紛争を解決するために当事者が互いに譲歩して合意に達することを「和解」というが、これに対して、当事者以外の第三者が介入することにより当事者間の合意を形成することを「調停」という。
民事調停法にもとづく民事調停手続きでは、当事者の一方が簡易裁判所(または地方裁判所)に調停を申し立て、裁判官と調停委員が調停案を作成し、当事者双方が調停案に合意すれば、調停調書が作成される。
このようにして作成された調停調書は、債務者に給付義務を強制的に履行させる手続き(強制執行)を行なう際に、その前提として必要とされる「債務名義」の一つである。
強制執行
債務者に給付義務を強制的に履行させる手続きのことを「強制執行」という。
強制執行を行なうには、公的機関が作成した確定判決などの文書(債務名義)が必要であり、またその債務名義に「執行文」が記載されていることが必要である。
強制執行は、金銭執行と非金銭執行に分類される。
金銭執行とは、債務者の財産を差し押さえて(さらには競売により換価して)、金銭を債権者に交付するような強制執行である。代表的な金銭執行としては「強制競売」と「債権差押」がある。
また非金銭執行とは、金銭債権以外の債権(例えば土地引渡請求権)を実現するために行なわれる等の強制執行である。
なお、債務者(または物上保証人)の不動産に抵当権を設定している債権者が、その抵当権にもとづき不動産を競売することは、「任意競売」と呼ばれる。しかし任意競売は、強制執行には含まれない。また、任意競売では「抵当権の存在を証する文書」は要求されるが、「債務名義」は必要ではない。
債務名義
債務者に給付義務を強制的に履行させる手続き(強制執行)を行なう際に、その前提として必要となる公的機関が作成した文書のことを「債務名義」という。
債務名義には「確定判決」「仮執行宣言付判決」「和解調書」「調停調書」「執行認諾文言付公正証書」「仮執行宣言付支払督促」がある。
また、債務名義は強制執行の前提として必要な公的文書であるが、実際に強制執行を行なうには、債務名義に「執行文」が記載されることが必要である。
(ただし、「仮執行宣言付支払督促」は執行文なしで強制執行を行なうことができる)