都市農業の多様な機能を発揮するための計画。都市農業振興基本法に基づいて策定された。
都市農業振興基本計画では、農産物供給、防災、良好な景観形成、国土・環境保全など都市農業の多様な機能を発揮するために、担い手の確保、土地の確保などの施策を展開することとしている。
土地利用に関係する施策としては、都市農地を「宅地化すべきもの」から都市に「あるべきもの」へと転換し計画的に保全することとし、ア)「逆線引き」や、都市計画等に「都市農地の保全」を位置付けることの検討、イ)課税の公平性などに配慮しつつ、市街化区域内農地の保有に係る税負担、賃借される生産緑地等に係る相続税の納税猶予について検討することなどが記載されている。
逆線引き
都市計画で定める区域区分を、市街化区域から市街化調整区域に変更することをいう。
都市計画の見直しに際して、市街化区域内であるが、まとまった農地が残っているなどのため市街化を抑制すべきとされた地区が対象となる。
逆線引きがなされる背景には、特定市街化区域農地(生産緑地地区を除く)に対して固定資産税・都市計画税が宅地並みで課税されることなどの事情がある。ただし、事例は数少ない。
都市計画
土地利用、都市施設の整備、市街地開発事業に関する計画であって、都市計画の決定手続により定められた計画のこと(都市計画法第4条第1号)。
具体的には都市計画とは次の1.から11.のことである。
1.都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都市計画法第6条の2)
2.都市再開発方針等(同法第7条の2)
3.区域区分(同法第7条)
4.地域地区(同法第8条)
5.促進区域(同法第10条の2)
6.遊休土地転換利用促進地区(同法第10条の3)
7.被災市街地復興推進地域(同法第10条の4)
8.都市施設(同法第11条)
9.市街地開発事業(同法第12条)
10.市街地開発事業等予定区域(同法第12条の2)
11.地区計画等(同法第12条の4)
注:
・上記1.から11.の都市計画は、都市計画区域で定めることとされている。ただし上記8.の都市施設については特に必要がある場合には、都市計画区域の外で定めることができる(同法第11条第1項)。
・上記4.の地域地区は「用途地域」「特別用途地区」「高度地区」「高度利用地区」「特定街区」「防火地域」「準防火地域」「美観地区」「風致地区」「特定用途制限地域」「高層住居誘導地区」などの多様な地域・地区・街区の総称である。
・上記1.から11.の都市計画は都道府県または市町村が定める(詳しくは都市計画の決定主体へ)。
市街化区域
都市計画によって定められた、すでに市街地を形成している区域およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域をいう。
一定の都市計画区域について、都道府県知事が区域区分を決定することによって定まる。
市街化区域内では、必ず用途地域が指定されている。
農地
一般的には「耕作の目的に供されている土地」を「農地」と呼ぶ(農地法第2条第1項)。
実際には、ある土地が「農地」であるかどうかをめぐって争いがあることが少なくない。ちなみ、過去の裁判例では次の1.2.のような基準が設けられている。 1.「農地」であるかどうかは、登記簿上の地目とは関係がない。たとえ地目が「原野」であっても、現状が「耕作目的の土地」であれば「農地」となる。 2.「農地」とは継続的に耕作する目的の土地である。住宅を建てるまでの間、一時的に野菜を栽培しているような家庭菜園などは「農地」ではない。その反面、たとえ休耕地であっても将来にわたって耕作する目的のものは「農地」である。
実務的には、宅地であるのか農地であるのか判断が分かれるような土地について取引を行なう場合には、市町村の農業委員会において確認を受けることが最も安全である。
生産緑地
市街化区域内にある農地や山林で、都市計画によって指定された生産緑地地区内のものをいう。
生産緑地地区として指定できるのは、市街化区域内にある一団の農地等で、
1.公害または災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、公共施設等の敷地の用に供する土地として適している
2.500平方メートル以上の規模の区域である(条例で規模の引き下げが可能)
3.用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められる
という3つの条件を備えた区域である。
生産緑地は農地等として管理されなければならず(営農の継続義務)、生産緑地地区内では、建築物等の新改築、宅地造成などについて市町村長の許可を受けなければならない。そして原則として、農林漁業を営むために必要な建築や造成等でなければ許可されない(直売所、農家レストラン等の設置は可能)。
一方で、生産緑地は、税制上の優遇措置(市街化区域内の土地であっても一定の条件を満たせば農地とみなして課税されるなど)が適用される。
また、生産緑地における農林漁業の主たる従事者が死亡等の理由で従事することができなくなった場合、または、生産緑地として定められてから30年が経過した場合には(30年経過後は10年ごとに延長可能)、市町村長に買い取りを申し出ることができる。そして、申し出てから3ヵ月以内に所有権の移転がない場合には、行為制限が解除される(実質的に生産緑地としての役割を失う)。
なお、多くの生産緑地は、2022年から買い取りの申し出が可能となる。
相続税
相続や遺贈によって取得した財産に対して賦課される税をいう。
この場合の財産には、相続時精算課税制度の適用を受けて贈与により取得した財産を含む。
納税義務者は財産を取得した者であるが、税額の算定に際しては各種控除などが適用されるので、十分な注意が必要である。
一般的な相続税額の算出手順は次の通りである。
① 課税価格の算出
取得した財産の価額から、一定の生命保険金等の非課税財産の価額、小規模宅地に係る減額相当額などを減じ、相続時精算課税に係る贈与財産価額や3年以内の贈与財産の価額などを加算して、課税財産額を算出する。
② 相続税総額の算出
ア 課税遺産総額の算出:①で算出した課税価格から、遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を減じる。
イ 法定相続人の取得金額の算出:アで算出した課税遺産総額を民法に定める法定相続分に従って取得したと仮定して、各法定相続人の取得金額を算出する。
ウ 法定相続分ごとの取得金額に応じた相続税額の算出:イで算出した金額に相続税率を乗じて算出する。税率は、取得金額に応じて、10%から55%まで累進的に定められている。
エ 相続税総額の確定:ウで算出した法的相続人ごとの相続税額を合計する。
③ 各人ごとの相続税額の算出
②エで確定した相続税総額を、各人の実際の相続割合に応じて按分し、相続税額を算出する。
各人ごとの相続税額=②エの価額×各人の相続割合
④ 各人の納付税額の算出
③の価額から、相続人の属性に応じて、配偶者税額軽減、未成年控除などの各種税額控除額を減じ、各人の納付税額を確定する。この場合、財産取得者が被相続人の配偶者、父母、子供以外の者である場合には、相続税額の20%相当額を加算して納付税額が算出されることに注意が必要である。
相続税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に申告納税しなければならない。