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強迫による意思表示
読み:きょうはくによるいしひょうじ

強迫とは、他人に害悪を告知し、他人に畏怖を与えることにより、他人に真意に反した意思表示を行なわせようとする行為である。強迫を受けた者が行なった意思表示は、取り消すことができる(民法第96条第1項)。

強迫とは、具体的には「取引をしないとひどい目に遭わせる」などと害悪を告知して、畏怖を感じさせる場合を指す。ただし、害悪の内容が法律的に正当なものであっても、強迫に該当する場合がある(例えば、会社役員に対して「役員の不正を告発する」と告知して、畏怖を感じさせ、無理やり取引を行なおうとする場合など)。

また、強迫行為と意思表示との間には因果関係が必要とされているので、強迫行為があったとしても意思表示との間に因果関係がない場合には、その意思表示を取り消すことはできない。例えば、強迫を受けた者が畏怖を感じなかった場合には、強迫行為と意思表示の因果関係が否定される。

また、強迫により被害者が完全に意思の自由を喪失してしまった場合には、その意思表示は無効となる。例えば、軟禁状態におき、暴力をふるうなどして無理やり意思表示を行なうよう強要した場合には、もはや自由意思を喪失しているため、意思表示は無効と解釈される(昭和33年7月1日最高裁判決)。

なお、強迫により法律行為が行なわれた場合には、強迫があったことを知らない(=善意の)第三者はまったく保護されない。この点で民法は、詐欺の被害者よりも、強迫の被害者をよりいっそう保護しているということができる。
(「詐欺における第三者保護」を参照のこと)

なお、強迫は取引の当事者が行なう場合だけでなく、当事者以外の者が行なう場合もあるが、このような第三者による強迫の場合でも、強迫を受けた者が行なった意思表示は、取り消すことができる(民法第96条第1項)。

強迫

他人に害悪を告知し、他人に畏怖を与えることにより、他人に真意に反した意思表示を行なわせようとする行為である。 (詳しくは強迫による意思表示へ)

意思表示

一定の法律効果を欲するという意思を外部に表示することである。 意思表示は次の3つの部分から構成されている。 1.内心的効果意思 具体的にある法律効果を意欲する意思のこと。例えば、店頭で品物を買おうと意欲する意思が内心的効果意思である。 2.表示意思 内心的効果意思にもとづいて、その意思を表示しようとする意思のこと。 例えば、店頭で品物を買うために、店員にその旨を伝えようとする意思である。 (なお、表示意思を内心的効果意思に含める考え方もある) 3.表示行為 内心的効果意思を外部に表示する行為のこと。 例えば、店頭で品物を買うために、店員にその旨を告げることである。 なお、内心的効果意思のもととなった心意は「動機」と呼ばれる。例えば、品物を家族にプレゼントしようという意図が「動機」である。しかし、現在は判例・通説では「動機」は原則として、意思表示の構成要素ではないとされている。

詐欺における第三者保護

詐欺による意思表示は、本人が取り消すことができる(民法第96条第1項)。例えば、AがBの詐欺により土地の売却を行ない、土地を取得したBがその土地をCに転売した場合には、AB間の土地売買は詐欺を理由として取り消すことが可能である。 しかし、Aが土地売買を取り消した場合、その売買は初めから無効であったものとして扱われる(民法第121条本文)ので、Cは権利のないBから土地を購入したこととなり、CはAに対して土地を返還する義務を負うこととなってしまう。 これでは取引の安全が確保されないので、民法ではCが善意でかつ過失がない場合(すなわちAが詐欺にあっていたことをCが知らない場合)には、Aは取消しの効果をCに対して主張できないと定めている(民法第96条第3項)。これにより、善意のCは有効に土地の所有権を取得できることとなる。 また、第三者Cが土地の登記を備えている必要があるかどうかについては学説が対立している。有力説は、詐欺における第三者Cの保護は、詐欺にあった本人Aの犠牲において達成されるので、第三者Cは自己の権利の確保のためになすべきことをすべて行なうべきであるとして、第三者Cが自分名義の登記を取得することを要求する。 なお判例は農地売買において、第三者が仮登記を備えるべきであると判断しているが、これは特殊な事例であって、一般論ではないと解釈されている(昭和49年9月26日最高裁判決)。