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不動産売買契約Q&A

不動産売買契約Q&A

不動産売買契約
Q&A

弁護士
田宮合同法律事務所

初めて不動産の売買契約を締結される方が売買契約書をご覧になった際などに参考にして頂けるよう、分かりやすい言葉、一般的に使われている言葉で、法律の基本的な事項を解説しています。

不動産の売買契約に関してお役に立つ法律情報を、Q&A形式で解説しています。

不動産・不動産登記記録

Q
不動産とは何ですか。
A

 不動産とは、法律上「土地及びその定着物」とされており、主に問題となるのは「土地」と「建物」です。本コンテンツでは、土地と建物についての売買契約のポイントについて解説しています。

Q
不動産の情報はどのように確認できますか。
A

1. 登記とは

 不動産は重要な財産ですから、取引をするに当たって、誰が所有しているのか、また、広さはどの程度か、などの情報が大変重要になります。そこで、不動産についての情報を国家機関が登録し、一般に公表することとしています。このような制度を「登記」といいます。

 不動産について登記されている情報は、法務局(または地方法務局、支局、出張所)で申請することにより、誰でも自由に入手することができます。

2. 全部事項証明書と現在事項証明書

 法務局では、不動産について登記されている情報を証明する書面を入手することができますが、このような書面には「全部事項証明書」と「現在事項証明書」があります。

 全部事項証明書には、抹消された登記を含む全ての内容が記載され、現在事項証明書には、現在時点で効力のある内容だけが記載されます。調査の目的によって選択する必要がありますが、より多くの情報を得たい場合には、全部事項証明書の方が適切といえます。

※「土地の全部事項証明書」の例は「◆土地の全部事項証明書の例」、「建物の全部事項証明書」の例は「◆建物の全部事項証明書の例」を参照してください。

Q
土地の全部事項証明書の表題部にはどのようなことが記載されていますか。
A

1. 土地の全部事項証明書

 土地の全部事項証明書は、上から順に「表題部(土地の表示)」、「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」、「権利部(乙区)(所有権以外の権利に関する事項)」に分かれています。

2. 表題部の記載事項

 「表題部(土地の表示)」には、土地を特定するための情報が記載されており、所在、地番、地目、地積などの欄に分かれています。

3. 所在とは

 所在とは、土地の位置を特定するためのもので、市区町村、及び、丁目・字(あざ)までが記載されます。

4. 地番と住所の違い

 地番とは、登記上で土地を特定するために1筆ごとの土地につけられた番号をいいます。

 このような地番とは別に、市街地では、住所を分かりやすく表示するための「住居表示」が実施されていることがあり、一般的に「住所」とは「住居表示」をいいます。地番とは別に住居表示が実施されている場合には、地番と住居表示が異なることになりますが、登記を確認するためには正確な地番を確認する必要があります。

 地番は、法務局に問い合わせることで確認できます(なお、地番と住居表示を対照させた「ブルーマップ」と呼ばれる地図でも確認できます)。

5. 地目とは

 地目とは、土地の用途をいいます。宅地、田、畑、山林、原野、雑種地、公衆用道路など、法律で定められた種類のうちの一つが選択されています。

6. 地積とは

 地積とは、土地の面積をいいます。

 なお、登記されている地積が、実際の土地の正確な面積とは異なっていることがよくあります。測量技術が発達していない時代に登記された土地もあることなど、いろいろな原因があると言われていますが、登記されている地積は正確に測量した面積とは限らない、ということに注意が必要です。

7. 土地の売買契約の締結に当たっての注意点

 土地の売買契約の締結に当たっては、どの土地を売買するのかを明確にするために、表題部に記載された所在、地番、地目、地積などによって土地を特定する必要があります。

 また、地積が実際の土地の面積とは異なっていることがあることから、売買契約後に測量して判明した正確な面積と地積が異なる場合に、売買代金を変更するのかどうかを、予め売買契約書で明確にしておくことが重要です(【Q 土地を測量した結果得られた面積(実測面積)と登記上の面積とが異なっていた場合、土地の売買代金はどうなりますか。】参照)。

Q
建物の全部事項証明書の表題部にはどのようなことが記載されていますか。
A

1. 建物の全部事項証明書

 建物の全部事項証明書は、上から順に「表題部(主である建物の表示)」、「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」、「権利部(乙区)(所有権以外の権利に関する事項)」に分かれています。

2. 表題部の記載事項

 建物の全部事項証明書の表題部は、所在、家屋番号、種類、構造、床面積、原因及びその日付などの欄に分かれています。

3. 所在

 所在とは、建物の位置を特定するためのものですが、土地の所在とは異なり、地番まで記載されます。

4. 家屋番号

 家屋番号とは、建物を特定するための番号をいいます。通常、建物が建っている敷地の地番と同じ番号を使うことになっていますが、同じ敷地に複数の建物が建っている場合には、「○番の1」と「○番の2」のように枝番をつけて区別されます。

5. 種類

 種類とは、建物の用途をいいます。法律の定めはなく、居宅、店舗、倉庫など、用途に応じた記載がされます。

6. 構造

 構造とは、建物の主要構造部の状況(木造か鉄骨造か等)、屋根の状況(瓦葺か陸屋根か等)、階数を記載するものです。

7. 床面積

 床面積の欄には、建物の広さが各階ごとに記載されます。

8. 原因及びその日付

 「原因及びその日付」の欄には、登記をする原因となった事柄、及び、その事柄が生じた年月日が記載され、例えば建物の新築の年月日はこの欄に記載されます。

Q
全部事項証明書の権利部(甲区)にはどのようなことが記載されていますか。
A

 表題部の次には、土地・建物とも、「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」の欄があります。

 この欄には、土地・建物についての所有権に関する権利の内容が記載されます。

 売主が所有する不動産の売買契約を締結するような通常の場合には、売主が所有権者であることが権利部(甲区)の欄に記載されていることが重要になります。

Q
全部事項証明書の権利部(乙区)にはどのようなことが記載されていますか。
A

 「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」の次には、土地・建物とも、「権利部(乙区)(所有権以外の権利に関する事項)」の欄があります。

 この欄には、不動産を担保とする抵当権など、所有権以外の権利の内容が記載されます。

 不動産の売買契約を締結するに当たって、権利部(乙区)に抵当権などの権利が抹消されずに記載されていると、買主はそのような権利の付着した不動産を取得することになります。したがって、そのような条件で良いのかどうか、売主・買主の間で事前に十分協議することが必要です(【Q 不動産に抵当権などの負担がある場合、売買契約にはどのような定めをおくのが良いですか。】参照)。

 なお、全部事項証明書の他の部分も同じですが、下線のある部分は既に抹消されていることを示します。例えば、権利部(乙区)に抵当権についての記載があり、その全部に下線が付されていれば、その抵当権は既に消滅して登記から抹消されていることになります(なお、下線だけでなく、その抵当権を抹消する旨も、後の欄に記載されます)。

Q
法務局では他にどのような情報を確認できますか。
A

 法務局では、全部事項証明書の他に、土地の位置が記載された公図、土地の地積測量図、土地所在図、建物の図面及び建物の各階平面図などを入手できることがあります。なお、どの程度の情報が入手できるかは、不動産ごとに異なります。

Q
不動産の売買や利用方法についての制限はありますか。
A

 土地の所有権者は、その土地を自由に売買したり利用したりすることができ、また自由に建物を建てることができる、というのが一応の原則ではありますが、土地の売買・利用や建物の建築については、多くの法令によりさまざまな法的規制がなされています。

 不動産の売買・利用や建物の建築等について問題となる法律としては、都市計画法、建築基準法、宅地造成等規制法、国土利用計画法、公有地拡大の推進に関する法律、土壌汚染対策法、その他にも多数の法律があるほか、地方公共団体が定める条例が問題となる場合もあります。これらの法令による法的規制の内容としても、事前に「許可」が必要な場合、事前に「届出」が必要な場合、事後の「届出」で足りる場合、また、建物の建築についての建ぺい率、容積率、斜線制限、日影規制など、実にさまざまです。

 このように、不動産の売買や利用方法についての制限は、それぞれの不動産ごとに詳細に調査するほかありません。

 不動産の売買契約を締結するに当たっては、売主も買主も、不動産についてこのようにさまざまな制限があり得ることについて、十分に認識しておく必要があります。そうでなければ、不動産の売買を行うに当たって必要な届出を怠ってしまったり、買主が想定していた利用方法ができずトラブルになる、といったことになりかねません。

 このようなさまざまな法的規制を一般の方が調査して正確に理解するのは極めて困難ですので、不動産の売買契約を締結するに当たっては、宅地建物取引業者(宅建業者)に仲介を依頼することが重要です。宅建業者に不動産の売買契約の仲介を依頼した場合、宅建業者は不動産についての法的規制について調査し、重要事項説明書などで説明することになります(なお、宅建業者といえども常に全ての法的規制を調査できるとは限らず、業者として通常行うべき程度の注意を尽くせば足りることになります。したがって、宅建業者に仲介を依頼するとしても、最終的には当事者である売主と買主の責任で売買契約を締結するかどうかを決定する必要があります)。

◆土地の全部事項証明書の例

◆建物の全部事項証明書の例