地形や歴史からひもとく防災情報

多摩ニュータウンをはじめとする住宅都市、
東京都多摩市の防災情報

多摩センター

多摩市は東京都多摩地域の中南部に位置し、市内には住宅地が多く、市の面積の約6割は多摩ニュータウンとして開発されています。地形は多摩川など川沿いの谷底平野と多摩丘陵に分けられます。川沿いでは大雨による浸水被害が想定されるほか、丘陵地の斜面では土砂災害のリスクもあります。多摩市では、治水対策のほか、土砂災害対策や地域の防災力向上を含めた総合的な防災対策が進められています。

INDEX

地形で見る多摩市

多摩市の土地条件図(凡例はこちら
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ

多摩市は、多摩丘陵の北端部に位置し、丘陵とその間を流れる谷底平野などにより構成されています。大規模な宅地開発やゴルフ場の造成などにより、人工の地形も広く広がっています。土地条件図を見ると、市の北部に黄色い部分と赤い斜線の部分があります。ここが多摩川によって形成された谷底平野で、黄色の部分は洪水によって土砂が堆積した「低地の微高地(河川沿いの微高地)」、赤い斜線は谷底平野に盛土された「人工地形(盛土地・埋立地)」です。 かつて、この平野部には関東北部と鎌倉を結ぶ鎌倉街道が通り、多摩川を今の関戸橋付近にあった関戸の渡しで越えていました。「聖蹟桜ヶ丘駅」周辺には関所が置かれ、関戸という地名の由来になったと言われています。

高度経済成長期以前の集落は、多摩丘陵の谷沿いに作られ、谷戸田と呼ばれる水田もありました。現在も多摩市役所や桜ヶ丘公園付近に谷戸田が残り、かつての風景を偲ぶことができます。明治時代、現在の「聖蹟桜ヶ丘駅」がある場所付近の多摩丘陵は、明治天皇の狩りに利用されました。「聖蹟桜ヶ丘駅」の名もこれに由来して付けられたものです。狩りの拠点となったのが、現在の桜ヶ丘公園がある場所付近で、ここには明治天皇の行幸を記念して建てられた旧多摩聖蹟記念館が残っています。

高度経済成長期になると、主に市の南側にあたるエリアで多摩ニュータウンの大規模な開発が始まります。多摩丘陵の丘を削り、谷を埋め、緩やかな斜面を持つ新しい街が誕生しました。土地条件図では、青い斜線とオレンジ色の部分、そしてその間に緑色や、赤い斜線が見られます。青い斜線は丘陵を削った「人工地形(切土地)」、赤い斜線は谷を埋めた「人工地形(盛土地・埋立地)」です。緑色は丘陵と谷の間にみられる「山地斜面等」、オレンジ色は「台地・段丘」を示します。

パルテノン多摩から「京王・小田急多摩センター駅」方面をみると、なだらかに下る歩道沿いにショッピング施設が並びます。桜ヶ丘公園からは緑豊かな丘陵に広がる住宅地が望めます。これらは多摩ニュータウンの象徴的な風景となっています。

多摩市防災マップ

「多摩市洪水・土砂災害ハザードマップ」(多摩市ホームページより引用)
「多摩市洪水・土砂災害ハザードマップ」(多摩市ホームページより引用)

多摩川やそこに注ぐ大栗川、乞田川が流れる多摩市では、大雨によりこれらの川が氾濫し、浸水することも考えられます。また、丘陵地の斜面では大雨時の土砂災害も懸念されます。多摩市では、これらの災害による被害予測を表示した「多摩市洪水・土砂災害ハザードマップ」を作成しています。

多摩川流域で想定規模最大の大雨が降った場合、多摩川と大栗川の間を中心に1階床上から1階の天井付近に達する浸水が想定され、一部では1階の天井を超え2階の天井付近まで浸水すると予想されています。
多摩川や大栗川沿いでは河岸浸食による建物崩壊が、多摩川沿いでは氾濫流による建物倒壊も想定されています。これらに対応するため、「多摩市洪水・土砂災害ハザードマップ」では周辺の丘陵部に避難するよう避難方向を示すとともに、避難が間に合わない時のために「聖蹟桜ヶ丘駅」周辺の建物の一部を指定緊急避難場所としています。

さらに、大栗川や乞田川周辺、丘陵の間の谷底平野でも1階の床下までの浸水が、場所によっては1階の床上から1階の天井付近までの浸水が想定されています。大栗川や乞田川周辺では氾濫流による家屋倒壊も予想されます。
また、丘陵地の斜面の一部は大雨が降った際にがけ崩れの可能性があり、土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域に指定されています。

地震による被害予測は、「多摩市地震防災マップ」で公表されています。これによると、多摩東部直下地震が発生した際に震度6強から震度6弱の揺れが予想され、多摩川や大栗川、乞田川など川沿いの一部で液状化の危険度がやや高いとされています。

多摩市の取組み

せいせきカワマチ

自然災害や社会的要因、さらには個人の要因など、さまざまなリスクによって生じる困難を乗り越える力=「レジリエンス」を高め、より豊かで安心できる暮らしを実現することを目的とした、レジリエントライフプロジェクトと呼ばれる取り組みがあります。

多摩市でも、レジリエンスライフプロジェクトに基づいた施策が展開されており、「令和サバイバー養成キャンプ」というイベントが、せいせきカワマチなどで開催されています。ここでは、集まった人々が関係を築くプログラムから始まり、段ボールテントの設置、かまどを使った炊飯など災害時に必要な技術を学べます。

また、最近は、災害時に活用できる防災アプリも増えてきましたが、高齢者などスマートフォンの扱いに不慣れな人もいます。多摩市では「防災アプリを学ぶスマホ教室」が開催されており、スマートフォンの基本操作や防災アプリの使い方などが説明されています。

多摩市の地域別概要

地域区分図(「多摩市都市計画マスタープラン【概要版】」より引用)

多摩市では、都市計画上のマスタープランにおいて、市を5つの地域に区分しています。

関戸橋からみた多摩川
関戸橋からみた多摩川

第1地域は「聖蹟桜ヶ丘駅」周辺に、第3地域は百草団地周辺に広がります。武蔵国一宮といわれる小野神社が鎮座し、鎌倉街道も通るなど、古くから発展してきた地域です。多摩川や大栗川など自然の潤いにも恵まれています。第1地域、第3地域では「聖蹟桜ヶ丘駅」周辺の拠点性を高めるともに、歴史資源や自然を活かした街づくりの方針が示されています。多摩川などで浸水が想定されることから、治水対策や災害時の避難困難者対策も進めるとされています。

桜ヶ丘公園から望む多摩市内
桜ヶ丘公園から望む多摩市内

第2地域は「永山駅」から多摩川にかけて、第4地域は「永山駅」の南西に位置しています。おおむね多摩ニュータウンの区域にあたり、計画的な街づくりが行われました。桜ヶ丘公園をはじめ公園が多く、谷戸田が残るなど緑も豊かです。第2地域、第4地域では老朽化した住宅などを更新し、耐震性を向上させるとともに、乞田川などの治水対策を進める方針が示されています。

多摩中央公園
多摩中央公園

第5地域は「多摩センター駅」周辺にあたり、多摩ニュータウンの拠点として整備されました。「多摩センター駅」周辺にはショッピング施設や公共施設、多摩中央公園などが計画的に配置されています。さらに、多摩モノレールの「町田駅」方面への延伸や公共施設を活かしたにぎわいづくりで、「多摩センター駅」周辺の拠点性を維持、向上させる方針が示されています。


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