犯罪の収益をあたかも合法な金銭や資産に見えるものに転換させる過程をいう。原語は、Money laundering。これを取り締まる制度においては、金融犯罪、テロ資金供与、課税回避などと融合した用語として使われることもある。
マネー・ロンダリングを防止するための制度(犯罪収益移転防止法)においては、特定の事業者は取引における一定事項の確認が義務づけられているが、宅地建物取引業者もその特定の事業者とされ、宅地・建物の売買契約の締結またはその代理若しくは媒介をする場合について適用されている(「取引時確認」を参照)。
なお、マネー・ロンダリングを防止する上で特に留意すべき取引(ハイリスク取引)として、なりすましの疑いがある場合、確認事項を偽っている疑いがある場合、特定国に居住・所在する顧客の場合が指定され、これらの場合には、厳格な方法で取引時確認を行なう必要がある。
宅地建物取引業者
宅地建物取引業者とは、宅地建物取引業免許を受けて、宅地建物取引業を営む者のことである(宅地建物取引業法第2条第3号)。
宅地建物取引業者には、法人業者と個人業者がいる。 なお、宅地建物取引業を事実上営んでいる者であっても、宅地建物取引業免許を取得していない場合には、その者は宅地建物取引業者ではない(このような者は一般に「無免許業者」と呼ばれる)。
宅地(宅地建物取引業法における~)
宅地建物取引業法では、宅地の定義を次のように定めている(宅地建物取引業法第2条第1号、施行令第1条)。
1.用途地域内の土地について
都市計画法で定める12種類の用途地域内に存在する土地は、どのような目的で取引する場合であろうと、すべて宅地建物取引業法上の「宅地」である。
従って、例えば用途地域内に存在する農地を、農地として利用する目的で売却する場合であっても、宅地建物取引業法では「宅地」として取り扱う。
2.用途地域内の道路・公園・河川・広場・水路の用地について
用途地域内の土地のうちで、5種類の公共施設の用に供されている土地については、「宅地」から除外する。具体的には、道路・公園・河川・広場・水路という5種類の公共施設の用地は「宅地」から除外される(ただし下記の補足1を参照のこと)。
3.建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地について
建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地は、土地の原状の用途に関係なく、すべて宅地建物取引業法上の「宅地」である。
従って、例えば土地登記簿上の地目が「田」「畑」「池沼」「山林」「原野」である土地であっても、その土地を、建物の敷地に供する目的で取引するならば、宅地建物取引業法上はすべて「宅地」として取り扱われる。
これについては、土地の所在がどこであろうと適用される判断基準である。従って、都市計画区域外の山林や原野を、建物の敷地に供する目的で取引する場合には、その山林や原野は「宅地」として取り扱われる。
(補足1)用途地域内の道路・公園・河川・広場・水路の用地を、建物の敷地に供する目的で取引の対象とする場合について:
例えば、用途地域内の道路用地である土地を、建物の敷地に供する目的で取引する場合には、上記3.の基準が適用される。従って、この場合は、用途地域内の道路用地が、宅地建物取引業法上の「宅地」に該当することになる。
建物
民法では、土地の上に定着した物(定着物)であって、建物として使用が可能な物のことを「建物」という。
具体的には、建築中の建物は原則的に民法上の「建物」とは呼べないが、建物の使用目的から見て使用に適する構造部分を具備する程度になれば、建築途中であっても民法上の「建物」となり、不動産登記が可能になる。
売買契約
当事者の一方が、ある財産権を相手方に移転する意思を表示し、相手方がその代金を支払う意思を表示し、双方の意思が合致することで成立する契約のこと(民法第555条)。
売買契約は諾成契約とされている。つまり、当事者の双方が意思を表示し、意思が合致するだけで成立する(財産が引き渡されたときに成立するのではない)。
また、売買契約は不要式契約なので、書面による必要はなく口頭でも成立する。
さらに、売買契約は財産権を移転する契約であるが、その対価として交付されるのは金銭でなければならない(金銭以外の物を対価として交付すると「交換契約」となってしまう)。
当事者の双方の意思の合致により売買契約が成立したとき、売主には「財産権移転義務」が発生し、買主には「代金支払義務」が発生する。両方の義務の履行は「同時履行の関係」に立つとされる。
取引時確認
マネー・ロンダリングを防止するために、犯罪収益移転防止法に基づき、特定の事業者が取引する場合に実施が義務づけられている確認行為をいう。宅地建物取引業者も、宅地・建物の売買契約の締結またはその代理若しくは媒介をする場合には、取引時確認を実施しなければならない。
確認事項は、顧客の区分に応じて、本人特定事項、取引を行なう目的、職業または事業の内容、実質的支配者の全部または一部であり、確認の方法についても定められている。また、マネー・ロンダリングを防止する上で特に留意すべき取引(ハイリスク取引、「マネー・ロンダリング」を参照)においては、より厳格な確認が必要である。
なお、あわせて、本人確認記録の作成・保存、取引記録の作成・保存、疑わしい取引の届出も実施しなければならないとされている。