お手ごろな家賃で
広い家に住めそうなのは、どこの国?

住宅事情
お手ごろな家賃で広い家に住めそうなのは、どこの国?

「大人未来ラボ」シーズン4の第2回目では、世界の国・地域の住宅事情をお届けします。日本と風土、文化の異なる国・地域なら、住宅事情もいろいろと違うはず……と推察しますが、意外にも共通しているところも多いのでしょうか? 今シーズンは、ヨーロッパ、北米、東アジア、東南アジアの6カ国にお住いの皆さんに尋ねました。

アジア諸国では、自国民は持ち家派が多い

まずは、皆さんがお住いの国・地域での世帯ごとの「持ち家と貸家の比率」について、公的な数値または感覚値でお答えいただきましょう。

持ち家率が高かったのは、中国、インドネシア、マレーシアです。

持ち家率は?

「上海ローカル(地元民)の方たちは、80%が持ち家です」(中国)

「私はデンパサールに暮らしていますが、バリ人は基本的に家を持っている人が多く、ほかの島から働きに来ている人は「コス」と呼ばれるアパートなどに仮住まいをするのが一般的です。

インドネシアの法律では、厳密にいうと、外国人は土地を所有することができません。リタイアして、日本からバリ島に移住している方などは、一軒家を長期契約で借りていることが多いと思います。短期で滞在されている方も、アパートではなく、一軒家を借りている人がほとんどです。特にウブド地域では、独立して、プライベートが守られているスタイルの小さな“あずまや”が点在しています。

サヌール地域には、ビルディング型で日本のマンションに近いタイプの居住施設があり、多くのリタイアした方が暮らしています。こうした施設のよいところは、セキュリティがしっかりしていて安心で、自分で家の管理をしなくてよいのでラクな点でしょうか」(インドネシア)

「持ち家が主流だと思います。外国人も一定の条件をクリアすれば家を購入することができるので、長期滞在者は、高層住宅のコンドミニアムを中心に、家を持っている人も多いです」(マレーシア)

持ち家と賃貸住宅の割合がほぼ半々に近いのが、オーストリア、フィンランド、アメリカです。

「主観的な感覚では、ウィーンなどの都市部での持ち家(戸建て)比率は、友人・同僚などを見る限り、15~20%程度に感じます。 また、郊外・田舎では、その割合が逆転して、80%程度が持ち家(戸建て)であるように見受けられます。 ある統計によると、オーストリア人全体では、持ち家が45~50%、賃貸が40~45%だそうです。そのほかは、外国からの難民や、ホームレスの方などだと推察されます。

ウィーンについては、賃貸の比率が75%と、ヨーロッパのなかでも特に高い割合を示しています。というのも、1910年に始まった人口爆発でウィーンは深刻な住宅不足に陥ったため、1920年より現在に至るまで市が政策の一環として積極的に賃貸物件の建設を推し進めているからです。ウィーンが建設する市営住宅の(人口1,000人当たりの)数はヨーロッパでも抜きんでており、ウィーンはヨーロッパでも有数の不動産オーナーとなっています。市が住宅物件を管理することにより、不当な価格競争・高騰が防がれ、賃貸料金もかなり低く抑えられています」(オーストリア)

「ものの所有に縛られない生活を好む人が多い都市部では、借家に住んだり、一軒家や分譲マンションでも売って次に移ったりする人が年々増えています。首都ヘルシンキの場合、最新のレポートによれば、市民の86%が集合住宅(階層マンションやアパート)に住んでおり、そのうちの3~4割は賃貸だと考えられます。ユヴァスキュラでもほぼ同様か、あるいはやや一軒家の割合が増えるかな、といった感じです。地方都市や田舎になるにつれ、持ち家の割合は必然的に増えていきます」(フィンランド)

「賃貸のほうが多く、賃貸が60%、持ち家が40%といったところでしょうか」(アメリカ)

世界的にみても、日本の家はやっぱり狭い?

一般的な持ち家の延べ面積についても、教えてもらいましょう。幅はありますが、面積の大きい順に並べてみました。

200平方メートルに達したのは、東南アジアの2カ国です。

持ち家の面積は?

「デンパサールなどで家を建てる場合、感覚値で大体200平方メートル(2R/60.5坪)くらいが平均ではないでしょうか。私が暮らしている地域では、特にそれなりに裕福なローカル(地元民)が多いこともあり、二階建てで庭付きの家が少なくありません。土地代がより高い場所なら、もっと小さい家を建てるか、アパートのような箱型の建物をつくって賃貸併用住宅にするケースが多いです」(インドネシア)

「コンドミニアムは、大体140~200平方メートルぐらいです。複数の家が連なったリンクハウスは、2階建てのものが多く、コンドミニアムより広めになります」(マレーシア)

150平方メートル以上あったのは、中国とオーストリアの2カ国です。

「80~180平方メートルが主流かと思います」(中国)

「地下1階、地上2階建てが平均的で、延べ面積は150平方メートルほどだと思われます。また、住民1人当たりの居住面積は36.3平方メートルとの統計があります」(オーストリア)

「マンションで、約132平方メートル(1,420スクエアフィート)ほどです」(アメリカ)

今回、調査した国のなかでは、持ち家の延べ面積が一番小さいのはアメリカでした。ただし、調査地が大都会のニューヨークなので、アメリカ全体ではまた違う数字が出てくるでしょう。ちなみに、日本の持ち家の延べ面積は119.9平方メートル(2018年)*1、東京都の持ち家の延べ面積は93.3平方メートル(2018年)*1となっています。国土の面積はオーストリアより大きいのに、持ち家は日本のほうが狭いんですね……。

ヨーロッパの大都会なのに、家賃が安いウィーン

持ち家だけでなく、賃貸住宅についても聞いてみましょう。賃料は、どれくらいでしょうか? 特に注記がない場合は、1カ月分の賃料です。

「ウィーンの平均賃料は、2018年の統計で、1平方メートル当たり約1,153円(9.60ユーロ)となっています。 同じ統計によると、ミュンヘンは1平方メートル当たり約1,982円(16.50ユーロ)、ロンドン・パリは1平方メートル当たり約3,124円(26ユーロ)なので、大都市の割にかなり安価だといえます」(オーストリア)

日本でワンルームの賃貸住宅の標準的な部屋の広さが25平方メートル前後といわれているので、これに当てはめると約28,825円。確かに、大都市であるにもかかわらず、日本の地方都市よりも安いですね!

「首都圏と地方都市とで、かなり大きな差があります。私自身は住んだことはありませんが、首都ヘルシンキでの相場は東京とほぼ変わらないそうです。私の住むユヴァスキュラは日本の名古屋のような位置づけの市になり、50~70平方メートルの1LDKまたは2LDK(+トイレ、シャワールームやサウナ室)で約84,105~120,150円(700~1,000ユーロ)が相場かと思われます」(フィンランド)

「1ベッドルーム(1DK / 1LDK)で、約319,724円(2,980USドル)です」(アメリカ)

ニューヨークは、さすがに高い……。

「ロケーションとリノベーションの程度によって、まったく金額が変わってきます。日本人が多く住むエリアの、きちんと整備された物件なら、150平方メートル程度の3LDKで、250,000〜350,000円くらいです。同じエリアでも、エレベーターがなく、リノベーションもあまりされていない物件であれば、80平方メートル程度の部屋を100,000円前後で借りられます。市街から離れるほど、さらに賃料は安くなります」(中国)

「希望するライフスタイルや住みたい地域、借りたい家のファシリティ(プール付きか否かなど)によって異なります。日本よりは安いのは間違いありませんが、車を運転できないからドライバーを雇う、言葉ができないので住み込みでお手伝いさんを雇うなどの条件によっても、用意しなければならない金額は変わってくるでしょう。

一番安い物件なら、一人暮らし用で部屋数が1つ、トイレ、浴室付き(湯沸かし器なし)の100平方メートルの一軒家が、年間200,000円程度で借りられます。比較的高額な物件としては、観光地近くのエリアにある、部屋数が2つ、トイレ、浴室(湯沸かし器あり)、プール、駐車場付きのヴィラが、電気代・水道代は別で年間150万円ぐらいです」(インドネシア)

「ファミリー用のコンドミニアムの場合、リビング、ダイニング、キッチン、3ベッドルーム、バス・トイレ2か所付きで、約99,960~174,930円(4,000~7,000リンギット)ほどです。エリアや立地の利便性によって、賃料は変わります」(マレーシア)

バリ島では、家賃は一括前払いが当たり前

皆さんがお住いの国・地域でも、保証金や不動産仲介手数料などがかかるのでしょうか? 住宅の賃貸に関するルールについても、教えてもらいました。

「かつての日本のような敷金2カ月・礼金2カ月といった慣例は、特にありません。オーナーや不動産業者によって、さまざまです。不動産仲介料については、3年以下の有期限契約は最大で家賃の1カ月分(税込み)、3年以上の有期限契約・無期限契約は最大で家賃の2カ月分(税込み)となっています。また、敷金は、平均で家賃の3カ月分、最大でも家賃の6カ月分です。

私が移住した当初は、今と違って為替レートが1ユーロ=170円ほどだったので、敷金その他の支払いをするのにたいへん不利な状況でした。現地通貨での収入や預金がないと、為替レートにより手持ち資金がかなり変動してしまうことがあります」(オーストリア)

「うちは賃貸物件を扱う国内の大手の不動産会社にあっせんしてもらいましたが、不動産仲介料や礼金などは特に支払いませんでした。保証金もありません。敷金にあたるデポジット金を契約時に250ユーロ(現在の為替レートで換算すると約30,036円)支払い、特に問題がなければ、解約時に返金されることになっています。

また、共益費なども特にありませんが、おそらく家賃に含まれているのだと思います。実際、追加徴収は一切なくても、マンション内の自治会費は配分され、定期的に住民のパーティーが開かれたり、共同バーベキュー小屋の用具や薪が管理されたりしています」(フィンランド)

「不動産仲介料は、家賃1カ月分〜年間家賃の15%を支払います。ただし、ニューヨーク州では、賃借人を守るために、不動産仲介料の徴収は近いうちに禁止される見込みです。保証金は家賃の2か月分で、退去時に返金されます。敷金はありません」(アメリカ)

「不動産仲介料は、大家さんが負担したり、大家さんと借りる人が1カ月分を半月分ずつ折半したりします。デポジットは応相談で、私の場合はいつもデポジット1カ月分、家賃2カ月を先払いして入居します」(中国)

「バリ島の賃貸物件にも、いろいろなタイプがあります。一戸建て、アパート、家具付き、家具なし、シェアハウス、ホテルの一室などなど。契約期間も月から年単位まで、さまざまです。土地については何十年単位という契約もあります。なかには、土地を長く借りて、そこに家を建てる人もいます。いずれの場合でも、基本的に保証金、敷金はありません。

不動産業者を介して契約する際には、15%ほどの仲介料がかかるそうです。言葉が話せれば、大家さんと直接交渉して契約を結ぶこともできます。まとめて早く入金されることを大家さんが歓迎するため、家賃は契約時に一括前払い、契約期間が長くなるケースが多いです」(インドネシア)

「通常、1カ月分の家賃が保証金(敷金を含む)になります」(マレーシア)

日本とまったく同じではないものの、どの国・地域にも似たルール・システムは存在しているようです。

国・地域によって、住宅事情にもそれぞれ特徴があります。「衣食住」という言葉があるように、住宅事情は人が暮らしていくうえでの基本的な要素の1つです。海外への移住を検討するときなどには、皆さんからの報告を参考にしてみてはいかがでしょう? 今回報告のなかった国について、インターネットなどで住宅事情を調べてみるのも、興味深いかもしれません。

※ 為替レートは2020年6月26日時点のものです。
掲載される情報は、ガイドおよび在住者の居住する国や地域の中でも居住地や関係する自治体等によって異なる場合があります。

<取材協力>
オーストリア(ウィーン)ライジンガー真樹、フィンランド(ユヴァスキュラ)こばやしあやな、アメリカ(ニューヨーク)小松優美、中国(上海)ヒキタミワ、インドネシア(バリ島)プトゥ ヒロミ、マレーシア(クアラルンプール)古川音 *1 「社会生活統計指標-都道府県の指標-2020」(総務省統計局)

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