専門家執筆Q&A
山端 康幸

不動産の税金Q&A

不動産の税金
Q&A

税理士
東京シティ税理士事務所
山端 康幸

マイホームの購入や売却の税金、アパートなど不動産経営の税金、財産としての不動産相続の税金など不動産に関わる税金の基本的なことを網羅しています。

不動産の税金についてQ&A形式で解説しています。

不動産の相続と相続税

Q
相続・相続税の基本を教えてください。
A

1. 相続

 相続というのは、人が亡くなったときに、亡くなった人(=被相続人)の財産(=相続財産)を、その人の子や妻など(=相続人)が受け継ぐことをいいます。

 相続の順序(法定相続人)と相続できる割合(法定相続分)
 法定相続人は配偶者と一定の血族からなり、配偶者は必ず相続人となります。配偶者がいない場合は子、親、兄弟の順位で、人数による均等な相続分となります。

 相続財産の分割
 不動産などの財産は、相続があったと同時に、その相続財産の分割が決まるまで、法定相続人の共有財産ということになります。「遺言書」がある場合にはその遺言の内容にしたがって、無い場合には①の法定相続人が話し合いで分割することになります。この分割について話し合うことを「遺産分割協議」、その協議内容を文書にしたものを「遺産分割協議書」といいます。この場合法定相続分は話し合いの基準とはなりますが、法定相続分にとらわれる必要はありません。また、相続による不動産の名義変更を「相続登記」といい、その際、「遺産分割協議書」が必要になります。

2. 相続税

 相続が発生し、相続財産が一定額以上あると、財産を相続した相続人には「相続税」が課税されます。相続税は「相続開始後10ヶ月以内」に税務署に申告をし、相続税額を原則として「現金で納付」しなければなりません。  

Q
相続開始から申告、納税までの手続きについて教えてください。
A

 相続開始から申告、納税までの手続きの流れは以下のとおりです。

Q
相続税の計算方法を教えてください。
A

 相続税の計算方法は以下のようになります。

【相続税税率表】

Q
どのような財産に相続税がかかりますか。また、その評価方法を教えてください。
A

 相続税が課税される相続財産とは、本来被相続人が所有していた財産の他、相続税法で定めるみなし相続財産を含みます。

 さらに下記の贈与財産も含みます。

・相続開始前3年以内の贈与財産(暦年課税分)

 ※令和6年1月1日以後に行う贈与により取得する財産に係る相続税については、相続開始前7年以内の贈与財産

・相続時精算課税制度を適用して被相続人から贈与を受けた贈与財産

 ※令和6年1月1日以後に行う贈与については、毎年110万円までは相続税額に加算しません。

 不動産の評価
 建物:固定資産税評価額と同額とされます。固定資産税評価額は一般的に新築価格の60%~70%の水準となっています。
 土地:国税庁が定める「路線価」(路線価が無い地域は固定資産税評価額に一定倍率を乗じた価額)で計算します。この「路線価」とは、「公示価格」※の80%の水準とされています。
※「公示価格」:国土交通省が最新の取引実績等を分析し評価した、通常成立すると考えられる土地価格を示します。

【 路線価図】

 特定居住用宅地(マイホームの土地)の評価減
 マイホームの敷地とされている土地(小規模宅地)については、評価を80%減額する特例があります。
 貸付事業用宅地の評価減については(Q アパート・マンション経営は相続税対策となると聞きました。内容を教えてください。)参照

【特定居住用宅地】

 特定事業用宅地の評価減
 事業用建物・構築物の敷地とされている土地(小規模宅地)についても、評価を減額する特例があります。

【特定事業用宅地】

Q
相続税の申告期限までに遺産分割ができなかった場合、相続税への不利益はあるのでしょうか。
A

 兄弟姉妹間の話し合いがうまくいかないなど、相続税の申告期限(相続開始後10ヶ月以内)までに分割協議が整わない場合、一定の特例などが使えなくなってしまいます。

 主なものは以下の通りです。

 なお、未分割の状態で期限内に申告書を提出するとき、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出しなければなりません。これにより、相続税の申告期限から3年以内に分割されたら、分割された日から4ヶ月以内に更正の請求を行うことで上記①②については適用することができるようになります。当初の納税額が多すぎた場合には、その多い部分の税額が還付されます。

Q
アパート・マンション経営は相続税対策となると聞きました。内容を教えてください。
A

 アパート・マンションなどの不動産は相続財産として相続税の対象になります。しかし、賃貸に供している資産はその評価額が軽減されます。

1. アパート・マンションの建物の評価額

 貸家については、30%の評価減が設けられています。元々、建物の相続税の評価額は建築代金の6~7割で評価され、更に貸家の評価減があるため、結果的に貸家の相続税評価額は建築代金の約50%になるといわれています。

2. アパート・マンションの敷地の評価

① 貸家建付地の評価額

 相続税評価額計算上の借地権割合は地域によって異なっていますが、60~70%の地域が多くなっています。借家権割合は30%一律となっています。従って、上記算式によると、借地権割合に借家権割合を掛けた分だけ評価が下がりますので、更地の評価に比べ約18%(借地権割合60%の地域)または、21%(借地権割合70%の地域)の評価減になります。

② 小規模宅地の評価減(貸付事業用宅地)

【ケーススタディ】

 遊休地に賃貸マンションを建てると相続税評価額が下がります。

 賃貸マンション建築前のA氏の相続税評価額は6億80万円で、相続が発生したと仮定した相続税は8,697万円と想定されました。しかし、有効活用されていなかった更地に借入金で賃貸マンションを建築することにより、相続税評価額は1億6,860万円に減少し、相続税額も958万円に減少されると予想されます。また賃貸マンションの賃料が入ることにより、本人の生活費や相続税の支払財源を作ることもできるため有効活用としては最適なプランとなりました。

 ただし、キャッシュフローや賃貸市場調査等賃貸経営のための研究を十分にしてからの実行が必要です。

 令和4年4月の最高裁判決を受け、国税庁はマンションの評価方法を改訂する方針を打ち出しました。令和5年6月30日現在までに公表されている情報によれば、現状の相続税評価額に築年数、総階数、所在階数、敷地の小ささなどから統計的に設定された一定の補正計算をすることになります。この補正計算により、「理論上」の時価を算出し、マンションの相続税評価額を「理論上」の時価の6割程度に調整されます。この新しい評価方法は令和6年からの運用を予定しており、現状ではマンション一室の評価に適用することとなっています。