ドバイでは、危険なドライバーが
増える時期がある?

交通・通信
最も利用されているのは地下鉄、次いでバス。国によってはタクシーや自転車も

国土の地理的要因やお住いの地域の人口密度などに左右されやすい「交通」と、それらの影響を比較的受けにくい「通信」の分野。ヨーロッパ、アメリカ、オセアニアを中心に実施した前回の調査では、「通信」の分野で、やはり国や地域の違いを問わない共通項が多く見られました。主にアジア諸国で実施した今回の調査結果は、どんなものに……? 世界各国の「交通・通信」事情をレポートします!

最も利用されているのは地下鉄、次いでバス

まずは、各国(地域)の主要公共交通機関が何なのか、お住いの皆さんに尋ねました。昨年に調査した地域では、バスが最も多く、地下鉄がそれに続いていましたが……。

ノルウェー、アラブ首長国連邦のドバイ、中国、韓国……、今回調査したすべての国・地域で利用されている主要公共交通機関が地下鉄です。

バスも、ノルウェー、中国、韓国で主要公共交通機関として挙げられています。

ドバイ、中国では、タクシーもよく利用されているようです。

ノルウェーでは、そのほかにトラム(路面電車)、貸出シティバイク(レンタサイクル)も「市民の足」として活躍が、ことのほか、充実しているんですね!

お住いの国・地域の交通事情について、特徴や印象なども教えてもらいましょう。

「オスロ周辺では、地下鉄、バス、トラム、フェリーなどの乗り物の種類が変わっても、運賃は同一です。運賃は、エリアを分割したゾーン制で、距離や乗り物の種類に関係なく、ゾーンをいくつまたいで移動したかによって金額が決まります。ちなみに、オスロの中心部はゾーン1内にほぼ収まっており、1時間で約468円(36ノルウェークローネ)です。ほとんどのオスロ市民は、このゾーン1の行動範囲内で暮らしていると思われます」(ノルウェー)

「メトロ(地下鉄)がとてもきれいで、運賃も安く、便利です! 日本の『ゆりかもめ』のようで、それもそのはず、つくる前に実際に『ゆりかもめ』を視察したそうです」(ドバイ)

「レンタサイクルがとても便利です。町がやや飽和状態のため、景観はよくありませんが、日本のものよりもずっと使いやすいです」(中国)

「流しのタクシーは非常に多く、つかまえやすいので、便利です。また、日本と比べると、料金も安いので、気楽・気軽に利用できます」(韓国)

1人当たりの自動車保有率が100%以上のドバイ

次に、公共交通機関以外の手段、特に自動車、マイカーについて、皆さんに聞いてみました。お住いの国、地域の自動車の保有率は、どれぐらいなのでしょうか?

「ノルウェー交通経済機関の調べによると、首都のオスロで51%です」(ノルウェー)

「100%以上です」(ドバイ)

つまり、ドバイでは、人口1人当たり1台以上の自動車を保有している計算となります。ちなみに、日本では、2016年の自動車保有率が約62.5%。乗用車に限れば、約47.6%です。*1

「私の住んでいる北京の人口は2171万人、自動車保有台数は606万5000台ですから、単純計算で保有率は約28%。東京の人口当たりの保有率は25%以下といわれているので、東京よりやや多い感じでしょうか。ただし、これは表向きの数字です。保有台数を抑えるという名目でナンバープレートの発行に制限をかけているため、ここ数年、北京の街では地方ナンバーの車両を多く見かけるようになりました。住宅エリアに停まっている自動車の10台に1~2台は、地方ナンバーを付けている場合も珍しくありません。また、北京は東京と比べて公共交通機関が充実しておらず、マイカーの必要度が高いこともあり、朝7時頃から深夜11時ごろまで、慢性的な渋滞となっています」(中国)

「韓国国土交通部のデータ(2018年12月末基準)によると、自動車累積登録台数が2320万2555台となり、人口2.2人当たり1台所有していることになります(1人当たりの自動車保有率は約45.5%)。 新築アパートの多くが地下に広い駐車スペースを備えており、例えばアパートで暮らす世帯では1世帯につき自動車2台を保有しているケースが多いようです。世帯を構成する年齢や経済状況などによっては、もっと多く保有している世帯もあります」(韓国)

東京では47.6%程 ドバイでは100%以上!

最近では環境意識の高まりによって、特にヨーロッパなどではガソリン車やディーゼル車は減る傾向にありますが、ヨーロッパのノルウェーとほかの国・地域で自動車の動力源に違いは見られるのでしょうか?

「首都のオスロは、電気自動車、EV普及のモデルとして、世界中から注目を集めています。もっとも、オスロの当たり前は、ノルウェーの当たり前とは違います。ノルウェーの田舎では、電気自動車の普及はまだまだ発展途上です。ほかに、ハイブリッド車、ガソリン車、ディーゼル車も走っています」(ノルウェー)

「クリーンエネルギーには力を入れているようですが、周囲にはガソリン車やハイブリッド車が多いですね」(ドバイ)

「中国公安部の統計によれば、2018年末までの中国新エネルギー自動車保有量は261万台、自動車総数の1.09%で、2017年から107万台増加(+70%)という結果でした。新エネルギー自動車のうち、純電気自動車(EV)は211万台と、全体の81.06%を占めています。新エネルギー自動車の飛躍的な伸びは、補助金およびナンバープレート優遇による政策誘導が主な要因だといわれています。

実際のところ、新エネルギー自動車の増加は肌身に感じるほどではなく、まだまだ「たまに見かける」程度です。とはいえ、こちらは電動自転車(バイク)や電動三輪車、電動バスなどが日本よりずっと普及しており、バッテリーの生産ノウハウがあります。発火事故などの問題もありますが、政府が新エネルギー自動車を促進している以上、純電気自動車を中心に新エネルギー自動車が増加していくでしょう。一方で、ディーゼル車は、ナンバープレートが取得しにくいなど、政府に規制されており、今後は減少していきそうです」(中国)

「韓国国土交通部の2018年末のデータでは、ガソリン45.81%、ディーゼル42.80%、LPG(LPガス)8.77%、ハイブリッド1.75%、CNG(天然ガス)0.38%、電気0.24%、水素0.00%、その他0.46%……となっています。ガソリン、LPGは少なくとも2012年のデータからは減少傾向にあり、ディーゼルはゆるやかに増加。ハイブリッド、電気、水素などエコカーの登録台数は46万1733台で、1.5%から2.0%に増加しています。

国としては2022年までに電気自動車を35万台まで普及拡大する目標を立てているようですが、実際には充電スタンドの数、韓国の電気料金累進性のシステム、マンションが多く、駐車場に自家用車が集合している状態の中での充電など、解決しなければならない課題が複数あり、現状では難しいだろうという声も少なくありません」(韓国)

ヨーロッパのノルウェーに限らず、どこの国・地域でもより環境負荷の小さい自動車への切り替えを目指しているようですが、実現にはまだ道半ばといったところでしょうか。

ドバイでは、断食月の腹ペコドライバーに注意!

自動車の保有率以外にも、クルマにかかわる各国(地域)のエピソードを皆さんに紹介してもらいましょう。

「道路の整備状況は、悪くはありません。ノルウェーは山などの自然が多いため、道路整備は重要です。その一方で、環境破壊や大気汚染などにもつながるので、政治議論にもなりやすいところがあります」(ノルウェー)

「運転マナーは、よくありません。さまざまな国の人たちが、さまざまな事情を抱え、経済格差も激しい中、ストレスを感じているドライバーも多いです。特にイスラム教の断食月ラマダンの日中は、空腹のせいか、イライラしているドライバーが珍しくなく、個人的に危険を感じたこともあります」(ドバイ)

「自動車運転免許は、日本のものを持っていれば、筆記試験だけで手続きが完了します。私は、取得していませんが……」(中国)

「運転マナーは、あまりよくありません。 ウインカーを出さないドライバーも結構いますし、 全体的にスピードを出しがちです。 クラクションの音を耳にする機会も、日本よりひんぱんですね」(韓国)

昨年の調査で交通事情に関して最も特徴的だったのが、スウェーデンです。スウェーデンの交通事情の現状やその背景をもっとくわしく知るために、最新のレポートを現地からお届けします。

環境を守るためには援助は惜しまないスウェーデン

スウェーデン国内の主要交通機関は、スウェーデン国鉄、バス、飛行機です。ストックホルムやヨーテボリといった都市部では、地下鉄、路面電車やバスなどの公共交通機関も発達しています。一方、郊外では自動車がないと生活が成り立たない場合も多く、自動車保有率は高めです。また、雪国なのに雪で電車が遅れたりすることなどから、公共交通機関に対する不信感が根強く、それもスウェーデン人がクルマの利用を好む一因となっています。しかしながら、行政は公共交通機関の利用を推奨し、ストックホルムとヨーテボリでは平日の市内への車の乗り入れに関して税金を設定したり、郊外主要駅に無料もしくは低料金の駐車場を用意したりと、さまざまな対策でクルマの利用を抑制する傾向にあります。

ストックホルムの公共交通機関SL(ストックホルム圏ローカル交通)では、地下鉄、バス、郊外電車、トラム(路面電車)、ユールゴールデンフェリーが全路線統一運賃となっており、75分間乗り放題で、スイカのような電子マネーを利用した場合は約383円(32スウェーデン・クローナ)、携帯電話のアプリやキオスクで購入した場合は約539円(45スウェーデン・クローナ)です。7歳以下の子どもは有効なチケットを持った大人と同行の場合は無料、車いす利用者やベビーカーとともに乗車する親子の姿も日常の風景です。

クルマの利用をできる限り減らし、公共交通機関の利用を促進するという政策からもご想像のとおり、スウェーデンの交通事情に環境への配慮は欠かせません。

2018年4月1日より、スウェーデン発着のすべての飛行機に約718~4,788円(60~400スウェーデン・クローナ)の飛行機税が導入されました。バカンスには南の暖かい国で1~2週間過ごすというのがお国柄のスウェーデンだけに、この飛行機税の導入は満を持して行われたとの感があります。

クルマに関しては、環境ディーゼル車や電気自動車などの環境にやさしいクルマを購入すれば購入費の援助や税金減免を受けられる、優遇政策があります。民間でも、こうした環境車の自動車保険料を10%オフにしている保険会社があります。

そして、なんともスウェーデンらしくユニークなのが、電動自転車や電動バイクの購入援助金です。これは環境党の選挙公約にあったこともあり、昨年に実現。昨年度の援助金予算をすべて使い果たしたため、次の予算が計上されるまでは停止中ですが、とても大きな話題になりました。都市部では自転車通勤をする人も多く、自転車道の工事が進んでいます。CO2の排出を少しでも減らし、地球の環境を守っていこうという、環境意識の高いこの国ならではの政策といえるでしょう。

固定電話はもうほとんど使われていないノルウェー

ノルウェーでは固定電話は使いません

交通事情に続いて、通信環境についても聞いてみました。それぞれの国や地域の現在の主な通信手段は?

やはり、すべての国・地域で主な通信手段として挙げられたのは、スマートフォンを中心とした携帯電話でした。

ドバイでは、PC、固定電話も、主な通信手段として挙げられています。

「固定電話もよく使われています。ちなみに、電話代は無料です。固定電話を新たに開通する人は少ないかもしれませんが、賃貸マンション・フルファニッシュアパートメント(家具電化製品付き)にはすでに設置されていることも少なくありません」(ドバイ)

日本では単身者を中心に固定電話を設置しない世帯が増えていますが、ほかの国や地域ではどうでしょうか?

「一般家庭では、日本同様、固定電話は減る傾向にあります」(韓国)

「一般家庭では、固定電話は皆無といってよいほど使われていません。ただし、会社には、今も固定電話が設置されています」(中国)

「固定電話は使いません」(ノルウェー)

全体的には日本と似たり寄ったりの状況のようですが、ノルウェーでは固定電話はもうほとんど使われていないんですね!

今や電話以上にひんぱんに利用されているメールやSNSについても、お住いの国・地域の状況を聞いてみました。

「よく使われているのは、スマホでのSMS(ショートメッセージ)、Facebookのチャットです」(ノルウェー)

「SNSが多く使われています」(ドバイ)

「『中国版LINE』ともいえる微信Wechatがメインです」(中国)

「日本同様、メールもSNSも使われています。日本でのLINEと似たような形で、こちらで特に普及しているのがKakao Talkです。非常に便利な通信手段のひとつとして、多くの人に利用されています」(韓国)

昨年の調査では半数以上の国で挙げられていたメールについて、今年触れているのは韓国のみ。通信手段の主流は、今やSNSといえそうです。考えてみれば、日本でも、メールを使うのは主に仕事のときぐらいになっていますよね。

中国では、インターネットの閲覧に制限が…

お住いの国や地域の通信環境について、ほかにもいろいろお話を聞かせてもらいました。

「ノルウェーは、インターネット環境と、メディアや公共機関でのデジタル化においては、おそらく世界でも飛び抜けて進んでいます。日本と比べると、自然災害も非常に少ないので、通信障害などの問題も起こりにくいです。逆にいうと、インターネットが使えない人には、暮らしにくい国かもしれません」(ノルウェー)

「通信費が高いと感じたことは、ほとんどありません」(ドバイ)

ドバイでは、固定電話が無料なうえに、携帯電話にかかる通信費も安価のようです。

「中国のインターネットは閲覧に制限がかかっているので、その点は不便です」(中国)

「大多数の人が、日常的にインターネットを利用しています。Wi-Fiが設置されている場所も多く、Wi-Fi環境に関しては日本よりも進んでいる印象です。また、カフェなどでは、日本では利用時間制限があるところが少なくないようですが、韓国では制限なく利用できる場合がほとんどで、そうした点も便利です」(韓国)

年を追うごとに、世界中でインターネットが普及し、通信環境もどんどん整備されていることがわかります。今や、インターネットなしでの生活は考えられなくなりました。

※ 本記事は各国または地域に在住のガイドおよび在住者個人の見解であり、掲載される情報の内容を保証するものではありません。掲載される情報は、ガイドおよび在住者の居住する国や地域の中でも居住地や関係する自治体等によって異なる場合があります。

※ 掲載される情報は2019年3月時点のものです。

※ 為替レートは2019年2月28日時点のものです。

<取材協力>
ノルウェー(オスロ)鐙 麻樹、アラブ首長国連邦(ドバイ)西田 麻紀、中国(北京)鈴木 晶子、韓国(大邸)松田 カノン、スウェーデン(オスモ)サリネン れい子

*1 一般社団法人日本自動車工業会HP「主要国の四輪車普及率」より試算

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