明治後期から昭和初期には、政治家、実業家などの別荘や邸宅が、岡本・瀬田・野毛あたりの、緑豊かで「富士山」や「多摩川」の眺望が美しい、「国分寺崖線」と呼ばれる崖の上付近に数多く建てられた。写真は、長野出身の実業家・政治家、小坂順造氏の別邸で、1937(昭和12)年に建設された。戦時中には日本画家の横山大観氏が疎開していた。
この建物には、セントラルヒーティングなど当時の最先端の設備が導入されている一方、玄関に土間が、屋根に気抜きがあるなど、長野の生家を懐かしんで模したと思われる造りも見られる。一帯に建てられた別邸の中で唯一現存し、1999(平成11)年に「旧小坂家住宅」として世田谷区指定有形文化財となった。現在は「瀬田四丁目旧小坂緑地」として公開されている。 MAP __