お金がかかるシンガポール、
出先がない?パキスタン

一日の過ごし方
お金がかかるシンガポール、出先がない?パキスタン

過去2回の「大人未来ラボ」と比べても、調査した国や地域がさらに広がりを見せた、今回のシーズン3。「一日の過ごし方」も、これまで以上にバリエーションに富んだものになるのでしょうか? それとも、国や地域を越えて、人々は同じように過ごすものなのでしょうか? ここまでレポートを届けてくれた皆さんの平日・休日の過ごし方や、お住いの地域のシニア層の暮らしぶりをご紹介します。

どこの国でも、平日は仕事、家事、育児で大忙し

それぞれの国・地域での、人々の暮らしぶりは、どんなものなのでしょうか? まずは、今回の「大人未来ラボ」シーズン3にご協力いただいている皆さんに、日々の生活について聞いてみました。平日は、どんなふうに過ごしていますか?

「私はフリーランスの仕事をしていたこともあり、スケジュールは日によってさまざまです。最も忙しいときは、朝7時に起床し、9時半に家を出て、10時から取材。13時ごろに取材先で食事をとり、午後も取材。18時すぎに仕事が終了し、19時ごろに帰宅。19時半ごろに夕食をとって、その後は自宅で仕事。23時半ごろに就寝という感じです」(スペイン)

「起床後、朝食。お弁当をつくって、子どもと夫を送り出します。午前中はホームオフィスで仕事、もしくは取材のために外出。午後、子どもが学校から帰ってくると、習い事へ送迎。その後は、夕食をつくり、家族と一緒に食事をとって、テレビなどを観てから就寝します」(アメリカ)

「7時に起床して、娘たちの朝食、お弁当をつくります。7時30分からは、朝食、家事など。8時30分に自転車で娘を幼稚園へ送っていきます。午前中は、下の娘の習い事や公園に行くなどして過ごします。12時に昼食。下の娘が昼寝をしている12時30分~14時30分の間には、仕事や家事を進めます。14時50分に上の娘を幼稚園へお迎え。17時までは、娘たちの外遊び、習い事、家事など。17時30分に夫が帰宅し、夕食をとります。18~20時の間は、食後の散歩やお庭遊び、入浴など。20時に子どもたちが就寝。その後は仕事や家事をしたり、夫婦でのんびりワインを飲んだりして過ごし、23時30分に眠りにつきます」(カナダ)

「朝は5時~5時半に起床。6時~6時半には、3人の子どもを学校に送り出します。次男、三男は小学生のため、普段は主人が送迎していますが、主人の都合が悪いときは私が片道約20分かけて徒歩で学校まで送ります。下の子どもが学校に行っている間に、フリーランスの仕事である取材、執筆、翻訳などを自宅で行うほか、食料品の買い出しに出かけることも。11時半に主人か私が子どもを迎えに学校へ行き、子どもが帰宅する12時ごろに昼食をつくります。週に5日は、午後に、子どもの習い事教室や、自宅での宿題や日本語、音楽のレッスンなどをサポートします。18時ごろから夕食をつくり、19~20時ごろに夕食。その後、シャワーを浴びて、23時までに就寝。知人とランチに出かけたり、夕方から夜にかけて仕事関係の人と会ったりすることが、それぞれ月に1~2回程度あることも。日中の合間には、ピアノの練習をしています」(ブラジル)

「朝は6時半に起床します。7時半にスクールバスが到着。9時には、子どもを幼稚園に送っていきます。10~13時の間は、ゴルフやヨガなど、余暇の時間。13時に子どもを幼稚園に迎えにいって以降は、基本的に子どもたちと過ごします。その間、16時に帰宅のスクールバスが到着。19時に夕食をとり、21時には就寝します」(パキスタン)

「幼稚園に通う5歳の娘と、まだ1歳の息子がいるため、朝起きて、まず朝食の準備をします。慌ただしく朝食をとらせた後に、着替えて身支度を整え、公共のバスを利用して長女を幼稚園に送ります。幼稚園の帰りに息子と市場で買い物をし、その後は息子のお友だち親子と遊びに行ったり、親子で参加できるヨガやピラティスの教室に行ったり。夕方、娘が幼稚園から帰る前に夕食の支度を始め、娘の帰宅後はピアノやプールの習い事、子ども2人のお風呂や夕食、寝かしつけなど……、あっという間に1日が終わってしまいます」(台湾)

「起床後、午前中は大学へ。午後から出社し、20時ごろまで仕事をします。その後は、友人とホーカー(屋台街)で夕食をとります」(シンガポール)

仕事に家事、育児、勉学と、平日は、皆さん、それぞれたいへん忙しく過ごしているようです。

休日は、ホームパーティーや地元のイベントに参加

平日、忙しい毎日を送っているとなると、なおさら休日の過ごし方が気になってしまいます。それぞれの国・地域で、皆さんはどんな休日を過ごしているのでしょうか?

「シウダデラ公園やモンジュイックの丘など、市内の公園を散歩したり、子どもの友人家族を自宅に招いてランチをしたりしています。地域のお祭りや人形劇、工作など、何かしらの無料イベントが市内でしょっちゅう行われているので、子どもと一緒に参加することも」(スペイン)

「友人宅もしくは自宅に友人家族と集まって、ブランチや夕食を共にするホームパーティーを開いています。そのほかでは、晴れた日はクルマで1時間ほどドライブして山や海に出かけたり、冬場はスキーをしたりするなど、アウトドアを楽しんでいます」(アメリカ)

「私は週末に仕事をすることが多く、土曜日か日曜日のどちらかは仕事で外出しています。仕事が休みなら、住んでいる街で週末にファーマーズマーケットや地元のイベントがひんぱんに開催されているため、家族や友人家族と一緒に参加します。天気のいい日には、近くの公園でピクニックをしたり、小さな地元のカフェでゆっくり過ごしたり。時間に余裕があれば、少し足を延ばして、バンクーバーの街中でのお買い物や、国境を挟んでお隣のシアトルでの観光を楽しむことも。

日中は家族で過ごし、夕方からは近所の人や友人たちと集まることが多いです。特に金曜や土曜の夜は、自然と近所の人たちが集まり、バーベキューをしたり食べ物を持ち寄ったりして、お酒を飲みながらちょっとしたパーティーが開かれます。定期的に、友人家族とお互いの家で夕食会も行っています」(カナダ)

「2時間ほどはピアノの練習と子どものフルートのレッスン、1時間ほどは子どもの日本語のレッスン。必要があれば、フリーランスの仕事で取材に出かけます。平日同様、食料品の買い出しや食事づくりも行ないます。WhatsAppで友人と話をすることも」(ブラジル)

「大使館公邸で邦人向けに開放されるプールへ行ったり、日本人学校でサッカー、バドミントンなどをしたり、日本人会のサークル活動に参加します。自宅では、ボードゲームやテレビゲーム、庭でプールやたこ揚げなどをして遊ぶことも。ホームパーティーも開きます。とにかく出かける先がないので、日本人同士で自宅を行き来することが多いです」(パキスタン)

「休日でも夫が仕事で留守がちのため、子どもを連れて、友人家族と公園や室内遊び場に遊びに行くことが多いです。また、毎週土曜日には娘のバレエのレッスンがあり、子ども2人とバレエに行きます。子どもたちのお誕生日会、ハロウィンパーティー、クリスマス会など、イベントごとに友人家族が大勢で集まって、一緒にご飯を食べることもよくあります」(台湾)

「ドラゴンボートのチームに所属しており、午後はずっとナショナルスタジアムの近くで練習。その後は、チームのみんなとご飯へ行きます。友人とショッピングに出かけることもしばしば。シンガポールには新しいものが多い一方、価格が高いので、日用品や普段着などはマレーシアのジョホールバルまで買いに行くことも少なくありません。バスに乗って、国境近くのショッピングモールへ足を運べば、シンガポールの半額以下でショッピングができます。あとは、自宅がコンドミニアムで、ホテル並みのプールがついているため、そこでのんびりすることも多いです」(シンガポール)

近所付き合いで盛り上がりたいならカナダ!

宗教関係でご近所付き合いが活発な地域も

皆さん、ご本人あるいはお子さんのご友人のご家族と、ホームパーティーやお出かけをすることも多いようです。それ以外には、どんな人付き合いがあるのでしょう? 例えば、コミュニティー活動なども盛んなのでしょうか?

「地域コミュニティーは特にありません。同じマンションや地区の人と個人的に知り合って、交流を深めていきます。子どもが生まれてからは、近所の人との付き合いが活発になりました。公園などでも、知り合いが増えました」(スペイン)

「とても活発だといわれています。地域SNS、フリーペーパーなどでの交流もあります」(アメリカ)

「地域のコミュニティーといえば、ブロックパーティーが真っ先に思いつきます。町や自治会などが主催するのではなく、その区画に住んでいる住民たちが自主的に計画、声がけをし、バーベキューをしたり子どもの遊び場をつくったりしてパーティーをするんです。カナダの人たちは近所付き合いをとても大切にするので、このような集まりが割とひんぱんにあります。とてもカジュアルで、食べ物や飲み物を持ち寄って、普段はあまり話す機会のない年配の方から赤ちゃんまで、みんなでワイワイ楽しみます。少しお酒が入ってくると(?)、家からギターや楽器を持ち出して、みんなで大合唱……なんてこともあります。

もうひとつ、地域一丸となって行うのが、ハロウィンです。住宅街では、ほぼすべての家庭が、自宅のドアを開いて子どもたちを歓迎します。何百人という数の変装した子どもたちやその家族が住宅街を練り歩いている様子は圧巻です。地域ぐるみで子どもたちを喜ばせようとしているのがよく伝わり、毎年感動しています。本当に素晴らしい地域の交流の場です」(カナダ)

「行政関係の公的コミュニティーはあまり活発ではなく、近所の住人同士もあいさつを交わすぐらいで、積極的に交流することはほとんどありません。コミュニティーとしてよく機能しているのは家族親戚、次いで宗教関係などです。生活で困ったことがあれば、教会関係のボランティアが手を差し伸べるのは珍しいことではありません。信者でなくても自由に出入りできるイベントなども開催されます」(ブラジル)

「ムスリムの方にとってはモスクが地域活動の場だと思いますが、私は信徒ではないので、地域コミュニティーはありません。現地の幼稚園に子どもが通っていたため、そこで少し交流があった程度です」(パキスタン)

「地域ごとに公民館のような施設があり、さまざまな活動が行われています。ヨガなどのクラスに通っている日本人も多いそうです。私自身は、幼稚園のお友だちママや、かつて語学学校でお世話になった先生と、ひんぱんに交流しています。台湾の人は他人との距離が非常に近いため、子連れで移動していると、話しかけられたり、お菓子などをいただいたりすることがよくあります。時には、『帽子をかぶらせなさい』、『毛布をかけなさい』、『靴下を履かせなさい』などと、注意を受けることも……」(台湾)

「ホーカーやフードコートも地域コミュニティーのひとつなのかも。私はローカル(現地)の子とシェアして暮らしており、ローカルと触れ合える機会が多かったので、特に地域コミュニティーを利用したことはありません」(シンガポール)

仕事をリタイアしても、楽しみも元気もいっぱい!

それぞれの国・地域で、シニア層がどんな過ごし方をしているのかについても、聞いてみましょう。最近の日本と同じく、若者よりもアクティブなシニアが多いのでしょうか?

「公園などのベンチでお友だちとおしゃべりしていたり、カフェで新聞をのんびり読んでいたり、各地区にあるカサ・デ・アンシアーノというお年寄りが集まる場所でのイベントに参加したり、トランプなどで遊んだりしています。日曜日や祝日は、家族と一緒に過ごすことが多いです」(スペイン)

「ハイキングや犬の散歩、ファーマーズマーケットで買い物をしている方などをよく見かけます」(アメリカ)

「日曜日には教会に行くシニア層の方々が多いです。また、コミュニティーセンターや体育館などの公共の施設でもシニア層向けのプログラムやイベントが多数開催されており、フィットネスや生涯学習に励むシニア層の方々を多く見かけます。地元のイベントには決まってシニア層のボランティアがいらっしゃいますし、地元のさまざまなグループや団体に所属し役員として地元の活性化に貢献しているシニア層の方々も印象的です」(カナダ)

「子どもや親兄弟と会って、昼食や夕食を共にする人が圧倒的な多数派です。また、特に女性は、午前中に教会に通う人がたくさんいます」(ブラジル)

「モスク周辺に集うシニア層の方をよく見かけます。個人宅に集まって、クリケットのテレビ中継を観ながら食事を楽しんでいる方も多いですね」(パキスタン)

「平日、休日を問わず、公園に集まっておしゃべりをしたり、気功やダンス、太極拳など、グループで体を動かしたりしているアクティブなシニアの方々をたくさん目にします。それから、喫茶店でシニア層の方々に出会う機会も多いです。朝食、昼食、お茶の時間、夕暮れ時……いつも店内はシニアの方々で賑わっています」(台湾)

「HDB(公団住宅)のあるところでは、ウェットマーケット(市場)でお年寄りがモヤシのひげ根を取りながらおしゃべりしていたり。それとは別に、アメリカンクラブやクリケットクラブなどの特権階級が所属する会員制のクラブハウスで、昼から時間を過ごすお年寄りもいます。私の友人の家では、おばあちゃんはいつも家事をしていました。共働きの家庭が多いので、おばあちゃんが主婦の役割を果たしているところも多いのでしょう。その一方で、メイドを雇っている家庭も少なくありませんが……」(シンガポール)

将来も今の国・地域に住み続けたいのは少数派

さて、最後に、皆さんがこの先もずっとそれぞれの国・地域で暮らし続けていくつもりなのかどうかを尋ねてみました。

「もちろんどの国にも良い面と悪い面はあるものの、国や街に特に不満はありません。ただ、家族に関する個人的な都合から、今はもう住んでいません」(スペイン)

「環境も良く、物事がスムーズに進むので、転勤などのやむをえない事情がなければ、少なくとも子どもが小さいうちは住み続けたいと思います」(アメリカ)

「18年間カナダのいくつかの都市に住みましたが、これからもずっと住み続けたいかどうかの答えはまだ出せていません。カナダにも、日本にも、良いところも自分に合わないと感じるところもそれぞれたくさんあります。子育て中の今の 私は日本の方に惹かれますが、将来ライフステージが変われば、また考えも変わるかもしれません。人生の拠点が2つの国にあるのも素敵かなと、思ったりもします」(カナダ)

「どちらとも言えません。今は子どもが教育を受けているので、他国への移動の予定はありませんが、将来、自分自身は1年の4分の1から半分ぐらいは日本か他国で過ごしたいと考えています。その大きな理由は、サンパウロは空気や水、街 並みがあまりきれいでないうえに、海もなく、素晴らしい場所に暮らしているという実感が持てないからです。ただし、サンパウロにも、世界各国からのさまざまな人種や民族、階層の人に出会え、人々を寛容に受け入れ、国際的な感覚がある という魅力もあります。ひとまず、サンパウロの今の地域に家は確保しておくつもりです」(ブラジル)

「ずっと暮らし続けるつもりはありません。最大の理由は、やはり宗教観が大きく異なるためです。現地の人々も人柄は温かいのですが、改宗しない限りは本当の意味で受け入れられるとは思えず、集団の中で異端として暮らすのは非常につ らいものがあります。治安や衛生環境も、かなり悪いです。永住するなら、行政や病院が信頼でき、宗教の多様性が認められる社会を望みます」(パキスタン)

「ずっと住み続けることは考えていません。自分の仕事をするには日本に帰らなければならず、子どもに日本の教育を受けさせたいので」(台湾)

「ずっと住めるなら住みたいですが、シンガポールはもはや一般人には暮らせない国になっています。物価がめちゃくちゃ高く、ビザも発給されにくいです。大層なお金持ちなら、これ以上住みやすい国はないと思いますが……」(シンガ ポール)

個人的な理由から社会的な理由までさまざまですが、ずっと住み続けるという決断は簡単には下せないようです。もっとも、前回のシーズン2では「ずっと住み続けたい」という意見が多数派だったので、個人や国・地域の事情にもよるので しょう。海外旅行や移住を検討する際には、現地からの率直な意見、感想もぜひ参考にしてみてください。

※ 本記事は各国または地域に在住のガイドおよび在住者個人の見解であり、掲載される情報の内容を保証するものではありません。
掲載される情報は、ガイドおよび在住者の居住する国や地域の中でも居住地や関係する自治体等によって異なる場合があります。

※ 掲載される情報は2019年12月時点のものです。

<取材協力>
スペイン(バルセロナ)秦 真紀子、アメリカ(ポートランド)東 リカ、カナダ(バンクーバー)ハインリクス 可奈子、ブラジル(サンパウロ)大浦 智子、パキスタン(イスラマバード)篠原 尚子、台湾(台北)酒井 裕子、シンガポール(シンガポール)稲嶺 恭子

トップへ戻る