動産とは「不動産以外の物」のことである(民法第86条第2項)。
そして不動産とは「土地及びその定着物」とされているので、動産とは「土地及びその定着物ではない物」ということができる。
特に重要なのは、不動産に付属させられている動産(例えば家屋に取り付けられているエアコンなど)である。このような動産は「従物(じゅうぶつ)」に該当し、不動産実務でよく問題となる(詳しくは従物、付加一体物へ)。
不動産
不動産とは「土地及びその定着物」のことである(民法第86条第1項)。
定着物とは、土地の上に定着した物であり、具体的には、建物、樹木、移動困難な庭石などである。また土砂は土地そのものである。
定着物
定着物とは、土地の上に定着した物をいう。
具体的には、建物、樹木、未分離の果実、移動困難な庭石などが定着物である。なお土砂は土地そのものであり、定着物ではない。
定着物は、土地から分離することができないので、原則として定着物は土地の所有権に吸収され、土地の取引とともに取引され、土地と法律的運命をともにすることに最大の特徴がある。
ただし、この例外として次のような定着物がある
1.建物
定着物のうち、建物は常に土地から独立した定着物であり、独立して取引の対象となる。
ただし建築中の建物は、土地から独立した定着物ではない(詳しくは建物へ)。
2.立木(りゅうぼく)法により登記された立木
定着物のうち、立木法により登記された立木(注:立木とは樹木の集団のこと)は、建物と同様に、土地から独立した定着物となる。
3.果実、桑葉、立木法により登記されていない立木など
これらはすべて定着物であるが、明認方法を施すことにより、土地から分離して取引することができる。
エアコン
室内の空気温度・湿度を調整する設備。英語のAir conditionerを略した和製語。
エアコンは、冷媒ガスを循環させ、圧縮することによる放熱と減圧することによる吸熱を交互に繰り返すによって、冷媒ガスと接触する空気を暖め・冷やすしくみである。この暖め・冷やす装置が熱交換器であるが、一方を室内に他方を室外に置く(室内機・室外機)ことによって、室内を冷暖房する。エアコンが働くのは冷媒ガスが熱を運搬しているからであって、空気は室内外を出入りしてはいない。
家庭用エアコンの方式には、室内機と室外機を分離してダクトで繋ぐセパレート型と、両者を一体化して窓の内外に置く窓付け型(窓付けエアコン)とがあるが、広く普及しているのはセパレート型エアコンである。
なお、かつて冷媒ガスとしてフロンガスが使われていたが、オゾン層を破壊することが判明してその使用は禁止されている。また、その代替品(代替フロン)も温室効果ガスのひとつであることから、ノンフロン物質の使用が始まっている。
従物
主物に附属せしめられた物のことを「従物」という(民法第87条第1項)。
例えば、建物が主物、建物に取り付けられたエアコンは従物である。判例に現れた従物の例としては、建物に対する畳・建具、宅地に対する石灯籠・取り外し可能な庭石などがある。
従物については、次の点が問題となる。
1.主物の売買
従物は「主物の処分にしたがう」(民法第87条第2項)とされているので、通常は、主物を売買すれば、当然に従物も売買されることになる。ただし、売買の当事者がこれと異なる合意をすれば、従物と主物を切り離して売買することが可能である。
2.主物の登記
主物が登記されれば、その登記により主物と従物の両方の物権変動が公示されたことになる。従って、建物が登記されれば、附属建物である物置が未登記であっても、登記の対抗力は附属建物である物置に及ぶ。
3.抵当権の設定
抵当権を設定した当時において、すでに主物に附属せしめられていた従物には、抵当権の効力が及ぶ。しかし抵当権設定後に附属せしめられた従物については解釈が分かれている。
(詳しくは付加一体物へ)
4.従たる権利
「従物は主物の処分にしたがう」という民法第87条第2項は、物と権利との関係にも類推適用されている。例えば、借地上の建物が売買される場合には、その建物とともに借地権も売買される。このように、主物に附属せしめられた権利を「従たる権利」という。
付加一体物
抵当権の効力は「その目的である不動産に付加して一体となっている物」に及ぶとしており、これを通常「付加一体物」と呼んでいる(民法第370条)。 この付加一体物とは、具体的には、土地の附合物、建物の附合物、建物の従物、土地の従物である。 1.附合物 附合物とは不動産に附合した動産をいう(民法第242条)。
具体的には、分離できない造作は建物の附合物であり、取外しの困難な庭石は土地の附合物である。従って、附合物は「構成部分」といい換えることもできる。 なお、権原のある者が附合させた物は、附合物であっても、抵当権の効力は及ばない。 2.従物 主物に附属せしめられた物のことを「従物」という(民法第87条第1項)。
例えば、建物に対する畳・建具、宅地に対する石灯籠・取外し可能な庭石などが従物である。 従物は、本来、付加一体物に含まれないと考えられていたが、不動産の与信能力を高めようとする社会的要請から、次第に従物も付加一体物に含めるとする解釈が主流となり、現在に至っている。 なお、抵当権設定後に付加された従物については、かつて判例は抵当権の効力が及ばないとしていたが、最近では抵当権の効力が及ぶとする判例も見られるようになっている。 3.従たる権利 借地上の建物に対する土地賃借権のように、主物に附属せしめられた権利を「従たる権利」と呼んでいる(詳しくは従たる権利へ)。判例は、抵当権の効力は当然にこの従たる権利にも及ぶとする。