地形や歴史からひもとく防災情報

隅田川と荒川に囲まれ豊かな水辺と緑が身近な街、
東京都江東区の防災情報

荒川・砂町水辺公園

東京湾に注ぐ河川のデルタ地帯の一部で、現在は隅田川と荒川に囲まれている江東区は、豊かな水辺と緑に囲まれた「水彩都市」です。一方で、過去の工業化に伴う地下水のくみ上げにより地盤沈下が発生し、区内には海抜ゼロメートル地帯が広く分布しています。江東区では、高い堤防の設置やポンプによる河川水位の調整などの治水対策を通じて、安全への取り組みを継続しています。

INDEX

地形で見る江東区

江東区の土地条件図(凡例はこちら
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ

江東区は東京都23区の南東部、東京湾に注ぐ河川のデルタ地帯の一部で、現在は隅田川と荒川に囲まれています。江戸時代までは所々に小島があるだけのエリアでした。江戸時代以降、江戸城城下の拡大と新田開発を目的として埋立てが始まります。東京メトロ東西線のあたりから東京湾に接する南側は、江戸時代から昭和にかけて埋め立てが行われました。
区の両側を流れる隅田川と荒川以外にも、小名木川や、大横川、平久川、横十間川といった複数の運河も流れています。

土地条件図を見ると、ほぼ全域が白地に赤い斜線の「人工地形」となっています。その大半が、「盛土地・埋立地」です。これは低地に土を盛って造成した平坦地や、水部を埋めた平坦地です。高さが十分でない場合には浸水のリスク、また、低地では液状化のリスクがあり、海や湖沼・河川を埋め立てた場所では特に注意とされてる地形です。また、豊洲、有明、新木場、海の森などは「高い盛土地」となっており、約2m以上盛土した人工造成地です。

江東区では、大正期から昭和期にかけて、工業化に伴う地下水のくみ上げにより、地盤沈下が起こりました。地盤沈下とは、地下水を大量にくみ上げることによって、地下水位の下降と地層の収縮をもたらし、地表面が沈んでいく現象のことです。これにより江東区では、満潮時の海面よりも低い、海抜ゼロメートル地帯が広く分布するようになりました。東京都による対策がなされ、現在の江東区は、周囲に高い堤防で囲まれ、内部の河川水位はポンプで調整されるなど、治水対策が施されています。その結果、1965(昭和40)年以降、洪水や高潮の氾濫は発生していません。一方で、近年における台風の巨大化や集中豪雨など、大規模な災害リスクもあるため、引き続きの注意が必要です。

江東区防災マップ

「江東区洪水ハザードマップ【洪水氾濫】」(江東区ホームページより引用)
「江東区洪水ハザードマップ【洪水氾濫】」(江東区ホームページより引用)

江東区では、3種類の水害ハザードマップを公表しています。「江東区洪水ハザードマップ【洪水氾濫】」は、大雨が降り続いたことによる荒川の水位上昇が引き起こす洪水氾濫が発生した時の災害避難地図です。

亀戸、大島、東砂、北砂、南砂といったエリアは、荒川堤防が決壊した際に甚大な被害が予想されています。浸水した場合に想定される水深が2階建て家屋を飲み込む5m以上となるエリアも点在しており、浸水の継続時間も2週間以上となる可能性があります。一方で区の南側、緑の太字で囲まれたエリアは洪水の影響を受けない想定です。地盤が高い、浸水しない区域、公園・広場があるといった理由から避難地区に指定されています。

江東区では伊勢湾台風級の高潮でも耐えられるように備えられた堤防と水門を整備していますが、「江東区高潮ハザードマップ【高潮氾濫】」では、室戸台風級910hPa(日本に上陸した既住最大規模の台風)・伊勢湾台風級73km/hの移動速度の台風による 高潮が発生した場合の被害想定が記されています。「江東区洪水ハザードマップ【洪水氾濫】」と同様に区の北側、特に北東側の被害想定が大きく、注意が必要です。

ハザードマップの他に、区では「江東区洪水高潮ブックレット」を作成しています。水害時の避難情報だけでなく、江東区の治水対策の歴史や洪水氾濫、高潮氾濫のメカニズムなども掲載されています。ハザードマップとセットで1家に1冊常備し、定期的に目を通して、災害に対する意識の向上に努めましょう。また、「江東区洪水高潮ブックレット」、「江東区洪水ハザードマップ」、「江東区高潮ハザードマップ」の内容をわかりやすく解説した動画もYouTubeで公開しています。

江東区の取組み

「我が家の水害リスク診断書」イメージ(「東京都防災ホームページ」より引用)

江東区では、スマートフォン用アプリケーション「江東区防災マップ」を配信しています。電話回線の乱れや通信環境に関係なく使用できるのが特長で、オフラインで最寄りの避難所や避難場所、給水施設などを確認できます。他にも、「江東区防災関連X」や「こうとう安全メール」などによる情報発信を行っています。

また、区内で特にリスクが高いと想定される世帯に「我が家の水害リスク診断書」が配布されています。これは、東京都と江東5区(墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区)が連携して取り組んでいるもので、一世帯ごとの浸水の深さや浸水の継続時間、推奨される行動などが記載されています。住所ごとに水害リスクを具体的な数値で判定しているため、各家庭における対策に非常に有効な内容となっています。該当する場合は、必ず確認するようにしましょう。

江東区の地域別概要

江東区の地区区分(「江東区都市計画マスタープラン2022」を引用の上加工)

江東区では、都市計画上のマスタープランにおいて、区を7地区に区分しています。

木場公園
木場公園

「深川北部地区」には、清澄庭園や猿江恩賜公園など、豊かな緑のあるスポットが点在します。東京都現代美術館の周辺では、近年リノベーション物件やカフェが増加しています。防災面では、一部地域に老朽木造住宅が密集しており、耐震化や不燃化の推進が必要とされています。永代橋が景観のランドマークとなっている「深川南部地区」は、木場公園や大型商業施設を横断的に活用した防災機能の強化を図っています。

横十間川親水公園水上アスレチック
横十間川親水公園水上アスレチック

「城東北部地区」は亀戸天神社をはじめ、香取神社や常光寺、亀戸梅屋敷など歴史・文化資源が多いエリアです。一部地域には老朽木造住宅が密集しており、耐震化や不燃化の推進が求められています。また、水害対策として、荒川下流部における高規格堤防の整備が進行中です。横十間川の和船乗船や富賀岡八幡宮などの地域資源を有する「城東南部地区」では、荒川・砂町水辺公園周辺で国と連携した高規格堤防の整備が進められています。

東京ビッグサイト
東京ビッグサイト

「南部地区西」「南部地区東」「湾岸地区」は区の南側に位置します。豊洲や有明、東雲などにはタワーマンションが多く立地しており、大規模修繕や防災対策の検討が課題です。東京都中央卸売市場豊洲市場や東京国際展示場東京ビッグサイトといった、区内外の多くの人に利用される施設もあり、避難面での対策も重要となります。また、浸水が想定されるエリアもあり、安全に避難できる建築物の整備など、リスクを低減させる対策が求められています。


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