債務の履行について合理的な期待を持てない状態にあることをいう。このような場合には、債務者に故意・過失がない場合にも契約解除を認めるべきであるという私法上の考え方がある。
伝統的に、債務不履行による契約解除には相手方の責めに帰すべき事由が必要であるとされ、民法はこれを採用している。これに対して、契約解除は合理的な期待を失った法的拘束から債権者を解放する役割を果たすのだから、債務者の故意・過失の有無とは無関係にこれを認めるべきであるという考え方(帰責事由不要説)があり、その要件とされるのが「重大な不履行」である(ただしどのような場合が重大な不履行に当たるのかについては必ずしも明確ではない)。
このように帰責事由の取扱いは債務の履行を確保する上で大事な観点であり、そのあり方について議論がある。
債務
私法上の概念で、ある人(債権者)に対して一定の給付をなすべき義務をいう。
債務を負っているのが債務者である。
契約
対立する2個以上の意思表示の合致によって成立する法律行為のこと。
具体的には、売買契約、賃貸借契約、請負契約などのように、一方が申し込み、他方が承諾するという関係にある法律行為である。
私法
法のうち市民相互の関係を規律付けるものをいう。
国民と国家との関係を規律付けるのが「公法」であり、法の体系は、私法と公法の大きな2つの類型に分けることができる。
私法は、市民の相互関係を対象とする規律であるから、自由平等の関係を基盤に、私益を調整することを目的とする。一方、公法は、支配服従の関係を定めて公益の実現をめざすことに特徴があるとされる。
私法の一般法は民法である。民法の基本原理は、
1.法の下の平等、2.私的財産権の絶対性、3.契約自由の原則(私的自治)、4.過失責任主義
であるとされるが、これらの原理はいずれも私法の基本的な特徴でもある。私法を構成する代表的な法律は、民法のほか、借地借家法、商法、会社法などである。
私法と公法とを区分することに対しては、私的活動に対する行政の関与が拡大することに伴って両者を区分する必然性が薄れたこと、労働法や産業法のような公益上の理由で市民相互の関係を規律付ける法律分野(社会法といわれ、私法と公法の中間的な性格を持つとされる)が出現したことなどにより、その意味を失ったという意見もあるが、法の本質的な性格を明確にする基本的な視点を提供すること、法概念を分析するための基盤となることなど、区分することの理論的な有効性はいまなお失われていない。
債務不履行
債権・債務関係において、債務が履行されない状態をいう。 例えば、売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、売主が物件を引き渡さないときは、売主は引渡し義務を怠っていて、「債務不履行」にあたる。 このような債務不履行に対しては、法律(民法)により、債権者が債務者に対して損害賠償を請求することができるとされている。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。 なお、債務の履行に代わる損害賠償を請求するには、次の条件を満たすことが必要である。 1.債務の履行が不能であるとき。(履行不能・履行遅滞・不完全履行の3形態がある) 2.債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。 3.債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。