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報酬額の制限
読み:ほうしゅうがくのせいげん

宅地建物取引業者が受け取ることのできる報酬額について限度が定められていることをいう。

宅地建物取引業者による媒介または代理によって、宅地建物の売買・交換・貸借が成立した場合に、宅地建物取引業者は、媒介契約または代理契約に基づき、依頼者から所定の報酬を受け取ることができ、その報酬の額は、媒介契約または代理契約において、依頼者と宅地建物取引業者の間で約定される。

この場合に、宅地建物取引業法は、報酬の額の上限を国土交通大臣が告示で定めるものとし、宅地建物取引業者はその告示の規定を超えて、報酬を受けてはならないという制限を課している。これに基づいて定められているのが、国土交通省告示「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」である。

定められている報酬額の制限の概要は次のとおりである。

1 報酬が発生する場合
宅地建物取引業者の媒介または代理により、売買・交換・貸借が成立した場合に、宅地建物取引業者は依頼者に報酬を請求することができる。しかし、宅地建物取引業者自らが売主または貸主として売買・交換・貸借が成立した場合には、その売主または貸主である宅地建物取引業者は取引当事者の立場にあるので、買主または借主に報酬を請求することはできない。
また、この報酬は成功報酬と解釈されており、原則として売買・交換・貸借が媒介または代理により成立した場合にのみ報酬請求権が発生するとされている(標準媒介契約約款の規定等による)。

2 売買の媒介における報酬額の上限
売買の媒介の場合に、宅地建物取引業者が依頼者の一方から受けることができる報酬額の上限は、報酬に係る消費税相当額を含めた総額で、次のとおりである。(報酬告示第二)

1)売買に係る代金の価額(ただし建物に係る消費税額を除外する)のうち200万円以下の部分について…価額の5%+これに対する消費税額
2)200万円を超え400万円以下の部分について…価額の4%+これに対する消費税額
3)400万円を超える部分について…価額の3%+これに対する消費税額

例えば、売買に係る代金の価額(建物に係る消費税額を除外)が1,000万円の場合には、200万円の5%、200万円の4%、600万円の3%に、それぞれに対する消費税額を加えた額が依頼者の一方から受ける報酬額の上限となる(この額には報酬に係る消費税相当額を含む)。

3 交換の媒介における報酬額の上限
交換の媒介の場合には、交換する宅地建物の価額に差があるときは、いずれか高いほうを「交換に係る宅地建物の価額(ただし、建物に係る消費税額を除外する)」とする。(報酬告示第二)
例えば、A社がX氏と媒介契約を結んでX氏所有の800万円(消費税額を除外後)の宅地建物を媒介し、B社がY氏と媒介契約を結んでY氏所有の1,000万円(消費税額を除外後)の宅地建物を媒介して交換が成立したとすれば、A社の報酬額の上限は800万円でなく、1,000万円をもとに計算する。(この額には報酬に係る消費税相当額を含む)。

4 貸借の媒介の場合
宅地または建物の貸借の媒介において、宅地建物取引業者が依頼者双方から受けることのできる報酬額の上限は、合計で借賃(借賃に係る消費税額を除外する)の1月分+これに対する消費税額である(この額には報酬に係る消費税相当額を含む)。ただし、居住の用に供する建物の賃貸借については、依頼者の一方から受け取ることのできる報酬は、媒介依頼の際に当該依頼者の承諾を得ている場合を除いて、借賃の1月分の0.5倍+これに対する消費税額以内でなければならない。(報酬告示第四)

なお、宅地または非居住用の建物(店舗・事務所など)の賃貸借において、権利金が授受されるときは、その権利金の額を上記2の「売買に係る代金の額」とみなして、売買の媒介の場合と同様に報酬額の上限を算出することが可能である。(報酬告示第六)

5 代理の場合
売買・交換・貸借の代理において、宅地建物取引業者が依頼者の一方から受けることのできる報酬額の上限は、上記2または3の2倍の額である。ただし、売買・交換の相手方からも報酬を受ける場合には、報酬の合計額は2または3によって算出した額の2倍を超えてはならない。(報酬告示第三)

また、賃借の代理においては、一方から受け取ることのできる報酬額の上限は借賃の1月分+これに対する消費税額である。ただし、取引の他方からも媒介等の報酬を得る場合には、両者からの報酬の合計額はこの額を超えてはならない。(報酬告示第五)

なお、双方代理は、民法で原則として禁止されていることに注意が必要である。

6 低廉な空家等の売買・交換に関する特例
代金の額が400万円以下の宅地建物であって、通常の媒介・代理と比較して現地調査等の費用を要するもの(低廉な空家等)の取引の媒介・代理に当たっては、依頼者たる売主または交換を行う者から受ける報酬について、当該現地調査等に要する費用を加えることができる。ただし、現地調査等に要する費用を加えた合計報酬額は、18万円+これに対する消費税額を超えてはならない。(報酬告示第七・第八)

7 複数の宅地建物取引業者の関与
複数の宅地建物取引業者が一個の売買等の媒介・代理に関与する場合には、報酬額の上限の規定は、それらの業者の受ける報酬額の合計額について適用する。

8 特別の依頼に係る広告費用
宅地建物の売買・交換・貸借の媒介・代理に関しては、上記の1〜7によるほか報酬を受け取ってはならないが、依頼者が特別に依頼した広告の料金に相当する額については、この限りではない。(報酬告示第九)

宅地建物取引業者

宅地建物取引業者とは、宅地建物取引業免許を受けて、宅地建物取引業を営む者のことである(宅地建物取引業法第2条第3号)。 宅地建物取引業者には、法人業者と個人業者がいる。 なお、宅地建物取引業を事実上営んでいる者であっても、宅地建物取引業免許を取得していない場合には、その者は宅地建物取引業者ではない(このような者は一般に「無免許業者」と呼ばれる)。

媒介

私法上の概念で、他人間の契約等法律行為の成立に向けて行う事実行為をいう。代理や取次と違って、法律行為ではないとされる。 不動産取引における宅地建物取引業者の立場(取引態様)の一つでもあり、不動産の売買・交換・賃貸借について、売主と買主(または貸主と借主)との間に立って取引成立に向けてなす活動がこれに該当する。 なお、「仲介」は「媒介」と同じ意味である。

媒介契約

不動産の売買・交換・賃貸借の取引に関して、宅地建物取引業者が取引当事者の間に立ってその成立に向けて活動するという旨の契約をいい、売主または買主(賃貸借取引の場合には、貸主または借主)と宅地建物取引業者との間で締結される。 宅地建物取引業法は、媒介契約について、契約内容を記した書面の交付義務、媒介報酬の制限などを規定しているほか、媒介契約に従って行なう活動の方法等についてそのルールを定めている。

宅地建物取引業法

宅地建物取引の営業に関して、免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を定めた法律。1952年に制定された。 この法律に定められている主な内容は、宅地建物取引を営業する者に対する免許制度のほか、宅地建物取引士制度、営業保証金制度、業務を実施する場合の禁止・遵守事項などである。これによって、宅地建物取引業務の適正な運営、宅地および建物の取引の公正の確保および宅地建物取引業の健全な発達の促進を図ることとされている。

消費税

国内の資産・商品・サービスの取引によって発生する付加価値に対して課税される税金。 法人や個人事業者が有償で行なう「資産の譲渡」「商品の販売」「資産の貸付け」「サービスの提供」は原則としてすべて消費税が課税される「課税取引」とされている。 また、土地の販売・住宅の家賃のように、税の性格や社会政策的配慮により消費税が課税されないこととされている取引は「非課税取引」と呼ばれる。 なお、課税取引に基づく売上高が一定規模に達しない法人や個人事業者については「免税業者」や「簡易課税制度」という措置が設けられている。ただし、適格請求書発行事業者は、基準期間における課税売上高にかかわらず、納税義務は免除されない。

建物

民法では、土地の上に定着した物(定着物)であって、建物として使用が可能な物のことを「建物」という。 具体的には、建築中の建物は原則的に民法上の「建物」とは呼べないが、建物の使用目的から見て使用に適する構造部分を具備する程度になれば、建築途中であっても民法上の「建物」となり、不動産登記が可能になる。

事務所(宅地建物取引業法における~)

宅地建物取引業法第3条第1項で規定する場所のこと(法第3条第1項、施行令第1条の2)。 具体的には、次の2種類の場所が「事務所」に該当する(以下の文章は国土交通省の宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方にもとづいている)。 1.本店または支店(施行令第1条の2第1号) 商業登記簿等に記載されており、継続的に宅地建物取引業の営業の拠点となる実体を備えているものを指す。 ただし、宅地建物取引業を営まない支店は「事務所」から除外される。 また本店は、支店の業務を統括する立場にあるため、本店が宅地建物取引業を直接営んでいない場合であっても、その本店は「事務所」に該当するものとされる。 2.上記1.以外で「継続的に業務を行なうことができる施設」を有する場所で、宅地建物取引業に係る「契約を締結する権限を有する使用人」を置く場所(施行令第1条の2第2号)。 「継続的に業務を行なうことができる施設」とは、固定的な施設であり、テント張りの施設や仮設小屋は含まれない。 「契約を締結する権限を有する使用人」とは、宅地建物取引士を指すものではなく、支店長・支配人などのように営業に関して一定範囲の代理権を持つ者を指している(ただし、支店長等が同時に宅地建物取引士である場合がある)。 また、「置く」とは常勤の使用人を置くという意味である。  以上の1.と2.の場所を合わせて、宅地建物取引業法では「事務所」と呼んでいる。 従って、会社の登記(商業登記簿)では支店として登記されていなくても、継続的に業務を行なうことができる施設に、宅地建物取引業に係る支店長や支配人を置いていれば、その施設は「事務所」とみなされることになる。 なお、宅地建物取引業法ではよく似た概念として「事務所等」「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」「標識を掲示すべき場所」「クーリングオフが適用されない場所」を定めているので、それぞれの違いに注意したい。

双方代理(双方代理の禁止)

同一人が契約当事者双方のそれぞれの代理人となって代理行為をすること。双方代理は原則として禁止されているが、これに反した代理行為が無効となるわけではなく、無権代理として扱われ、当事者本人が追認すれば有効となる。 例えば、Bが売主Aと買主Cのそれぞれの代理人となって売買契約を成立させることは双方代理に当たる。また、この場合に、AまたはCがB自身である場合を自己契約といい、双方代理と同様に禁止されている。 なお、不動産の売買・賃貸借の契約を媒介する行為は、代理行為ではないとされているので、双方の当事者から同一人が媒介の依頼を受けても双方代理とはならない(もっとも、双方に同時に信義誠実を尽くすのは容易ではないであろう)。