不動産売買のトラブルQ&A

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不動産売買のトラブルQ&A

不動産売買のトラブルQ&A

不動産売買のトラブル
Q&A

弁護士
瀬川徹法律事務所
瀬川徹 瀬川百合子

安心・安全な不動産売買契約を締結するために不動産売買のトラブルが、どのような局面から生じているか、そのトラブルを防ぐには何を注意すれば良いのかを解りやすく解説しています。

本コンテンツは、不動産売買契約における基本的事項を述べたものであり、実際に不動産の売買契約を締結される場合には、売買契約の対象となる不動産の特質や売主・買主のニーズなどに応じて、契約内容についての特別な考慮等が必要になることがあります。また、本コンテンツの内容は、平成27年8月31日現在の法律に基づき作成されております。
不動産の売買契約に関してお役に立つ法律情報を、Q&A形式で解説しています。

契約の解除(ローン解除・手付解除)

Q
マンションを代金5,000万円で購入する売買契約を締結しました。契約時に手付金500万円を支払い、残金4,500万円は銀行から融資を受けて支払う条件でした。ところが、銀行は、融資に難色を示し一向に融資の承諾をしません。こうした場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?
A

 不動産売買契約では、買主が金融機関から売買代金の融資を受けることを条件に契約する「ローン解除権付売買契約」が見られます。

 買主は、「ローン解除権付売買契約」を行ったのですから、融資の承認が得られるように誠実な処理をする義務を負担しています。融資先の銀行の担当者に面談し、融資の承認が遅れている理由を確認し、不足している資料があれば、速やかに提出するなどの対応をすべきです。

 しかし、融資の承諾の見込みがないことが判明した場合には、速やかに、売買契約をローン解除する必要があります。

 買主は、「融資(ローン)の不成立」を理由に、売買契約を無条件で解除することができます(ローン解除(民法540条))。

 また、「ローン解除」ができない場合でも、売主に交付した手付金500万円の返還請求権を放棄して本件売買契約を一方的に解除する「手付解除」をすることができます(民法1557条)。本件の売買契約では、「ローン解除」と「手付解除」が併存していますので、各要件を確認しながら選択を行ってください。

Q
ローン解除について詳しく教えてください。
A

 買主が「銀行から融資を受けて売買代金を支払う」ことを条件に締結された売買契約を「ローン解除権付売買契約」と言います。「融資が不成立」の場合に、買主が無条件で売買契約を解除する解除権が付与されます(民法540条)。この解除権の行使による売買契約の解消を「ローン解除」と言います。売買契約が「ローン解除」されると、売買契約は「解除」となります。

 「ローン解除権付売買契約」には、「融資が不成立」となった場合に、買主の解除権の行使を待たずに当然に「解除」となる「当然失効型」と、買主が「ローン解除権」を行使して、初めて「解除」となる「解除権行使型」があります。

 「ローン解除権付売買契約」の、買主は、売買契約締結後、遅滞なく、所定の銀行に融資申込みを行い、「融資内諾の期限」までに融資が得られるよう誠実に対応する売買契約上の義務があります。買主が、融資申込みを怠り、または、不誠実な対応により故意に融資を不成立にした場合は、売買契約の違約行為として債務不履行責任が生じ、「ローン解除」ができません。

 買主が誠実な処理をしたにもかかわらず「融資内諾の期限」までに「融資の見込が得られない」場合は、「融資不成立」と見做し「ローン解除」することができます。

 買主が、「ローン解除」を行わず、新たに他の金融機関への融資申込みを希望する場合は、「融資内諾の期限」及び「ローン解除権の行使時期」を延期する変更の合意をする必要が生じます。

Q
ローン解除の当然失効型と解除権行使型の違いを教えてください。
A

(1)

 当然失効型

 「当然失効型」は、「融資の不成立」と共に、その売買契約が当然に「解除」となり、買主が「ローン解除権」を行使する必要がありません。

 「当然失効型」の売買契約書には、通常、「融資の不成立の場合、売買契約は当然に終了する」旨の記載がされます。「融資の見込み時期」までに融資の承認が未定の場合にも売買契約が「解除」となります。もちろん、買主の「ローン解除権」の行使は不要です。売買契約が「無条件」で「解除」となる結果、売主は、受領済の手付金を買主に返還する義務が生じ、また、買主も、売主から履行を受けたものを、元に戻す義務が生じます(原状回復義務(民法545条))。この場合、売主と買主間に違約や損害賠償の問題は生じません。

(2)

 解除権行使型

 「解除権行使型」は、「融資の不成立」が生じた場合に買主が「無条件」で解除する権利(「ローン解除権」)が付与されています。買主は、「融資の不成立」を理由に「ローン解除権」を行使して売買契約を解除できます(ローン解除)。売買契約が「ローン解除」されると、売主は受領済の手付金を買主に返還する義務が生じ、また、買主も売主から履行を受けたものを元に戻す義務が生じます(原状回復義務(民法545条))。この場合、売主と買主間に違約や損害賠償の問題は生じません。

 「ローン解除権」の行使は、買主が売主に対し「融資の不成立を理由に売買契約を(無条件で)解除する」との通知をします。なお、「解除権の行使期間」が定められており、その期間内に「ローン解除権」を行使しない場合、「ローン解除」が不可能となります。「ローン解除」の通知は、この期間内に売主に到達する必要があります。

 「解除権行使型」の売買契約書には、通常「融資が不成立の場合、買主は、売主に対し、売買契約を無条件で解除できる」旨の記載と共に、「融資の見込み時期」、及び「ローン解除権の行使期間」が記載されます。

Q
不動産売買契約をローン解除する場合の注意点を教えてください。
A

 買主が融資を受けて売買代金を支払う場合、「ローン解除権付売買契約」でなければ「融資の不成立」が生じても、無条件で解除することはできません。買主は、売主と協議して、一定の違約金を支払うなどして「合意」による解消(合意解約)をすることになります。融資を受けて売買契約をする場合には、予め売主と協議し、「ローン解除権付売買契約」にしてください。

 「ローン解除権付売買契約」の場合、前述の「当然失効型」と「解除権行使型」のどちらにするかを明確にして、その型に適した条項を記載してください(【Q ローン解除の当然失効型と解除権行使型の違いを教えてください。】参照)。

 「ローン解除権付売買契約」の場合、「融資の不成立」の判断が問題となります。「融資の不成立」は、金融機関から「融資の見込み時期」までに「融資を断られた」場合、または、「融資の見込みが得られない」場合です。なお、買主が、そもそも「融資の申し込み」を行わない場合、また、故意に「融資を断られる」状態にした結果、「融資の不成立」となった場合には、買主の契約違反ですので、「融資の不成立」とは認められません。買主は「融資の成立」に向けた真摯な対応をする契約上の義務があるからです。

 また、「解除権行使型」の場合には、「ローン解除権の行使期間」を注意する必要があります。「ローン解除」の通知が、「ローン解除権の行使期間」内に売主に届いた場合に限り、「ローン解除」が成立するからです。

 不動産売買契約が「ローン解除」された場合、取引の実務上、ローン解除後に、売買契約が無条件で解除されたことを確認する書面を作成することが見られます。この書面の作成は、ローン解除の要件ではありませんが、その後の「原状回復義務」のトラブルを回避する意味では大切なものです。是非、実行してください。

 なお、「ローン解除」後の原状回復義務の履行は誠実に行ってください。売主は、買主に対し手付金の全額を返還します。ただし、利息を付けません。また、買主は、売主から一部の履行を受けている場合には、それを元に戻す義務があります(売主から受けた「所有権移転請求権仮登記」の削除等)。

Q
「建売住宅」を売買価格5,000万円(税込)、売買契約時に手付金200万円、残金4,800万円は、4か月後の住宅の完成引渡時、違約金を売買代金の2割とする売買契約を締結しました。しかし、売買契約締結後に勤務先の会社から海外転勤を命ぜられ数年程度海外生活をすることになりました。こうした場合、この売買契約を白紙(無条件)解除できるでしょうか?
A

 買主の都合だけで、一方的に白紙(無条件)解除することはできません。本件の売買契約を解除する方法は、売主と協議して「合意解除」を行うか、または、「手付解除」をすることです。

「合意解除」には、売主の同意が必要です。ただし、売主から、同意の条件として違約金1,000万円(売買代金の2割)を請求されることがあります。売主には、合意解除に応じる義務がないからです。なお、合意解約がされない場合、買主には、住宅の引渡と引換えに残金4,800万円の支払義務が残ります。

「手付解除」の場合には、買主が、売主に交付した手付金200万円を放棄することで、一方的に売買契約を解除することができます。この場合、違約金1,000万円の支払義務は生じません。

「手付金」は、契約締結の際に、当事者の一方から相手方に交付される金銭ですが、その性質は、契約が成立したことを示す証拠の「証約手付」、契約の相手方が履行に着手するまでは、手付を交付した者は手付を放棄することにより、また、手付を受領した者が手付の倍額を償還することにより、契約を解除できる「解約手付」、契約上の債務を履行しない場合に違約罰として没収されるという趣旨の「違約手付」の3機能があります。手付金は、必ず「証約手付」の性質を持ち、また、特別の意思表示がない限り「解約手付」と推定されます。売買契約の「手付金」には、少なくとも「解約手付」の性質があり(民法557条)、また、「不動産業者」の「売主」が受領した「手付金」は「解約手付」です(宅建業法39条2項)。

Q
不動産売買契約の手付解除について詳しく教えてください。
A

 不動産売買契約の売主と買主は、手付金の授受により、「相手方」が「履行に着手」するまでは、「買主」は手付を放棄し、「売主」は手付の倍額を償還することで売買契約を解除することができます(民法557条1項)。すなわち、売主と買主は、「解約手付」の授受によって、相手方が「履行に着手」するまでは、理由を問わず、契約を解除して売買契約関係から離脱する権利を持っています。

買主の解除

 買主は、売主が「売買契約」の「履行に着手」するまでに、「手付金」の返還請求権を放棄して、不動産の売買契約を解除する旨の意思表示を行い手付解除を行います(手付放棄の解除)。

 「手付金」は、売買代金に充当されるまでは、買主が売主に交付した「預け金」です。本来、売買契約の解消に伴い、買主は、売主に「手付金」の返還を求めることができますが、買主の自己都合で一方的に売買契約を解除するのですから、売主への迷惑の補填の趣旨で手付金を放棄するのです。

売主の解除

 売主は、買主が「売買契約」の「履行に着手」するまでに、「手付金の倍額」を「提供」して、不動産の売買契約を解除する「意思表示」を行い手付解除をします(手付倍返の解除)。

 「手付金の倍額」の趣旨は、買主への「手付金」の返還と、売主の自己都合による一方的な売買契約の解除に伴う買主の迷惑の補填として「手付金」相当額の支払いです。

 売主の手付解除には、必ず「手付金の倍額」の「提供」が必要です(判例)。なお、この「提供」とは、「買主が手付金の倍額を受領できる状態」にすることです。「現実に倍額を提供する場合(現実の提供)」と、「倍額を準備し受領を催告する場合(口頭による提供)」があります。「手付金の倍額」の「提供」がない場合、売買契約の解除の意思表示だけでは手付解除の効果が生じません。

相手方の「履行の着手」

 「手付解除」は、「相手方」が「契約の履行に着手」するまでに行う必要があります。

 「契約の履行に着手」とは、相手方が「客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合」をいい、単なる「準備行為」は含まれないと考えられています。

 「契約の履行の着手」に当たるか否かの判断は、公平の観点から当該行為の態様、債務の内容、履行期が定められた趣旨、目的等諸般の事情を総合勘案して行います。

 例えば、「売主」が買主のために土地の所有権移転登記請求権を保全する仮登記をした場合や、土地の抵当権を抹消するとの約定に基いて実際に金融機関に返済を行って抵当権を抹消した場合などは、履行行為の一部または履行の提供に欠くことのできない前提行為として「売主」が「履行に着手」したといえるでしょう。ちなみに、一筆の広範囲な宅地分譲地の売買契約において、分譲業者が分譲地の全区画の分筆登記を行う行為は、その区画の売買契約の「準備行為」に過ぎず「売主」の「売買契約の履行の着手」ではないとの判決例がある一方、広範囲な宅地の一部を区切って行う売買契約で、売主が買主の為にその一部の分筆登記を行った場合には、「売主」の「売買契約の履行の着手」に該当するとの判決例もあります。

 「買主」の「履行の着手」は、一般的に売買代金の一部の支払です。手付金の交付は、手付金の預かりで「買主」の売買代金の支払ではありません。通常、残代金支払い時に、売買代金の一部に充当します。したがって、この段階が「買主」の「履行の着手」です。

 「手付金」の額は、様々ですが、「不動産業者」が「売主」の場合、「不動産業者」以外の買主との売買契約では、売買代金額の2割を超える「手付金」の授受が禁止されています(宅建業法39条)。「手付金」が、売買代金額の2割を超えた場合には、「2割を超える部分」の授受を買主の「売買代金の一部の支払」と看做されます(「買主」の「履行の着手」です)。

 なお、不動産売買契約では、手付解除の時期を「相手方」が「契約の履行に着手」した場合以外にも、「他の時期」と合意する場合があります。この場合、「相手方」が「契約の履行に着手」する前であっても、「他の時期」が過ぎた場合には「手付解除」ができません。

 ただし、売主が「不動産業者」、買主が「非業者」間の不動産売買契約では、「非業者」に不利となる特約(合意)として「無効」となります(宅建業法39条3項)。この特約は、売主の「不動産業者」には有効な合意です。その結果、「他の時期」が経過した場合、売主の「不動産業者」は、「手付解除」(手付倍返解除)ができませんが、「非業者」である買主は、この時期を過ぎても、売主が「契約の履行に着手」する前であれば「手付解除(手付放棄解除)」が可能です(判例)。

Q
「建売住宅」の売買契約の履行の着手についてどのように考えるべきですか(参照)。
A

 売買契約が、有効に成立した以上、売主と買主は、売買契約の義務を誠実に履行する責任があります。しかし、不動産の売買契約では、売主や買主の都合で止むなく契約を途中で中止せざるを得ない場合があります。そうした場合に対応するために「手付解除」の合意をするのが一般的です(手付解除の詳細は、【Q 「建売住宅」を売買価格5,000万円(税込)、売買契約時に手付金200万円、残金4,800万円は、4か月後の住宅の完成引渡時、違約金を売買代金の2割とする売買契約を締結しました。しかし、売買契約締結後に勤務先の会社から海外転勤を命ぜられ数年程度海外生活をすることになりました。こうした場合、この売買契約を白紙(無条件)解除できるでしょうか?】,【Q 不動産売買契約の手付解除について詳しく教えてください。】参照)。

 「建売住宅」の売買契約でも、「手付解除」の合意をするのが一般的です。

 海外転勤を命じられた買主も、売主である「建売業者」の「売買契約の履行の着手」前に「手付解除」をすることができます。

 では売主である「建売業者」の「売買契約の履行の着手」とは、どのようなものでしょうか。

 「建売住宅」の売買契約は、売主である「建売業者」が「建売住宅」を建築し、その「完成した住宅」を譲渡する売買契約です。

 通常、「建売業者」は、「建売住宅」の「建築確認」を取得後に、売買契約を締結し「建売住宅」の建築材料の発注を行い建築に着手し、完成後に買主に対し「建売住宅」を引渡します。

 売主である「建売業者」の「売買契約の履行の着手」は、「建売業者」が買主に完成した「建売住宅」を引渡す行為と考えられます(【Q 不動産売買契約の手付解除について詳しく教えてください。】参照)。

 したがって、「建築行為に着手」との考え方は適切ではありません。

 なぜなら、「建売住宅」の売買契約は、「売主」である「建売業者」が「買主」に対し完成後の「建売住宅」を譲渡する売買契約です。「建売業者」が「建売住宅」を建築する行為は、「建売住宅」の売買契約の履行に向けた「準備行為」に過ぎません(未だ存在していない売買の目的物を作る作業です)。

 「建売業者」の「売買契約の履行の着手」は、「建売業者」が完成した「建売住宅」の引渡の行為と考えるべきです。ただし、買主の「手付解除」の時期が、「建売業者」の完成した「建売住宅」の引渡の直前であった場合等には、【Q 不動産売買契約の手付解除について詳しく教えてください。】③記載の公平の観点から「建売住宅」の完成後の相当期間の経過を「売買契約の履行の着手」と同視することが考えられます(判例)。

Q
不動産売買契約を手付解除する場合の注意点を教えてください。
A

 不動産の売買契約では、買主が急に海外に転勤となり、今すぐ、その住宅を購入する必要がなくなった場合や、売主が自宅の売却を決めたものの、同居の家族らの反対で中止せざるを得なくなる場合等、買主、または、売主が、止む無く「手付解除」をすることがあります。

 「手付解除」には、「手付解除」の合意が必要であり、また、「手付解除」の時期の制限については、「相手方」の「売買契約の履行の着手」以外に、「特定の時期」を定める場合があります。この場合は、この「特定の時期」の合意が有効か否かを確認する必要があります(【Q 不動産売買契約の手付解除について詳しく教えてください。】参照)。

 次に、「手付解除」の場合、「相手方」に対し、解除の意思を速やかに伝えることが大切です。「相手方」が「売買契約の履行に着手」する前であるだけでなく、売買契約の履行の「準備行為」に過ぎない場合にも、その行為を中断させることで「相手方」の損害の拡大を防止できるからです。

 また、定められた要件に従った解除の行為が必要です。買主の「手付解除」(手付放棄解除)の場合は、「手付金の放棄」と「売買契約の解除」の各「意思表示」が記載された「解除通知書」を作成し「売主」が「売買契約の履行に着手」する前に、その「意思表示(解除通知書)」が届くように発信することが必要です。また、売主の「手付解除」(手付倍返解除)の場合には、「買主」が「売買契約の履行に着手」する前に、「手付金の倍額」の「提供」行為と同時に売買契約の「解除の意思表示」が記載された「解除通知書」を届けることが必要です。

 「手付解除」が効果を生じた場合には、その不動産の売買契約は当然解除され、「原状回復義務」が生じますので、その「原状回復義務」の内容を相互に確認し、誠実に履行させる目的で、「契約解除の確認書」等を作成することをお勧めします。

 なお、海外転勤などの場合、売買契約の解除だけではなく、購入後の住宅について海外転勤中の利用方法(リロケーション等)についても検討することをお勧めします。

Q
不動産売買契約をローン解除、または手付解除した場合に仲介手数料の支払いは必要ですか?
A

 不動産業者は、事前に、売主、または、買主と「仲介(媒介)契約」を締結した上で、不動産売買契約の締結に関与し、不動産売買契約が締結された場合、売主、または、買主が不動産業者に対し「仲介手数料(媒介報酬)」を支払う合意をします。なお「仲介手数料(媒介報酬)」の額の上限額が決められていることは前述のとおりです(【Q 代理と仲介(媒介)の違いを教えてください。】参照)。

 不動産業者の「仲介手数料(媒介報酬)」の請求権は、不動産業者の「仲介(媒介)行為」により「有効な売買契約」が成立した場合に発生します(成約主義)。なお、「仲介手数料(媒介報酬)」の支払い時期は、「売買契約締結時」及び「売買契約終了時」に各半額を支払うとすることが一般的です。

 しかし、不動産売買契約が「ローン解除」や、「手付解除」により途中で解消した場合、「仲介手数料(媒介報酬)」請求権はどうなるのでしょうか。

 こうした場合、不動産業者は、「仲介手数料(媒介報酬)」の残額を請求ができるのか、または、受領した「仲介手数料(媒介報酬)」を返還する必要があるのでしょうか。

ローン解除の場合

 「当然失効型」の「ローン解除権付売買契約」は、「融資の成立」により売買契約が「有効」になる「停止条件付売買契約」です。この場合、「融資の成立」がない限り売買契約の法的効果が生じていない(いわば「効力が停止」)状態です。そして、「融資の不成立」により、その「解除」が確定します(【Q ローン解除の当然失効型と解除権行使型の違いを教えてください。】参照)。

 この「ローン解除権付売買契約」は、「有効な売買契約」と言えないので、不動産業者の「仲介手数料(媒介報酬)」の請求権は、未だ発生していません。不動産業者は、まだ「仲介手数料(媒介報酬)」の請求をすることはできません。「融資の成立」時にはじめて請求できるのです。

 「解除権行使型」の「ローン解除権付売買契約」は、「融資の不成立」を理由に売買契約を解除する「解除条件付売買契約」です。この場合、売買契約の成立(締結)により「有効」となり、「融資の不成立」を理由とする「解除権」の行使により効力が消滅(「無効」)します。

 したがって、不動産業者の「仲介手数料(媒介報酬)」の請求権は、「ローン解除権付売買契約」の成立(締結)時に「全額」について発生します。そのため、不動産業者は、「ローン解除権付売買契約」の成立(締結)時に、仲介契約の約定に従い「仲介手数料(媒介報酬)」の半額を請求するのです。

 しかし、「ローン解除権」の行使により売買の効力が消滅した場合、「仲介手数料(媒介報酬)」の請求権も消滅するのかが問題となります。

 「ローン解除」による売買契約の消滅(解除)は、「不動産業者」の責任ではなく、買主の都合と考えた場合には、「仲介手数料(媒介報酬)」の請求権に影響がなく、仲介契約の約定に従い「仲介手数料(媒介報酬)」の残額の請求が可能と考えられます。

 ただし、「ローン解除権付売買契約」の消滅により、「仲介(媒介)契約」上の義務も減少することから、残額の請求権を放棄することが妥当とも考えられます。

手付解除の場合

 不動産売買契約の「手付解除」は、売主、または、買主が、不動産業者の仲介(媒介)により成立した「有効な売買契約」を売主、または、買主の都合で解消することです。したがって、不動産業者の「仲介手数料(媒介報酬)」の請求権は、不動産売買契約の成立(締結)時に発生します。

 また、手付解除による不動産売買契約の解消(解除)の原因は、売主、または、買主にあり、不動産業者(仲介)にはありません。したがって、不動産業者の「仲介手数料(媒介報酬)」の請求権に影響がありません。