多摩川に面する平坦な地形にコンパクトに広がる街、
東京都狛江市の防災情報

地形で見る狛江市

狛江市の土地条件図（凡例はこちら）
出典：国土交通省 不動産情報ライブラリ

狛江市は多摩川の左岸、武蔵野台地の南端部に位置しています。狛江市の南側には多摩川が、北側には野川が流れています。かつての野川は、狛江の中心部を南下するように流れていましたが、昭和40年代に現流路に改修されました。現在、野川の旧流路の一部は野川緑地公園として整備されています。地形は標高約20メートルのほぼ平坦な土地で構成されていますが、昔の野川や清水川の流路、さらに多摩川沿いは、やや低くなった低地が広がっています。

土地条件図でも、オレンジ色の「台地・段丘」や白地に赤い斜線の「人工地形（盛土地・埋立地）」が確認できます。「台地・段丘」は武蔵野台地、「人工地形（盛土地・埋立地）」は 多摩川が作った平野に盛土された場所を示します。
かつては台地と平野の境で湧水が多くみられました。「狛江駅」付近の弁財天池もそのひとつです。今は湧き水はなくなっていますが、井戸から水をくみ上げ、池が維持されています。

狛江では、近くの川や湧水から水が得やすく、洪水の危険が少ない台地上を中心に集落が発展しました。例えば、「狛江駅」近くの遺跡では縄文時代の住居跡が数多く発掘され、弥生時代の墓地も見つかっています。古墳時代になると、「狛江百塚」と呼ばれるほど多くの古墳が築かれました。現在、その多くは失われてしまいましたが、亀塚古墳や猪方小川塚古墳などが残っています。都心近郊の住宅地として成長する中で、平野部にも住宅が増えました。こうした中、1974（昭和49）年に大規模な水害が発生しました。多摩川の堤防が決壊し、多くの住宅が流される被害が生じました。テレビドラマ『岸辺のアルバム』でも、この水害がモチーフとして取り扱われています。1999（平成11）年には、災害を後世に伝えるため「多摩川決壊の碑」が設置されました。

狛江市防災マップ

「多摩川洪水ハザードマップ（多摩川氾濫版）」（狛江市ホームページより引用）

多摩川と野川に挟まれた狛江市では、これらの河川の氾濫による浸水被害が想定されます。「狛江市洪水ハザードマップ」は「多摩川氾濫版」と「野川氾濫版」の2種類が作成されています。「多摩川氾濫版」では、市の南から西側の広い範囲で1階床上から1階天井まで浸水するほか、一部では1階天井を超え2階天井近くまで浸水し、その浸水は半日から1日続くと予想されています。また、多摩川沿いの一部や「狛江駅」の東側で、氾濫流による家屋流失も想定されています。とくに多摩川沿いでは河岸浸食により、木造以外の建物も流出する可能性があるとされています。1階天井を超える浸水被害や氾濫流による家屋流失が予想されるエリアは、おおむね多摩川沿いの低地や、多摩川と野川の旧河道に一致します。

「野川氾濫版」では、岩戸南二丁目から西野川一丁目付近の野川旧河道沿いに、1階床上から1階天井にかけての浸水が予想されています。この浸水は半日程度、場所によっては1日程度継続すると見込まれます。また、大雨の際は、下水道などから水があふれる内水による浸水の可能性もあります。狛江市では「内水ハザードマップ」が公表されており、浸水が想定される地域を確認できます。これによると、多摩川沿いや野川旧河道周辺の一部を中心に浸水が予想されています。

狛江市の地震による被害は、東京都が作成した「首都直下地震等による東京の被害想定」や「東京の液状化予測図 令和5年度改訂版」で公表されています。これらによると、東京湾北部地震や多摩直下地震が発生した際に震度6弱の揺れが予想され、多摩川沿いや野川旧河道周辺の一部では液状化の可能性もあるとされています。

狛江市の取組み

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災害時に冷静に行動するためには、日常時と災害時の垣根を取り払うフェーズフリーという考え方が有効です。狛江市では、「狛江市フェーズフリー防災レシピコンテスト」が開催されました。対象は市内の小学生で、備蓄できる食品を使い、電気・ガス・水道などのライフラインが止まった状態で、制限時間内で作れるレシピを考案するコンテストです。応募作品は、広報などで紹介され、小学生だけでなく、市民の防災意識向上につながることを目指しています。

また、狛江市では、市民の防災用品備蓄を促すため、防災カタログギフト事業が実施されています。市内の高齢者や未就学児、妊婦が対象で、カタログに掲載されている防災用品のうち1個をもらうことができます。日頃からの備えについて、考えるきっかけづくりに役立つ取り組みとなっています。

狛江市の地域別概要

重点地域別構想の対象（「狛江市都市計画マスタープラン・立地適正化計画」）より引用）

狛江市では、「狛江市都市計画マスタープラン・立地適正化計画」により、市内にて特に重点的な取り組みを行う、5か所の拠点と4つのエリアを設定しています。

弁財天池

「中心拠点（狛江駅周辺）」と「地域交流拠点（喜多見駅周辺）」、「地域交流拠点（和泉多摩川駅周辺）」は小田急小田原線の各駅周辺に位置し、都市機能が集まるとともに、交通結節点になっています。一方で、弁財天池や猪方小川塚古墳、亀塚古墳といった自然や歴史も身近です。これらの拠点では、都市機能をさらに充実させながら、自然環境や歴史遺産の保全を進める方針があります。多摩川の洪水浸水想定区域では国と市が連携して多摩川堤防の管理を行うほか、一時的な避難場所を確保するとされています。

多摩川決壊の碑

「農住共存エリア」は小田急小田原線の南側と北側に分かれています。このうち、小田急小田原線の南側には土屋塚古墳など歴史を感じられるスポットが点在します。多摩川の二ヶ領宿河原堰付近は1974（昭和49）年に水害が起きた場所で、「多摩川決壊の碑」が建っています。農地の保全により緑地を維持し、災害時にはオープンスペースとして活用する方針が示されています。多摩川沿いは「防災環境形成エリア」とし、洪水に対応した施設管理を国と市が協力して行うとされています。

野川緑地公園

小田急線の北側に位置する「農住共存エリア」にも農地が点在し、野川旧河道を利用した野川緑地公園が伸びています。このエリアでも、農地の維持または公園・緑地への転換を進め、災害時の避難スペースを確保するとしています。また、水害リスクの高い野川周辺では「防災環境形成エリア」として水害対策が推進されています。