多くの国では、
地震は起きないのが当たり前?

治安・防災
電車の運賃が安い国は? ガソリンが安い国って?

治安や防災の状況は、国・地域によって、それぞれ異なります。特に防災に関しては、自然災害の発生が地理的要因に大きく左右されることもあり、国・地域ごとの違いが鮮明に表れます。今回調査した6つの国・地域では、どのような対策がとられているのでしょうか? 現地にお住まいの皆さんに、レポートしてもらいます。

オーストリア、フィンランドは、日本より安心?

最初に、お住まいの国・地域の治安の良し悪しを皆さんに聞いてみました。

「治安は良い」「治安はどちらかといえば良い」との回答が寄せられたのは、今回調査した6カ国のうちの5カ国です。

治安は・・・?

「全体的に治安は良いと思います。低所得の外国人が多く住み、いくらか治安が良くない地区はウィーンにもあるものの、ほかの大都市でのように命の危険を感じるほどの危険な目に遭ったことは一度もありません。パリでは地下鉄やオープンカフェでスマートフォンを強奪されることがあるそうですが、そうした強盗の話もほとんど聞きません。

痴漢や変質者にも遭遇したことがなく、日本の街を一人歩きするよりもよほど安心です。ただ、スリ、空き巣被害は珍しくありません。以前は薬物中毒者を街中でよく見かけましたが、取り締まりが進んだ結果、この10年ほどで大部分が姿を消しました」(オーストリア)

「治安は、非常に良いです。軽犯罪、重犯罪ともにもちろんゼロというわけではありませんが、むしろ日本に一時帰国するときに気を引き締めなければと思うくらい、こちらではおおらかに暮らしています。首都圏では、観光客を狙った軽犯罪もあるそうですが……」(フィンランド)

「真夜中に女性1人で歩いていても、危険を感じたことはありません」(中国)

「犯罪がまったくないわけではありませんが、金銭目当てのものが多く、不可解な理由の犯罪は少ないです。夜に女性が1人で出歩く習慣がないこともあり、事件に巻き込まれる可能性も低いと思います。良い意味で人々がかかわりあって暮らしているので、見知らぬ人が変な行動を起こせば、すぐに目につきます」(インドネシア)

「アジア諸国のなかでは、マレーシアは比較的治安が良い国といわれています。政府が治安の安定に力を注いでいることが、その大きな理由の1つです。また、マレー系、中国系、インド系など、さまざまな民族が暮らす国なので、日本人を含む外国人があまり目立たず、外国人のみをターゲットにした犯罪はそれほどありません。日が暮れてからの外出(特に1人歩きの場合)、祭りなどの人混み、人影の少ない路地などでは、ひったくりやスリに少々注意が必要となります」(マレーシア)

今回の調査で「治安は悪い」という回答が唯一届けられた国・地域は、アメリカでした。最近では複合的な要因による人々の衝突なども報道されていますが、現地にお住まいの方もやはり「治安が悪い」と感じているようです。

治安が良い国・地域でも、やっぱり油断は禁物!

それでは、お住まいの国・地域で、皆さん、どのような治安に関する実体験をお持ちなのでしょうか?

「私は、置き引き1回、自宅マンションの地下室への強盗2回に遭遇しました。

置き引きに遭ったのは、ザッハトルテで有名な5つ星ホテル「ホテル・ザッハー」の優雅なカフェでのことです。横のイスの上に置いていたカバンが、突然消えてしまいました。入り口のすぐ横の席だったので、置き引きしやすかったんですね。翌朝、中に入っていた会社のIDが手がかりとなり、カバンは勤務先に届けられました。現金とブランド物の小銭入れだけは、抜き取られていました。被害届出先の警察の話によれば、盗られたカバンの80%は、中のお金だけを除いて、戻ってくるそうです。

住んでいた建物の地下室に2回強盗に入られましたが、被害に遭ったのは私の部屋ではなく、ほかの住人の部屋でした」(オーストリア)

「私自身は注意しているので、被害に遭ったことはありませんが、自転車の盗難はしばしば起きています。観光客が少ない地方都市に住んでいるので、首都圏と比べても、危ない目に遭うことはより少ないです。しいていうなら、週末など、街の中心部や公園にいる酔っぱらいにからまれたときに、毅然と対応するスキルは必要でしょうか」(フィンランド)

「1980年代には『麻薬の巣窟』と呼ばれ、注射器が散乱していたといわれている自宅近くの公園も、今では子どもたちが平和に遊んでいます。ただし、私が住んでいるエリアは、バーが密集する繁華街でもあるため、夜間はケンカや暴行などが起こりやすいです。道で寝ているホームレスや薬物中毒者の姿は、もはや当たり前の光景となっています」(アメリカ)

「危険を感じたことはほとんどありません」(中国)

「特定の宗教を悪く言うつもりはまったくありませんが、例年、イスラム教の人々の断食明けの時期には、田舎に帰るためのお金が必要になるらしく、窃盗、強盗事件が増えます。クルマに乗っていたときに、意図的にタイヤの空気を抜かれて、カバン一式を盗まれそうになった経験もあります。

普段暮らしているぶんには、緊張して過ごすほどの危険を感じることはないです。ただ、それは私自身が地元の人と変わらない行動をしているためで、観光地などではまた状況が異なるかもしれません。お金を持っている観光客と見定められれば、いろんな手口でお金を得ようとするローカル(現地人)はたくさんいるだろうと思います」(インドネシア)

いざというとき、身を守るために頼りになるのは?

それぞれの国・地域の治安について皆さんにお話を聞くうちに、制度や道具、周囲の人々や自分自身の心得など、さまざまなものが身を守り、安心して過ごす助けになっていることがわかりました。皆さんのレポートのなかから、その一部をご紹介します。

「ドイツ、フランスなどでテロが多発して以来、家の近所を軍人が隊列を組んでパトロールするのをよく見かけるようになりました。ただし、オーストリアは永世中立国なので、テロの標的にはなりにくいと考えられています」(オーストリア)

「ごくまれにアジア人に対する差別的な態度をとられたと語る人が周りにいますが、身の危険を感じるほどの状況にはなりえないので、毅然とした態度で意思表明をすること、いざというときに頼れる人と交流を持っておくことが大切です」(フィンランド)

「今後も銃犯罪やテロなどの発生は危惧されるものの、街中に警官が多い点は安心することができます。最近では、911通報(火事・救急・犯罪に対応する緊急電話)がリアルタイムでアップデートされるアプリ「Citizen」が便利です。位置情報とリンクして、近隣で強盗やガス異臭、行方不明などがリポートされると、アラートでお知らせしてくれます。ユーザーがコメントできるため、一般人がコミュニティーの治安情報に貢献する例として知られています」(アメリカ)

いろいろな場所に監視カメラがついているので、犯罪を起こしにくいのかもしれません。空港では白タクに乗らない、バックはファスナー付きのものを選ぶ(カバンが開いていると、そこから中の物を盗まれることも)などの対策はとっています」(中国)

「家の壁飾りに大きなニシキヘビが巻きついていて、慌てたことがありますが、そういう事件のための緊急スタッフがいて、すぐに蛇を駆除しに来てくれました。近隣の住民も、いつも助け合っています。普段は会ったらあいさつをする程度のかかわりですが、近所で女性が料理中にやけどをしたときも、みんなが駆けつけ、助けていました。バリ島では、人情みたいなものがまだ存在しており、地域社会がうまく成立していると思います。日本でいうところの孤独死などは考えられません」(インドネシア)

「マレーシアはイスラム国家なので、多くのマレー系の女性は肌を見せない服を身に着けています。同様に肌の露出を避けたシンプルな服装を選べば、マレーシアの街にも溶けこみやすいです。また、21時以降は、1人でタクシーに乗ったり、公共交通機関を利用したりするのは避けています。暗い道や人通りのない道を歩くときには、周りに注意を払います」(マレーシア)

日本人には信じられない?地震のない国が多数!

「治安」に続いては、それぞれの国・地域の「防災」について、皆さんに語っていただきましょう。近年は世界各地で洪水や、猛暑が一因の森林火災などがひんぱんに発生していますが、皆さんがお住まいの国・地域でもやはり自然災害は増えているのでしょうか?

「自然災害はほとんどなく、洪水がたまに起きるくらいです」(オーストリア)

「フィンランドでは、地震や台風、雪害といった自然災害はほぼありません。雪の質が水分をあまり含まず、また何メートルも積もるほどは降らないため、雪害を心配することもないです」(フィンランド)

「地震はありませんが、時々ハリケーンに見舞われます」(アメリカ)

「地震は、ほとんどありません。暴風雨の被害は、しばしばあります」(中国)

「バリ島では、めったに地震は起きません。自然災害といえば、たまに強風を伴う大雨が降るくらいでしょうか。それも、年に1回あるかないかといった程度です」(インドネシア)

「地震はありませんが、大雨や洪水は多いです」(マレーシア)

ニュースでは自然災害が世界各地で猛威を振るう様子が目につきますが、皆さんがお住まいの国・地域では差し迫った脅威とはなっていないようです。それにしても、地震のない国・地域が、たくさんあります。地震大国・日本に住んでいる私たちからすると、うらやましい限りです!

たまにしか起きない地震が来たら、さあ、大変!

日本と違って、自然災害が少ない今回調査した6カ国。そうなると、やはり、自然災害への備えなどは特にないのでしょうか?

自然災害への備えは・・・?

「洪水対策として、ドナウ川を中洲で2つに分け、一方を洪水時の支線水路としています」(オーストリア)

「危機感はなく、これといった対策も特にありません。ただ、必ずしも自然災害への備えというわけではないですが、集合住宅や学校施設などには、有事の際に核シェルターとして機能する、密封された部屋が必ず設けられています」(フィンランド)

「地震がなく、日常的に自然災害に備える習慣はありません。ハリケーン襲来前に、食料品や日用品を備蓄するくらいでしょうか」(アメリカ)

「地震についてはほとんど起きないため、対策を聞いたことはありません。暴風雨の際には、道路の排水が悪く、ひざ下まで水に浸かることも。クルマも、もちろん水浸しです……。突風で看板が吹き飛ばされていたこともありました。適当につけてあるだけなので、すぐに外れても仕方ないなと。結局、暴風雨に対しても、備えらしい備えはありません」(中国)

「まれに地震があると、慣れていないローカル(現地人)の慌てぶりがすごいです。私自身は、一応、基本的な防災グッズは用意しています」(インドネシア)

「クアラルンプールには『SMARTトンネル』という全長10キロメートルに近いトンネルがあり、平常時には車道として利用される一方、洪水時にはトンネル内に水を溜め、洪水の被害を抑える役割を果たします」(マレーシア)

「備えあれば憂いなし」といいますが、憂いがない場合には、そもそも備えは充実しないものなのでしょう。政府や地方自治体ばかりでなく、企業、学校、各家庭でも防災意識が高い日本は、それほど自然災害について心配をしなければならない国だといえるのかもしれません。

今回の調査では、治安・防災面に関しては心配が少なく、安心して暮らしやすい国・地域が多くを占めていました。治安・防災は、快適に過ごすばかりでなく、安全に暮らしていくうえでも、とても大切な要素。そうした点からも、旅行や移住を検討する際には、特に注目しておきたいところですよね。

※ 本記事は各国または地域に在住のガイドおよび在住者個人の見解であり、掲載される情報の内容を保証するものではありません。
掲載される情報は、ガイドおよび在住者の居住する国や地域の中でも居住地や関係する自治体等によって異なる場合があります。

※ 掲載される情報は2020年9月時点のものです。

<取材協力>
オーストリア(ウィーン)ライジンガー真樹、フィンランド(ユヴァスキュラ)こばやしあやな、アメリカ(ニューヨーク)小松優美、中国(上海)ヒキタミワ、インドネシア(バリ島)プトゥ ヒロミ、マレーシア(クアラルンプール)古川音

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