日本の学校教育発祥の地。「学問の府」が区名の由来である、
東京都文京区の防災情報
文京区は、日本の学校教育の発祥地とされる湯島聖堂が位置し、東京大学など多くの教育機関が集まります。下町情緒あふれる風景や、歴史的な神社や仏閣の多さも特徴です。地形は、5つの台地と低地、それをつなぐ斜面地で構成されており、特に低地や神田川沿いに防災面での注意点が多くあります。また、1,000を超える坂道がある文京区では高地と低地の境で起きる土砂災害にも留意が必要です。
地形で見る文京区
文京区の地形は台地と谷底低地、高地と低地をつなぐ斜面地の大きく3つに分けることができます。土地条件図を見ると、オレンジ色の「台地・段丘」が大部分を占めていることがわかります。台地は「武蔵野台地」の東端であり「関口台」、「小日向台」、「小石川台」、「白山台」、「本郷台」と5つの台地に分かれています。河成礫層の上に関東ローム層が蓄積した台地は地盤が安定しているため、地震などにも強い環境です。
5つの台地の隙間や、区の南に流れる神田川沿いには「谷底低地」があります。台地を刻む谷底での堆積物でできているため軟弱な地盤となっています。地震が起きた場合に、揺れが増幅されやすいことから比較的危険度が高い地域とされています。
台地と低地を繋ぐ斜面地が多いことも、文京区の特徴です。土地条件図を見ると、緑色の「山地斜面等」が散見されます。坂道は港区に次いで多く、勾配も急でその数は1,000ヶ所以上です。斜面地は一般的に、台地と同様に強固で安定した地盤が多いものの、後背地から浸透してくる雨水や地下水により一部軟弱になっている箇所もあるとされています。
また、文京区は、1884(明治17)年に根津の谷に面した貝塚から、弥生式土器が発見されたことでも知られています。発見地の地名である区内の旧向ヶ岡弥生町から出土した土器であることから、その名が付けられました。なお、東京大学の農学部と工学部の境には、「弥生式土器発掘ゆかりの地」の碑があります。文京区に人が住み始めたのは、弥生時代よりもはるか昔、約1万8,000年前の先土器(旧石器)時代と推定されており、歴史のある土地であることがわかります。
文京区防災マップ
文京区では、水害、洪水、高潮、土砂災害に対するハザードマップを日本語、英語、中国語、韓国語で公表しています。「水害ハザードマップ」では、24時間総雨量690mm、時間最大雨量153mmの降雨を想定したシミュレーションが行われています。神田川沿いが最も被害を受けやすいとされており、浸水時には水深が3.0~5.0mに達する可能性がある場所も含まれています。神田川沿い以外の低地エリアにも、浸水の可能性のある場所が記されています。「洪水ハザードマップ」や「高潮ハザードマップ」においても、神田川沿いに特に注意が必要であることがわかります。なお、標高値の参考に、シビックセンターや区内の避難所、地域活動センターに標高値の記載があるので、こちらも日頃から確認しておくとよいでしょう。
文京区で発生しうる土砂災害は、急傾斜地が崩壊するがけ崩れです。「土砂災害ハザードマップ」では、住所索引により、町丁目別の土砂災害警戒区域および土砂災害特別警戒区域の有無を確認することができます。また、地域別の警戒区域と避難所も地図上で確認可能です。
ハザードマップ以外にも、文京区では「文京区地震防災マップ」を作成しています。「揺れやすさマップ」と「建物倒壊危険度マップ」から構成されており、場所によって揺れやすさや建物倒壊の危険度が異なることがわかります。なお、避難所を含む文京区の防災上重要な公共建築物は、耐震改修工事などにより、耐震化率が100%となっています。
文京区の取組み
文京区では、防災訓練に力を入れており、「総合的防災訓練」のほか、「避難所運営訓練」も実施しています。春夏秋冬、気候や地域の特性をテーマに、救護班や物資班など役割別の訓練です。また、学校や町会・自治会、マンションなどで行う防災訓練に「地震体験車」や「煙体験ハウス」の貸し出しを行なっています。実際の揺れや煙の動きを体感することで、防災意識の向上が望めます。
また、2018(平成30)年に、赤ちゃんを災害から守る社会の実現に向けた「文京区プロテクトベイビーコンソーシアム」を設立しています。「赤ちゃん防災」に関する取り組みの実施や検証、正しい知識の普及・啓発などが主な活動内容です。
その他にも、災害情報や防犯に関する情報を配信する「『文の京』安心・防災メール」や、「防災情報一斉通知アプリ」の配信も行っています。さらに、近年の家庭構成を鑑みて、災害発生時に開かれた避難所には、ペットとの同行避難が可能となっています。
文京区の地域別概要
文京区では、都市計画上のマスタープランにおいて、区を3地域に区分しています。
「都心地域」には、文京シビックセンターや東京ドームシティといった、区のランドマークとなる施設が集積しています。行政・文化・芸術・広域商業・業務・スポーツ・レクリエーション施設がそろう、区の中心的なエリアです。耐火建築物を中心とした不燃空間として市街地の形成が方針として示されています。
「下町隣接地域」は、江戸時代から続く町割りや、根津神社や吉祥寺といった寺社の点在など、落ち着いた雰囲気が漂うエリアです。根津や千駄木の一部地区は、古くから形成されている木造住宅の密集地域が広がっており、下町風情のある生活空間を活かしながら、防災面での改善が必要とされています。
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