地形や歴史からひもとく防災情報

東京タワー、六本木ヒルズ、麻布台ヒルズも区内に擁する、
東京都港区の防災対策

東京タワー・芝公園

1947(昭和22)年の誕生の際、東京港の発展に新区の成長を願うという意味を込め、名がつけられた港区。そこには、東京タワー、六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズや、オフィスビルも多く立ち並びます。地形は、台地、低地、埋立地で構成されており、東京湾や古川といった水に近いエリアでは、洪水や高潮による浸水リスク、台地と低地の境目では土砂災害に警戒が必要です。港区では様々な災害対策を行っています。

INDEX

地形で見る港区

港区の土地条件図(凡例はこちら
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ

港区は、北西一帯の高台地と、南東の東京湾に面した低地、芝浦海浜の埋立地からなります。土地の高低差が大きく、港区は東京23区の中でも最も起伏に富んだ地形です。そのため坂も多く、大名屋敷や暮らしていた人々の名前にちなんだ坂も多く存在します。

土地条件図でも、オレンジ色の「台地・段丘」、黄緑色の低地の「微高地(砂州・砂堆・砂丘)」、白地に赤い斜線の切土地や埋立地などの「人工地形」が確認できます。「品川駅」周辺は「盛土地・埋立地」、お台場周辺のエリアは「高い盛土地」です。

オレンジ色の「台地・段丘」は固まって存在しているのではなく、樹枝状に隙間が多く空いているのがわかります。その理由はこのエリアを流れる湧水によるものです。自然教育園の沢のひょうたん池をはじめ、東京メトロ日比谷線「広尾駅」周辺や有栖川宮記念公園など水が豊かに湧いていた地域は低地となっています。
隙間が多いということは、高低差のある場所も多いということです。高地と低地の境では土石流や急傾斜地の崩壊、地滑りといった土砂災害に注意が必要です。港区では、「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」を示し、注意喚起を行っています。

区の中央部には、西東に古川(金杉川)が流れ、その流域には平地部が広がっています。古川以外にも、港区には溜池や川がありましたが、時代の変遷とともに埋め立てが行われ、明治時代の半ばにはほぼ姿を消します。排水路として整備されていた汐留川は戦後に、その他の河川も関東大震災をきっかけに埋め立てられました。川や溜池周辺の低地は「谷底低地」に分類されています。谷底での堆積物で形成されているため、一般的には台地と比較すると地震に弱いとされています。

港区防災マップ

港区津波ハザードマップ(港区ホームページより引用)
港区津波ハザードマップ(港区ホームページより引用)

港区では、「津波ハザードマップ」「液状化マップ」「揺れやすさマップ」「浸水ハザードマップ」「土砂災害ハザードマップ」を公表しています。
「津波ハザードマップ」では、防潮施設が健全に機能し、液状化による沈下が発生した場合と防潮施設が損傷等により機能せず、液状化により沈下が発生した場合の2パターンで被害想定を行なっています。元禄関東地震(M8.5)クラスの地震が発生した場合の浸水予想を示しています。東京湾内湾に津波警報、大津波報が発令された場合、遅くとも第一波が到来すると予想される約70分後までには高台や、地図上に記載されている津波避難ビル等や高層建物の3階以上の階層に避難をすることが必要とされています。また、地震発生から約150分後には、第一波よりも津波高さが高い第二波の襲来が見込まれるなど、繰り返し襲来する津波への注意喚起が記されています。

また、震災発生時における港区全体の人的被害の想定では、最大となる要因は「ゆれ液状化建物被害」と予想されています。液状化とは、地震により地盤が一時的に液体状になる現象のことです。「液状化マップ」によると、特に海側の埋立地を中心に、液状化の可能性が高い地点が含まれるエリアなどが示されています。

想定し得る最大規模の降雨(総雨量690mm・時間最大雨量153mm)をもとに作られた「浸水ハザードマップ」では、主に東側の低地部や古川沿いにおいて浸水被害発生の可能性を示しており、場所によっては、3m以上の浸水被害が発生します。また、港区の「浸水ハザードマップ」には、区民の自主的な浸水防止対応として土のうを利用できるよう、無料提供場所も書かれています。

港区の取り組み

港区防災アプリ

港区では災害に備えて様々な取り組みを行なっています。ペットと同伴で避難できる施設の設置・広報や、震災時にトイレが使えなくなることに備えた全世帯への世帯人数分の一人当たり20回分の携帯トイレの無償配布、設置を希望する共同住宅向けに保存水などの非常用品の入ったエレベーター用防災チェアやキャビネットの無償配付などがあります。

他にも、防災行政無線の放送が自宅で聞こえない状況に備え、港区が発信する防災行政無線で放送する内容を聞ける「防災ラジオ」の有償配布や、「港区防災アプリ」の配信・「港区防災ポータルサイト」の公開も行っています。区内で発表中の気象情報・地震情報、避難所・帰宅困難者一時滞在施設情報や公共交通機関情報、ライフライン情報、道路規制情報など、必要な情報にアクセスすることが可能です。

港区の地域別概要

地域区分図(「港区まちづくりマスタープラン」より引用)

港区では、都市計画上のマスタープランにおいて、区を5つの地域に区分しています。

東京タワー
東京タワー

「芝地区」は5世紀前半に作られたとされる芝丸山古墳が見つかっており、古くから人の営みが行われてきたことがわかります。江戸時代には町人街、明治時代には日本最初の鉄道が開通しました。
防災面では、新橋地域や臨海部などは液状化に対する対策、また、高層建築の多いエリアでは、長周期地震動による被害の軽減、エレベーター内への閉じ込め対策、備蓄倉庫の確保が必要です。

麻布十番の街並み
麻布十番の街並み

「麻布地区」は江戸時代には大名屋敷や寺社が並び、緑豊かな街並みが形成されていた場所です。現在では日本屈指の高級住宅街となっています。防災面では、急傾斜地崩壊のリスクが高いことが挙げられます。また、「赤坂地区」は約3万年前の旧石器時代から人が暮らしていた痕跡が残っているエリアで、緑地が多いことも特徴です。防災面では、昼間人口密度が高いため、帰宅困難者の一時退避場所などの設置や防災備蓄の拡充が求められています。

レインボーブリッジとお台場周辺の風景(芝浦ふ頭より)
レインボーブリッジとお台場周辺の風景(芝浦ふ頭より)

「高輪地区」の古川沿い一帯や台地の谷部には、液状化や浸水リスクがあります。古川の地下調整池の適切な管理や老朽化護岸改修、橋りょうの耐震化といった治水機能の向上が求められています。また、区の東側にある「芝浦港南地区」には、液状化の可能性が高い地域が数多く含まれています。そのため、建物の設計段階において詳細な地盤調査を行い、適切な対策を講じています。また、臨海部を中心に津波の被害を低減させるため、防潮施設の機能性向上、津波避難ビル等の指定も進めています。


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