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不動産価格・査定・鑑定評価Q&A

専門家執筆Q&A
有限会社arec

不動産価格・査定・鑑定評価Q&A

不動産価格・査定・
鑑定評価Q&A

不動産の価格を形成する要因

不動産鑑定士
有限会社arec
善本 かほり

不動産、特に土地は、目の前に示されている価格がなぜその価格になるのかがわかりにくいと思います。そのような、わかりにくい不動産の価格について、少しでも理解を深めていただけるように解説しています。

不動産の価格や評価についてQ&A方式で解説しています。

不動産の価格を知りたい時に役に立つデータや情報

Q
国土交通省から毎年出ている土地白書を見れば、不動産の価格の動向が分かりますか?
A

 土地白書は、土地に関する動向と土地に関する基本施策について、毎年政府が国会に報告する報告書です。過去の経済動向や政策の効果等が地価へどのような影響を与えてきたかが整理、分析されています。また、現状から政策課題を抽出する役割も担っていることから、将来に向かっての一定の方向性を把握することができます。ただ、個別の不動産の価格については言及されていません。

 なお、土地白書ではいわゆる実物不動産である土地・建物等の不動産のみではなく、投資対象としてみた不動産の証券化市場についても分析が行われています。

Q
不動産の価格を知りたい時に参考になるデータはどのようなものがありますか?
A

 不動産の価格の参考になるものとして、次の三つを挙げることができます。

  • 1 公的価格
  • 2 取引事例
  • 3 収益の額と利回り

 1の公的価格は、土地の価格を知りたい時に参考にすることができます。国や都道府県等の公的機関が発表する土地の価格で、代表的なものとして次の三つが挙げられます。

①地価公示標準地の価格(公示価格)・都道府県地価調査基準地の価格(基準地価格)

②相続税路線価

③固定資産税評価額

 ①公示価格は、国土交通省が発表する毎年1月1日時点の土地の価格です。同じようなものに、毎年7月1日時点の土地の価格として都道府県から発表される都道府県地価調査基準地の価格があります。

 ②相続税路線価は、相続税や贈与税の課税のために、国税庁が毎年1月1日時点の土地価格を算定したものです。

 ③固定資産税評価額は、市区町村が土地や建物の固定資産について算定した価格です。固定資産税や不動産取得税などの基準となります。この評価額は3年ごとに見直しが行われます。総務大臣の定める固定資産評価基準によって算出されています。

 2の取引事例は、不動産が周辺でいくらで取引されているかという、取引の実例価格です。取引の実例(取引事例)が集積すれば、「その辺りではいくらくらいの価格で売買されるかという相場」が形成されるようになります。戸建住宅や商業地における小規模な店舗付住宅等やマンション、農地、林地は、主に取引事例の価格が参考になります。周辺で取引がほとんど無いような場合には、相場は形成されていないので、「売主の希望する売却価格」と「買主が希望する購入価格」が一致するまで、市場で「売り希望価格」「買い希望価格」が滞留することになります。相場で価格を知る、とはある意味、タマゴが先か鶏が先か的な論理ですが、周辺で似たような不動産が取引されていれば、次に売買しようとする人はその売買価格を参考にすることが多いでしょう。

 3の収益の額と利回りは、その不動産を貸すことで生み出される収益の額と、不動産の単年度の収益を不動産の価額で割った率のことです。典型的な例は賃貸マンションや貸ビルです。これらは、その不動産を貸すことで得られる収益(賃料)に着目して価格が決まることが多いのですが、店舗等ではその不動産上で行う事業から得られる収益から価格が決まることもあります。不動産から得られる単年度の収益の累積額がその不動産の価額(総額)として把握されますので、ある不動産と似たような利回りが集積すれば「その辺りではいくらくらいの利回りで売買される」という相場が形成されるようになります。いわゆる「一棟物収益物件」と呼ばれる、賃貸マンションや事務所ビル、店舗等については主に収益の額と利回りを元に算出された額が参考にされます。

 上記の算出額はあくまで概算に過ぎないため、正確な価格を把握されたい場合には、不動産鑑定士の鑑定評価を依頼することをおすすめします。

Q
不動産の時価に関するデータはどのように調べることができますか?
A

1 土地だけの場合

 調べようとする不動産が、土地の場合には、公的価格を参考にすることができます。公示価格・基準地価格は、国土交通省や都道府県、相続税路線価は国税庁のウェブサイトでそれぞれ公開されています。

 また、タイムラグはありますが、土地の固定資産税評価額については、一般財団法人資産評価システム研究センターが作成している、全国地価マップで路線毎の価格(固定資産税路線価)を確認することができます。またこの全国地価マップでは、固定資産税評価額だけではなく、他の公的価格も表示されています。

※1 国土交通省 地価公示・都道府県地価調査
※2 国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表
※3 一般財団法人資産評価システム研究センター

 これらの公的価格は、日本中の土地が評価されて公表されているものではありません。また、農地や林地の場合には、公的価格が公開されていないものも多く、一般の方が調べるのは困難なことが多いです。

2 土地と建物の場合

 土地だけではなく、住宅や店舗など建物付の土地やマンションの時価が知りたいという場合には、正確な時価を把握するのはなかなか難しいです。ただ、現実に取引された価格の4 半期毎のデータを公開しているものとして、次の国土交通省のウェブサイトがあります。

 このサイトでは、農地、林地も取引があれば取引価格が公開されています。

 この他、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構(東日本、中部、近畿圏、西日本の全国4 エリアに分かれています。各エリアの不動産会社が会員として加入している公益社団法人です。)で導入されている「REINS(レインズ)」があります。レインズは、流通機構の会員が売り物件情報や成約情報等を登録するシステムで、会員である不動産会社は情報を登録することや登録された情報を見ることができますが、一般の人は情報を直接見ることはできません。ただ、よく売買されているエリアでの不動産の売買や賃貸借を希望している場合には、レインズに加入している不動産会社に相談することで、レインズからの情報を踏まえてどの程度の価格なら売買できるか、賃貸借できるかの情報を知ることができます。

 そのほか、不動産業者の売り物件の広告やウェブサイトなども大まかな相場を把握するための参考になります。

Q
不動産の価格は、一物四価または一物多価と言われていますが、どういう意味ですか?
A

 一物四価(多価)と言われるのは、不動産の中でも特に土地の価格です。いわゆる①時価以外に、いくつかの公的機関が発表する価格を指していることが多いです。

 ②公示価格・基準地価格、③相続税路線価、④固定資産税評価額と、同じ土地でも、その価格を示すものとして四つも価格があるように見えます。

 しかし実はこれらは、いずれも軌を一にするものです。

① 時価

 時価とは、明確な定義はないのですが、一般的には、「その時の市場で取引が成立する価格」、「その時に需要と供給が一致する価格」の様な捉え方がされています。時価はその時その時において売買が成立する価格ですので、時価以外の公的価格とは若干のタイムラグがあります。

② 公示価格・基準地価格

 公示価格は地価公示標準地の価格、基準地価格は都道府県地価調査基準地の価格です。また、公示価格は、地価公示法により都市とその周辺の地域のみ実施されています。土地の正常な価格を公示することにより、一般の土地取引、つまり時価に対して指標を与え、適正な地価形成を図るために実施されています。公示価格や基準地価格は、実際に成約された複数の取引事例の価格等から算定されているので、時価を反映しつつ、時価に影響を与えています。不動産鑑定士が国から委託を受けて鑑定評価を行い、国土交通省の土地鑑定委員会が公示しています。

 基準地価格は国土利用計画法施行令第9 条に基づき、都市計画区域だけではなく都市計画区域外の土地も対象として、都道府県が実施するもので、公示価格と同様土地の正常な価格を示しています。不動産鑑定士が都道府県から委託を受けて鑑定評価を行い、都道府県が発表しています。公示価格は毎年1 月1 日の価格、基準地価格は毎年7 月1 日の価格です。不動産が土地のみであれば、公示価格・基準地価格はそれぞれ1月1 日、7 月1 日の時価の水準といえます。

 また、公示価格・基準地価格は、それぞれ現実に存在する土地が標準地(地価公示)や基準地(地価調査)として選ばれ、そのものの1㎡当たりの価格が示されています。したがって、標準地や基準地が角地や二方で道路に面する場合にはそれらが反映されていますし、住宅地であれば、道路が面している方角の違いも価格に反映されています。

③ 相続税路線価

 「路線価」とは、道路毎に価格が付されているものを言います。国税庁が毎年発表している財産評価基準書路線価図には、市街地では道路毎に1㎡当たりの価格が千円単位で記載されています。近年は行き止まり道路には路線価は付されなくなりました。

 この価格は、現実に存在する具体的な土地の価格ではなく、その路線に面する標準的な宅地1㎡の価格として示されています。

 標準的な宅地とは、一定のエリア内で間口や奥行、形状、規模などが平均的な土地を指します。現実には、厳密に全く同じ土地というのは存在しえませんので、標準的な宅地があるものと想定してあります。その標準的な宅地は不動産鑑定士によって鑑定評価が行われています。不動産鑑定士が評価する際は地価公示と同じ水準で行いますが、国税庁が鑑定評価額を基に公示価格のおよそ8 割程度で路線価を付して公表しています。路線価を示した図(「路線価図」)は地図状の図面の道路に沿って両端に矢印がついた線がひかれ、その矢印から矢印までの間に価格が記載されています。原則としてその土地が道路に面している方角とは関係なく同じ価格で示されます。広い道路の場合には、道路のこちら側と反対側に線が2 本あり、価格が異なることがありますが、それは、こちら側と反対側で土地の使われ方が全く異なり、価格水準も全く異なるような場合です。

 相続税の申告にあたっての個別の土地の価格については、路線価方式や倍率方式など、国税庁の財産評価基本通達によることが原則ですが、路線価自体が時価よりも2 割程度低く、標準的な土地に対する格差の種類や、格差の種類に応じた加算や減算の割合は全国一律で定められていますので、個別の土地の時価を知りたい場合には、この基準をそのまま適用して得られた価格が現実の時価とはかけ離れることもありますので、注意が必要です。

④ 固定資産税評価額

 固定資産税評価額は、その不動産がある市町村の市町村長が決定している価額(総額)を指します。この固定資産税評価額は、固定資産税を課税するための個別の不動産そのものの価格です。個別の不動産のうち、土地の価格は、相続税路線価と同様に、標準的な宅地1㎡当たりの価格として道路毎に付された固定資産税路線価を基に、総務大臣の定める固定資産評価基準を用いた標準的な土地との格差の率が反映されて算出されたものです。

 この、固定資産税路線価の基となる、一定のエリア毎の標準的な宅地の価格は、3 年毎に市区町村から委託を受けた不動産鑑定士が鑑定評価を行っています。不動産鑑定士が評価する際は地価公示と同じ水準で行いますが、市区町村が鑑定評価額を基に公示価格のおよそ7割程度で路線価を付しています。

 路線価自体が時価よりも3 割程度低く、標準的な土地に対する格差の種類や、格差の種類に応じた加算や減算の割合はほぼ一律で定められていますので、個別の土地の時価を知りたい場合に固定資産税評価額をそのまま用いると、現実の時価とは異なることもありますので注意が必要です。

 相続税は、相続が発生して初めて納付されるものなので、相続税の納付のために個別の不動産を評価しておく機会は少ないため、「相続税路線価」の段階でその呼称が広く知られることになっていると思われます。一方、固定資産税評価額も1㎡当たりの価格について「固定資産税路線価」があるのですが、不動産の所有者には毎年市区町村から固定資産税評価額が記載された通知が送られてきますので、固定資産税路線価よりも「固定資産税評価額」が広く知られています。

 また、地価公示の主な役割について、国土交通省は以下のような例を挙げています※ 4 。

・一般の土地の取引に対して指標を与えること

・土地の相続評価および固定資産税評価についての基準となること

 このように、一物四価と呼ばれる土地の価格は、それぞれ、その地域の標準的な土地の価格なのか、個別の不動産そのものの価格なのかの違いを押さえておく必要はありますが、基本的には相互に関連しているのです。

※4  国土交通省 地価公示・都道府県地価調査 https://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=2&TYP=0
Q
土地価格の参考のために地価公示を調べたところ、標準地の正常な価格を公示するとされています。正常な価格とはなんですか?
A

 地価公示でいう土地の正常な価格とは、おおまかには、「通常の人が通常の用法で使用することを前提とした需要と供給が一致するような更地としての価格」で、特別な事情があって急いで売ったり、慌てて買ったりしたときの価格ではない価格をいいます。

Q
取引事例の価格というのは、不動産会社の広告などに載っている価格でしょうか?
A

 不動産業者の広告は、通常は不動産業者に売却を委託した売り主がこの価格で売りたいという提示価格です。提示している価格で買い主が現れ、売買契約が成立すれば売り価格=取引事例価格となりますが、必ずしも売り主の提示価格で買い主が現れるとは限りませんので広告に載っているだけでは取引事例の価格と言うことはできません。

Q
不動産価格指数というのは地価公示とは違うのですか?
A

 不動産価格指数は、国土交通省が実施する「不動産の取引価格情報提供制度」によって蓄積されたデータを元に、全国・ブロック別・都市圏別等の毎月の不動産価格の動向を指数化し、同省が毎月公表しているものです。

 不動産の取引価格情報とは、国土交通省が取引当事者へ取引価格のアンケートを行って得た回答のことで、住宅、商業用不動産について季節調整済指数(住宅は毎月の指数、商業用不動産は四半期毎の指数)が発表されています。

 実際の取引価格情報を基にしていますが、地価公示の様に価格が表示されているのではなく、指数で表示されています。住宅については月毎、商業用不動産については四半期毎、年毎の不動産市場の動向を把握することができます。

 住宅については、全国、エリア別の2008年4月分からの価格指数及び1年後から対前年同月比が、住宅総合・住宅地・戸建住宅・マンション別に公表されています。なお、東京都、愛知県、大阪府については、2007年4月分の指数から上記4種類の指数が公表されており、住宅地、戸建住宅の指数のみ、1984年4月分から公表されています。

 商業用不動産は、建物付土地と土地に分類され、建物付土地の細分類として、店舗、オフィス、倉庫、工場、マンション・アパート別(南関東圏は、倉庫、工場はなし)、土地の細分類として、商業地及び工業地別のほか、それぞれの総合の指数が公表されています。住宅よりもエリア区分は少なく、全国、三大都市圏、三大都市圏以外の地域、南関東圏について、2008年第2四半期から指数が、1年後から対前年同期比が公表されています。なお、東京都、愛知県、大阪府については、1984年分から、1年毎の指数及び対前年比が公表されています。

 また、これらを補完する情報として、併せて不動産の毎月の取引件数及び取引面積も公表されており、個人や法人の不動産売買に対する関与の割合が判るようになっています。これらの情報は、過去の動向の結果ではありますが、調査を行っているエリアにおいては足下の不動産需給動向を捉えるための参考とすることができます。