地形や歴史からひもとく防災情報

親水公園や川沿いの空間など、水辺とともにある
東京都江戸川区の防災情報

旧中川

江戸川区は、全国初の親水公園「古川親水公園」や、都内で初めてラムサール条約湿地に登録された「葛西海浜公園」などを擁する、古くから水と共生を続けてきたエリアです。豊かな水辺空間を身近に楽しめますが、荒川や江戸川など、大河川の最下流に位置するため、関東地方に大雨が降ると、その多くが江戸川区に集まります。大規模な水害のリスクもあるため、スーパー堤防の計画、整備が進められています。

INDEX

地形で見る江戸川区

江戸川区の土地条件図(凡例はこちら
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ

江戸川区は東京23区の最東端に位置し、東西約8km、南北約13kmと縦に長い形をしています。西に荒川、東に江戸川、区の中央を南北に新中川が流れるなど、豊かな水辺の環境を擁しています。区内全域が低地で、かつての地下水汲み上げによる地盤沈下の影響もあり、区面積の7割が満潮位以下の標高となるゼロメートル地帯となっています。洪水や高潮などの浸水被害のリスクが高いエリアです。

土地条件図を見ると、エリア全体が白地に破線で覆われています。これは「人工地形」を表していて、低地に土を盛って造成した平坦地や、水部を埋めた平坦地である「盛土地・埋立地」です。低地では、浸水や液状化のリスクがあります。篠崎IC付近など、所々ある黄色い箇所は、洪水時に運ばれた砂などが流路沿いに堆積してできた「自然堤防」です。河川の蛇行や氾濫によって形成された微高地となっています。洪水に対しては比較的安全ですが、大規模な洪水では浸水することがあり、縁辺部では液状化のリスクがあります。

「葛西臨海公園駅」周辺の沿岸部は、白地に斜線で表されています。これも盛土を行った「人工地形」ですが、約2m以上盛土した人工造成地の「高い盛土地」です。東京湾の埋め立てによるもので、強い地震の際には、液状化のリスクがあります。このように、江戸川区は全体に低地であり、1917(大正6)年には240人が犠牲となった高潮、1949(昭和24)年には区内の約6割が水没したキティ台風など、古くから洪水や高潮の大水害に遭っています。江戸川区内の河川では、流域の住民が安心して暮らせるよう、スーパー堤防の整備も進められています。また、区画整理事業等のまちづくりにより、防災性の強化に取り組んでいます。

江戸川区防災マップ

江戸川区水害ハザードマップ(江戸川区画像文庫より引用)
江戸川区水害ハザードマップ(江戸川区画像文庫より引用)

江戸川区に暮らす際には、「江戸川区水害ハザードマップ」は必携の1冊と言えるでしょう。江戸川区には、埼玉県、群馬県、栃木県に降った雨水が利根川、荒川、綾瀬川、江戸川、中川を通して流れ込みます。そのため、特に水害に対する備え、知識が必要です。「江戸川区水害ハザードマップ」には、区の地形的な特徴を踏まえ、大規模な水害が起こったらどうなるか、命を守るためにどうすれば良いかがわかりやすく解説されています。耳が不自由な方などに向けて「耳で聴くウェブサイト版」も用意されています。災害発生時に備えて、自宅周辺の地理や避難場所の確認、家族で避難時の行動を話し合いましょう。

荒川と江戸川が氾濫した場合、区のほとんどが水没し、250万人が浸水被害に遭うことが予想されています。浸水の深さは最大10m以上になるエリアもあり、長いところでは2週間以上浸水が続きます。そのため、マンションの高層階に住んでいるから安心というわけではありません。仮に、水道ガス電気のライフラインが止まった状態で2週間以上生活すると考えると、それは非常に困難です。そのため、巨大台風や大雨が予想されるときは、区外への避難を推奨しています。また、一斉に避難しようとすると、混乱や大渋滞が発生し、それに伴う事故発生も想定されます。早めに、公共交通で避難をするよう、区では呼び掛けています。

その他にも、「江戸川区水害ハザードマップ」には、広域避難できない時の避難先一覧や、災害情報の入手方法、日頃の備えに必要なものなど有益な情報が掲載されています。江戸川区のホームページからハザードマップを閲覧することは可能ですが、大規模災害が起きた後はネット環境が十分ではないかもしれません。区役所本庁舎や、小松川事務所や葛西事務所といった各事務所で配布されているので、1冊手に入れておきましょう。

江戸川区の取組み

「江戸川区総合防災訓練」はしご車による救出活動(江戸川区ホームページより引用)

江戸川区では、来たるべき首都直下型地震へ備えるために「江戸川区総合防災訓練」を定期的に実施しています。1966(昭和41)年7月から続く伝統ある防災訓練で、情報収集及び伝達訓練、ライフライン復旧活動、救出救助活動、火災消火活動、炊き出し訓練などを実施します。

また、防災に関する知識をやさしくわかりやすく伝えるために、防災マンガ『防サイのイロハ』を公開しています。防災について勉強中の7歳の女の子であるイロハちゃんが、防災の知識が豊富なロボット、サイボくんから防災を学ぶストーリーです。全10話構成で江戸川区の概要、水害の危険性、広域避難計画、早めの避難の大切さなど様々な視点からの防災情報を発信しています。子どもはもちろん、大人も防災意識を身につけやすいコンテンツです。

江戸川区の地域別概要

地域区分図(「江戸川区都市計画マスタープラン」より引用)

江戸川区は、都市計画上のマスタープランにおいて、区を7地域に区分しています。

平井駅
平井駅

「小松川・平井地域」は区の西端に位置し、荒川、中川、旧中川に囲まれています。市街地再開発事業により整備された大島小松川公園は、レクリエーション機能だけでなく防災機能も備えています。「中央地域」は新大橋通り以北の地域で、グリーンパレスや総合文化センター、中央図書館といった文化施設が集積しています。防災上の課題を抱えている地域では道路、公園などの整備や建築物の不燃化、耐震化が進められています。「葛西地域(北部)」では、東西線の開通、都営新宿線の「船堀駅」開業などにより、住環境が向上しました。宇喜田公園は普段は運動や遊びが楽しめるスポットですが、震災時には避難場所としての機能を担います。

葛西臨海公園
葛西臨海公園

「葛西地域(南部)」は地域南端が東京湾に面し、水辺環境に恵まれています。昭和60年代以降、「葛西臨海公園駅」の開業や葛西臨海公園、葛西海浜公園の開園により、新たなレクリエーション空間として賑わうエリアとなりました。葛西防災公園には、災害時の防災活動や救援物資の輸送拠点として、防災倉庫などさまざまな設備を備えています。「小岩地域」の「小岩駅」周辺は、木造住宅が密集した災害リスクの高いエリアがあるため、都市基盤の整備や建築物不燃化の促進が喫緊の課題です。また、江戸川沿いの市街地には細街路が多いエリアがあります。スーパー堤防整備に併せてまちの快適性、防災性の向上が計画されています。

篠崎駅
篠崎駅

「鹿骨地域」は区の東端に位置するエリアです。「篠崎駅」の開業で交通利便性も向上し、良好な都市基盤を活かした住宅地が形成されています。「東部地域」は区の東端に位置する京葉道路以南の地域で、一之江名主屋敷や大雲寺など歴史資源が多いことも特徴です。河川周辺では、スーパー堤防整備と連携して沿川の高台化を図る整備を進めるとともに、今井児童交通公園では防災公園としての再整備が進められています。


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