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時効の更新
読み:じこうのこうしん

時効とは、ある事実状態が一定期間継続した場合に、その事実状態を尊重して、その事実状態に即した法律関係を確定するという法制度である。

この事実状態が継続する必要があるとされる一定の期間を「時効期間」といい、時効の種類により時効期間が設けられている(例えば所有権短期取得時効の時効期間は10年、所有権の長期取得時効の時効期間は20年、普通の金銭債権消滅時効の時効期間は10年である)。

このような時効期間が進行している途中において、それまで継続してきた事実状態を妨げるような事実や行為が発生した場合には、もはや事実状態の継続が失われたことになるので、それまで進行してきた時効期間はすべて効力を失うことになる。

このように、一定の事実や行為によって、それまで進行してきた時効期間が効力を失うことを「時効の更新」と呼んでいる(時効の進行が「ふりだしに戻る」ということである)。

なお、時効を中断させるような事実や行為は「時効の更新事由」と呼ばれている。

時効

ある事実状態が一定期間継続した場合に、そのことを尊重して、その事実状態に即した法律関係を確定するという制度を「時効」という。 時効は「取得時効」と「消滅時効」に分かれる。取得時効は所有権、賃借権その他の権利を取得する制度であり、消滅時効は債権、用益物権、担保物権が消滅するという制度である。 時効は時間の経過により完成するものであるが、当事者が時効の完成により利益を受ける旨を主張すること(これを援用という)によって初めて、時効の効果が発生する。 また、時効の利益(時効の完成によって当事者が受ける利益)は、時効が完成した後で放棄することができる。これを時効利益の放棄という。 また時効は、時効の完成によって不利益を受ける者が一定の行為を行なうことにより、時効の完成を妨げることができる。これを時効の更新という。

所有権

法令の制限内で自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利をいう。 物を全面的に、排他的に支配する権利であって、時効により消滅することはない。その円満な行使が妨げられたときには、返還、妨害排除、妨害予防などの請求をすることができる。 近代市民社会の成立を支える経済的な基盤の一つは、「所有権の絶対性」であるといわれている。だが逆に、「所有権は義務を負う」とも考えられており、その絶対性は理念的なものに過ぎない。 土地所有権は、法令の制限内においてその上下に及ぶとされている。その一方で、隣接する土地との関係により権利が制限・拡張されることがあり、また、都市計画などの公共の必要による制限を受ける。さらには、私有財産は、正当な補償の下に公共のために用いることが認められており(土地収用はその例である)、これも所有権に対する制約の一つである。

短期取得時効

所有の意思をもって物を一定期間占有したとき、その物の所有権を取得することができるという時効の制度である(民法第162条)。 占有を開始した時点において自己の物であると信じ、そう信じるにつき無過失(善意かつ無過失)であれば、10年間の時効期間の経過により所有権を取得することができ、これを短期取得時効という(民法第162条第2項)。 これに対して、占有を開始した時点において悪意または有過失であれば、20年間の時効期間の経過により所有権を取得することができ、これを長期取得時効という。 短期取得時効の成立要件は次のとおりである。 (地上権・賃借権の取得時効については、所有権以外の財産権の取得時効へ) 1.物を占有すること 物とは原則的に「他人の物」であるが、「自分の物」であってもよい。時効は、そもそも継続した事実状態と法律関係を一致させようとする法制度であるため、自分の物を長期間占有したという継続した事実状態を主張することは当然に可能である(判例)。また、物とは国の財産であってもよい(例えば使用が廃止された国有水路など)。 物とは不動産でも動産でもよいが、動産については即時取得の制度が適用されるので、通常は動産について取得時効が問題になることはあまり考えられない。 2.10年間の時効期間が経過すること 占有が10年継続する必要がある。占有者が占有を中止したり、他人によって占有を奪われた場合には、その時点で時効の進行は中断する(つまり振り出しに戻る)。 また時効期間の計算では、占有を実際に開始した時点から起算する必要があり、占有の途中から起算することは許されないとするのが判例である。 3.平穏かつ公然に占有すること 通常は平穏かつ公然に占有しているものと推定されるのであまり問題とならない。真の所有権者であると主張する者が占有者に抗議したとしても「平穏な占有」である。 4.所有の意思をもって占有すること 所有権者と同様に物を支配する意思をもって占有することが必要である。土地賃貸借契約によって占有する場合には、その占有はあくまで賃借人としての占有にすぎないので、原則として「所有の意思」をもってする占有とはならない。 5.占有の始めにおいて善意かつ無過失であること 実際に占有を開始した時点において自己の不動産であると信じ、そう信じるについて過失がないことが必要である。ただし、占有の途中で自己の不動産ではないと気付いたとしても問題にはならない(あくまで占有開始時点で善意・無過失であればよい)。

長期取得時効

取得時効とは、所有の意思をもって物を一定期間占有したとき、その物の所有権を取得することができるという時効の制度である(民法第162条)。 占有を開始した時点において自己の物であると信じ、そう信じるにつき無過失(善意かつ無過失)であれば、10年間の時効期間の経過により所有権を取得することができる。これを短期取得時効という(民法第162条第2項)。 これに対して、占有を開始した時点において自己の物でないことを知り、または過失によって知らない場合(つまり悪意または有過失の場合)には、20年間の時効期間の経過により所有権を取得することができ、これを長期取得時効という(民法第162条第1項)。 長期取得時効の成立要件は、ほぼ短期取得時効の成立要件と共通であるが、次のとおりである。 (なお地上権・賃借権の取得時効については、所有権以外の財産権の取得時効へ) 1.物を占有すること 物とは原則的に「他人の物」であるが、「自分の物」であってもよい。時効はそもそも、継続した事実状態と法律関係を一致させようとする法制度であるので、自分の物を長期間占有したという継続した事実状態を主張することは当然に可能である(判例)。また物とは国の財産であってもよい(例えば使用が廃止された国有水路など)。 物とは不動産でも動産でもよいが、動産については即時取得の制度が適用されるので、通常は動産について取得時効が問題になることはあまり考えられない。 2.20年間の時効期間が経過すること 占有が20年継続する必要がある。占有者が占有を中止したり、他人によって占有を奪われた場合には、その時点で時効の進行は中断する(つまり振り出しに戻る)。 また時効期間の計算では、占有を実際に開始した時点から起算する必要があり、占有の途中から起算することは許されないとするのが判例である。 3.平穏かつ公然に占有すること 通常は、平穏かつ公然に占有しているものと推定されるのであまり問題とならない。真の所有権者であると主張する者が占有者に抗議したとしても「平穏な占有」である。また、占有者が自己の物でないと知っていても「平穏な占有」である。 4.所有の意思をもって占有すること 所有権者と同様に物を支配する意思をもって占有することが必要である。土地賃貸借契約によって占有する場合には、その占有はあくまで賃借人としての占有に過ぎないので、原則として「所有の意思」をもってする占有とはならない。

金銭債権

金銭の支払いを受けることを目的とした債権をいう。 例えば、売掛金、貸金、不動産賃料、預金などはすべて金銭債権である。 金銭債権を流動化する手法(債権を早期に現金化する手法でもある)として、売掛債権、貸金債権、不動産賃料債権などを信託し、その受益権を金融商品として販売することが行なわれている。住宅ローン債権の流動化も、その一つである。 金銭債権は特約がない限り、貨幣価値の変動を顧慮する必要はなく(ただし一般的に利息の負担を伴う)、不可抗力による履行遅延が免責されないなどの特徴があるが、その特徴は金銭債権を裏付けにした金融商品にも反映されることとなる。

消滅時効

一定期間、権利を行使しない状態が継続する場合に、債権などの権利が消滅するという定め。 消滅時効が完成するまでの期間は、権利の性質や権利行使しない事情に応じて異なる。主な権利の消滅時効完成期間は、次のとおりである。 1)債権 ・権利行使できることを知った時から5年 ・権利行使できる時から10年 2)債権または所有権以外の財産権については、権利を行使できる時から20年 3)不法行為に基づく損害賠償請求権 ・損害及び加害者を知った時から3年 ・不法行為の時から20年 4)人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権(特例) ・損害および加害者を知った時から5年(通常3年の特例) ・権利行使できる時(債務不履行の始期)から20年(通常10年の特例) 5)定期金債権 ・権利行使できることを知った時から10年 ・権利行使できる時から20年 なお、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)前まで、職業別の短期時効消滅および商事時効が定められていたが、これらの定めは改正によって削除され、債権の消滅時効に統合・整理された。

時効の更新事由

進行していた時効の効力を失わせる事実や行為。時効の更新事由が発生すれば、時効の完成が猶予され、事由が終了した時から新たに進行を始める。 時効の更新事由には次の3種類がある。 1.裁判上の請求等 「裁判上の請求」「支払督促」「和解又は調停(法律に基づくもの)」「破産手続参加・再生手続参加・更生手続参加」によって時効の完成が猶予される。そして、これらによって権利が確定し事由が終了したときから、時効は新たに進行を始める。 2.強制執行等 「強制執行」「担保権の実行」「担保権の実行としての競売」「財産開示手続」 によって時効の完成が猶予される。そして、これらによって権利が確定し事由が終了したときから、時効は新たに進行を始める。ただし、申立の取り下げまたは法律の規定による取消による事由の終了の場合には時効の進行が継続する。 3.承認  債務者が権利を承認したときには、そのときから新たに時効が進行する。この「権利の承認」とは、たとえば、支払猶予の要請、利息の支払い、債務の一部弁済などである。 また、「仮差押」「仮処分」「催告」「協議を行なう旨の合意」があったときには、それぞれの事由に応じて定められた一定の期間、時効は完成しない。