地形や歴史からひもとく防災情報

首都機能の集積と、皇居を中心とした豊かな緑を有する、
東京都千代田区の防災情報

東京都23区のほぼ中心に位置する千代田区。豊かな緑を有する皇居があり、また、国会議事堂や首相官邸、最高裁判所など政治・行政・司法を担う施設も集積しています。地形は、皇居から東側の低地部と、西側の台地部に大きく分かれ、区では神田川と荒川が氾濫した場合を想定した「洪水ハザードマップ」のほか、高潮、土砂災害のハザードマップを公表しています。また、災害時の帰宅困難者への対策にも力を入れています。

INDEX

地形で見る千代田区

千代田区の土地条件図(凡例はこちら
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ

千代田区の地形は皇居から東側の低地部と、西側の台地部に大きく分けることができます。現在の日比谷から大手町に至る一帯はかつて東京湾の一部でした。今から400年以上前、江戸城を拡張することをきっかけに埋め立てが始まりました。また、江戸時代には、現在にはない河川が複数存在しており、舟運の役割などを果たしていましたが、後に関東大震災や太平洋戦争時の空襲による瓦礫や残土を処理するためなどの理由などから埋め立てられました。

江戸前島と呼ばれた埋没段丘面の神田から飯田橋の一帯は、かつての日比谷入江から打ち上げられる砂礫によって砂州・砂堆となった微高地です。西側に広がる台地は、武蔵野台地の東端に位置します。現在は、海からは遠いですが、このエリアからは貝塚が見つかっており、かつては海岸線で、台地の表層は富士山や箱根、八ツ岳などが噴火した際の火山灰質土、関東ローム層で覆われています。また、その下層には東京層群の東京層・東京礫層、さらには関東平野の基盤をなす上総層群が堆積しており、台地は洪水や土砂災害、高潮などにも強い地形です。

なお、土地条件図からも、低地部と台地が確認できます。黄緑色は低地の「微高地(砂州・砂堆・砂丘)」、白地に斜線は埋立地などの「人工地形」、オレンジ色は「台地・段丘」です。 一般的な災害リスクとしては、「砂州・砂丘」では、通常の洪水では浸水を免れることが多く、縁辺部では強い地震によって液状化しやすいとされています。「盛土地・埋立地」は、高さが十分でない場合には、浸水のリスクや山地や台地では降雨・地震により地盤崩壊のリスク、低地では液状化のリスクがあり、海や湖沼・河川を埋め立てた場所では特に注意とされています。

千代田区防災マップ

千代田区「高潮ハザードマップ(浸水深)」(千代田区ホームページより引用)
千代田区「高潮ハザードマップ(浸水深)」(千代田区ホームページより引用)

千代田区では洪水、高潮、土砂災害のハザードマップを公表しています。「洪水ハザードマップ」は「神田川版」と「荒川版」の2種類があり、「神田川版」では、想定しうる最大規模の降雨(総雨量690mm・時間最大雨量153mm)が起きた場合、「飯田橋駅」や「水道橋駅」周辺の想定浸水深が大きく、南方へ「内幸町駅」周辺まで被害が出る可能性があります。また、神田川、日本橋川は水位の上昇が早く、浸水してから数時間で水が引くことが予想されるので、避難する際には頑強な建物の2階以上に避難することが推奨されています。

「荒川版」では、最大規模の降雨72時間総雨量632mm(1,000年に1回程度発生が予想される大雨)で、シミュレーションされており、「新御茶ノ水駅」、「神田駅」付近に0.5m以上、3m未満の浸水が予想されている場所があります。また、「東京駅」、丸の内付近は0.5m未満、「日比谷駅」付近は0.5m以上、3m未満の浸水が想定されています。

「高潮ハザードマップ」は、高潮に伴う河川の氾濫を含む浸水被害のことを指します。高潮は低気圧による海面の吸い上げと、強風による吹き寄せの2つの要因があります。千代田区で高潮が起きた場合の被害エリアは洪水の被害エリアとほぼ同じです。

土砂災害とは、がけ崩れ、土石流、地滑りの総称です。千代田区では、土石流や地滑りは想定されていません。ハザードマップでは、イエローゾーンと、レッドゾーンの2種類に分かれて警戒区域が示されおり、イエローゾーンは急傾斜の崩壊などにより、住民等の生命または身体に危害が生ずるおそれがあるエリア、レッドゾーンは建築物に損壊が生じ、住民等の生命または身体に著しい危害が生じる可能性があるエリアを示します。

千代田区の取り組み

千代田区ハザードマップの中には「避難行動判断フロー」も示されている(千代田区ホームページより引用)

千代田区は首都東京の政治・経済機能が集積している地域のため、2022(令和4)年5月東京都被害想定によると、昼間人口は約85万人、夜間人口が約6.6万人と約13倍もの差があります。巨大地震などで交通機関等が停止した場合、約57万人が帰宅困難者になると予想されています。

帰宅困難者への対策の一つとして、シェイクアウト訓練という一斉防災訓練を実施しており、事前にアナウンスされた時刻に、参加者全員が机の下に隠れるなど、身の安全を図る行動をとることで、職場等での防災対策を確認するきっかけとする訓練です。また、区では「災害ダッシュボード(大丸有地区の帰宅困難者支援システム)」を用意しており、帰宅困難者等一時受入施設の開設状況や鉄道各社が発信するX(旧Twitter)等の情報を収集・発信しています(実際に災害が発生した時か訓練時以外はアクセスできないようになっています)。

千代田区の地域別概要

7つの地域区分(「千代田区都市計画マスタープラン」より引用)

千代田区では、都市計画上のマスタープランにおいて、区を3エリア・7地域に区分しています。

北の丸公園
北の丸公園

「麹町・番町・富士見エリア」は、皇居、半蔵門駅周辺、四ツ谷駅周辺、市ヶ谷駅周辺、靖國神社や飯田橋駅周辺などを含むエリアです。教育機関・大使館などがまとまって立地していることや、豊かな緑と水辺に囲まれた環境であることが特徴です。当エリアでは、高経年のマンションへの適正な建物管理や、日本橋川沿いの一部地域における集中豪雨等に伴う氾濫時の浸水対策が課題となっています。

神保町 神田古書店街
神保町 神田古書店街

「秋葉原・神田・神保町エリア」は千代田区の北東に位置するエリアです。多くの大学や古書店の集積、出世不動尊や佐竹稲荷神社、また、神田明神やニコライ堂のなど多数の歴史資源などの特徴を持ちます。同時に、老朽化が進む建物も多く、その耐震化や、大規模災害時の帰宅困難者の受け入れ機能を持つ防災拠点の開発、荒川氾濫発生時の浸水被害への対策等が必要とされています。

東京駅 行幸通り
東京駅 行幸通り

「都心中枢エリア」は、大手町・丸の内・有楽町・永田町を含むエリアです。ビジネス、文化・芸術、飲食店などの賑わいや、国家の行政・司法機関など、都市機能が集積するエリアです。大規模災害時においては、多様な滞在者の安全確保や情報提供、避難誘導とともに、都市機能継続性の確保が必要となります。大規模災害時に利用できる屋外・公共空間のデザインも重要とされています。


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