予定どおりに物事が進まないのが
ブラジル流?

交通・通信
予定どおりに物事が進まないのがブラジル流?

快適・便利に暮らすうえでは欠かすことのできない「交通」や「通信」のインフラ。どちらも日本では整備されていますが、世界の国・地域では、どうなのでしょうか? どうやら、世界中で急速に発展する通信環境に比べると、交通事情の方はそれぞれのお国柄や地域性がまだまだ残されているようです。早速、その辺りの事情について、ヨーロッパ、北米、南米、アジアの7カ国からレポートしてもらいましょう!

配車アプリもあるけれど、ロバ車、牛車も!

まずは、それぞれの国・地域で、主に利用されている公共交通機関が何なのか、教えてもらいました。

今回調査した7つの国・地域は、パキスタンを除くと、どこも公共交通機関はかなり整備されています。

すべての国・地域で主要公共交通機関として挙げられたのがバスです。

次いで多かったのが、大量輸送用の鉄道。スぺイン(国営鉄道、電車、地下鉄)、カナダ(電車)、ブラジル(地下鉄)、台湾(MRT)、シンガポール(MRT)で、主要交通機関に挙げられました。MRTとは、地下鉄を含む、都市と近郊を結ぶ高速輸送鉄道のことで、一部の国・地域では特にこのように呼ばれています。

従来のタクシーはスペイン、ブラジル、台湾、配車アプリもアメリカ(Lyft、Uber)、ブラジル(Uber)、パキスタン(Careem)と、それぞれ3つの国・地域で挙げられました。

路面電車が利用されているのは、スペイン、アメリカです。アメリカでは、旧来の路面電車「ストリートカー」、環境に配慮した新型の路面電車「ライトレール」の2種類があるそう。

今回調査した国・地域のうち、最もユニークな公共交通機関が利用されているのは、パキスタンでしょう。

「イスラマバードではオートリキシャ(三輪タクシー)や家畜(ロバや牛)車の走行と乗り入れが禁止されているため、自家用車、自家用バイクを利用している人がほとんどです。配車アプリ「Careem」も利用されています。 『メトロ』と呼ばれる幹線バスが4年ほど前に整備され、隣市への交通が便利になりましたが、基本的にパキスタン人以外の乗客はいません。市内には乗合バス(ハイエース、トラック荷台など)も走っているものの、バス停が整備されておらず、外国人の乗降は難易度が高そうです。 隣市のラワルピンディでは、オートリキシャ、ロバ車、牛車が活躍しています。それが、渋滞の原因にもなっているのですが……」(パキスタン)

素朴なロバ車や牛車と先進的な配車アプリが共存しているなんて、パキスタンの光景を想像してみると、ちょっと不思議な気がしてしまいますね!

すごいお金持ちでないとクルマを持ちにくい国は?

自動車の保有率は?(感覚値)

次に、公共交通機関以外の手段についても、皆さんに聞いてみましょう。お住いの国・地域での自動車の保有率は?

「60%ぐらいです」(スペイン)

「感覚値で、70%強ぐらいでしょうか。郊外では、2台以上保有している世帯も。ポートランドでは、ほかの都市に比べて、お金持ちでもそれをひけらかさないような実用的なクルマが好まれる傾向が伝統的にあります。スポーツカーやセダンよりも、アウトドアに行けるタイプのクルマが人気です」(アメリカ)

「80%ぐらいの世帯で自動車を保有しているのではないでしょうか。私のようにクルマを運転しない(免許を持っていない)人はまず見かけませんし(笑)、子どもの幼稚園の行事でも親がクルマで送迎することが前提になっていたりするので、クルマのない生活を送るのは厳しそうです。公共のバスの本数は多いですが、カバーしているエリアが狭いこともあり、自家用車が各世帯に1〜2台あるのが主流だと思います」(カナダ)

「平均すると、1世帯に0.8~1台保有している感じです。自動車を持っていない世帯がある一方で、2台以上の自動車を持っている世帯もあります」(ブラジル)

「90%ぐらいの世帯で保有している印象です。自動車を保有していない世帯も、少なくともスズキのバイクは持っています。中産階級以上なら1人1台は保有し、上流家庭や外国人家庭では専属ドライバーを雇っています」(パキスタン)

「私が住んでいるエリアでは、電車、バス、タクシーなどの移動手段が豊富なため、自動車の保有率はそれほど高くなさそうです。私的な移動手段なら、自動車よりもバイクの方が一般的です」(台湾)

「保有率ははっきりとわかりませんが、自家用車を持つのはコスト的にかなり大変です。2018年には、政府が保有台数伸び率を0%にするという声明を出しています。日本のように普通にクルマを持つのは一般的ではなく、すごいお金持ちが税金をたくさん納めて超高級車を保有するという感じです」(シンガポール)

自動車の保有率に関しては、それぞれの国・地域の事情もありますが、住んでいるエリアが都市部なのか郊外なのかによっても大きく左右されそうです。ちなみに、日本では、2016年の自動車保有率が約62.5%。乗用車に限れば、約47.6%です(*1)。それにしても、シンガポールでクルマを持つのがそんなに大変なことだとは……全然知りませんでした!

さて、一時期に比べると、ガソリン車からHV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)への切り替えはペースダウンしているようにも見受けられますが、各国・地域の状況はどうなっているのでしょうか?

「大半がガソリン車で、HVが少し出てきた感じです」(スペイン)

「最近は、ガソリン車からHVへの移行が見られます。EVも増えています」(アメリカ)

「ほとんどがガソリン車ですが、ガソリン代が高騰していることや、近所の図書館やスーパーなどにEVの充電スタンドが増えてきていることもあり、何人かの知り合いがEVに買い替えました」(カナダ)

「割合ははっきりわかりませんが、ガソリン車、エタノール+ガソリン車、ディーゼル車が走っています」(ブラジル)

「都市部では、ガソリン車8割、ディーゼル車1割、天然ガス車1割。地方では、ディーゼル車の割合が3割程度まで増える印象です」(パキスタン)

「ほとんどがガソリン車で、時々HV、ごくまれにEVを見かけます」(台湾)

世界的に見ると、まだまだガソリン車が大勢を占めているよう。HV、EVともに、普及率はそれほど伸びていないのかもしれません。

何時に来るかわからず、来ないこともあるバス…

そのほかにも、お住いの国・地域の交通事情について、皆さんに教えてもらいました。

「街中は一方通行の狭い道が多く、駐車場は少ないうえに、路上パーキング用の料金を払う機械は使いにくく、壊れていることも。無料で路上に停められるスペースもありますが、すき間なく縦列駐車され、交通量も多いので、駐車技術が必要です」(スペイン)

「最近は、人口増加により、自動車の渋滞が大きな問題になっています」(アメリカ)

「バスや電車は本数が多く、とても便利です。バンクーバーは碁盤の目のように整然と道がつくられているため、慣れれば簡単に移動できます。バスに乗る際には、ドライバーも助けてくれます。電車に関しても、駅員さんはいませんが、周りの人に声をかければ丁寧に教えてくれことが多いです。バスも電車も車内が広く、ベビーカーを折りたたまなくても問題なく乗れるので、とても助かっています」(カナダ)

「サンパウロ市内の地下鉄は少なくとも5分に1本は停車し、比較的きれいに保たれているので、便利かつ快適です。ただ、油断していると泥棒にあいやすいので、常に注意を払う必要があります。市内バスも目的地までのアクセスはメトロと併用すれば便利ですが、各停留所に時刻表がなく、何時に来るか正確に予測できず、バス停の場所もわかりにくいなどの難点があります。また、ごくまれに、待っていても、まったく来ないことも……」(ブラジル)

「基本的に、外国人は、自家用車にドライバーを雇うことが推奨されています。パキスタン人でも、富裕層はドライバーを雇うのが普通です。ドライバーがムスリム(イスラム教徒)の場合には、お祈りの時間があり、特に金曜日の昼は長時間不在となるため、その間の行動は制限されます。ラマダン(断食月)には、ムスリムのドライバーは睡眠不足と疲労を抱えており、事故が多発。夕飯前は、特に注意しなければなりません」(パキスタン)

「運転マナーは良いとは言えず、日本人が運転する場合には注意が必要です」(台湾)

「外国人が運転免許を取得するためには試験に合格しなければなりませんが、言語は英語、中国語、マレー語、タミール語から選択し、日本語がないので、その点では難しそうです」(シンガポール)

パキスタンでは、携帯電話の契約をするのが難しい

固定電話は減少傾向?携帯電話で済ませる国がほとんど!

通信環境についても、聞いてみましょう。皆さんがお住いの国・地域の主な通信手段は、携帯電話?チャットアプリ?それとも……?

「主な通信手段は、スマートフォンです。メールよりも通話を利用する人が多い気がします。こちらで利用されているチャットアプリは、LINEではなく、WhatsAppです」(スペイン)

「携帯電話だけで済ませる家庭が増えている印象です。我が家にも、固定電話はありません」(アメリカ)

「家庭で固定電話を使っている人はあまりいません。義理の両親宅には固定電話がありますが、そのほかで利用している人について聞いたことはほとんどありません」(カナダ)

「固定電話をカットする人が増えていて、特に若者は最初から設置しないケースが少なくありません。メールが主な通信手段ですが、30代以下ではWhatsApp(チャットアプリ)もよく利用されています」(ブラジル)

「インターネット・Wi-Fi環境は整備されています。携帯電話も契約可能ですが、ビザが切れると当局からすぐに断絶されてしまうので……。ここ1~2年は、新規携帯電話回線の契約が難しくなっています」(パキスタン)

「固定電話もありますが、ほとんどの人が通信手段として使用しているのは携帯電話です。また、年齢を問わず、メールよりもLINEの方がよく使われています」(台湾)

「固定電話はあまりないと思います」(シンガポール)

パキスタンを除く国・地域では、やはりスマートフォンを中心とした携帯電話が主な通信手段です。アメリカ、カナダ、ブラジル、台湾では、通話と同等かそれ以上に、チャットアプリも用いられているよう。アメリカ、カナダ、ブラジル、パキスタン、シンガポールでは、メールも主な通信手段の一つとして挙げられました。日本同様、今回調査したすべての国・地域でも、固定電話の利用はやはり減っています。

ネット環境が進んでいて、通信費も安い台湾

ほかにも、お住いの地域の通信環境に関して、特徴、良い点、不便な点などを教えてもらいましょう。

「通信費が知らないうちに急に上がったりするので、気が抜けないところはあります。インターネットは整備されてい て、日常的に利用しています」(スペイン)

「アウトドアなどに出かけない限りは、通信網は整備されているので、快適です」(アメリカ)

「インターネット環境が整っているので、とても便利です。小さなカフェやレストランでも、Wi-Fiのパスワードが貼り 出してあって、どこでもほとんど無料でWi-Fiがつながります。また、市役所の手続きやパスポート申請など、多くのこ とをインターネット経由で済ませられます」(カナダ)

「普通に利用できている間は特に不便を感じないものの、時々回線が途切れて数日間使えなくなることがあり、その期間 の保証はありません。原因がわからない場合には、通信会社に連絡して技師を呼びますが、ある日の午前または午後とい うぐらいにしか予定が立たず、しかも待っていても来ないことも……。そうすると、また連絡し直したりしなければなら ず、仕事で急を要しているときにはとても不便です。また、窓口で対応する人によって言うことが違い、そのために何度 も連絡し直したり、担当者が変わったりして、振り回されることがあります」(ブラジル)

「大規模デモがあるときには、テロを警戒して、当局から通信回線を切られてしまいます。有事の際に電話ができなくな るのは不安です」(パキスタン)

「インターネット環境は整備が進んでいると感じます。Wi-Fiも、日本よりも相当に広い範囲で、無料で使えます。通信 費についても、日本の大手キャリアと比べると、圧倒的に安いです」(台湾)

「シンガポールは、通信環境に関しては世界でもトップクラスに優れており、進んでいます」(シンガポール)

今や、世界中のほとんどの国・地域にインターネットが普及し、世界につながっていることを実感します。ただ、イン ターネットの分野では日本が世界をリードしているといえないのが、少々気になるところです。

※ 本記事は各国または地域に在住のガイドおよび在住者個人の見解であり、掲載される情報の内容を保証するものでは ありません。
掲載される情報は、ガイドおよび在住者の居住する国や地域の中でも居住地や関係する自治体等によって異なる場合があります。

※ 掲載される情報は2019年12月時点のものです。

<取材協力>
スペイン(バルセロナ)秦 真紀子、アメリカ(ポートランド)東 リカ、カナダ(バンクーバー)ハインリクス 可奈子、ブラジル(サンパウロ)大浦 智子、パキスタン(イスラマバード)篠原 尚子、台湾(台北)酒井 裕子、シンガポール(シンガポール)稲嶺 恭子

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