三井住友トラスト不動産

用語集からキーワードを検索する
媒介報酬(仲介報酬)
読み:ばいかいほうしゅう(ちゅうかいほうしゅう)

宅地建物取引業者媒介により、売買・交換・貸借が成立した場合に、宅地建物取引業者が媒介契約に基づき、依頼者から受け取ることができる報酬のこと。

この報酬の額は、媒介契約または代理契約に基づき、依頼者と宅地建物取引業者の間で約定されるものである。
またこの報酬の額の上限は、宅地建物取引業法第46条に基づき国土交通大臣が告示で定めるものとされており、宅地建物取引業者はその告示の規定を超えて報酬を受けてはならない、という制限がある。

このような宅地建物取引業法の規定を受けて「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号、いわゆる「報酬告示」)が定められている。

報酬額の制限の概要は以下の1~9の通りである。

なお、喫緊の課題とされる空き家等未利用不動産の流通促進のため、「不動産業による空き家対策推進プログラム」の一環として、令和6(2024)年6月に本報酬告示が改正されたところである。
これまで、低廉な空き家については「400万円以下」とし、「現地調査等に要する費用に相当する額」として、売買等の媒介では「18万円の1.1倍」を上限として受け取ることができるとしていたが、改正告示では、低廉な空家等の対象を「800万円以下」に拡大し、「費用を勘案した報酬」として「30万円の1.1倍」を受け取ることができるとして、上限額を引き上げた。また、「長期の空家等の貸借の媒介」等について、新たに特例を新設した。告示は、令和6年6月国土交通省告示第949号によって改正され、7月1日に施行された。

1.報酬が発生する場合
宅地建物取引業者の媒介または代理により、売買・交換・貸借が成立した場合に、宅地建物取引業者は依頼者に報酬を請求することができる。しかし、宅地建物取引業者自らが売主または貸主として売買・交換・貸借が成立した場合には、その売主または貸主である宅地建物取引業者は取引当事者の立場にあるので、買主または借主に報酬を請求することはできない。
また、この報酬は成功報酬と解釈されており、原則として売買・交換・貸借が媒介または代理により成立した場合にのみ報酬請求権が発生するとされている(標準媒介契約約款の規定等による)。

2.売買の媒介における報酬額の上限
売買の媒介の場合に、宅地建物取引業者が依頼者の一方から受けることができる報酬額の上限は、報酬に係る消費税相当額を含めた総額で、次の通りである(報酬告示第二)。

1)売買に係る代金の価額(ただし建物に係る消費税額を除外する)のうち200万円以下の部分について…5%+これに対する消費税額
2)200万円を超え400万円以下の部分について…4%+これに対する消費税額
3)400万円を超える部分について…3%+これに対する消費税額

例えば、売買に係る代金の価額(建物に係る消費税額を除外)が、1,000万円の場合には、200万円の5%、(200万円から400万円までの)200万円の4%、(400万円から1,000万円までの)600万円の3%に、それぞれに対する消費税額を加えた額である39.6万円が依頼者の一方から受ける報酬額の上限となる(ただし、この額には報酬に係る消費税相当額を含む)。

3.交換の媒介における報酬額の上限
交換の媒介の場合には、交換する宅地建物の価額に差があるときは、いずれか高い方を「交換に係る宅地建物の価額(ただし、建物に係る消費税額を除外する)」とする(報酬告示第二)。
例えば、A社がX氏と媒介契約を結んでX氏所有の800万円(消費税額を除外後)の宅地建物を媒介し、B社がY氏と媒介契約を結んでY氏所有の1,000万円(消費税額を除外後)の宅地建物を媒介して交換が成立したとすれば、A社の報酬額の上限は800万円でなく、1,000万円をもとに計算する。(ただし、この額には報酬に係る消費税相当額を含む)。

4.貸借の媒介の場合
宅地または建物の貸借の媒介において、宅地建物取引業者が依頼者双方から受けることのできる報酬の上限は、合計で借賃(借賃に係る消費税額を除外する)の1月分+これに対する消費税額である(この額には報酬に係る消費税相当額を含む)。ただし、居住の用に供する建物の賃貸借については、依頼者の一方から受け取ることのできる報酬は、媒介依頼の際に当該依頼者の承諾を得ている場合を除いて、借賃の1月分の0.5倍+これに対する消費税額以内でなければならない(報酬告示第四)。

なお、宅地または非居住用の建物(店舗・事務所など)の賃貸借において、権利金が授受されるときは、その権利金の額を上記2.の「売買に係る代金の額」とみなして、売買の媒介の場合と同様に報酬額の上限を算出することが可能である(報酬告示第六)。

5.代理の場合
売買・交換の代理において、宅地建物取引業者が依頼者から受けることのできる報酬額の上限は、上記2.3.の2倍である(報酬告示第三)。ただし、宅地建物取引業者が取引の相手方からも報酬を受ける場合には、その報酬額と代理の依頼者から受ける報酬額の合計額も上記2.3.の2倍以内に収まらなければならない。
賃借の代理においては、依頼者から受け取ることのできる報酬額の上限は借賃の1月分+これに対する消費税額であり、取引の相手方からも媒介等の報酬を得る場合には、両者からの報酬の合計額はこの額を超えてはならない(報酬告示第五)。
なお、双方代理は、民法で原則として禁止されていることに注意が必要である。

6. 低廉な空家等の売買・交換に関する特例
代金の額が800万円以下の宅地建物(低廉な空家等)の取引の媒介に当たっては、依頼者たる売主または交換を行う者から受ける報酬について、当該媒介に要する費用を勘案して上記2.3.の原則を超えて報酬を受けることができる。ただし、報酬額は30万円+これに対する消費税額を超えてはならない。(報酬告示第七)。
また、代理に当たって依頼者から受ける報酬の額(当該売買又は交換の相手方からも報酬を受ける場合には、それも含めた合計額)は、上記の2倍を超えてはならない。(報酬告示第八)

7. 長期の空家等の貸借に関する特例

現に長期間にわたって居住の用、事業の用などに供されておらず、又は将来にわたって利用されることが困難とみられる宅地建物(長期の空家等)の貸借の媒介に関して受けることのできる報酬額の合計額は、借主から受ける報酬の額が借賃の1ヵ月分の1.1倍(居住の用に供する場合は借主の承諾を得ている場合を除き0.55倍)に相当する金額以内である場合に限り、1ヵ月分の2.2倍を超えない範囲で報酬を受けることができる(報酬告示第九)。
また、長期の空家等の貸借の代理の場合には、依頼者である貸主から受けることのできる報酬額は、借賃の1ヵ月分の2.2倍以内である。貸借の相手方からも報酬を受ける場合には、その報酬額と代理の依頼者から受ける報酬額の合計額(借主から受ける報酬額が借り賃の1ヵ月分の1.1倍以内である場合に限る)も同様に1ヵ月分の2.2倍を超えてはならない。

8.複数の宅地建物取引業者の関与

9. 特別の依頼に係る広告費用
宅地建物の売買・交換・貸借の媒介・代理に関しては、上記の1〜8によるほか報酬を受け取ってはならないが、依頼者が特別に依頼した広告の料金に相当する額については、この限りではない(報酬告示第十一)。

10. 媒介業務以外の不動産取引に関連する業務に係る報酬について
空き家・空き室等の所有者等のニーズに対応して行う業務またはいわゆる不動産コンサルティング業務など、媒介以外の関連業務を行う場合には、媒介業務に係る報酬とは別に当該媒介以外の関連業務に係る報酬を受けることができるが、この場合にも、あらかじめ業務内容に応じた料金設定をするなど、報酬額の明確化を図ること。

宅地建物取引業者

宅地建物取引業者とは、宅地建物取引業免許を受けて、宅地建物取引業を営む者のことである(宅地建物取引業法第2条第3号)。 宅地建物取引業者には、法人業者と個人業者がいる。 なお、宅地建物取引業を事実上営んでいる者であっても、宅地建物取引業免許を取得していない場合には、その者は宅地建物取引業者ではない(このような者は一般に「無免許業者」と呼ばれる)。

媒介

私法上の概念で、他人間の契約等法律行為の成立に向けて行う事実行為をいう。代理や取次と違って、法律行為ではないとされる。 不動産取引における宅地建物取引業者の立場(取引態様)の一つでもあり、不動産の売買・交換・賃貸借について、売主と買主(または貸主と借主)との間に立って取引成立に向けてなす活動がこれに該当する。 なお、「仲介」は「媒介」と同じ意味である。

媒介契約

不動産の売買・交換・賃貸借の取引に関して、宅地建物取引業者が取引当事者の間に立ってその成立に向けて活動するという旨の契約をいい、売主または買主(賃貸借取引の場合には、貸主または借主)と宅地建物取引業者との間で締結される。 宅地建物取引業法は、媒介契約について、契約内容を記した書面の交付義務、媒介報酬の制限などを規定しているほか、媒介契約に従って行なう活動の方法等についてそのルールを定めている。

代理契約(宅地建物取引業法における~)

宅地建物取引業者が、売買取引・交換取引・賃貸借取引について、売主の代理人や買主の代理人となって(または貸主の代理人や、借主の代理人となって)、取引成立に向けて活動するという意味である。 宅地建物取引業者がこうした活動を行なう際に、依頼者(売主・買主・貸主・借主)と宅地建物取引業者との間に締結される契約を「代理契約」と呼ぶ。 代理契約の方法や内容については、宅地建物取引業法第34条の3(および第34条の2)によって厳しい規制が加えられている。 代理契約に関する規制は、媒介契約に関する規制と同一であるが、報酬額の最高限度が異なっている。

宅地建物取引業法

宅地建物取引の営業に関して、免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を定めた法律。1952年に制定された。 この法律に定められている主な内容は、宅地建物取引を営業する者に対する免許制度のほか、宅地建物取引士制度、営業保証金制度、業務を実施する場合の禁止・遵守事項などである。これによって、宅地建物取引業務の適正な運営、宅地および建物の取引の公正の確保および宅地建物取引業の健全な発達の促進を図ることとされている。

宅地(宅地建物取引業法における~)

宅地建物取引業法では、宅地の定義を次のように定めている(宅地建物取引業法第2条第1号、施行令第1条)。 1.用途地域内の土地について 都市計画法で定める12種類の用途地域内に存在する土地は、どのような目的で取引する場合であろうと、すべて宅地建物取引業法上の「宅地」である。 従って、例えば用途地域内に存在する農地を、農地として利用する目的で売却する場合であっても、宅地建物取引業法では「宅地」として取り扱う。 2.用途地域内の道路・公園・河川・広場・水路の用地について 用途地域内の土地のうちで、5種類の公共施設の用に供されている土地については、「宅地」から除外する。具体的には、道路・公園・河川・広場・水路という5種類の公共施設の用地は「宅地」から除外される(ただし下記の補足1を参照のこと)。 3.建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地について 建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地は、土地の原状の用途に関係なく、すべて宅地建物取引業法上の「宅地」である。 従って、例えば土地登記簿上の地目が「田」「畑」「池沼」「山林」「原野」である土地であっても、その土地を、建物の敷地に供する目的で取引するならば、宅地建物取引業法上はすべて「宅地」として取り扱われる。 これについては、土地の所在がどこであろうと適用される判断基準である。従って、都市計画区域外の山林や原野を、建物の敷地に供する目的で取引する場合には、その山林や原野は「宅地」として取り扱われる。 (補足1)用途地域内の道路・公園・河川・広場・水路の用地を、建物の敷地に供する目的で取引の対象とする場合について: 例えば、用途地域内の道路用地である土地を、建物の敷地に供する目的で取引する場合には、上記3.の基準が適用される。従って、この場合は、用途地域内の道路用地が、宅地建物取引業法上の「宅地」に該当することになる。

建物

民法では、土地の上に定着した物(定着物)であって、建物として使用が可能な物のことを「建物」という。 具体的には、建築中の建物は原則的に民法上の「建物」とは呼べないが、建物の使用目的から見て使用に適する構造部分を具備する程度になれば、建築途中であっても民法上の「建物」となり、不動産登記が可能になる。

標準媒介契約約款

国土交通省が定めた標準的な媒介契約の契約条項のことである。 媒介契約に関しては、宅地建物取引業法第34条の2で具体的な規制が行なわれているが、さらに消費者保護の観点から標準的な契約条項を普及させることが必要と考えられたので、建設省(現国土交通省)は、住宅宅地審議会の答申を踏まえて、「標準媒介契約約款」を作成し、告示したものである(昭和57年5月7日建設告示第1110号(最終改正:令和6年4月1日、国土交通省告示第34号))。 宅地建物取引業者が媒介契約書を作成する場合においては、宅地建物取引業法施行規則第15条の9第4号により、「標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの別」を契約書に記載しなければならない。 従って法律上は、宅地建物取引業者が媒介契約書を作成する場合に「標準媒介契約約款」を使用しないことも可能とされている。 ただし「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(国土交通省のガイドライン)では、「媒介契約制度の的確な運用を図るため、宅地建物取引業者間の大量取引における販売提携、販売受託等の特殊な事情のあるものを除き、標準媒介契約約款を使用することとする」と明言されている。 従って、国土交通省は「標準媒介契約約款」を使用するよう指導しているということができる。

権利金

土地や建物の賃借権を設定したり譲渡したりするときに、賃借人が地主・家主に支払う金銭をいう。 賃料とは別に授受され、敷金と異なって契約が終了しても返還されることはない。その授受は、都市部で広く見られる社会的な慣行である。 その法的な性格は、 1.所有権類似の法的保護を受ける借地権の対価、2.賃料の一部の一括前払い、3.賃借権の譲渡・転貸に対する事前の承認料 などといわれ、契約の内容で判断しなければならないが、事実として行なわれている。 なお、借地権の取引においては、通常、権利金に相当する額が対価となっていて、その額は地価の7割程度の水準である。また、貸主が受け取る権利金は、課税上、不動産譲渡益と同様に取り扱われている。