。売買や賃貸借によって生じる民法上の概念である。現実に占有状態を実現することだけでなく、占有を移転する旨の意思表示も引渡しとされる。
引渡しを受けることは、動産に関する物権譲渡の対抗要件とされている。一方、不動産に関する物権譲渡の対抗要件は登記であって引き渡されることではないが、引渡しを受けることは、譲渡された事実を確定する上で重要な行為である。
建物の引渡しは、通常、鍵を渡すことによって行なわれる。
土地の引渡しは、建物付きであるか更地であるかによって費用の負担や手続きが異なる。たとえば、建物付きの土地を更地で引渡す場合には、引渡し前に、建物を解体し、埋蔵物を確認し、建物の滅失を登記するなどの作業が必要となる。一方、現況での引渡しであればこれらの手続きは不要である。いずれの場合も、引渡しを受けたら占有の事実を示す標識等を設置することが望ましい。
手付
売買契約・請負契約・賃貸借契約などの有償契約において、契約締結の際に、当事者の一方から他方に対して交付する金銭などの有償物のこと(民法第557条・第559条)。
手付には交付される目的により、解約手付、証約手付、違約手付の3種類がある。民法で手付とは、原則的に解約手付であるとしている。また一般に取引において交付される手付の大半は解約手付であると考えてよい。
宅地建物取引業法では、消費者保護の観点から、売主が宅地建物取引業者である場合にはその売買契約で交付される手付は解約手付とみなすという強行規定を設けている(宅地建物取引業法第39条第2項)。これを解約手付性の付与という。
なお、契約に従って当事者が義務を履行したとき、手付は代金の一部に充当される。
内金
内金とは、売買契約が成立した後に、売買代金の一部として買主から売主へ交付される金銭のこと。
手付が売買契約が成立する際に交付されるのに対して、内金は契約成立後に交付されるという違いがある。
また、手付は契約の義務が履行されれば代金に充当されるのに対して、内金は交付される時点ですでに代金の一部である。
中間金
中間金とは、売買契約が成立した後に、売買代金の一部として買主から売主へ交付される金銭のこと。契約成立から義務履行(財産移転)までの間に支払われるので、中間金と称する。
また、手付は契約の義務が履行されれば代金に充当されるのに対して、中間金は交付される時点ですでに代金の一部である。
宅地建物取引業法
宅地建物取引の営業に関して、免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を定めた法律。1952年に制定された。
この法律に定められている主な内容は、宅地建物取引を営業する者に対する免許制度のほか、宅地建物取引士制度、営業保証金制度、業務を実施する場合の禁止・遵守事項などである。これによって、宅地建物取引業務の適正な運営、宅地および建物の取引の公正の確保および宅地建物取引業の健全な発達の促進を図ることとされている。
地上権等がある場合等における売主の担保責任
不動産の売買において、引き渡した不動産に、買主が知らない地上権、対抗力のある不動産賃借権、地役権、留置権、質権が付着していた場合に生じる売主の契約不適合責任をいう。 担保責任を負わせるには、買主が、追完請求(付着した権利を消滅させるなどの請求)、代金減額請求、損害賠償請求、解除権の行使をしなければならない。 これらの請求等を行なうためは、買主は、原則として契約不適合を知った時から1年以内に不適合である旨を通知しなければならないとしている。ただし、売主が不適合を知っていたときまたは重大な過失によって知らなかったときはその限りではないとされている。