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制限能力者(制限行為能力者)の詐術
読み:せいげんのうりょくしゃ(せいげんこういのうりょくしゃ)のさじゅつ

制限能力者(制限行為能力者)が詐術(さじゅつ)を用いて、契約等の相手方に対して、自分が制限能力者(制限行為能力者)ではないと誤信させたような場合には、制限(行為)能力者(およびその法定代理人保佐人補助人)は、その契約等を取り消すことができなくなる(民法第21条)。
これはそのような悪意のある制限能力者(制限行為能力者)はもはや保護に値せず、誤信した相手方の取引の安全を保護すべきであるという趣旨である。

例えば、自分が制限能力者(制限行為能力者)ではないことを証明する書類を偽造して契約の相手方に交付するというような積極的な手段を用いる場合はもちろん「詐術」に該当し、制限能力者(制限行為能力者)側の取消権は消滅する。
また、自分には相当の資産があるから信用せよと語る場合のように、他の言動と相まって相手方の誤信を強めた場合も「詐術」に該当する。

これに対して、単に制限能力者(制限行為能力者)であることを黙秘していたというだけでは「詐術」に該当しないので、制限能力者(制限行為能力者)側の取消権は存続すると解されている。

なお、民法20条により制限能力者(制限行為能力者)側の取消権が消滅するには、契約等の相手方が、制限能力者(制限行為能力者)であるという事実に気付いていなかったことが必要である。

制限能力者

行為能力を欠くために、単独で行なった法律行為を事後的に取り消すことが可能とされている者のこと。 具体的には、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人が制限能力者である。 制限能力者は、その保護者(法定代理人、成年後見人、保佐人、補助人)の同意がない場合には、有効に法律行為を行なうことができないとされている(同意を得ない法律行為は事後的に取り消すことが可能である)。

法定代理人

「法定代理人」とは、法律の規定によって定められた代理人という意味である。 これに対して、当事者同士の合意によって定められた代理人は「任意代理人」と呼ばれる。 具体的には、民法にもとづく法定代理人には次の3種類がある。 1.親権者 2.未成年後見人 3.成年後見人 1.および2.は、未成年者の法定代理人である。 また3.は、成年被後見人の法定代理人である。 このような法定代理人には、未成年者・成年被後見人の財産を管理し、法律行為を代表するという大きな権限が与えられている(民法824条、859条)。

保佐人

被保佐人に対して、保佐開始の審判のときに、家庭裁判所が職権で選任する保佐人のことである(民法第876の2条)。 保佐とは「たすける」という意味である。 保佐人は、重要な財産行為などについて同意する権限を持つ(民法12条)。

補助人

被補助人に対して、補助開始の審判のときに、家庭裁判所が職権で選任する補助人のことである(民法第876の7条)。 補助人は、家庭裁判所が必要と判断した場合には、特定の重要な財産行為などについて同意する権限を持ち、代理する権限を持つ(民法17・第876条の9)。