治安は良いが、自然災害が多い。
日本と似た環境の国は?

治安・防災
治安は良いが、自然災害が多い。日本と似た環境の国は?

移住して長い間暮らすのはもちろん、旅行でひとときを過ごすにも、治安や防災の面での心配がないに越したことはありません。治安や防災については、国際情勢や地球活動の変化の影響を受けるため、最新の情報を知っておきたいものです。早速、それぞれの国・地域にお住いの皆さんに、レポートしてもらいましょう!

治安が良いのは、アメリカ、台湾、シンガポール

まずは、治安です。それぞれの国・地域にお住いの皆さんは、どのように感じているのでしょうか?

「良い」と回答があったのは、アメリカ、台湾、シンガポールの3つの国・地域です。

「ポートランドは、治安は良いと思います。アメリカ全体で考えても、治安は悪くありませんが、日本のように小学生が子どもだけで出かけることは少ないです。オレゴン州では、10歳以下の子どもが一人で留守番することは、法律で禁止されています」(アメリカ)

「住んでいるエリアは夜間の街灯が明るく、深夜まで営業しているコンビニエンスストアも多いため、治安の悪さを感じたことは一度もありません」(台湾)

「自宅や滞在中のホテルの自室などを除き、公共の場での飲酒は時間が厳しく定められていることもあり、治安は日本よりも良いくらいです」(シンガポール)

「悪い」、「あまり良くない」というグループには、カナダ、ブラジル、パキスタンの3カ国が該当しました。

「カナダの犯罪率は日本の5〜10倍という統計を目にしたことがありますが、感覚的にも日本ほど治安は良くないです。ただ、地元の人たちは行くべきではないエリアをあらかじめ知っているので、そうした場所に足を運ばないようにすれば、危険を感じることはほとんどありません。また、場所を問わず、夜の女性の一人歩きはおすすめできないです。そのほか、日中でも、街を歩いていると、ホームレスらしき人にお金をねだられることがよくあります。住民にとっては日常茶飯事のことで、気にもならないのですが、慣れない人は少し怖く感じるかもしれません」(カナダ)

「私が住んでいる地域は比較的落ち着いていますが、それでも日ごろから不審者などに気をつけて行動しなければいけません。ブラジル全体が日本に比べて治安が悪いといえるものの、注意を払うことで、それほど問題なく過ごせます。地域や通りがひとつ隣にずれるだけで治安に大きく差が出るので、住居選びや普段行動するうえでは、そうした情報を事前に入手しておくことが重要です。また、日本人というだけでお金持ちと思われて狙われやすい点にも、注意する必要があります」(ブラジル)

今回の記事に関して、ヨーロッパで唯一の参加となるスペインからは、「良くも悪くもない」との回答が寄せられています。

通りがひとつ隣にずれるだけで治安に大きな差が!日本人というだけでお金持ちと思われることも

人種や移民問題が治安にあまり影響しない国は?

それぞれの国、地域の治安に関し、皆さんの実体験についても聞いてみました。

「スペイン人の夫が、私と一緒にいるときに、地下鉄でスリに遭遇しました。一瞬で、お札だけを財布から抜き取られたんです。プロのスリ集団がいるので、地下鉄では気が抜けません」(スペイン)

「玄関の外に新品のナイキのスニーカーを置きっぱなしにして、旅行に出かけてしまったことがありますが、帰ってきてもそのままの状態でした。その際に、治安の良さを実感しました」(アメリカ)

「駅の構内で仕事をしていたときには、覆面警察官が犯人を追いかける映画さながらのシーンを何度も見かけました。その一方で、人種差別や反移民的な思想が原因の犯罪に出合わないのは、多種多様なバックグラウンドをもつ人々が平和に共存するカナダの良いところだと思います。英語を母国語としない外国人も多く、英語に不安のある人にも寛容です」(カナダ)

「今の地域には13年ほど住んでいますが、危険な状況に遭遇したことはありません。サンパウロ市の卸売店が集まる中心街では、自分の油断からバッグをひったくられたことがあります。また、以前、治安の悪さで有名な通りに住んでいたときに、銃を持った人が通りを横切ったり、停車中のクルマの窓ガラスが割られたりするのをよく見かけました」(ブラジル)

「犯罪に巻き込まれたことはありませんが、時々夜中に発砲音がすることがあり、気は抜けないです。知人は、レストランで、ケンカが原因の発砲事件に遭遇しました。外出する際には、必ず信頼できる人と一緒に行動し、地元の市場ではシャルカミ(民族服)を身につけ、市内中心部以外ではスカーフで頭部を隠してムスリムの方に配慮するなど、悪目立ちせず周囲に溶け込むように努力しています」(パキスタン)

こうしてみると、治安のあまり良くない国・地域で過ごすには、危険なエリアに近寄らないこと、相手を刺激しないように行動すること、油断をせず周囲に注意を払うことが大事なようです。

自然災害が少ない国でも、今後は気が抜けない?

地震ばかりでなく、近年は水害も多く、自然災害と隣り合わせの日本。自然災害の発生は地理的要因にも大きく左右されますが、今回取り上げている国・地域でも災害はひんぱんに起きているのでしょうか?

「広い国なので、地域差があり、バレンシアなどは水害に見舞われますが、私の住んでいるバルセロナでは自然災害を経験したことはほとんどありません」(スペイン)

「カスケード山脈の地震が心配されています」(アメリカ)

「10年以上バンクーバーに住んでいて、大きな被害の出るような嵐に見舞われたのは、たったの2回。毎年、夏になると、近郊での山火事の煙による大気汚染が問題になります。バンクーバーエリアは、地震が起こる可能性が指摘されているものの、日ごろは天災にあまり縁のないところです」(カナダ)

「一時的に暴風雨が発生して倒木で停電したり、大雨で水道管が破裂したりすることはあります」(ブラジル)

「日本同様、地震国で、年によっては台風も非常に多いです」(台湾)

「地震は起こらないというのが、前提になっています」(シンガポール)

世界的に異常気象が多いとされる昨今ですが、多くの国・地域では、日本と比べれば、自然災害に見舞われる確率はまだまだ低いのかもしれません。ただ、日本と隣り合っている台湾では、やはり同様の自然災害に悩まされているよう。シンガポールは、治安が良いうえに、自然災害の脅威も少なく、安穏に暮らすにはうってつけの国といえそうです。

学校に緊急用品を常備するアメリカの小学生

自然災害が多発する日本だからこそ、その対策もかなり整備されています。ほかの国・地域では、防災への取り組みはどうなっているのでしょうか?

「自然災害があまり起きないだけに、備えもなく、少しの大雨や降雪で交通がマヒすることがあり、大変です」(スペイン)

「小学校では、生徒一人ひとりが災害時に備えて『エマージェンシーキット(緊急用品)』を持参し、1年間保管しています。また、学校での定期的な防災訓練、コミュニティーの防災訓練の案内などがあります」(アメリカ)

「学校や職場では定期的に地震を想定した避難訓練も実施していますが、市民の防災意識はそれほど高くないと思います。実際、いざというときのために水や食品を備蓄しているなどという話は、あまり聞いたことがありません。カナダ人の夫は、地震が起きたときにどうすればよいのか、まったく知りませんでした」(カナダ)

「防災に関しては、意識がとても低い印象があります。問題が起きてから対策を講じるという感じです。基本的に住宅が石造りのため、火事の発生件数は日本に比べて少ないかもしれません。ブラジルのレスキュー隊や消防隊は比較的よく訓練されていると定評があり、災害時には通報するのが最優先になりそうです」(ブラジル)

「大型台風の直撃が予想されるときには、自治体ごとに企業や学校が全面的に休みになる『停班停課』が発令されます」(台湾)

「防災に関しては、シンガポール人はまったく気にしていない様子です。地震などは起きないと信じています」(シンガポール)

防災意識については低いか、あまり高くないという国・地域が過半数です。アメリカ、台湾、カナダでは何らかの対策が講じられていますが……、それでも日本での防災意識・対策とはずいぶん差がありそうです。

日本の防災意識・対策と差はあるが・・・

治安・防災面で、どんなことが不安?不満?

治安も防災もそれぞれの国・地域で事情が異なる中で、皆さんがどんな不安や不満を抱いているのか、あらためて聞いてみました。

「警察官はたくさんいますが、何かが起こってからでないと対処してくれません。結局、自分の身は自分で守るしかないのかなと考えています」(スペイン)

「人種差別、性差別などが治安に与える影響が心配です。それから、銃規制は強化してほしいと思います」(アメリカ)

「バンクーバーでも大地震が起きる可能性について小耳にはさみますが、それに対してどのような準備をしておくべきなのか、防災グッズはどこで手に入れられるのか、自宅マンションは耐えられるのかなどの情報が不足しており、いつも心配しています。人々が防災意識を高められるよう、行政がもっと働きかけてくれるとよいのですが……」(カナダ)

「特に不安はありません。ブラジルでの生活に慣れてしまうと、物事が思いどおりに進んでいかないという現実に直面します。結局のところ、問題が起きてから、その対策にあたるしかないのです。治安面でいえば、警察官が見回りをしているとなんとなく安心感を抱くものの、警察官と犯人との間で銃撃戦が起こるようなケースもあり、警察官のいるところには近づきたくないという、相反した気持ちも生まれます」(ブラジル)

「パキスタンのセキュリティ・ガード(警備員)は、特別な訓練も受けずに銃を携帯しており、暴発させるのではないかと心配です。また、非合法で銃が手に入りやすいせいか、ちょっとした争いで発砲されることも多く、巻き込まれるのを避けるため、人の多い場所へは近づかないようにしています。毎晩、爆竹が鳴り響き、その中に時々発砲音が混じるので、就寝時も気が休まりません」(パキスタン)

「日本同様、地震が多い国なので、揺れがくるたびにヒヤッとします。建物の耐震性について、日本のものほどには信用がおけず、その点が心配です。2018年から政府が私有建築物の耐震性調査を進めていると聞いていますが、外国人として暮らしていると現地の詳細な情報をつかみにくいという不安もあります。実際、2016年の台南の地震では、欠陥だらけの違法建築のマンションが大崩壊しましたし……」(台湾)

「喫煙やポイ捨て、夜間の公共の場所での飲酒禁止などのルールが多く、治安の向上に役立っていますが、自分もいつペナルティーを科されるかわからず、それが不安といえば不安かも」(シンガポール)

実際にその国・地域で暮らす中で感じる不安や不満だからこそ、リアルに伝わり、とても参考になる部分が多いですよね。治安や防災は、快適に暮らすためばかりでなく、場合によっては生命を守ることにもかかわる重要な要素だといえます。旅行や移住をお考えの際には、現地からの貴重な情報をぜひお役立てください。

※ 本記事は各国または地域に在住のガイドおよび在住者個人の見解であり、掲載される情報の内容を保証するものではありません。
掲載される情報は、ガイドおよび在住者の居住する国や地域の中でも居住地や関係する自治体等によって異なる場合があります。

※ 掲載される情報は2019年11月時点のものです。

<取材協力>
スペイン(バルセロナ)秦 真紀子、アメリカ(ポートランド)東 リカ、カナダ(バンクーバー)ハインリクス 可奈子、ブラジル(サンパウロ)大浦 智子、パキスタン(イスラマバード)篠原 尚子、台湾(台北)酒井 裕子、シンガポール(シンガポール)稲嶺 恭子

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