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不動産売買のトラブルQ&A

不動産売買のトラブルQ&A

不動産売買のトラブル
Q&A

弁護士
瀬川徹法律事務所
瀬川徹 瀬川百合子

安心・安全な不動産売買契約を締結するために不動産売買のトラブルが、どのような局面から生じているか、そのトラブルを防ぐには何を注意すれば良いのかを解りやすく解説しています。

本コンテンツは、不動産売買契約における基本的事項を述べたものであり、実際に不動産の売買契約を締結される場合には、売買契約の対象となる不動産の特質や売主・買主のニーズなどに応じて、契約内容についての特別な考慮等が必要になることがあります。また、本コンテンツの内容は、平成27年8月31日現在の法律に基づき作成されております。
不動産の売買契約に関してお役に立つ法律情報を、Q&A形式で解説しています。

代理制度

Q
別荘の所有者から管理及び処分を受託している会社との間で売買契約を締結しました。この別荘の売買契約は有効でしょうか?
A

 この会社が別荘の所有者から売買契約締結に関する「適正な代理権限」を与えられている場合には、別荘の売買契約は有効であり問題が生じません(民法99条)。「適正な代理権限」がなかった場合には、売買契約の効力に問題が生じトラブルとなります。

 別荘の売買契約のように、売主や買主が売買契約の目的物から遠隔地にいる場合などに、売主や買主に代わり「代理人」が売買契約を締結することが見られます。また、新規のマンションの分譲販売契約等でも、売主分譲業者に代わり「販売代理業者」が販売契約を締結することが見られます。これらの場合、「代理人(販売代理業者)」が、「適正な代理権限」を付与されている限り有効な売買契約であり問題は生じません。

 必ず、「代理人」の「適正な代理権限」の有無、及び「その権限の範囲」を確かめてから売買契約の締結を行うようにしてください。

 なお、売主の「代理人」の「代理権限の範囲」には、売買代金の受領権限が含まれるのが一般的ですが、受領権限の有無も確認し、また、売買代金の支払先が銀行口座などの場合(支払義務履行地の指定)には、必ず、その指定口座に送金して支払うことが必要です。

Q
代理制度について教えてください。
A

 「代理人」による売買契約は、「代理人」が、付与された「代理権」に基づき、売買契約の法的効果を売主や買主に生じさせる目的で、売主や買主に代わり売買契約の意思表示を行う売主と買主間の売買契約です。

 「代理人」が締結した売買契約が売主と買主の有効な売買契約となるには、「代理人」が、「適正な代理権限」を有することが必要です(民法99条)。

 一般的には、売主や買主は、任意に選んだ「代理人」に対し、「代理権限の範囲」を定めた代理権限を付与する委任契約を行います(任意代理(民法643条))。不動産の売買契約では、売主や買主が、「代理人」に対し「代理人の氏名、住所」及び「代理権限の範囲」を記載し、署名(記名)及び、捺印(実印)した「代理委任状」を作成交付して委任します。また、予め不動産の管理及び処分を包括的に委託する「業務委託契約」の締結により委任することもあります。

 「代理権限の範囲」は、一定の条件で売買契約を締結し、履行に伴う不動産の引渡や売買代金授受等に関する一切の権限とするのが一般的ですが、その範囲を一部に限定する場合もあるので、必ず、その範囲を確認ください(【Q 別荘の所有者から管理及び処分を受託している会社との間で売買契約を締結しました。この別荘の売買契約は有効でしょうか?】参照)。

 「代理権限」の付与を、法律が定める場合もあります(法定代理)。成年被後見人の「成年後見人」、未成年者の「親権者」等です。法定代理人の代理権限の範囲は、法律や審判で定められているので専門家の助言を受けてください。

 「代理人」が「法的な効果を売主や買主に生じさせる」目的で、意思表示を行うことが必要です。意思表示であることを明確にするために、「代理人」は、「売主、または、買主の代理人」の肩書を明示して売買契約を締結します(代理の顕名主義(民法99、100条)詳細は【Q 代理の顕名主義について教えてください。】を参照)。

 「代理人」は「適正な代理権限」に基づき、「売主、または、買主の代理人」との肩書を明示して売買契約を締結することで、売主と買主の売買契約が有効になるのです。

Q
代理権限・代理権の範囲について調査方法を教えてください。
A

 「代理権の有無」、及び、「代理権の範囲」を調査確認するには、「代理人」から「代理委任状」、または、「業務委託契約書」の提示を受けます。委任した売主または買主が、個人の場合には、個人の「印鑑登録証明書」、法人の場合には、「会社謄本(登記記録)」及び「会社」の「印鑑登録証明書」の提示を求め、「代理委任状」、または、「業務委託契約書」の委任者の捺印と照合し、「代理権限の付与」の真否を確認します。ただし、「代理人」が委任者と身近な関係者(子、配偶者、取締役)であり、かつ、その委任者の実印等を管理保管する立場にいる場合には、単に「代理委任状」、または、「業務委託契約書」の捺印と委任者の実印の照合だけでは適正に確認したとは言えないとして、「代理権限の有無」の確認に過失を認める場合があります(判例)。この場合、単に、印鑑証明書等で実印を確認するだけでなく、売主や買主と面談し、売買意思及び代理権の付与等を確認することが大切です。

Q
代理の顕名主義について教えてください。
A

 「代理人」が締結した売買契約が有効となるには、「代理人」が売主や買主に法的な効果を生じさせる目的で、「意思表示」をすることが必要です(民法99、100条)。

 たとえば売買契約書の売主欄に「売主●●の代理人○○」と記載し代理人が捺印することで、代理人が「売主」の「代理人」として売買契約を行ったことを明らかにします。「売主●●の代理人○○」との記載を「代理人としての顕名」といいます。代理行為には、原則として、この顕名が必要です(代理の顕名主義)。ただし、買主が、「売主」の「代理人」と認識して売買契約を締結した場合には、顕名がなくとも売主と買主間に売買契約の効果が生じます(民法100条ただし書)。

Q
無権代理・表見代理について教えてください。
A

 「適正な代理権限」がない「代理人」の行為を「無権代理」、また、「無権代理」を行った「代理人」を「無権代理人」といいます。

 「無権代理」による売買契約は、売主と買主の間で効力が発生せず「無効」です(民法113条)。したがって、売主の「無権代理人」が行った不動産の売買契約では、売主は、不動産を買主に移転する義務がなく、また、買主も、売買代金を売主に支払う義務がありません。ただし、売主が、事後において、売買契約を「追認」(有効な売買と認める)した場合、契約締結時に遡及して「有効」となります(民法113、116条)。

 「代理人」の行為が、「代理権限」の範囲外の場合も、以下の事由が存在する場合には、売買契約の相手方を保護する必要性があり、売買契約を「有効」と扱います。これを「表見代理」といいます。

「代理権授与の表示の表見代理」(民法109条)

 売主が、買主に対し、代理人に代理権を与えた旨を表示し(現実は代理権限を与えていない)、買主が、代理人に「代理権限」がないことを知らないことに過失がない(善意無過失)場合

「権限ゆ越の表見代理」(民法110条)

 売主の代理人が、本来付与された代理権限を越えて代理行為を行った場合に、買主が、その代理人の行為を「適正な代理権限」の範囲内と信じ、かつ、信じたことに正当な理由がある場合

「代理権消滅後の表見代理」(民法112条)

 代理人が、不動産の「管理及び処分」の「業務委託契約」の終了後に、不動産の所有者の「代理人」として売買契約を行い、買主が、その「業務委託契約」の終了(代理権の消滅)を知らず、そのことに過失がなかった場合

「複合型の表見代理」(判例)

 前記の各表見代理の複合型の場合も、買主が善意・無過失の場合に表見代理を認めています(判例)。

 売主の無権代理人は、売主が売買契約を「追認」しない場合、買主から不動産の引渡し要求か、または、損害賠償を請求されることになります(無権代理人の責任(民法117条))。

Q
代理と仲介(媒介)の違いを教えてください。
A

 「不動産業者」は、売主または買主の「代理人」となり、または、売主か買主の一方、または、両方の「仲介者(媒介者)」となって売買契約に関与する場合があります。なお、「不動産業者」については、【Q 不動産売買には「不動産業者」が関与しますが、「不動産業者」は、何をしてくれるのですか?】を参照ください。

 「代理人」の立場と「仲介者(媒介者)」の立場には、類似した面がありますが、根本的な違いもあります。比較しながら検討してみましょう。

「代理人」の立場

 「不動産業者」は、売主、または、買主との間で「代理権限」を付与する「委任契約」を締結します。売主、または、買主が「委任者」となり、「不動産業者」が「受任者」である「代理人」となる契約です(民法643条)。「不動産業者」は、「代理人」として売買契約を締結します(代理行為、【Q 代理制度について教えてください。】参照)。「不動産業者」には、「委任契約」上の義務として、「委任者」(売主または買主)のために最善を尽して「代理行為」を行う責任が生じます(善管注意義務(民法644条))。

 「代理人」は、同時に、売買契約の「相手方」の「代理人」となることや、「委任者」の利益に反する行為が禁止されています(双方代理、自己取引の禁止(民法108条))。この禁止に違反した売買契約は「無効」となります(判例)。

「仲介者(媒介者)」の立場

 「不動産業者」は、売主もしくは買主の一方、または、双方との間で「仲介(媒介)契約」を締結します。「仲介(媒介)契約」は、「委任に類する契約」と呼ばれています。「仲介者(媒介業者)」である「不動産業者」は、売主や買主のために「最善の結果」となるよう尽力して「仲介(媒介)」の職務を遂行する義務があります(善管注意義務)。この点では「代理」と類似しています。ただし、「仲介者(媒介者)」は、売主や買主に代わって意思表示する権限はなく、売買契約の締結は、売主と買主が自ら直接に行います。そのため双方代理や自己取引に該当することがなく、売主と買主の双方の「仲介(媒介)」も認められています。

 「不動産業者」が不動産の売買契約の「代理」または「仲介(媒介)」を行う場合には、「代理契約書」や「仲介(媒介)契約書」を作成し、「委任者」に交付する義務があります(宅建業法34条の2、34条の3)。これらの契約書には、「不動産の特定に必要な表示」、「不動産の売却価格とその評価額」、「媒介契約の類型」、「媒介契約の有効期間」、「仲介(媒介)の報酬に関する事項」、「その他の政省令で定める事項」を記載します。

 「媒介契約の類型」は、「委任者」が他の「仲介業者(媒介業者)」に重ねて委任することを禁止する「専属媒介契約」及び「専属専任媒介契約」と、「他の仲介業者(媒介業者)」に重ねて委任することを認める「一般媒介契約」の「明示型」と「非明示型」があります。「専属媒介契約」と「専属専任媒介契約」との違いは、「委任者」が自ら売買契約の相手方を発見した場合に直接取引を行うこと(自己発見取引)を認めるのが前者であり、後者は認めません。「一般媒介契約」の「明示型」と「非明示型」の違いは、重ねて委任する「他の仲介業者(媒介業者)」を明示する義務があるのが前者であり、後者にはその義務がありません。また、「媒介契約の有効期間」は、「専属媒介契約」と「専属専任媒介契約」では「3か月以内」に制限し、「一般媒介契約」には制限がありませんが、実務上は、「3か月以内」の運用がされています。

 「代理や仲介(媒介)の報酬に関する事項」は、「報酬額」と「その支払いの時期」を記載します。

 「報酬額」は、「国土交通省の告示」により上限額が規制されています。その不動産の売買価格に応じて以下の料率を乗じた額を合計した額が上限の報酬額(ただし、消費税等8%を含む額)です。

この報酬額の規制は、「仲介者」または、「代理人」が、その各「委任者」から受領できる報酬額の上限です。売主と買主の双方に各「仲介者」がいる場合には、双方の仲介者の報酬額の合計額が上記の仲介(媒介)報酬の額の2倍以内であることが必要です。また、売買契約に「代理人」と「仲介者」がいる場合にも同様です。なお、「不動産業者」は、この報酬額の上限を超える報酬額を受領することを禁止されています(宅建業法47条)。

売買価格が400万円超の場合、下記の速算方式で報酬額を算出できます(消費税等を含む)。

「仲介(媒介)報酬額」は、「売買価格(400万円超)×3.24%+64,800円」以下の額です。

「代理の報酬額」は「売買価格(400万円超)×6.48%+129,600円」以下の額です。

Q
代理人と売買契約を締結する場合の注意点を教えてください。
A

 不動産の売買契約を「代理人」との間で締結する場合の注意すべき点をまとめてみましょう。

 まず、その不動産の所有者である「売主と面談」し、「意思能力」や「売買の意思」を確認する機会を持つことが大切です。売主が「意思能力」を欠く場合、売買契約が「無効」となる危険があるからです(※1参照)。

 また、「代理人」は、売主が委任した「任意代理人」なのか、法律や家裁の審判等により選任された「法定代理人」なのかを確認することができます。

 「任意代理」の場合、「代理委任状」や「委任契約書」及び、添付の「印鑑登録証明書」等、また、「法定代理人」の場合には、「戸籍」、「家裁の審判書」等の各提示を求め、その「代理人」の「代理権限」の有無、及び「代理権限の範囲」を確認します(【Q 代理権限・代理権の範囲について調査方法を教えてください。】参照)。

 不動産の売買契約書の締結に際しては、「代理人」が、顕名を行った署名(記名)及び捺印を行っているかを確認します(【Q 代理の顕名主義について教えてください。】参照)。

 また、売買代金の支払の履行に際しては、その「代理人」が「適切な受領権者」であるかを確認した上で、不動産の引渡行為(所有権移転、所有権移転登記手続)と引き換えに売買代金の支払いを行い、かつ、売買代金の「受領書」の交付を求めてください。

 「代理人」は、「適切な受領権者」である限り、「代理人」の名義(顕名をした)の「受領書」を作成し交付する義務があります。ただし、売買代金の支払先が銀行の口座等に指定された場合には、その口座に送金し、事後に、売主から「受領書」の交付を受けてください。

 いずれにしても、これらの注意点の確認は、不動産に関する専門的な知識と経験が必要です。「不動産業者」や法律の専門家の助言を得て行ってください。

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【Q 売主は、寝たきりの高齢者で、その息子が、売主の自宅の売却を考えていることがわかりました。その自宅を購入する際、どのような点に注意すべきでしょうか?】

【Q 「制限行為能力者保護の制度」とはどのような制度ですか?】

【Q 意思能力と行為能力の確認方法を教えてください。】

【Q 意思能力がない売主から委任を受けた代理人と不動産の売買契約をした場合、その売買契約は有効ですか?】

【Q 売買契約の「無効」と「取消」について詳しく教えてください。】

【Q 売買契約当事者の意思能力と行為能力の調査等の際の注意事項を教えてください。】