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不動産売買のトラブルQ&A

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不動産売買のトラブルQ&A

不動産売買のトラブルQ&A

不動産売買のトラブル
Q&A

弁護士
瀬川徹法律事務所
瀬川徹 瀬川百合子

安心・安全な不動産売買契約を締結するために不動産売買のトラブルが、どのような局面から生じているか、そのトラブルを防ぐには何を注意すれば良いのかを解りやすく解説しています。

本コンテンツは、不動産売買契約における基本的事項を述べたものであり、実際に不動産の売買契約を締結される場合には、売買契約の対象となる不動産の特質や売主・買主のニーズなどに応じて、契約内容についての特別な考慮等が必要になることがあります。また、本コンテンツの内容は、平成27年8月31日現在の法律に基づき作成されております。
不動産の売買契約に関してお役に立つ法律情報を、Q&A形式で解説しています。

動機の錯誤、瑕疵担保責任、インスペクション

Q
家を建築する目的で宅地を購入したところ、その宅地は道路に接していない土地のため、建築確認が得られず家の建築ができないことがわかりました。家が建てられない土地とわかっていたら、この宅地の売買契約をしなかったと思います。宅地の売買契約は、どうなるのでしょうか?
A

 買主は、家を建築することができない土地なのに、建築できる土地と「錯覚(錯誤)」して宅地の売買契約を行いました。買主の「錯覚(錯誤)」が「法律行為の要素」に関する「錯誤」の場合には、宅地の売買契約が「錯誤」により「無効」と考えられる場合があります(錯誤、民法95条)。買主が「錯誤」に基づき行った意思表示(錯誤の意思表示)は、錯誤がない意思表示(正常な意思表示)と比較すると、「表示された意思」と「内心の意思」が不一致であることから、「表示された意思」どおりの法的な効果を認めることができないとする考え方に基づくものです(下図を参照)。

 「法律行為の要素」に関する「錯誤」とは、「合理的に判断して錯誤がなければ表意者が意思表示をしなかったであろうと認められる場合」(判例)をいいます。この宅地の売買契約の場合では、買主が、売買契約の「主要な要素(目的物)」であるこの「宅地」を建築が可能な土地であると「錯誤」しなければ、購入の意思を表示しなかったと合理的に考えられる場合には「法律行為の要素」に関する「錯誤」が存在したと考えることができます。買主に錯覚(錯誤)があれば全て「錯誤」による「無効」を主張できるのではなく、「法律行為の要素」に関する「錯誤」が存在する場合に限り、「錯誤」による「無効」を主張できるのです。現実には、錯覚(錯誤)が「法律行為の要素」に関する「錯誤」であるとの認定は、極めて厳しく、売買契約の「主要な要素」に関する「重大な錯誤」と評価されることが必要と考えられています。

 なお、民法(債権法)の改正法が、施行されると「無効」は「取消」に変更されます。

Q
買主は、土地付建物を購入しましたが、その建物の日当たりの良さや閑静な周辺環境が気に入り購入を決意したそうです。しかし、購入後、程なくして、周辺に高層建物が建ちはじめ、日照が遮られ、閑静な周辺環境も次第に変化したとの事です。買主は、建物の日照が遮られ、閑静な周辺環境もこれだけ変化することがわかっていたら、この建物の購入をしなかったと考えています。この土地付建物の売買契約の「錯誤」による「無効」を主張することはできるでしょうか?
A

 「建物の日当たりの良さや閑静な周辺環境」を気に入ったことが、買主が土地付建物の売買契約を行う「動機」であったことは事実でしょう。また、買主の予期(動機)に反し、売買契約後に、建物の日照が遮られ、閑静な周辺環境が変化したことも事実と思われます。買主は「動機」に関して錯覚(錯誤)が存在したのではとの考えと思われます。しかし、こうした「動機」に関する「錯誤」が前記【Q 家を建築する目的で宅地を購入したところ、その宅地は道路に接していない土地のため、建築確認が得られず家の建築ができないことがわかりました。家が建てられない土地とわかっていたら、この宅地の売買契約をしなかったと思います。宅地の売買契約は、どうなるのでしょうか?】の「錯誤」(民法95条)となるのかについては、慎重な検討が必要となります。

 「錯誤」(民法95条)は、「法律行為の要素」に関する「錯誤」であることが必要です。買主の「動機」は、通常、売買契約の際に、売主に明示されず、買主の主観的な要素に止まり、売買契約の「主要な要素」の要因とはなっていません。したがって、たとえ、「動機」に錯誤が存在しても、「法律行為の要素」に関する「錯誤」とは言えないのです。しかし、「動機」が明示されれば、売買契約の「主要な要素」の要因となる余地が生じます。したがって「動機」の「錯誤」は、「動機」が表示されて初めて「錯誤」の可能性が生じると言われています。ただし、その場合でも、「動機」の「錯誤」が、売買契約の「主要な要素」に関する「重大な錯誤」と評価されることが必要です。この土地付建物売買契約の場合、買主の「動機」が表示されることで、「動機」である「日当たりの良さや閑静な周辺環境」が売買契約の内容(目的物)の要素となったものと認めることができる場合に限り「錯誤」の可能性が生じます(下図を参照)。ただし、「日当たりの良さや閑静な周辺環境」が土地付建物売買契約の売買価格に影響を与えている等の状況がない場合には、「錯誤」を認定することは困難と思われます。

Q
瑕疵担保責任について詳しく教えてください。
A

 売買契約の「目的物」に、売買契約時に想定した品質、性能を欠く状態「欠陥(瑕疵)」が発見された場合、買主は、売主に対しその「欠陥」に基づく損害賠償の請求ができます。また、「欠陥」が著しいため、売買の目的が達成できない場合には売買契約を「解除」できます。この責任を売主の「瑕疵担保責任」といいます(民法570条)。

 「瑕疵担保責任」は、売買契約締結時に「欠陥(瑕疵)」が「隠れていた」(買主が知らない。善意)場合に生じます。売買契約締結時に「欠陥」が隠れていると、買主には、目的物の品質・性能を現実より良いものと誤解し、高い売買代金を支払うので損害が発生します。売主には、その損害を補てんする責任があるのです。売主は、自己に責任がない「欠陥」についても補てんする「無過失責任」を負担しています。なお、民法(債権法)の改正が成立すると「瑕疵担保責任」ではなく「契約の不適合責任」と呼ぶことになります。

 不動産売買契約では、この「瑕疵担保責任」の期間を限定することが一般的です。

 「売主が不動産業者、買主が非業者」の場合、「物件の引渡から2年間」としています。「物件の引渡しから2年未満」とする特約は無効となるからです(宅建業法40条)。

 上記以外の場合(消費者契約法の適用を除く)には、自由な期間を設定できます。なお、期間設定がない場合には「買主が隠れた欠陥を発見してから1年以内(ただし、物件の引渡から10年以内)」となります(民法566、570条、判例)。また、瑕疵の態様(瑕疵を限定)及び効果(修復の請求等)について、合意のうえ定めることができます。売主の「瑕疵担保責任」を免責する特約も可能です。ただし、知りながら告げなかった事実などについては免責されません(民法572条)。

 「瑕疵担保責任」の「欠陥」は、「物理的な欠陥」「心理的、主観的な欠陥」「法令上の制限の欠陥」「周辺環境に関する欠陥」に分類できます。

「物理的な欠陥」

 建物の設備の劣化、床の腐蝕、傷や傾斜等、アスベスト建材の使用、土地の軟弱地盤、土壌汚染等です。

「心理的、主観的な欠陥」

 不慮の死(自殺、殺人等)や火災事故の事実などは、住空間の利用者に「嫌悪の情(気持ち悪い等の情)」を生じさせ、「住宅」等が有すべき「安全、安寧」を損なう事実の存在が欠陥と考えられます。

「法令上の制限の欠陥」

 土地・建物の利用は、法的な規制により制限を受けています。その法令上の制限を誤ると、土地・建物の利用価値の判断を誤り欠陥となります。

「周辺環境に関する欠陥」

 住宅の周辺の人的・物的環境が住宅の評価の要素となる場合、住宅の欠陥と考えられます。周辺の環境に影響を及ぼすおそれのある施設(暴力団事務所、騒音・振動・臭気の施設等)が欠陥となる場合があります。

 売買契約締結時までに、これらの「欠陥」をできるだけ顕在化し、当事者が欠陥の存在を認識した上で売買代金額を合意すれば、「瑕疵担保責任」の発生を未然に防止することができます。売主、買主が協力し合い「欠陥」を顕在化する努力をしてください。

Q
築15年を経過した中古住宅を購入し、代金の決済と同時に中古住宅の引渡を受けて生活を始めました。しかし、生活を始めて数週間が経過した頃に、給湯設備から水漏れが発生し、更に、その後、ゲリラ豪雨により中古住宅の天井から雨漏りが発生しました。給湯設備の取替や屋根や天井の修復にかなりの費用を負担したのですが、売主に対し、それらの費用負担を求めることはできるでしょうか?
A

 新築住宅の場合には、給湯設備の水漏れや天井からの雨漏りは、新築住宅の隠れた欠陥状態(隠れた瑕疵)と考えることができます。この場合には、買主は、売主に対し、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求として、給湯設備の取替や屋根や天井の修復費用を請求することができます。また、瑕疵の程度が著しく売買契約の目的を達成できない場合には、売買契約を解除することができます(民法570条、566条)。買主は、売主の瑕疵担保責任の追及を買主が瑕疵の事実を知った時から1年以内(引渡しから10年以内、判例)に請求できますが(民法566条)、通常は、売買契約の中で責任の期間を限定(または、免責)する特約を行います。ただし、売主が宅建業者、買主が非宅建業者の売買契約の場合には、免責の特約や引渡しから2年未満の責任期間の特約は無効とされます(宅建業法40条)。

*新築住宅は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、住宅の基本構造部分(柱や梁など構造耐力上主要な部分、雨水の侵入を防止する部分)が10年間保証されます。

 中古住宅の場合には、築年数に相応する経年劣化が想定され、中古住宅の随所に不具合な状態が顕在していることがあります。更には、不具合な状態が顕在化していないものの、早晩、顕在化することが予測できる場合もあります。この不具合が顕在化した状態の中古住宅の売買契約では、不具合やその可能性の存在を前提に売買価格を低額にするので、顕在化した不具合やその可能性の存在は、中古住宅の隠れた欠陥(瑕疵)には該当しません。したがって、売主の瑕疵担保責任は生じません。

 しかし、中古住宅の売買契約時に想定していなかった新たな不具合が顕在化した場合には、新たな不具合は、中古住宅の隠れた欠陥(隠れた瑕疵)と考えることができます。この場合には、売主の瑕疵担保責任が生じます。本件の中古住宅の売買契約では、売買契約の締結時に、給湯設備の水漏れや天井からの雨漏りが想定されたものか否かが問題となります。想定されたものであれば、これらの不具合は、隠れた欠陥(隠れた瑕疵)ではないので、売主の瑕疵担保責任は生じません。したがって、買主は、売主に対し給湯設備の取替や屋根や天井の修復費用を請求することはできません。しかし、これらの不具合が想定外の不具合である場合には、隠れた欠陥(隠れた瑕疵)に該当するので、買主は、売主に対し、これらの費用を瑕疵担保責任に基づく損害賠償として請求することができるでしょう。中古住宅の売買契約では、こうした隠れた不具合の存在が不安材料となり中古物件の売買契約の促進の障害となっていました。中古住宅のこうした不具合を発見する為には、建築士などの専門家による現況調査(インスペクション)が必要と考えられます。このインスペクション制度を導入すべく宅建業法の改正がされました。概要は、【Q インスペクション(建築等の専門家による検査)について詳しく教えてください。】を参照ください。

Q
インスペクション(建築等の専門家による検査)について詳しく教えてください。
A

 中古住宅の売買契約は、中古住宅の劣化の把握が難しいと不安視され、また、劣化状況をめぐるトラブルが予測されるため敬遠される傾向がありました。その解消のために、中古住宅の劣化状態の調査について、より専門的な知識経験がある、建築等の専門家(インスペクター)による現況検査(インスペクション)の必要性が指摘されてきました。国交省は、「インスペクション」の制度を導入することとし、2016年5月27日、宅建業法の一部改正を行いました。その結果、不動産業者は中古不動産の売買契約に関与する場合、2018年4月1日以降、下記のような義務を負担します(宅建業法)。

仲介(媒介)契約を締結する際に「インスペクション」業者のあっせんの有無、及びあっせんの要請があれば「あっせん」を行う旨を媒介契約書に記載し説明をする。(←単なる情報提供にとどまらず、実施に向けた具体的な説明を行う)

中古不動産について「インスペクション」が行われた場合には、「重要事項説明」時にその結果を説明する。(←説明の概要は、国交省のガイドラインに基づく既存住宅現況検査結果報告の検査結果と同様です。)

売買契約締結時には、中古建物の基礎や外壁などの現況を売主と買主に確認させ、その内容を書面化して交付する。「インスペクション」の調査結果を契約書にも明記する。

なお、「インスペクション」は、「既存住宅状況調査技術者講習制度」(創設予定)を受講し、「インスペクター」として登録した「建築士」が行います。

「インスペクション」の調査対象部位は、国交省の「既存住宅インスペクション・ガイドライン」に沿った既存住宅売買瑕疵保険に加入する際の検査対象部位と同様となります。