地形や歴史からひもとく防災情報

明治期以降の大阪の経済と交通を支えた街、
大阪市北区の防災情報

JR大阪駅前

大阪市北区は、大阪都心の北側の一角に位置し、一帯は「ミナミ」に対して「キタ」とも呼ばれます。大阪の一大ターミナル駅「大阪駅」「梅田駅」をはじめとする鉄道・交通の要衝です。近年はうめきたエリアや中之島などで再開発が進み、新しい街並みが誕生しました。
北、東、南の三方を川に囲まれた地形にあり、水害対策を進めるとともに、地域の特性に合わせた防災力強化が進められています。

INDEX

地形で見る大阪市北区

大阪市北区の土地条件図(凡例はこちら
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ

現在の大阪市北区の場所は河川の堆積作用により形成された地形で、古くより水運や工業の用水などとして、水の恵みを受けてきた地でした。現在は淀川、大川、土佐堀川・堂島川と三方を川に囲まれていることもあり、水害への十分な注意が必要となっています。土地条件図では、白地に斜線の「人工地形(盛土地・埋立地)」、黄緑色の「低地の微高地(砂州・砂堆・砂丘)」が大半を占めていることが確認できます。

縄文時代、現在の大阪市北区域には海が広がっていました。その後、海面が低下すると、淀川や大和川が運んできた土砂が堆積し、陸地になります。おおむね現在の天満橋付近から北側の辺りでも、天満砂州という砂州が形成されました。土地条件図における、黄緑色の「低地の微高地(砂州・砂堆・砂丘)」が天満砂州にあたります。この付近では古くから人の暮らしが営まれていました。その後も少しずつ陸地が広がり、平安時代ごろからは大川などを利用した舟運の拠点が設けられるようになってきました。

一方、現在の梅田周辺は長い間、湿地となっていました。この湿地帯は、徐々に埋め立てられ、水田として使われるようになります。土地条件図における、白地に斜線「人工地形(盛土地・埋立地)」で、湿地を埋め立てたことが分かります。梅田という地名も、埋め立てによる水田から「埋田(うめだ)」と名付けられたことが由来といわれています。

大阪市北区防災マップ

「水害ハザードマップ(北区)」(大阪市北区ホームページより引用)
「水害ハザードマップ(北区)」(大阪市北区ホームページより引用)

河川に囲まれた大阪市北区では、水害のリスクが懸念されています。そこで、淀川の氾濫、大川・堂島川・安治川、土佐堀川、木津川、尻無川の氾濫、高潮による浸水、内水氾濫による浸水、南海トラフ巨大地震による津波の5種類の災害を想定した「水害ハザードマップ」が公表されています。
特に、淀川の氾濫や高潮による浸水では大きな被害が想定されます。1,000年に1度程度起きる24時間の雨量が360mmという大雨により淀川が氾濫した場合、区内の多くで1階床上から1階天井付近まで浸水し、場所によっては2階まで浸水すると予想されます。また、1934(昭和9)年の室戸台風と同様の中心気圧910hPaの台風が、室戸台風と同じような経路を進んだ場合の高潮では、区の西側で3階床上から4階まで、東側でも2階床上から2階天井までの浸水が想定されています。さらに南海トラフ巨大地震が発生した場合、区の西側を中心に1階床上から1階天井付近までの浸水が予想されます。

区内には上町断層が存在すると考えられており、ここで地震が発生すると大きな被害が想定されます。周辺でも生駒断層系、有馬高槻構造線、中央構造線、南海トラフの活動による地震の被害が予想されます。大阪市ではこれらの地震の震度予測や液状化予測も公表しています。
例えば、上町断層帯地震の場合、区内では震度6強から震度6弱の揺れになると考えられています。また、南海トラフ巨大地震では震度6弱の揺れが予想され、区の西側を中心に液状化の危険度が高いと想定されています。

大阪市北区の取組み

「地震がキタ!」(大阪市北区ホームページより引用)

災害時に身を守るためには、日頃から防災について学ぶことが大切です。大阪市北区には、区内で想定される災害について学べるガイドブックがあります。そのひとつが地震を扱った「地震から命を守る防災入門BOOK 「地震がキタ!」」で、もうひとつは水害に触れた「北区民の風水害対策BOOK 「台風がキタ!」」です。
さらに、この2冊の内容を含めた「大阪北区ジシン本」も作られています。ここには住民だけでなく、区内で働く人や、区内へ通学する学生も対象に、災害が発生したときに命を守る方法や、そのために必要な準備がまとめられています。
「大阪北区ジシン本」の内容を知ってもらうための防災講座や体験ワークショップが開かれているほか、防災知識の普及を行う市民として、防災サポーターの募集も行われています。

大阪市北区の地域別概要

北区と淀川の風景

大阪市北区は、開発の進むエリア、古くから続く商店街、「水都」とも呼ばれる大阪の中心地など、特徴の異なる複数のエリアから構成されています。

うめきた公園
うめきた公園

うめきたエリアは、大阪駅北側の旧梅田貨物駅にあたる区域です。現在も大規模な再開発が続けられており、広域避難場所機能も持つうめきた公園をはじめとした緑地の整備が進んでいます。「大阪駅」周辺では災害発生時に多くの帰宅困難者が予想されます。そこで、うめきたエリアで行われている梅田防災スクラムなど帰宅困難者対策が進められています。

天神橋筋商店街
天神橋筋商店街

区の北東に広がる扇町・中崎町エリアは天満砂州上に位置し、区内でも古くから人が暮らしてきた街です。現在も長江東二丁目の天満橋筋沿いには5~6世紀頃の古墳とされる鶯塚が残ります。 天神橋筋商店街は、日本一長い商店街として知られています。北区内では、このような地域特性に育まれたコミュニティを活性化させ、地域の自主防災活動を強化することで、地域の災害対応力を向上させる方針が示されています。

中之島の街並み
中之島の街並み

中之島エリアは堂島川と土佐堀川に挟まれ、「水都」らしい街並みが広がります。中之島公園は大阪市で初めて誕生した都市公園で、大阪都心ながら緑も豊富なエリアです。古くから経済・文化・行政の中心として発展し、現在も大阪市役所が所在するなど大阪市の中枢機能を果たします。多くの人が訪れる場所であることから、災害時の一時滞在スペースや、帰宅困難者への備蓄品などの拡充が進められています 。


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