地形や歴史からひもとく防災情報

丘陵地の緑と天白川の潤いが身近な街、
名古屋市天白区の防災情報

名古屋市の東部に位置する天白区は、1975(昭和50)年に昭和区から分区して誕生した、名古屋市で最も新しい区です。北部と南部には丘陵地が広がり、その間を流れる天白川や植田川沿いには平地が形成されるなど、起伏に富んだ地形が特徴です。表山周辺の丘陵地は大正末期以降「山林都市」として土地区画整理が行われた地域で、現在では日本を代表する邸宅地へ発展しています。丘陵地では土砂災害、河川沿いの低地では浸水のリスクがあり、地形に応じた防災対策が進められています。

INDEX

地形で見る名古屋市天白区

名古屋市天白区の土地条件図(凡例はこちら
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ

天白区の中央部には天白川が東西に流れ、天白区役所付近で北から流れてきた植田川が合流します。これらの川沿いには平地が広がり、川から離れると丘陵地となります。その間には、丘陵が侵食されてできた谷底の低地もみられます。

土地条件図では、黄緑色に塗られた部分が天白川、植田川沿いとそこから丘陵地に入り込むように広がっています。これは「低地(谷底平野・氾濫平野)」を示し、川沿いに土砂が堆積した平地と、丘陵を侵食した谷間の平地を表します。天白川により上流から運ばれてきた土砂は川沿いに堆積し、そこが周囲よりも高くなりました。天白川に沿って点在する黄色の部分は「低地の微高地(河川沿いの微高地)」で、河川の洪水により粒子の荒い土砂が堆積して周辺より若干高くなっていることを意味します。その他の大部分は「山地斜面」の緑色になっています。

「天白」という地名は天白川から命名されたもので、川名の由来は下流(現在の緑区鳴海町)に天白社が祀られていたためといわれています。1906(明治39)年に平針村・植田村・弥富村・島野村が合併し天白村が誕生、1955(昭和30)年に名古屋市へ編入され昭和区の一部となり、1975(昭和50)年に天白区として分区独立しました。

大正末期から昭和初期、表山・音聞山・御幸山(現・天白区西側の丘陵地)周辺はまだ名古屋市外でしたが「名古屋都市計画」の一部に組み込まれ、「山林都市」の構想のもと起伏を活かした住宅地開発(土地区画整理)が行われました。現在では日本を代表する邸宅地へ発展しています。高度経済成長期以降は、道路や地下鉄の整備とともに区域の一帯で宅地開発が進みました。浸水リスクは比較的低い一方で、斜面地では土砂災害への備えが重要になります。

名古屋市天白区防災マップ

「洪水ハザードマップ(天白区)」(名古屋市ホームページより引用)
「洪水ハザードマップ(天白区)」(名古屋市ホームページより引用)

天白区で想定される主な自然災害として、平地での洪水や内水氾濫、丘陵地での土砂災害があります。区内の多くを占める丘陵地では、大雨や地震により、がけ崩れや土石流などが発生するおそれがあります。区内には多くの土砂災害警戒区域が指定されており、名古屋市内では特に多い区となっています。

一方、天白川や植田川沿いの平地は、大雨時に周辺から流れ込んだ水がたまりやすい地形です。天白川は、上流から運ばれた土砂の堆積によって周辺より高くなった部分(天井川)もあり、古くから洪水に悩まされてきました。2000(平成12)年の東海豪雨では、約1,000棟が床上浸水し、最も深い場所では約2.5mの浸水が発生しました。

「洪水ハザードマップ 天白区」では、想定最大規模の大雨によって天白川や植田川が氾濫した場合、沿川部で1階床上の浸水が想定され、場所によっては2階から3階相当の深さに達するとされています。
また、大雨時には下水道や排水施設の能力を超えて雨水を排水しきれなくなり、内水氾濫が発生することがあります。「内水氾濫ハザードマップ 天白区」では、区内の広い範囲で浸水の可能性が示されており、一部では1階床上から2階に達する浸水が想定されています。

南海トラフ巨大地震では、区内の多くで震度6弱、一部で震度6強の揺れが想定されています。また、天白川や植田川沿いの低地では、液状化の危険性も比較的高いとされています。
さらに、地震等の自然災害により、ため池の堤体が損傷し、貯留していた水が流出する可能性もあります。「ため池ハザードマップ 天白区」では、荒池や大根池などのため池が決壊した場合、短時間で下流に浸水が及ぶ可能性があることが示されています。

名古屋市天白区の取組み

豊田工業大学

災害が発生すると、天白区役所が区の災害対応の拠点となります。しかし、天白区役所は天白川と植田川の合流点付近に位置しており、洪水による浸水や液状化の可能性があるとされています。そのため、水害や大規模地震の状況によっては、災害対応の拠点としての機能に支障が生じる可能性があります。

こうした事態に備え、区の南部の丘陵地にある豊田工業大学内に「南部活動拠点」が設けられています。天白区役所が被災した場合には、この拠点が区の災害対策本部機能を補完します。災害発生時に円滑な対応ができるよう、区・地域・豊田工業大学が連携して毎年運営シミュレーションを実施しており、南海トラフ巨大地震などに備えた災害対応力の向上を図っています。

名古屋市天白区の地域別概要

天白川(新島田橋より撮影)

天白区は、北部と南部の丘陵地と、その間を流れる天白川・植田川沿いの平地に大きく分けられます。

稲葉山公園展望台からの風景
稲葉山公園展望台からの風景

北部の丘陵地には、植田山などの高台を中心に、緑豊かで落ち着いた環境が広がっています。周辺には植田中央公園や牧野ヶ池緑地(面積の多くは名東区)などが立地します。丘陵地の斜面には土砂災害の危険性があるため、梅雨や台風の時期を前に、土砂災害警戒区域などの巡視が行われています。

天白川
天白川

天白川や植田川沿いの平地には天白川緑地などがあります。天白川と植田川の合流点付近には天白区役所があり、災害時の対応拠点となります。一方、この周辺の低地では大雨時に浸水のおそれがあり、2000(平成12)年の東海豪雨でも被害が発生しました。その後、野中橋より下流の天白川で河床掘削が行われたほか、周辺の中小河川でも排水ポンプの増強や雨水調節池の整備が進められ、浸水被害の軽減が図られています。

天白公園
天白公園

南部の丘陵地では、荒池緑地をはじめ、相生山公園や天白公園など緑に親しめるスポットが身近にある、住宅地の広がるエリアです。丘陵地の間に形成された谷地の水田に水を供給するため、ため池が多く作られました。地震等の自然災害により、ため池の堰堤崩壊による浸水が懸念されることから、大雨シーズン前にはため池の見回りが行われています。


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