地形や歴史からひもとく防災情報

水辺のうるおいや観光資源に恵まれた街、
東京都墨田区の防災情報

東京スカイツリー

荒川と隅田川に接する墨田区は、水の豊かな街です。両国国技館や東京スカイツリー®など、観光資源も充実しています。豊かな水は暮らしに彩りを与える一方で、防災面では注意が必要です。荒川の氾濫や台風による高潮が発生した際には、区のほぼ全てが浸水する可能性があります。しかし、水害は事前にある程度の予測・対策ができるため、区では事前の対策と啓蒙に力を入れています。

INDEX

地形で見る墨田区

墨田区の土地条件図(凡例はこちら
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ

墨田区は、東側に荒川、西側に隅田川がある水に囲まれた環境で、江東デルタ地帯と呼ばれる地域に属しています。また、区内には旧中川、北十間川、大横川など多くの河川が流れていることも特徴です。 土地条件図を見ると、エリアのほぼ全てが白地に斜線の「人工地形(盛土地・埋立地)」となっています。これは低地に土を盛って造成した平坦地や、水部を埋めた平坦地です。「盛土地・埋立地」の一般的な災害リスクとしては、高さが十分でない場合には、浸水のリスクや山地や台地では降雨・地震により地盤崩壊のリスク、低地では液状化のリスクがあり、海や湖沼・河川を埋め立てた場所では特に注意が必要とされています。

また、東墨田3丁目、東向島4丁目、東向島1丁目、亀戸3丁目などの一部に黄色く塗られた「低地の微高地」がみられます。これは洪水時に運ばれた砂等が、流路沿いに堆積してできた「自然堤防」です。周りと比較すると少しだけ標高が高くなっています。

上記からもわかるように、墨田区は全体的に低地です。標高は、最高でも4m、最低はマイナス1.2mとなっており、海抜ゼロメートル地帯(満潮時の海面よりも標高が低い土地)です。水に囲まれたエリアであることから河川が氾濫することで起こる洪水や高潮による浸水には特に注意が必要です。

では、地震に対する耐性はどうでしょうか。東京都不燃化ポータルサイト「地震に関する地域危険度測定調査」によると、墨田区は全てのエリアが「沖積低地」に分類されています。「沖積低地」とは、形成された年代が新しく、河川や海の働きで運ばれた泥や砂、石で作られた沖積層を中心とした地盤です。強度は軟弱で地震の揺れが増幅されやすい危険度の高いエリアとなっており、区では耐震化、不燃化の対策を推進しています。

墨田区防災マップ

「墨田区水害ハザードマップ(荒川が氾濫した場合の浸水想定区域図(想定最大規模)早期の立退き避難が必要な区域)」(墨田区ホームページより引用)
「墨田区水害ハザードマップ(荒川が氾濫した場合の浸水想定区域図(想定最大規模)早期の立退き避難が必要な区域)」(墨田区ホームページより引用)

墨田区では、洪水、高潮、雨水出水と3種類の水害をまとめた「水害ハザードマップ」、地震が発生した際の行動の仕方、避難場所などを記した「防災マップ」を公表しています。墨田区は河川に囲まれており、かつ河川よりも低い位置に街があるため、水害への備えが大切です。「水害ハザードマップ」では、墨田区の地形の特徴、水害発生の仕組み、避難場所、事前に備えておくべき物資まで、多くの情報が掲載されています。また、YouTubeの墨田区公式チャンネルには「墨田区水害ハザードマップ啓発動画」が公開されており、区では日頃からの備えを推奨しています。

洪水は大雨で河川の水位が上がり、堤防の高さを超えたり、堤防が壊れたりすることで起こる水害です。荒川が氾濫した場合の浸水の想定は区内全域にわたり、場所によっては浸水の深さが3〜5mと想定されています。これは一軒家で言うと2階までが浸水する深さです。また、荒川と接する「鐘ヶ淵駅」周辺ではさらに深い浸水が想定されています。浸水の継続時間は多くの場所で2週間以上続く可能性が示されています。

高潮は台風などの発達した低気圧により気圧が下がることで海面が吸い上げられる効果と、強風によって海水が吹き付けられる効果により海面が異常に上昇する現象です。中心気圧910hPa、最大旋衡風速半径75km、移動速度73km/hの台風が上陸した場合、区のほぼ全域が浸水し、多くのエリアで1m以上の浸水が想定されています。

水害は、天気予報などからある程度の予想が可能です。台風の場合、区は上陸5日前から情報収集を開始し、概ね2日前までに避難所開設を決定しています。区では、避難行動を開始するタイミングなど、事前に確認をしておくことを呼び掛けています。

墨田区の取組み

墨田区土のうステーション(墨田区ホームページより引用)

浸水被害が大きく想定される墨田区では、菊川公園や若宮公園など区内12箇所の公園などに「土のうステーション」を設置しています。墨田区に暮らす区民および個人事業者が利用可能です。特に申請の必要はなく、大雨時に自由に持ち出して良いことになっています。玄関前などに土のうを積み重ねておくことで、家屋などの浸水被害を軽減できます。

墨田区役所の防災課では地震や水害に関して、日頃の備えや避難方法を解説した動画を作成しています。区のホームページやYouTubeで視聴が可能です。地震や水害に関する知識や対策方法が丁寧に説明されています。また、自分の家の周りや学校などをピンポイントで設定し自分だけのオリジナルハザードマップの作成ができる「Web版水害ハザードマップ」も用意されています。

墨田区の地域別概要

地域区分図(「墨田区都市計画マスタープラン」より引用)

墨田区は、都市計画上のマスタープランにおいて、区を6地域に区分しています。

向島の墨堤の桜
向島の墨堤の桜

区の北部に位置する「堤通・墨田・八広地域」「向島・京島・押上地域」「東墨田・立花・文花地域」は、盛んなものづくりを支える工場、東京スカイツリー®を中心とした商業地などがそれぞれに特徴のある地域で構成されています。木造密集市街地が広がる街区もあり、震災時の倒壊や火災を防ぐための耐震整備、不燃化の推進が必要となっています。

錦糸町駅
錦糸町駅

「業平・錦糸・江東橋地域」の「錦糸町駅」周辺は、古くから商業集積が進み、繁華街が形成されています。区民の憩いの場である錦糸公園、宿泊施設や大規模商業施設、音楽ホール、総合体育館などが立地し、交通利便性も高い地区です。 耐火建築物の割合は高いですが、築30年以上の中高層建築物が多く、防災上の対策も必要です。

両国国技館の相撲のぼり旗
両国国技館の相撲のぼり旗

「吾妻橋・本所・両国地域」は、両国国技館のある両国や、浅草とつながる吾妻橋周辺を含み、多くの観光客が訪れる地域です。「緑・立川・菊川地域」は、墨田区の南端に位置し、区内では唯一川を隔てないで隣接区(江東区)と接しています。両地域共に、不燃化が進んでいますが、耐震性能の低い建築物や狭小宅地などもあり、災害時の建物倒壊や避難経路の閉塞等への対策が必要とされています。また、観光客の安全対策として、緊急時の対応や帰宅困難者などの対策も推進されています。


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