住宅の構造・設備、改修工事、維持保全、権利関係など、住宅の情況を示す情報をいう。
その具体的な内容が統一的に定められているわけではないが、長期優良住宅の普及、住宅の資産価値の保全、中古住宅流通の活性化、住宅の維持保全などのためには、住宅履歴情報の記録・保存が必要または有効であると考えられている。
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」では、長期優良住宅の認定を受けるためには、その建築・維持保全の状況に関する記録を作成・保存しなければならないとされているが、この記録は、住宅履歴情報に該当する。また、住宅履歴情報は、その活用によって、住宅の維持管理やリフォームを適切に実施すること、取引の安心を向上し円滑にすること、災害や事故時に迅速・適切に対応することなどに資すると期待されている。
住宅履歴情報に関する仕組みの構築、例えば情報項目の標準化、情報表示の共通化、情報活用ルールの明確化などについては、国土交通省が設置した委員会を中心に検討が行なわれ、平成22年5月に一般社団法人住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会という団体が設立された。
長期優良住宅
長期にわたり使用可能な質の高い住宅をいう。
その具体的な基準は明確には定まっていないが、単に物理的に長寿命であるだけでなく、ライフスタイルの変化などへの対応、住環境への配慮など、社会的に長寿命であることが必要であるとされる。「200年住宅」ともいわれる。長期優良住宅の開発・普及は、優良な住宅ストックを形成するための重要な政策の一つであると考えられている。
2008年には、長期優良住宅の普及のために「長期優良住宅の普及の促進に関する法律(長期優良住宅普及促進法)」が制定され、i)長期使用に耐える構造(劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、省エネルギー性、バリアフリー性)を備え、ii)居住環境、iii)自然災害への配慮、iv)住戸面積、v)維持保全計画について一定の基準を満たす住宅を認定する制度(認定長期優良住宅制度)が創設されている。 また、認定長期優良住宅の普及のために、税制上の優遇、容積率の制限緩和、超長期住宅ローンなどの措置が講じられている。
同時に、法律とは別に、長期間使用可能な住宅の先導的なモデルの開発や、住宅の建築確認、点検、保全工事などの情報(住宅履歴情報)を記録・保存する仕組みを整備し、その活用などによって優良な住宅の円滑な流通を促進することなども推進されている。
資産価値
財産として評価した価額。おおむね市場での取引価格に等しい。これに対して、資産の利用によって得る便益に着目して評価した価額を「利用価値」という場合がある。 不動産の資産価値は、土地と建物を分けて算定することが多い。土地の資産価値は立地、区画形質などによって、建物の資産価値は立地、デザイン、管理状態などによって決まると考えられている。一般に、土地の資産価値は経年的に変化しない一方、建物の資産価値は建築後の時間経過とともに減少するとされる。ただし、不動産の資産価値は、通常、土地と建物が一体となって形成しているから、両者を截然と分けて評価することには限界がある。
中古住宅流通の活性化
中古住宅の取引を活発にする政策が進められている。この政策によって、既存住宅の活用が進み、住宅の選択肢が広がり、ライフサイクルやライフスタイルに応じた住生活の確保が容易になると考えられている。
中古住宅の流通を活性化するためには、次のような政策が有効であるとされている。
1)適時適切な修理修繕、リフォームによる建物構造の強化や住機能の充実、周辺住環境の整備などによって、既存住宅の質を維持・向上すること。 2)住宅の質を的確に評価し、それに基づいて価格が形成される市場環境を整えること。そのために、住宅履歴の記録・保存、質を調査する技術の確立・普及、質を反映する価格査定手法の確立などを図ること。 3)中古住宅の特性に即した流通サービスを提供すること。たとえば、リフォームとの連携、品質調査・価格査定サービスの充実、建物価値に基づく金融サービスなど。
長期優良住宅普及促進法
長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅を普及するための法律。正式には、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」といい、2008(平成20)年に制定された。
この法律は、長期優良住宅を認定するための手続き、基準などを定めている。この制度によって認定された住宅が「認定長期優良住宅」である。
リフォーム
建物の構造強化、機能向上などを図るための改修をいう。リフォームの種類には、耐震化、バリアフリー化、省エネルギー化、耐久性向上化などのための工事がある。
リフォームへのニーズは、既存建物の有効活用、既存住宅流通の活性化、良質な住宅ストックの形成などの要請によって、今後高まっていくと考えられている。また、これを促進するためのリフォーム減税が措置されている。
一方で、リフォームは、その目的や内容が多様で幅広いこと、リフォーム前の建物の状態がさまざまであることなどの特徴がある。そのため、リフォームのための技術・技能や費用を標準化するのが難しい。また、リフォームによって高まるであろう不動産価値を評価する手法は十分に確立されているとは言い難く、リフォームを不動産価格に反映するしくみも十分ではない。リフォームに対するニーズに応えるためには、これらの課題に取り組まなければならない。