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不動産売買契約Q&A

不動産売買契約Q&A

不動産売買契約
Q&A

弁護士
田宮合同法律事務所

初めて不動産の売買契約を締結される方が売買契約書をご覧になった際などに参考にして頂けるよう、分かりやすい言葉、一般的に使われている言葉で、法律の基本的な事項を解説しています。

不動産の売買契約に関してお役に立つ法律情報を、Q&A形式で解説しています。

特約

Q
売買契約書のひな型と異なる特約は自由に行うことができますか。
A

 契約の内容は、売主と買主の自由な意思によって定められるべきというのが、法律(民法)の考え方です。そのため、原則として、売主と買主の合意により、売買契約書のひな型と異なる特約をすることができます。

 しかし、公の秩序に関する規定に違反する内容の合意をすることはできません。いくつか例を挙げてみます。

・公序良俗に反する合意の例

 公序良俗に反する合意は、無効とされています。

 不動産の売買契約の例ではありませんが、例えば、覚せい剤の売買契約は、公序良俗に反するので無効です。

・消費者契約法により無効とされる合意の例

 消費者契約法は、事業者と消費者が契約する場合に適用される法律です。消費者契約法では、事業者の賠償責任を全て免除するような合意は、無効とされています。

 不動産の売買契約を例にとると、買主である消費者が売主である事業者の契約不適合責任や債務不履行責任を全て免除することが契約書に特約として規定されていても、その特約は無効となります。

・宅建業法により無効とされる合意の例

 宅建業法では、宅建業者と非宅建業者が契約を締結する場合に、宅建業者に有利な一定の合意を無効としています。

 例えば、宅建業者が売主である場合に、契約不適合責任を負う期間について特約をするときは、目的不動産の引渡しの日から2年間よりも買主に不利な(つまり短い)期間の特約が無効になります。

 また、宅建業者が売主となる場合には、代金の額の20%を超える手付金を受領する合意をした場合には、20%を超える部分についての合意が無効になります。

 以上に挙げたものは、公の秩序に関する規定に反する合意のごく一部にすぎません。

 売買契約書に特約を設けたいときには、その特約について、相手方との合意ができているどうか、合意ができているとしても、その合意は、公の秩序に関する規定に反しないかどうかをよく検討する必要があります。

Q
ある条件を満たした場合にだけ効力が生じるような売買契約はできますか。また、ある条件を満たした場合には効力が失われるような売買契約はできますか。
A

 いずれもできます。

1. 停止条件

 ある条件を満たした場合にだけ効力が生じるような条件を「停止条件」といいます。

 例えば、大学を卒業したら、あの家を50万円で売ってあげるという合意は、「大学を卒業すること」が停止条件となっているといえます。

2. 解除条件

 ある条件を満たした場合には契約の効力が失われるような条件を「解除条件」といいます。

 例えば、建物を購入するために必要となる銀行の融資を受けられなかったときは、売買契約の効力が消滅するという合意は、「銀行の融資を受けられなかったこと」が解除条件になっているといえます。

3. 不法条件

 以上のように、売買契約において条件(停止条件または解除条件)を定めることができますが、不法な条件を付けた合意は無効になります。

 例えば、覚せい剤をくれたらこの土地を100万円で売るなどという合意は、無効になります。

Q
売買契約書のひな型の内容が不明確な場合や、納得できない場合、どうすれば良いですか。
A

 売買契約書に署名・捺印した場合には、原則として、その契約書に書いてある内容について売主と買主が合意したものと判断されてしまいます。そのため、売買契約書の内容が不明確でよく分からない箇所があったり、その内容に納得できなかったりする場合には、売買契約書に署名・捺印する前に、内容を契約の相手方に確認する必要があります。

 また、契約の内容を明確にしてもらったり、納得できる内容にしてもらったりできないか、契約の修正を求めたり、特約を設けたりするように交渉することも検討すべきでしょう。