土地利用、都市施設の整備、市街地開発事業に関する計画であって、都市計画の決定手続により定められた計画のこと(都市計画法第4条第1号)。
具体的には都市計画とは次の1.から11.のことである。
1.都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都市計画法第6条の2)
2.都市再開発方針等(同法第7条の2)
3.区域区分(同法第7条)
4.地域地区(同法第8条)
5.促進区域(同法第10条の2)
6.遊休土地転換利用促進地区(同法第10条の3)
7.被災市街地復興推進地域(同法第10条の4)
8.都市施設(同法第11条)
9.市街地開発事業(同法第12条)
10.市街地開発事業等予定区域(同法第12条の2)
11.地区計画等(同法第12条の4)
注:
・上記1.から11.の都市計画は、都市計画区域で定めることとされている。ただし上記8.の都市施設については特に必要がある場合には、都市計画区域の外で定めることができる(同法第11条第1項)。
・上記4.の地域地区は「用途地域」「特別用途地区」「高度地区」「高度利用地区」「特定街区」「防火地域」「準防火地域」「美観地区」「風致地区」「特定用途制限地域」「高層住居誘導地区」などの多様な地域・地区・街区の総称である。
・上記1.から11.の都市計画は都道府県または市町村が定める(詳しくは都市計画の決定主体へ)。
都市計画の決定手続
都市計画を決定するための手続は、詳細に法定されている。具体的には次の通り。
1.都市計画の案の作成
都市計画の決定手続の第1段階として、都市計画の案を作成する。この時点で、都市計画の決定主体(都道府県または市町村)は、必要があると認める場合には、住民意見を反映させる措置(例えば公聴会の開催)を実施するものとされている(都市計画法第16条第1項)。
(地区計画等の都市計画の案については、市町村の条例にもとづき、必ず土地所有者等の意見を求めて案を作成しなければならない。また、市町村の条例に定めが あれば、住民や利害関係人は地区計画等の都市計画の案の内容そのものを市町村に申し出ることが可能である(都市計画法第16条第2項、第3項))
2.都市計画の案に対する意見書提出
都市計画の決定主体は、都市計画の案を2週間、公衆の縦覧に供する(都市計画法第17条第1項)。この2週間の期間内に、住民および利害関係人は意見書を提出できる(都市計画法第17条第2項)。
(特定街区の案については土地所有者等の同意を要する。遊休土地転換利用促進地区の案については土地所有者等の意見を聴かなければならない(都市計画法第17条第3項、第4項))
3.都道府県の決定手続
都道府県が決定主体であるときは、都道府県は関係市町村の意見を聴き、都道府県都市計画審議会の議決を経て、都市計画を決定する。
(都道府県の都市計画が、大都市とその周辺を含むとき、国の利害に重大な関係があるときに限り、都道府県は国土交通大臣と協議し国土交通大臣の同意を得なければならない(都市計画法第18条第3項))
4.市町村の決定手続
市町村が決定主体であるときは、市町村は、市町村都市計画審議会(設置されていないときは都道府県都市計画審議会)の議決を経て、さらに知事と協議し同意を得て、都市計画を決定する。
注:市町村の都市計画は、原則的に知事との協議・同意が必要であるが、次の特例がある。
1)準都市計画区域における都市計画について:市町村は知事の意見を聴くだけでよい(知事との協議・知事の同意は不要である)(都市計画法第19条第5項)。
2)地区計画等について:市町村は「政令で定める地区施設の配置・規模等」についてのみ知事と協議し知事の同意を得ればよい(都市計画法第19条第3項))。
5.他の計画等との整合性
上記3.または4.で都市計画を決定する際に、その都市計画は、他の計画等との整合性を満たしたものでなければならない。具体的には次の通り。
1)都道府県が都市計画を決定する場合
全国総合開発計画・首都圏整備計画などの国土計画、地方計画に関する法律に基づく計画(公害防止計画を含む)、道路河川等に関する国の計画に適合することが必要である(都市計画法第13条第1項本文)。
2)市町村が都市計画を決定する場合
上記1)に加えて、都道府県の都市計画、市町村の建設に関する基本構想、市町村の都市計画に関する基本方針に適合することが必要である(都市計画法第15条第3項、第18条の2第4項)。
6.都市計画の告示
上記3.または4.で決定された都市計画を、都市計画の決定主体が正式に告示することにより、その告示の日から都市計画が効力を生ずる(都市計画法第20条第1項、第3項)。
都市計画法
都市計画に関する制度を定めた法律で、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的として、1968(昭和43)年に制定された。
この法律は、1919(大正8)年に制定された旧都市計画法を受け継ぐもので、都市を計画的に整備するための基本的な仕組みを規定している。
主な規定として、都市計画の内容と決定方法、都市計画による規制(都市計画制限)、都市計画による都市整備事業の実施(都市計画事業)などに関する事項が定められている。
都市計画区域の整備、開発及び保全の方針
都市計画区域に関して都道府県が定める基本的な方針のこと。
都道府県は、都市計画区域に関して必ずこの方針を定める(都市計画法第6条の2)こととされているので、区域区分が定められていない都市計画区域(いわゆる非線引き区域)においてもこの方針を定める必要がある。
この方針には、次の内容が定められる(都市計画法第6条の2第2項)。
1.都市計画の目標
2.区域区分の決定の有無(区域区分を定めるときはその方針)
3.主要な都市計画の決定の方針
都市計画区域の中で、都市計画決定を行なう際には、必ずこの方針に即して都市計画を決定しなければならない(都市計画法第6条の2第3項)(詳しくは都市計画の決定手続へ)。
なお、この方針を決定する主体は都道府県である(都市計画法第15条第1項第1号)。
都市再開発方針等
都市再開発法等の規定に基づき、都道府県が定める方針のこと。
具体的には、次の1.から4.の方針を「都市再開発方針等」と総称している(都市計画法第7条の2第1項)。
1.都市再開発法による「都市再開発の方針」
2.大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法による「住宅市街地の開発整備の方針」
3.地方拠点都市地域の整備および産業業務施設の再配置の促進に関する法律による「拠点業務市街地の開発整備の方針」
4.密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律による「防災街区整備方針」
都市再開発方針等は、すべての都市計画区域で定めるものではなく、都道府県が市街化区域内において、必要に応じて定めるとされている(都市計画法第13条第1項第3号、同法第15条第1項第3号)。
なお、都市計画区域のなかで、都市計画決定を行なう際には、この都市再開発方針等に即したものとしなければならない(都市計画法第7条の2第2項)(詳しくは都市計画の決定手続へ)。
区域区分
都市計画によって、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域とに区分することをいう。
区域区分は、
1.都道府県が、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があると認めるとき
2.都市計画区域が、指定都市の区域、首都圏の既成市街地・近郊整備地帯、近畿圏の既成都市区域・近郊整備区域、中部圏の都市整備区域の全部または一部を含む場合
に定められる。
なお、区域区分が定められていない都市計画区域を「非線引き区域」と呼ぶことがある。
地域地区
都市計画において、土地利用に関して一定の規制等を適用する区域として指定された、地域、地区または街区をいう。
指定する地域地区の種類に応じて、その区域内における建築物の用途、容積率、高さなどについて一定の制限が課せられる。
地域地区の種類は、次の通りである。
1.用途地域
2.特別用途地区
3.特定用途制限地域
4.特例容積率適用地区
5.高層住居誘導地区
6.高度地区または高度利用地区
7.特定街区
8.都市再生特別措置法による都市再生特別地区、居住調整地域または特定用途誘導地区
9.防火地域または準防火地域
10.密集市街地整備法による特定防災街区整備地区
11.景観法による景観地区
12.風致地区
13.駐車場法による駐車場整備地区
14.臨港地区
15.古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法による歴史的風土特別保存地区
16.明日香村における歴史的風土の保存および生活環境の整備等に関する特別措置法による第一種歴史的風土保存地区または第二種歴史的風土保存地区
17.都市緑地法による緑地保全地域、特別緑地保全地区または緑化地域
18.流通業務市街地の整備に関する法律による流通業務地区
19.生産緑地法による生産緑地地区
20.文化財保護法による伝統的建造物群保存地区
21.特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法による航空機騒音障害防止地区または航空機騒音障害防止特別地区
促進区域
市街地の再開発などを促進するために定められる区域のこと。
促進区域とは、次の4種類の区域の総称である(都市計画法第10条の2第1項)。
1.都市再開発法第7条第1項の規定による「市街地再開発促進区域」
2.大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法第5条第1項の規定による「土地区画整理促進区域」
3.大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法第24条第1項 の規定に「住宅街区整備促進区域」
4.地方拠点都市地域の整備および産業業務施設の再配置の促進に関する法律第19条第1項 の規定による「拠点業務市街地整備土地区画整理促進区域」
促進区域の具体的な内容は、それぞれの法律によって規定されている。
例えば、上記1.の「市街地再開発促進区域」については、その促進区域内の宅地の所有者または借地権者は、できるだけ速やかに第一種市街地再開発事業などを施行するよう努めなければならず、5年以内に自主的再開発が行なわれない場合等には、市町村(または都道府県)が第一種市街地再開発事業を施行することが予定されている(市街地再開発法第7条の2)。
また、「市街地再開発促進区域」では容易に移転除却できる建築物の建築であっても知事(または市長)の許可が必要である(市街地再開発法第7条の4)。
このように促進区域では建築を規制し、本来の事業への移行を促す措置が規定されている。
なお、上記1.から4.の促進区域は、市街化区域または区域区分が定められていない都市計画区域(いわゆる非線引き区域)において都市計画として定める(都市計画法第13条第1項第8号)。
促進区域の都市計画決定の主体は市町村である(都市計画法第15条)。
遊休土地転換利用促進地区
市街化区域における遊休土地の有効利用を促進するために市町村が定める地区。
遊休土地利用転換促進地区は、1990(平成2)年の都市計画法の改正により導入された地区である。
この地区は、市街化区域内で相当規模の土地が低・未利用の状態のまま存続し続けることで、周辺地域の計画的な土地利用に著しく支障をきたす場合を想定し、そのような場合に市町村が適切に指導・助言・勧告をすることにより、積極的な土地利用を促そうとする制度である。
1.指定の要件
遊休土地利用転換促進地区は、次の要件を満たすとき、市町村が指定する(都市計画法第10条の3、施行令第4条の3より要約)。
1)市街化区域内のおおむね5,000平方メートル以上の規模の区域であること
2)当該区域内の土地が相当期間、住宅の用、事業の用等に供されていないこと(または、その土地の利用の程度が周辺地域に比べて著しく劣っていること)等
なお、市町村はこの都市計画決定に際して、遊休土地利用転換促進地区の都市計画の案について、当該地区内の土地所有者等の意見を聴かなければならない(都市計画法第17条第4項)。
2.遊休土地である旨の通知
上記1.の指定が正式に告示されてから2年を経過した後において、市町村長は次の要件を満たす区域内の土地所有者等に対して、遊休土地である旨を通知するものとされている(都市計画法第58条の6、施行令第38条の9より要約)。
1)土地所有者等がその土地を取得してから2年を経過したこと
2)その土地が1,000平方メートル以上の一団の土地であること
3)その土地が住宅の用、事業の用等に供されていないこと(または、その土地の利用の程度が周辺地域に比べて著しく劣っていること)等
3.計画の届出、勧告、買取協議
上記2.の市町村長の通知から6週間以内に、当該土地所有者等は、遊休土地の利用又は処分に関する計画を届け出なければならない(都市計画法第58条の7)。
この計画が、土地利用の促進において支障があるときは、市町村長は、当該土地所有者等に対して、計画の変更等を勧告することができる(都市計画法第58条の8)。
さらに、土地所有者等がこの市町村長の勧告に従わないときは、市町村長はその土地の買取を希望する地方公共団体・土地開発公社等と当該土地所有者等との間で、6週間に限り、土地の買取に関する協議を行なわせることができる(都市計画法第58条の9)。
被災市街地復興推進地域
大規模な災害により被害を受けた市街地の復興を推進するために定められる地域。
平成7年に制定された被災市街地復興特別措置法に基づいて市町村が指定する地域である。
被災市街地復興推進地域は、次の要件に該当する市街地の区域について、市町村の都市計画で指定される(被災市街地復興特別措置法第5条、都市計画法第10条の4、都市計画法第15条)。
1.大規模な火災、震災等により相当数の建築物が滅失したこと
2.公共施設の整備状況、土地利用の動向から見て不良な街区の環境が形成される恐れがあること
3.緊急かつ健全な復興のため、土地区画整理事業、公共施設の整備事業等を実施する必要があること
このような要件を満たす区域について、被災市街地復興推進地域が指定された場合には、地域内の土地において、建築行為等が厳しく制限され、土地の造成・建築物の建築等には知事(または市長)の許可が必要となる(被災市街地復興特別措置法第7条)。
また、この知事(または市長)の許可が得られないために土地所有者に著しい支障が生ずる場合には、都道府県・市町村等は当該土地を時価で買い取るべきものとされている(被災市街地復興特別措置法第8条)。
都市施設
都市施設とは、道路、公園、上下水道など都市において必要となる公共的な施設のことである。
1.都市施設の種類
都市計画法では、都市施設として、次の11種類の施設を定めている(都市計画法第11条1項)。
1)道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
2)公園、緑地、広場、墓園その他の公共空地
3)水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場その他の供給施設または処理施設
4)河川、運河その他の水路
5)学校、図書館、研究施設その他の教育文化施設
6)病院、保育所その他の医療施設または社会福祉施設
7)市場、と畜場または火葬場
8)一団地(50戸以上)の住宅施設
9)一団地の官公庁施設
10)流通業務団地
11)電気通信事業用の施設その他(施行令第5条)
2.都市施設を定める基準
都市施設を都市計画で決定する際には、次の基準が設けられている。
1)市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域(いわゆる非線引き区域)では、必ず、道路、公園、下水道を定めなければならない(都市計画法第13条第1項第11号)。
2)住居系の用途地域内では、必ず義務教育施設を定めなければならない(都市計画法第13条第1項第11号)。ちなみに住居系の用途地域とは、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域を指す。
3)都市施設は原則として都市計画区域内で定めるが、特に必要があるときは、都市計画区域の外で定めることもできる(都市計画法第11条第1項)。
3.都市施設を定める主体
都市施設を都市計画として決定する主体は、原則として「市町村」である。ただし、広域的見地から決定すべき都市施設、根幹的都市施設については「都道府県」が決定主体となる。
具体的には、国道、都道府県道、4車線以上の道路、流域下水道、産業廃棄物処理施設等は「都道府県」が決定する(都市計画法第15条第1項第5号、同施行令第9条第2項)。
4.建築の制限
都市計画として決定された都市施設(これを「都市計画施設」という)の区域では、都市施設を実際に整備する事業が進行するので、その整備の事業の妨げになるような建物の建築は厳しく制限される(詳しくは都市計画施設の区域内の制限へ)。
5.施行予定者を定めるとき
「一団地の住宅施設(ただし面積が20ha以上のものに限る)」、「一団地の官公庁施設」、「流通業務団地」については、都市施設に関する都市計画で「施行予定者」を定めることが可能である(都市計画法第11条第5項)。
都市施設に「施行予定者」を定めた場合には、原則として2年以内に都市計画事業の認可を申請しなければならない(都市計画法第60条の2)。
また、いったん施行予定者を定めた以上は、施行予定者を定めないものへと計画を変更することは許されない(都市計画法第11条第6項)。
市街地開発事業
市街地を開発または整備する事業のこと。 具体的には、都市計画法第12条に掲げられた次の6種類の事業を「市街地開発事業」と呼ぶ。
1.都市再開発法 による「市街地再開発事業」 2.大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法による「住宅街区整備事業」 3.土地区画整理法による「土地区画整理事業」 4.新住宅市街地開発法による「新住宅市街地開発事業」 5.首都圏の近郊整備地帯および都市開発区域の整備に関する法律による「工業団地造成事業」または近畿圏の近郊整備区域および都市開発区域の整備及び開発に関する法律による「工業団地造成事業」 6.新都市基盤整備法 による「新都市基盤整備事業」 1)市街地開発事業の決定主体 市街地開発事業は、市街地を開発・整備する事業であり、原則として都道府県知事が主体となって都市計画として決定する(ただし比較的小規模な「市街地再開発事業」「住宅街区整備事業」「土地区画整理事業」については市町村が決定する(都市計画法施行令第10条)。 2)市街地開発事業を定めることができる土地 市街地開発事業は、市街化区域または区域区分が定められていない都市計画区域(いわゆる非線引き区域)においてのみ定めることができる(都市計画法第13条第1項第13号)。 3)建築等の制限 市街地開発事業が都市計画として決定されると、その市街地開発事業が実行される土地(これを「市街地開発事業の施行区域」という)では、その事業の妨げになるような建築物の建築等が厳しく制限される(詳しくは市街地開発事業の施行区域内の制限へ)。 4)施行予定者を定めたとき 上記4.5.6.の市街地開発事業については、都市計画で「施行予定者」を定めることが可能である(都市計画法第12条第5項)。 「施行予定者」を定めた場合には、原則として2年以内に都市計画事業の認可を申請しなければならない(都市計画法第60条の2)。 また、いったん施行予定者を定めた以上は、施行予定者を定めないものへと計画を変更することは許されない(都市計画法第12条第6項)。
市街地開発事業等予定区域
市街地開発事業や都市施設に関する都市計画が将来的に策定されることが予定されている区域のこと。
具体的には、次の6種類の予定区域が法定されている(都市計画法第12条の2)。
1.新住宅市街地開発事業の予定区域
2.工業団地造成事業の予定区域
3.新都市基盤整備事業の予定区域
4.区域の面積が20ha以上の一団地の住宅施設の予定区域
5.一団地の官公庁施設の予定区域
6.流通業務団地の予定区域
1)予定区域の趣旨
市街地開発事業等予定区域とは、3年以内に「市街地開発事業に関する都市計画」または「都市施設に関する都市計画」(以下「本来の都市計画」と呼ぶ)が決定される区域である。
つまり、市街地開発事業等予定区域は、「本来の都市計画」が決定されるまでの暫定的な区域であるということができる。
通常の場合、事業や施設に関する都市計画を決定するまでには詳細な計画策定が必要であるが、その策定期間内に買い占めや、無秩序な開発などの現象が発生する恐れある。そこで、先に「予定区域」を定めることによって、そうした問題を回避することが意図されている。なお、予定区域を定める主体は都道府県である(都市計画法第15条第1項第7号)。
2)予定区域から本来の都市計画への移行
上記1)で述べたように予定区域は、あくまで暫定的な区域であるので、本来の都市計画への移行が法律で義務付けられている。具体的には、予定区域に関する都市計画の告示があった日から3年以内に、市街地開発事業または都市施設に関する都市計画(本来の都市計画)を定めなければならない(都市計画法第12条の2第4項)。
3年以内に本来の都市計画が決定されると、その後2年以内に都市計画事業の認可の申請がされて、いよいよ市街地開発事業や施設の整備事業が実際に施行されることになる(都市計画法第60条の2)。
3)予定区域から本来の都市計画へ移行しなかったとき
もしも3年以内に本来の都市計画が定められないときは、予定区域は効力を失う(都市計画法第12条の2第5項)。
このようにして予定区域が効力を失ったことにより損害を受けた土地所有者等がある場合には、本来の都市計画の決定をすべき者(原則として都道府県)がその損失を補償しなければならない(都市計画法第52条の5第1項)。
4)施行予定者
予定区域では「施行予定者」を必ず定めなければならない(都市計画法第12条の2第3項)。施行予定者とは、市街地開発事業や施設の整備事業を将来的に施行する予定の者であり、国の機関・地方公共団体・そのほかの者から選ばれる(都市計画法第12条の2第3項)。
この予定区域における施行予定者は、上記2)のように「本来の都市計画」が決定される際には、「本来の都市計画」における施行予定者へとそのまま移行する(都市計画法第12条の3)。
5)予定区域内での建築等の制限
上記1)で述べたように、予定区域では開発・買い占めなどを防止する必要があるので、予定区域内では建築物の建築等が厳しく制限される(詳しくは市街地開発事業等予定区域の区域内の制限へ)。
6)市街地開発事業に関する予定区域を定めることができる土地
市街地開発事業に関する予定区域(上記1.2.3.)については、市街化区域または区域区分が定められていない都市計画区域(いわゆる非線引き区域)においてのみ定めることができる(都市計画法第13条第1項第13号)。
地区計画等
特定の地区の特性を反映した市街地等を形成するするための計画で、都市計画において決定されたものをいう。
地区計画等には次の5種類の計画がある。
1.地区計画
2.密集市街地整備法による防災街区整備地区計画
3.地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律による歴史的風致維持向上地区計画
4.幹線道路の沿道の整備に関する法律による沿道地区計画
5.集落地域整備法による集落地区計画
このうち、最も一般的なものは「地区計画」である。地区計画は、地域住民の意見を反映しながら、それぞれの地区の特性に応じたきめ細かなまちづくりを実施し、良好な環境を実現するための計画である(詳しくは地区計画へ)。
「防災街区整備地区計画」は、阪神・淡路大震災への反省から、防災機能が不十分な密集市街地について防災施設を整備し、火災・地震による延焼の被害を軽減し、避難経路を確保するようなまちづくりを誘導するための計画である。
「歴史的風致維持向上地区計画」は、地域におけるその固有の歴史および伝統を反映した人々の活動とその活動が行なわれる歴史上価値の高い建造物およびその周辺の市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境を維持向上するための計画である。
「沿道地区計画」は、幹線道路の沿道で道路交通騒音の被害を軽減するとともに、商業その他の幹線道路の沿道としてふさわしい業務の利便を増進するための計画である。
「集落地区計画」は、都市計画区域内の農業振興地域にある集落について、営農と居住の調和の取れた居住環境と適正な土地利用を実現するための計画である。
都市計画区域
原則として市または町村の中心部を含み、一体的に整備・開発・保全する必要がある区域。
原則として都道府県が指定する。
1.都市計画区域の指定の要件
都市計画区域は次の2種類のケースにおいて指定される(都市計画法第5条第1項、第2項)。
1)市または一定要件を満たす町村の中心市街地を含み、自然条件、社会的条件等を勘案して一体の都市として総合的に整備開発保全する必要がある場合
2)新たに住居都市、工業都市その他都市として開発保全する必要がある区域
1)は、すでに市町村に中心市街地が形成されている場合に、その市町村の中心市街地を含んで一体的に整備・開発・保全すべき区域を「都市計画区域」として指定するものである(※1)。なお、1)の「一定要件を満たす町村」については都市計画法施行令第2条で「原則として町村の人口が1万人以上」などの要件が定められている。
2)は、新規に住居都市・工業都市などを建設する場合を指している。
(※1)都市計画区域は、必要があるときは市町村の区域を越えて指定することができる(都市計画法第5条第1項後段)。また、都市計画区域は2以上の都府県にまたがって指定することもできる。この場合には、指定権者が国土交通大臣となる(都市計画法第5条第4項)。
2.都市計画区域の指定の方法
原則として都道府県が指定する(詳しくは都市計画区域の指定へ)。
3.都市計画区域の指定の効果
都市計画区域に指定されると、必要に応じて区域区分が行なわれ(※2)、さまざまな都市計画が決定され、都市施設の整備事業や市街地開発事業が施行される。また開発許可制度が施行されるので、自由な土地造成が制限される。
(※2)区域区分とは、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分することである。ただし、区域区分はすべての都市計画区域で行なわれるわけではなく、区域区分がされていない都市計画区域も多数存在する。このような区域区分がされていない都市計画区域は「区域区分が定められていない都市計画区域」と呼ばれる。
4.準都市計画区域について
都市計画区域を指定すべき要件(上記1.の1)または2))を満たしていない土地の区域であっても、将来的に市街化が見込まれる場合には、市町村はその土地の区域を「準都市計画区域」に指定することができる。準都市計画区域では、必要に応じて用途地域などを定めることができ、開発許可制度が施行されるので、無秩序な開発を規制することが可能となる(詳しくは準都市計画区域へ)。
用途地域
建築できる建物の用途等を定めた地域。都市計画法に基づく制度である。
用途地域は、地域における住居の環境の保護または業務の利便の増進を図るために、市街地の類型に応じて建築を規制するべく指定する地域で、次の13の種類があり、種類ごとに建築できる建物の用途、容積率、建ぺい率などの建築規制が定められている。
・住居系用途地域:「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「第一種中高層住居専用地域」「第二種中高層住居専用地域」「第一種住居地域」「第二種住居地域」「準住居地域」「田園住居地域」
・商業系用途地域:「近隣商業地域」「商業地域」
・工業系用途地域:「準工業地域」「工業地域」「工業専用地域」
用途地域の指定状況は、市区町村が作成する都市計画図に地域の種類ごとに異なった色を用いて表示され、容易に確認できるようになっている。
なお、用途地域は、局地的・相隣的な土地利用の調整の観点にとどまらず、都市全体にわたる都市機能の配置及び密度構成の観点から検討し、積極的に望ましい市街地の形成を誘導するため、都市計画区域マスタープランまたは市町村マスタープランに示される地域ごとの市街地の将来像にあった内容とすべきであるとされている(都市計画運用指針、国土交通省)。
特別用途地区
都市計画法第8条第1項に列挙されている地域・地区の一つ。
用途地域の内部において、用途地域よりもさらにきめ細かい建築規制を実施するために設定される地区であり、市町村が指定するものである。
かつては特別用途地区の種類は、文教地区、特別工業地区、厚生地区、特別業務地区、中高層階住居専用地区、商業専用地区、小売店舗地区、事務所地区、娯楽・レクリエーション地区、観光地区、研究開発地区という11種類に限定されていたが、法改正により現在ではこれら11種類だけでなく、さまざまな特別用途地区が市町村の判断により設置することができるようになっている。
高度地区
高度地区は、用途地域の中で定められる地区である。 高度地区では、市街地の環境維持のために建築物の高さに最高限度が設定される。 またごく少数ではあるが、土地の利用を促進するために、建築物の高さの最低限度を定める高度地区も存在する(都市計画法第8条第3項、第9条第18項)。
高度地区の具体的内容は市町村が決定することとされているので、詳細を知りたい場合には市区町村役所の建築確認担当部署に問い合わせる必要がある。
高度利用地区
高度利用地区は、用途地域の中で定められる地区である。 この高度利用地区では、容積率の最高限度、容積率の最低限度、建ぺい率の最高限度、建築面積の最低限度が必ず定められる。 これにより、狭小な建物の建築を排除することが可能となり、将来的に都市再開発事業を実施しやすい環境が創出されることになる(都市計画法第8条第3項、第9条第19項)。
特定街区
都市計画において、市街地の整備改善を図るために街区の整備を行なう区域として指定された地区をいう。
特定街区内では、一般的な建築規制を撤廃して、建築物の容積率、建築物の高さの最高限度、壁面の位置についてのみが特別に指定される。比較的自由に大規模な建築物の建築が可能となることから、大規模な都市開発プロジェクトにおいてよく活用される制度である。
防火地域
防火地域は、都市計画で指定される地域であり、火災を防止するため特に厳しい建築制限が行なわれる地域である(建築基準法第61条)。 防火地域での建築規制は次の通りである。
1.すべての建築物は少なくとも「準耐火建築物」としなければならない。
2.次の1)または2)の建築物は必ず「耐火建築物」としなければならない。 1)階数が3以上の建築物 2)延べ面積が100平方メートルを超える建築物 ここで「階数が3以上」とは、地下の階数も含む。従って、防火地域内の地上2階地下1階の建物は耐火建築物とする必要がある。 延べ面積が100平方メートルちょうどであれば、上記2.には該当しないことにも注意したい。 なお、建築基準法第61条では、防火地域であっても次の建築物は「準耐火建築物」としなくてもよいという緩和措置を設けている。
ア.平屋建ての付属建築物で、延べ面積が50平方メートル以下のもの。 イ.門、塀 ただし上記ア.に関しては、外壁・軒裏を防火構造とし、屋根を不燃材料でふき、開口部に防火設備を設けることが必要とされている。
準防火地域
準防火地域は都市計画で指定される地域であり、火災を防止するために比較的厳しい建築制限が行なわれる地域である(建築基準法61条)。
準防火地域では、建築物は次のようなものとしなければならない。
1.地上4階以上の建築物 →必ず耐火建築物とする 2.地上3階の建築物 →延べ面積によって次の3通りに分かれる。 1)延べ面積が1,500平方メートルを超えるとき: 必ず耐火建築物とする 2)延べ面積が500平方メートルを超え、1,500平方メートル以下のとき: 少なくとも準耐火建築物とする 3)延べ面積が500平方メートル以下のとき: 少なくとも3階建て建築物の技術的基準に適合する建築物とする 3.地上1階または地上2階の建築物 →延べ面積によって次の3通りに分かれる。 1)延べ面積が1,500平方メートルを超えるとき: 必ず耐火建築物とする 2)延べ面積が500平方メートルを超え、1,500平方メートル以下のとき: 少なくとも準耐火建築物とする 3)延べ面積が500平方メートル以下のとき: 通常の建築物でも構わない
ポイントを2つ挙げておく。 まず、最近多い地上3階建ての一般住宅は、上記2.の3)に該当するので、少なくとも「3階建て建築物の技術的基準」に適合する必要がある。 次に、通常の地上2階建ての一般住宅は、上記3.の3)に該当するので、原則的に特別な防火措置を講じなくてよい。ただし上記3.の3)の場合に、その建築物を木造とするためには、外壁・軒裏を「防火構造」とする必要がある。 なお、準防火地域では上記の規制のほかに、次の規制があることに留意したい。
ア.屋根の不燃化 建築物が耐火構造や準耐火構造でない場合には、その屋根は不燃材料で造り、または不燃材料でふくことが必要である。 イ.延焼の恐れのある開口部の防火措置 建築物が耐火構造や準耐火構造でない場合には、外壁の開口部(すなわち玄関や窓)で延焼を招く可能性のある部分に、防火戸など防火設備を設けなくてはならない。
美観地区
都市計画で定める地域地区のひとつで、「市街地の美観を維持するために定める地区」であるが、景観法の制定(2004年)によって廃止された。
その役割は、景観地区に引継がれている。景観地区を参照。
風致地区
風致地区は「都市の風致を維持するために定める地区」である(都市計画法第9条第22項)。 風致地区は、都市の内部にありながら公園・庭園・寺院・神社などを中心として緑豊かな環境が残っているエリアについて、環境の保護のために指定されることが多い。 風致地区では、地方公共団体の条例によって、建築物の高さ、建ぺい率などが厳しく規制され、緑豊かでゆとりのある環境が維持されている(都市計画法第58条)。
特定用途制限地域
用途地域では「特別用途地区」(文教地区や特別工業地区など)を設けてきめ細かな建築規制を実施できるが、そもそも用途地域が定めれていないエリアでは「特別用途地区」を設けることができないという問題があった。 そこで2000(平成12)年に都市計画法が改正され、用途地域がないエリアでは、「特別用途地区」に代わるものとして「特定用途制限地域」を設けることが可能になった(都市計画法第9条第15項)。
「特定用途制限地域」を設けることができるのは次の2つのエリアである。
1.準都市計画区域の中 2.非線引きの都市計画区域の中で、用途地域がないエリア 「特定用途制限地域」では、好ましくない業種(例えばパチンコ店)の建築を禁止するというような建築規制を実施することができる。
高層住居誘導地区
都市計画法第8条に列挙されている地域・地区の一つ。 容積率の限度が400%と定められている用途地域の中において、建築物の用途を「住宅」としたときには容積率の限度を最高で600%にまで拡大するという地区。 容積率のボーナスを与えることによって、人口が減少しつつある都心において高層住宅の建設を促進し、都心に人を呼び戻そうとする制度である。 この高層住居誘導地区において、容積率のボーナスを受けるには、建築物の延べ床面積の3分の2以上を住宅とし、また敷地面積の下限が設けられているときは、その下限より大きな敷地を確保する必要がある(都市計画法第9条第17項)。
都市計画の決定主体
都市計画を決定するのは、都道府県又は市町村である。
次の都市計画については都道府県が、それ以外の都市計画については市町村が決定することとされている。
1)都市計画区域の整備、開発及び保全の方針
2)区域区分
3)都市再開発方針等
4)地域地区のうち、都市再生特別地区、重要港湾等に係る臨港地区、歴史的風土特別保存地区等、一定の緑地保全地域等、流通業務地区、航空機騒音障害防止地区等
5)二以上の市町村の区域にわたり面積が10ha以上の風致地区、近郊緑地特別保全地区
6)広域の見地から決定すべき都市施設又は根幹的都市施設(国道・都道府県道、都市高速鉄道、流域下水道、産業廃棄物処理施設、一級河川・二級河川、流通業務団地など)
7)市街地開発事業(土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業及び防災街区整備事業については、大規模で国・都道府県施行見込みのものに限る)
8)市街地開発事業等予定区域(一団地の住宅施設の予定区域を除く)