不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報相続の法律Q&A遺産分割協議の前に解決しなければならない問題

相続の法律Q&A

専門家執筆Q&A
相続の法律Q&A

相続の法律Q&A

相続の法律
Q&A

弁護士
銀座第一法律事務所
大谷 郁夫 鷲尾 誠

相続についての法律制度の中には、民法と相続税法の相続財産を巡る取扱に違いがある等、理解するのは難しいものとなっていますが、基本的な知識を手軽に得ることができるように解りやすく解説しています。

※本コンテンツの内容は、平成28年7月1日現在の法律に基づき作成されております。
相続の問題については、個別性があり総合的に判断しなければなりません。弁護士等に早めにご相談のうえ判断していただくようお願いいたします。また、相続税申告等の取扱いにつきましては、所轄の税務署もしくは税理士等の専門家に必ずご確認ください。
相続の法律についてQ&A形式で解説しています。

遺産分割協議の前に
解決しなければならない問題

Q
利益相反 その1

 私の夫が亡くなりました。私には 長男、二男という2人の息子がいます。長男は18歳、二男は16歳です。

 私は、長男及び二男の親権者として2人を代理して、私が相続財産を全部取得する遺産分割を成立させましたが、利益相反があるので、この遺産分割は無効だと言われました。利益相反とは何ですか。また、どうすれば有効な遺産分割ができますか。

A

 長男と二男は未成年者ですので、財産についての行為は、親権者である母親が長男や二男を代理して行うのが原則です。

 遺産分割協議も、この財産についての行為ですので、母親が長男や二男を代理して行うことができるように思えます。

 しかし、この場合、母親自身も相続人ですから、母親がたくさん相続財産をもらえば、長男や二男がもらう相続財産は少なくなりますので、母親と長男及び二男とは、利害が対立します。これを、利益相反と言います。つまり、父親の遺産分割において、母親と長男及び二男とは利益相反の関係にあります。このような利益相反の場合に、母親が長男及び二男の親権者として2人を代理して遺産分割協議をすると、母親に有利な内容の遺産分割となる恐れがあります。

 そこで、利益相反の場合は、家庭裁判所に申立てをして、長男と二男それぞれのために、特別代理人を選任してもらわなければなりません。特別代理人は、長男と二男それぞれのために1人選ばれますので、たとえば、長男にはBさん、二男にはSさんが選ばれます。そして、母親は、このBさん及びSさんと遺産分割協議をすることになります。

Q
利益相反 その2

 私は、一回離婚しており、前の夫との間に長男、二男という2人の息子がいます。長男も二男も未成年者ですので、離婚の際に私が長男、二男の親権者となりました。

 この度、前の夫が亡くなりましたので、私が長男及び二男の親権者として2人を代理して遺産分割を成立させましたが、利益相反があるので、この遺産分割は無効だと言われました。

 この場合も利益相反になりますか。利益相反になる場合、私はどうすればいいですか。

A

 この場合、母親は相続人ではないですから、母親と長男及び二男との利益が相反することはありません。しかし、長男と二男は、そのどちらか一方がたくさん相続財産をもらえば、他方がもらう相続財産は少なくなりますので、長男と二男とは、利益相反の関係にあります。

 このような場合は、母親は、長男と二男のどちらかの代理はできますが、両方の代理はできません。そこで、母親は、家庭裁判所に申立てをして、長男と二男のどちらか1人のために、特別代理人を選任してもらわなければなりません。

Q
相続人の中に認知症の方がいる場合

 相続人の1人が認知症で判断能力がない場合、遺産分割協議をするにはどうしたらよいですか。

A

 相続人の1人が認知症で判断能力がない場合、この相続人と協議をして遺産分割を成立させても、遺産分割は無効となります。このような場合には、家庭裁判所に、認知症の方の法定後見開始の申立てをし、成年後見人を選任してもらい、この成年後見人と遺産分割協議をすることになります。

 法定後見開始の申立は、認知症で判断能力のない相続人の方の住所地を管轄している家庭裁判所に申立てをすることができます。申立ての仕方や必要な書類については、この家庭裁判所に相談するとよいでしょう。

Q
相続人の中に行方不明者がいる場合

 相続人の1人が行方不明の場合、遺産分割協議をするにはどうしたらよいですか。

A

 遺産分割は、相続人全員が合意しなければ成立しませんので、相続人の中に行方不明の方がいる場合、そのままでは遺産分割協議はできません。

 このような場合には、家庭裁判所に、行方不明の方の不在者財産管理人選任の申立てをして、不在者財産管理人を選任してもらい、この不在者財産管理人と遺産分割協議をすることになります。

 不在者財産管理人選任の申立ては、不在者の従来の住所地又は居所地を管轄している家庭裁判所に申立てをすることができます。住所地とは、不在者が生活の本拠としていた場所であり、居所地とは、生活の本拠とは言えないが不在者が相当期間継続して居住していた場所です。申立ての仕方や必要な書類については、この家庭裁判所に相談するとよいでしょう。

Q
相続人の存否が不明な場合

 Aは結婚したことがなく、子供もいません。また、Aの両親は亡くなっており、二男、三男及び四男の兄弟3人がいましたが、3人とも亡くなっています。戸籍を調べても、兄弟3人に子供がいた記載はありません。この場合、相続財産はどうなりますか。

A

 Aには、配偶者も子供もおらず、また、両親も亡くなっているので、本来は二男、三男及び四男の兄弟3人が相続人となります。しかし、この3人の兄弟も亡くなっており、さらに、この3人の兄弟には子供がいませんので、Aには相続人がいない可能性が高いことになります。

 このように、相続人がいるかいないか不明な場合、そのまま放置すると相続財産は宙に浮いてしまい、相続財産について法律上の利害関係がある人は困ってしまいます。

 そこで、相続人がいるかいないか不明な場合、相続財産の利害関係人は、相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることができます。相続財産の利害関係人とは、たとえば、Aにお金を貸していた人、相続人ではないがAの遺言によってAの財産をもらえることになっている人、生前Aと同居してAの生活の面倒を見たため、相続財産の分与を求めたい人などです。

 相続財産管理人選任の申立は、相続開始地(Aの最終の住所地)を管轄している家庭裁判所に申立てをすることができます。申立ての仕方や必要な書類については、この家庭裁判所に相談するとよいでしょう。

 相続財産管理人の職務は、相続財産の管理、相続人の捜索、相続財産の清算です。分かりやすく言えば、相続財産管理人は、Aの相続人を捜索する手続きを取り、Aにお金を貸していた人に相続財産の中からお金を返し、Aの遺言によってAの財産をもらえることになっている人にその財産を渡し、さらに、特別縁故者に相続財産を分与する旨の家庭裁判所の審判があったときは、その特別縁故者に対し分与された相続財産を引き渡します。

 これらの作業の後にAの相続財産に残りがあるときは、残りの相続財産は、国のものとなります。

 ただし、相続人が存在し、相続を承認したときは、その時点で、相続財産管理人の権限はなくなり、相続人に相続財産を引き渡すことになります。この後は、通常の相続の場合と同じですが、相続財産管理人がそれまでに行っていた行為の効力は失われません。

Q
特別縁故者とは何ですか?
A

 Q 相続人の存否が不明な場合で説明しましたように、相続人がいるかいないか不明な場合、家庭裁判所は、相続財産に法律上の利害関係を有する人の申立てにより、相続財産管理人を選任します。

 相続財産管理人は、相続財産の管理、相続人の捜索、相続財産の清算を行います。相続人捜索は、具体的には、官報に相続権を主張する者は一定期間(6か月以上)内に申し出るように記載する方法で行われますが、この期間が終了してから3か月以内であれば、特別縁故者は、家庭裁判所に相続財産の分与を申し出ることができます。

 特別縁故者とは、被相続人と生計を共にしていた者(たとえば内縁の妻、養子縁組届をしていないが事実上養子として生活していた者)、被相続人の療養看護に努めた者、その他相続権はないが被相続人と特別の縁故関係にあった者(被相続人の生活費の支援をした者など)です。

 特別縁故者が、家庭裁判所に対して相続財産の分与の申出をした場合、家庭裁判所は、相続財産を分与すべきかどうか判断(審判)します。特別縁故者に相続財産を分与する旨の家庭裁判所の審判があったときは、相続財産管理人は、その特別縁故者に対し分与された相続財産を引き渡します。

 ただし、相続人が存在し、相続を承認したときは、特別縁故者への相続財産の分与はありません。

Q
遺言の効力に争いがある場合

 Aには、妻と長男、二男という2人の息子がいます。

 Aが亡くなり、Aの財産の全部を長男に取得させるという自筆証書遺言が見つかりました。しかし、Aは、亡くなる数年前から認知症で有料老人ホームに入っており、遺言を作ったとされる時期も、同じ有料老人ホームにいました。このため、妻や二男は、この遺言書の有効性について疑問があります。この場合、どうすればよいのでしょうか。

A

 自筆証書遺言とは、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押して作成する遺言です。

 自筆証書遺言に限らず、遺言をするには、遺言をしようとする者に遺言の内容を理解し、その遺言の結果、自分の相続財産がどうなるかを認識できる能力(これを、遺言能力といいます。)があることが必要です。

 遺言は、通常の取引行為ではありませんので、取引行為で要求される能力より低い能力でも行えるとされています。そこで、民法は、遺言について、15歳に達した者は遺言をすることができると定めています。

 このように、遺言能力は、一般の取引行為で必要となる能力よりもある程度低い能力で足りますので、たとえ遺言者が遺言の際に認知症であっても、相当認知症が進み、かなり理解力や認識力が低下していないと、遺言能力がないということにはなりません。

 そこで、妻や二男は、まず自筆証書遺言作成時のAの精神能力を確認するため、Aの介護認定記録、診療録、入居していた老人ホームの業務日誌などを収集し、Aの遺言能力の有無を確認する必要があります。

 もしAの認知症が相当進んでおり、遺言能力がなかったと認められるときは、妻や二男は、自分を原告とし、長男を被告として遺言無効確認訴訟を提起することになります。

 この遺言無効確認の訴えは、家庭裁判所ではなく地方裁判所が管轄する事件ですので、地方裁判所に訴えを提起しなければなりません。

 また、遺言無効確認訴訟は、理論的に遺産分割協議の前提問題となりますので、遺言無効確認訴訟が解決するまで、遺産分割調停を進めることはできませんので注意してください。

Q
相続財産の範囲に争いがある場合

 A には、妻と長男、二男という2人の息子がいます。

 Aが亡くなりました。Aの相続財産は、実家の土地建物ですが、A及び妻と実家で同居していた長男は、「実家の建物の登記名義は Aになっているが、建物の建築資金は自分が出したので、建物はAのものではなく、自分の所有だ。」と主張しています。この場合、どうすればよいのでしょうか。

A

 遺産分割協議の際に、最初に問題となるのが、相続財産に属する財産の範囲です。どの財産が相続財産なのかが決まらなければ、どう分けるかを話し合うことができないからです。

 このケースの場合、長男は、登記上A名義となっている実家の建物について、自分が建築資金を出したから自分の所有だと主張しています。確かに長男が建物の建築資金を出していれば、たとえ登記上の所有名義がAとなっていても、長男の所有と認められる場合もあります。

 これに対して、妻及び二男は実家の建物はAの相続財産であると主張するでしょうから、Aの相続財産の範囲について相続人間に対立があり、このままでは相続財産の範囲が確定できません。

 このような場合、長男は、実家の建物について、自分を原告とし、妻及び二男を被告として、所有権確認訴訟あるいは所有権移転登記手続請求訴訟を提起することができます。また、逆に、妻及び二男は、実家の建物について、自分を原告とし、長男を被告として、遺産確認請求訴訟を提起することができます。

 どちらの訴訟も、家庭裁判所ではなく地方裁判所が管轄する事件ですので、地方裁判所に訴訟を提起しなければなりません。

 また、これらの訴訟は、理論的に遺産分割協議の前提問題となりますので、これらの訴訟が解決するまで、遺産分割調停を進めることはできませんので注意してください。

Q
被相続人が亡くなる直前に被相続人の預金が引き出された場合

 Aが亡くなりましたが、Aが亡くなる直前に、長男が父親の預金を1,000万円払い戻して自分のものにしてしまいました。この長男が払い戻した1,000万円は、遺産分割協議の対象になりますか。

A

 長男が払い戻した1,000万円は、本来相続財産になるべきものです。しかし、相続財産とは、原則として相続開始時、つまり被相続人の亡くなったときに被相続人に帰属していた財産です。

 このケースでは、Aが亡くなる直前に、長男がAの預金1,000万円を払い戻しており、相続開始時にAに帰属していませんので、相続財産とは言えません。

 従って、家庭裁判所の遺産分割調停では、長男が引き出してしまった預貯金は、長男が同意しない限り、原則として遺産分割の対象とはなりません。

 この場合、他の相続人は、遺産分割調停とは別に、長男が払い戻した1,000万円について、長男を被告として不当利得返還請求訴訟を提起し、自分の取り分(原則として法定相続分)の支払いを求めることになります。

〈税法との関係〉

 このように、被相続人の生前に払い戻された預金は、原則として遺産分割の対象となりませんが、相続税の申告における課税価格の計算では、被相続人の生前に払い戻された預金額も算入されることがありますので注意してください。

Q
被相続人が亡くなった後に被相続人の預金が引き出された場合

 Aには、妻と長男、二男という2人の息子がいます。

 Aが亡くなりました。Aの相続財産は、実家の土地建物と預貯金3,000万円ですが、長男がAの亡くなった後に、Aの預貯金のうち1,000万円を引き出したようです。この1,000万円は、遺産分割の対象になりますか。

A

 一般的に遺産分割の対象となる相続財産とは、相続開始時、つまり被相続人の亡くなったときに存在し、かつ遺産分割協議成立時に存在する財産と考えられています。

 このケースでは、Aが亡くなった後に、長男がAの預金1,000万円を払い戻しており、遺産分割時に存在しませんので、この預金は遺産分割の対象となる相続財産とは言えません(なお、預貯金の取扱いについてはQ 預金の取扱い参照)。

 従って、家庭裁判所の遺産分割調停においても、長男が引き出してしまった預貯金は、長男が同意しない限り、原則として遺産分割の対象となる相続財産には含まれません。

 この場合、他の相続人は、遺産分割調停とは別に、長男が払い戻した1,000万円について、長男を被告として不当利得返還請求訴訟を提起し、自分の取り分(原則として法定相続分)の支払いを求めることになります。

〈税法との関係〉

 このように、被相続人の死後に払い戻された預金は、原則として遺産分割の対象となりませんが、相続税の申告における課税価格の計算では、相続開始時の預金額を算入しますので、被相続人の死後に払い戻された預金額も算入されることになります。