治安もまずまず良好で、
自然災害は日本より少ない

治安・防災
治安もまずまず良好で、自然災害は日本より少ない

住む、暮らすということを考えるうえで、まず確保しておきたいのが生活の「安全・安心」です。それを脅かす犯罪や災害はそれぞれの国や地域でどんなものがあり、どのような対策がとられているのでしょうか? 「大人未来ラボ」シーズン2の第3回目は、各国の治安・防災についてレポートします。

治安は全体的に悪くないが、一部には不安も…

まずは、それぞれの国(地域)の治安に関して、住んでいる皆さんがどう感じているかを率直にお答えいただきましょう。

「良いです。しかし、オスロには移民が多いとされている地区があり、そこでは女性の観光客は夜一人歩きをしないように伝えています」(ノルウェー)

「良いです」(ドバイ)

「治安は悪くありません。ただ、子どもの連れ去りは心配で、小学生までは一人で外出させることは不可能。学校の送り迎えも必須です。ただし、夜、女性が一人で外出するとすごく危険……などといった感じはありません」(中国)

「良いと思います」(韓国)

皆さん、住んでいる国や地域の治安は「良い」と感じています。国や地域は異なるものの、昨年と違って、今年はテロに関する不安の報告もありません。地域差もあり、いつ世界情勢が変化するかわからないので、油断は禁物ですが、世界はいくらかでも平穏に向かいつつあるのでしょうか。

中国では、子どもの連れ去りに特に注意!

中国では、子どもの連れ去りに特に注意!

それでは、それぞれの国、地域の治安について、さらにくわしく教えていただきましょう。

「治安は悪くはありません。ただ、「北欧」というイメージで安心しきっていると、明らかに観光客に見える人は観光地で狙われる可能性もあります。そのほかでは、暴行などを働く移民の二世の若者が一部にいて、ニュースなどになりやすいため、オスロの特定の地区に関して夜は危ないというイメージもついています。私自身は、まず観光客には見えないので、危険な目にあったことはほとんどありませんが……」(ノルウェー)

「場所によっては、軽度の痴漢にあうことも」(ドバイ)

「赤ちゃんが連れ去られそうになった、6歳の男児が消えた、学校の中で生徒が『ママがあっちで呼んでいる』と不審者に声をかけられた……などといったことが、実際に身近で起きた経験があります。また、日本から来た人が、財布を盗られたこともありました。一方で、中国人は良い意味でもおせっかいなので、困っている人をみんなが助けるという雰囲気があります」(中国)

「韓国の治安は、東アジアの国々の中でも比較的良い方です。もちろん、どの国や地域においてもリスクがあり、それは日本も韓国も同様だという前提で、例えば、カフェなどでバッグを置いたまま席を離れられる、深夜でも女性が道を歩ける、安心してバスや地下鉄に乗れるなど、日本人が日本で暮らすのとほぼ同じ感覚で暮らすことができます」(韓国)

各国と同様の治安上の問題は日本にも存在していますが、中国での子どもの連れ去りのリスクは日本よりも高そうです。

治安といえば、かつては「犯罪の街」といわれたニューヨークの現状は、どうなっているのでしょうか? 最新レポートを現地から届けてもらいました。

危険な街は昔の話。今や安全で過ごしやすいNY

20年くらい前までは、ニューヨーク(以下NY)=危険な街というイメージが漠然と人々の間にあったかもしれません。確かにかつては、アルファベットシティやベッドスタイ地区など、タクシーさえも向かってくれない危険なエリアも存在していました。しかし、1990年以降、当時のジュリアーニ市長が警察官を増やして街中に配置させ、公共の場における条例強化を進めたことで、殺人事件数は65%減、犯罪件数も半分になったといわれています。そうした街の“浄化”によって、NYは安全で過ごしやすい街に。現在では、マンハッタンだろうとブルックリンだろうと、多くの観光客が夜でもそぞろ歩きをしたり写真撮影に興じたりしていて、街はすっかりフレンドリーな様相をたたえています。地下鉄も24時間運行していて、深夜1時くらいまでは乗客も多く、怖いことはありません。私もこの地に住んで15年目を迎えますが、幸運にも危険な目にあったことはありません。

とはいえ、土地柄もあり、テロの脅威にさらされているのは事実です。2001年の911以降も、爆発騒ぎや無差別殺人の事件は起きています。また、多民族都市であるがゆえに倫理観もマナーも多様で、日本での常識は通用しません。盗難や置き引きは珍しくなく、日本のような電車やバスの車内での居眠り、カフェでバッグを置いての席取りなどは言語道断です。ニューヨーカーは、自己防衛意識が高いため、「何が起きてもおかしくない」という意識を常に持っています。

それと同時に、大都会でありながら、そこに住む人が優しいのも特徴です。例えば、地下鉄内で悪態をつかれて嫌な思いをしても誰かが声を上げて助けてくれますし、小さなことですが道で転んでもどこからともなく「Are you ok?」と手が差し伸べられます。昨今の日本には薄れてきた共同体的意識がここにはあり、日本よりもNYにいる方が怖くないと感じられるほどです。

まれに水害や地震が起きるが、自然災害は少ない

治安に関しては中国での子どもの連れ去りのリスクが特に目を引きましたが、地理的要因にも左右される防災についてはどうでしょう? 日本のように、ひんぱんに自然災害に見舞われる国はあるのでしょうか?

「ノルウェーには地震がなく、自然災害がたまにしか起きないので、洪水などが発生すると慣れていないためか非常に困っているイメージがあります」(ノルウェー)

「ドバイでは地震は起きないといわれていましたが、15年ほど前にイラン沖で地震が発生した際には、友人宅のベランダがそのまま下の階まで落ちたことがあります」(ドバイ)

「近年、ゲリラ豪雨で坂道の下に水がたまり、クルマに浸水している光景をよく見かけます」(中国)

「長い間、韓国では地震は起きないと考えられていましたが、2016年9月以降に相次いで起きた慶州地震、2017年の浦項地震などを経験し、私が住んでいる震源地に近い大邱はもちろん、ソウルでも、地震に対する備えに関心をもつ人が増えてきています」(韓国)

いずれの国、地域も、日本と比べると、やはり自然災害は少ないよう。ただし、まったく起きないわけではないので、どこにいても、「天災は忘れたころにやってくる」という言葉を胸に留めておいた方がよいかもしれません。

また、今回、北京からはゲリラ豪雨の報告しか届いていませんが、中国は国土が広く、地震の多い地域もあります。旅行や移住をお考えの際には、その点も忘れずに注意しておきましょう。

水害、地震以外で恐いのは、避難が大変な…

自然災害の発生頻度は日本ほど多くはないものの、どこの国、地域に住んでいても、災害への不安がまったくなくなることはありません。

「アパート、学生寮、ショッピングセンター、企業オフィス等、あらゆる場所で人為的なミスなどによって火災報知器がひんぱんに鳴る傾向があります。『またか……』と思いつつ、外に避難します」(ノルウェー)

「高層ビルの火災などが心配です。また、建造物の免震・耐震構造に関しても、気にかかるところがあります」(ドバイ)

「北京では地震はほとんどなく、全体的に自然災害への意識は高くありません。その一方で、電圧が安定していないこともあり、コンセントが発火したり、電動自転車のリチウム電池が爆発したりするなどの火災が起きるので、そちらに気をつかいます」(中国)

「韓国は高層アパートが多く、私も高層階に住んでいるため、火災や地震の際の退避には少々不安があります。2010年に釜山の超高層アパートで火災が起きた時の対応の遅れや、アパート側の防災対策の不備などのニュースを見ると、やはり不安が拭えません」(韓国)

皆さんが防災面で心配されているのが火災。高層階に住んでいる方は、特に不安を抱かれているようです。

ここ数年の経験から地震への備えを始めた韓国

ここ数年の経験から地震への備えを始めた韓国

治安もそれほど悪くなく、自然災害もあまり発生しない国や地域にも、何らかの備えはあるのでしょうか? 治安・防災対策について、聞いてみました。

防災面で報告があったのは、ドバイと韓国です。

「日本同様、非常口や非常階段などについては、くわしく説明が書かれています」(ドバイ)

「2016年の慶州地震、2017年の浦項地震などは韓国で非常な驚きと不安とともに受け止められ、新たな防災への意識につながりました。それまでほとんど心配されることがなかった地震に対して、避難道具をそろえたり、自治体が中心になって避難の仕方を確認したり、学校でも地震に関する授業が行われたりして、防災対策に目が向けられるようになったのです。私自身、周囲の方々から、 防災頭巾に関する質問を受けるなど、地震についてよく尋ねられました。幼稚園や小学校、中学校、高校などでも防災訓練は定期的に行われ、最近は地震への対応も含むものが増えています」(韓国)

治安面については、どうでしょうか?

「ショッピングモールなどには、覆面警察官が多く配備されています」(ドバイ)

「マンションやスーパーなどには、警備員が必ず配備されています。そのほかにも、銀行の現金輸送車の乗員は、迷彩服を身につけ、機関銃を所持。街には、武装警察や軍人も多いです。

また、窃盗犯の侵入ルートとなるのを防ぐために、マンションでも4階ぐらいまではたいてい窓に鉄格子がついています。下の階に鉄格子があると、その鉄格子を利用して窃盗犯が階上へ向かうので、10階ほどの高層階でも鉄格子を備える家も少なくありません。玄関のドアも簡単に打ち破れないような鉄の扉で、さらに2重扉にしている家もあります」(中国)

「韓国のアパート(日本でいうところのマンション)のセキュリティはかなり厳重で、要所にCCTVが設置されているほか、アパート住民の車両番号を登録し、住民に限りアパート入り口の遮断機が自動で上がるようになっています。住民以外の訪問者は、マイクを通して入り口にある警備室に訪問先の部屋の番号を伝えなければなりません。同時に、自動で訪問車両は記録されます。また、警備員の巡回なども、定期的に行われています。いわゆる考試院(コシウォン)など、学生や単身者向けの安価な住居は別ですが、ブランドのアパートならセキュリティ面も相当に配慮されています」(韓国)

アジアの国々では、街中、住宅とも、治安・防犯面の備えは万全を期しているようです。

それぞれの国や地域に暮らす皆さんの実感に基づくレポートだけに、旅行や移住を考える際には参考になることも多いはず。検討材料のひとつとして、ぜひお役立てください!

※ 本記事は各国または地域に在住のガイドおよび在住者個人の見解であり、掲載される情報の内容を保証するものではありません。
掲載される情報は、ガイドおよび在住者の居住する国や地域の中でも居住地や関係する自治体等によって異なる場合があります。

※ 掲載される情報は2018年12月時点のものです。

<取材協力>
ノルウェー(オスロ)鐙 麻樹、アラブ首長国連邦(ドバイ)西田 麻紀、中国(北京)鈴木 晶子、韓国(大邸)松田 カノン、ニューヨーク(ブルックリン)小松 優美

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