地形や歴史からひもとく防災情報

繁華街ミナミやビジネス街を擁する大阪の中心地、
大阪市中央区の防災情報

大阪城公園

大阪市中央区は、難波宮跡や大坂城など、古代から近世に至る歴史の中心地として発展し、現在も大阪・関西の中枢機能を担う地域です。地形は、大阪市内としては標高が高い上町台地と、その西側を中心に周辺に広がる低地からなります。大阪都心という立地から、大規模災害時の帰宅困難者の発生が予想されます。近年はマンションが増加しており、帰宅困難者対策とあわせて、マンションに特有の防災対策の強化なども進められています。

INDEX

地形で見る大阪市中央区

大阪市中央区の土地条件図(凡例はこちら
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ

上町台地は大阪平野の中央、現在の大阪城から住吉大社まで南北約9km、東西約2kmにわたる標高10~25m前後の洪積台地です。約6000年前の縄文時代前期には三方に海が拡がる半島状の地形となっていました。台地上では古くから人々の営みが行われ、森の宮遺跡では貝塚や人骨なども発掘されています。古代の上町台地も海や湖・河川に囲まれていました。台地上は難波宮が置かれるなど、政治・信仰・交易の中心地、台地の下は砂浜や干潟が拡がる浅瀬で、当時の港・難波津(なにわつ)もありました。

戦国時代になると、この地形は天然の要害として利用され、豊臣秀吉は台地の北端付近に大坂城を築城。江戸時代には幕府直轄領となり、台地上とその西側の低地は武家地・寺町・町人地としてさらに発展しました。現在、低地が広がる大阪市内においては、上町台地が最も標高の高い場所(人工地形を除く)となっています。

大阪市中央区は上町台地の北端一帯と、その西側を中心とした低地からなっています。土地条件図でみると、松屋町筋付近から東側が上町台地で、オレンジ色の「台地・段丘」として示されています。「台地・段丘」は地盤が比較的強く、地震時の揺れや液状化のリスクが小さいとされます。西側の黄緑色の「低地の微高地(砂州・砂堆・砂丘)」は、かつて海岸流により形成された砂堆で、地盤は低地の中では比較的安定しています。

上町台地の西縁付近には、上町断層が存在すると推定されています。上町断層は東側が西側に乗り上げる逆断層です。上町台地は上町断層の活動によってできたと考えられています。

現在の中央区は多くの企業の本社・オフィスが集まり、百貨店や商業施設も立地する大阪の中心地です。上町台地の北端に築かれた大坂城と、その周囲に広がった城下町の歴史が、この区の都市の特徴を形づくり続けています。

大阪市中央区防災マップ

「水害ハザードマップ(中央区)」(大阪市ホームページより引用)
「水害ハザードマップ(中央区)」(大阪市ホームページより引用)

大阪市中央区内に存在すると考えられている上町断層は、活動した場合はマグニチュード7.5程度の大地震となり、区内では非常に大きな被害が予想されます。大阪市が公表している揺れの想定によると、上町断層の活動による地震では、中央区の揺れは震度6強から震度7に達すると考えられています。大阪市周辺には、同様に大地震を引き起こす可能性のある断層帯が複数存在します。例えば、生駒断層帯が活動した場合には、中央区では震度5弱から震度6強の揺れが想定されています。

また、地震は陸域の断層だけでなく、海溝型地震によっても発生します。日本の南側にあるフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む南海トラフでは、将来的にマグニチュード8.0~9.0規模の巨大地震が発生する可能性があるとされています。この地震が発生した場合、中央区全域で震度6弱程度の揺れが想定されています。南海トラフ巨大地震では津波も予想されますが、中央区では御堂筋より東側には津波浸水が及ばないとされており、津波が想定される際には御堂筋より東側への避難が推奨されています。

中央区の「水害ハザードマップ」では、淀川・大和川・寝屋川流域(寝屋川・第二寝屋川・平野川・平野川分水路・古川)の氾濫、高潮、内水氾濫、南海トラフ巨大地震による津波浸水のそれぞれについて、浸水の深さと範囲が示されています。特に、1934(昭和9)年の室戸台風と同等の中心気圧910hPaの台風が同じような経路をたどった場合の高潮では、中央区西部では1階から最大で2階天井程度に達する浸水が想定されています。

大阪市中央区の取組み

千日前道具屋筋商店街

大阪市中央区には多くの企業のオフィスが集まり、大規模災害時にはこれらの企業が持つ人材・技術・資材が地域の力になります。「中央区防災パートナー」は、平時から地域の防災活動に協力し、災害時には人材派遣や資材提供、専門技術を活かした救護・応急復旧に協力する企業や団体を登録する制度です。対象は中央区内に事業所を置く企業で、建設・医療・通信などの企業のほか、千日前道具屋筋商店街など一部商店街も参加しています。

また、中央区ではマンションが増加しており、建物の構造や居住形態に応じた防災対策が一段と重要になっています。区では、マンション管理組合や自治会が行う防災計画づくりの支援を行っており、具体的な防災マニュアルの作成助言や、区職員によるマンション向け防災の出前講座など、実践的なサポートが提供されています。

大阪市中央区の地域別概要

地域区分(『中央区将来ビジョン2023-2027』より引用)

大阪市中央区では、『中央区将来ビジョン2023-2027』において、区を4つの地域に区分しています。

大阪城公園
大阪城公園

北東部は上町台地の北端に位置し、大阪城公園や難波宮跡など、多くの史跡があるエリアです。大阪城公園は広域避難場所にも指定されています。国内外から観光客が訪れるため、大規模地震の際には帰宅困難者の発生が想定されています。このため、帰宅困難者対策の推進や、災害時避難所における物資備蓄が進められています。

御堂筋
御堂筋

北西部は御堂筋を中心にオフィス街が広がり、関西経済を支える中枢業務地区となっています。昼間人口が非常に多く、平日の日中に大規模地震が発生した場合は多数の帰宅困難者が見込まれます。そのため、企業による備蓄の促進や帰宅抑制など、行政と企業が連携した防災対策が進められています。

道頓堀
道頓堀

南東部には高津宮をはじめとする歴史ある寺社が点在するほか、オフィス、マンションなども多く落ち着いた雰囲気が広がります。南西部は「ミナミ」と呼ばれる繁華街で、人が多く集まるエリアです。とくに南西部では帰宅困難者の発生が想定され、対策が強化されています。また、増加するマンションの住民コミュニティと地域コミュニティをゆるやかにつなぎ、防災力の向上を図る取り組みも進められています。


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