不動産売買のトラブルQ&A

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不動産売買のトラブルQ&A

不動産売買のトラブルQ&A

不動産売買のトラブル
Q&A

弁護士
瀬川徹法律事務所
瀬川徹 瀬川百合子

安心・安全な不動産売買契約を締結するために不動産売買のトラブルが、どのような局面から生じているか、そのトラブルを防ぐには何を注意すれば良いのかを解りやすく解説しています。

本コンテンツは、不動産売買契約における基本的事項を述べたものであり、実際に不動産の売買契約を締結される場合には、売買契約の対象となる不動産の特質や売主・買主のニーズなどに応じて、契約内容についての特別な考慮等が必要になることがあります。また、本コンテンツの内容は、平成27年8月31日現在の法律に基づき作成されております。
不動産の売買契約に関してお役に立つ法律情報を、Q&A形式で解説しています。

土地と建物が果たしている役割と機能

Q
住宅を購入しようと考えていますが、地震や津波の発生、また、豪雨災害等の報道を耳にすると、一戸建やマンションが「安心、安全」なのか不安です。どのような点に注意すべきでしょうか?
A

 住宅は、家族と共に寝食や団欒を行い、また、一人住まいの場合には、プライベートライフを営む「住まいの空間」であり、そこに求められる要素は「安息、安寧」です。

 住宅が、「安息、安寧」な「住まいの空間」であるためには、少なくとも、以下のような「構造上」、「利用上」、並びに「健康上」の「安心、安全性」が必要です。(※1参照)

「構造上」の「安心、安全」

「建物」の「耐震性」(【Q 建物の「耐震基準」とは、どのような基準ですか?】【Q 建物が「旧耐震基準」か「新耐震基準」かの調査の方法を教えてください。】を参照)や「敷地」の「地耐力」等の確保(【Q 土地(敷地)の「地耐力」と「土壌」について教えてください。】を参照)です。

「利用上」の「安心、安全」

「建物」の「快適性」(【Q 「安息、安寧」を妨げる「心理的・主観的な欠陥」について教えてください。】を参照)や「地域」の「安全性」(【Q 「造成宅地防災区域」、「土砂災害警戒区域」、「津波災害警戒区域」について教えてください。】を参照)です。

「健康上」の「安心、安全」

「建物」及び「敷地」の「健全性」(【Q 「造成宅地防災区域」、「土砂災害警戒区域」、「津波災害警戒区域」について教えてください。】【Q 「アスベスト建材」の使用は禁止されていると聞きますが、詳しく教えてください。】を参照)です。

1

【Q 建物の「耐震基準」とは、どのような基準ですか?】

【Q 建物が「旧耐震基準」か「新耐震基準」かの調査の方法を教えてください。】

【Q 土地(敷地)の「地耐力」と「土壌」について教えてください。】

【Q 「安息、安寧」を妨げる「心理的・主観的な欠陥」について教えてください。】

【Q 「造成宅地防災区域」、「土砂災害警戒区域」、「津波災害警戒区域」について教えてください。】

【Q 「アスベスト建材」の使用は禁止されていると聞きますが、詳しく教えてください。】

【Q 「住宅」の売買について紛争の特徴を教えてください。】

Q
建物の「耐震基準」とは、どのような基準ですか?
A

 建物の「構造上」の「安心、安全」に関する近時の関心事は「耐震性」です。建築基準法は、「建物」に関し、その「構造上」の安全性の確保の観点から、一定の「耐震基準」の確保を求めています。「耐震基準」は、昭和56年6月1日以降に建築確認を受けた建物に適用される耐震基準(新耐震基準)と、それ以前に建築確認を受けた建物に適用されている耐震基準(旧耐震基準)とが存在しています。

 現在の「新耐震基準」は、阪神淡路大震災の発生を受けて、一次設計(損傷限界)と二次設計(安全限界)の概念を導入し、建築物の構造計算法として従来の「許容応力度等計算」(中小地震で大きな損傷を生じさせない材料レベルの耐力計算、「荷重による応力<許容応力度」の確認)に加え、「限界耐力計算法」(大地震を想定した構造物全体+部材レベルの耐力計算、「破壊確率<許容破壊確率」の確認)を用いることで大規模な地震にも対応できる建物の構造を目指しています。

 なお「建物」が、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた建物である場合には、「旧耐震基準」の建物です。「旧耐震基準」の建物でも違法建築物ではないので購入・所有することに問題はありません。

 しかし、将来の大規模地震に伴う倒壊の危険性は存在しますので、「耐震診断」を受け必要に応じて、耐震補強を行うことをお勧めします。

Q
建物が「旧耐震基準」か「新耐震基準」かの調査の方法を教えてください。
A

 「建物」の「耐震基準」を確認する方法は、以下のとおりです。

「建築確認済証」、「建物登記記録」の確認

 「建物」の「建築確認済証」により、建築確認の時期が昭和56年6月1日以降か否か、または、「建物登記記録」の表示・保存登記の年月日が昭和56年6月1日以降か否かを確認し、「新耐震基準」または「旧耐震基準」かの確認をすることができます。

 ただし、「建物登記記録」の場合、建築確認を受けてから工事に着工し、竣工後に登記をするので表示や保存登記日が昭和56年6月1日以降でも旧耐震基準の可能性があるので留意してください。

 なお、昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた場合でも同年6月1日時点で着工していなかった建物については原則として「新耐震基準」を適用する運用となったようですが詳細は不明です。

「耐震診断」

 「建物」の「耐震診断」を行うことで「構造上」の安全性を確認することができます。「耐震診断」により安全性が確認できた場合、所管行政庁に、地震に対する安全性に係る基準に適合している旨の認定申請を行い認定を受けると、「建物」に「適合認定を受けている旨」の表示をすることができます(建築物の耐震改修の促進に関する法律)。この表示を見ることで、その「建物」の耐震性の不安を解消することができます。

 同法は、近時の大規模な地震の発生に備え、地震に対する安全性の向上を促進するため「安全性が明らかでない建築物」の「耐震診断の実施義務」や「耐震改修計画の認定基準の緩和」などの措置を行っています。一般的な「住宅」の「耐震診断」は、任意ですが「安心、安全」を確認する意味で「耐震診断」をお勧めします。

 なお、宅建業法は、「不動産業者」が「重要事項説明」を行う際、「建物」の「耐震診断の有無」及び「耐震診断」を行っている場合にはその「結果」の説明を義務付けています。

Q
土地(敷地)の「地耐力」と「土壌」について教えてください。
A

 「敷地」は、「建物」を支える地盤ですから「建物」を支えるだけの「地耐力」があり、また健康な生活の場となる「良質な土壌」が必要です。この状況が備わった敷地は、安心、安全な敷地といえます。

敷地の地耐力

 「敷地」は、「建物」を支える地盤であり「建物」の荷重に耐える地盤強度(「地耐力」)を有することが必要です。その「地耐力」が弱い「軟弱地盤」の場合には、時間の経過と共に地上の「建物」の荷重に伴い不同沈下を生じ、その「建物」が傾き、更には破壊する危険が生じます。こうした「軟弱地盤」は、河川敷や湿地帯等の埋立造成地等に見られることがあります。

 「軟弱地盤」の場合には、「建物」の建築前に「敷地」の地盤改良工事を行い「地耐力」を補強する必要があります。

土壌汚染

 「土壌」が汚染されている場合、地上の「住宅」で生活する居住者は、健康に悪影響を与える危険が生じますので、「敷地」の土壌汚染の有無の調査を行うことは重要です。

 〈土壌汚染対策法〉は次の場合に土地所有者らに対し指定調査機関による調査を行わせ、その結果を知事に報告し、知事は「区域」(要措置区域、形質変更時要届出区域)の指定をしなければならないと定めています。

有害物質使用施設の廃止時

一定規模(3,000㎡)以上の土地の形質変更の届出の際に土壌汚染のおそれがあると知事が認める時

知事が土壌汚染の健康被害のおそれがあると認める時

 また、土地所有者の自主調査により土壌汚染が判明した場合には、土地の所有者は、知事に「区域」の指定を申請します。知事は、土壌汚染の除去等の対応措置や土地の形質変更の禁止等を指示します。

 ところで、土壌汚染の対策には、大量の時間と費用が必要です。多数の人が利用する「大規模な建物」では、事前に対策が行われた後に建築が行われますが、小規模な「住宅」などは、必ずしも土壌汚染の調査や対策が行われないまま建築が行われることもあります。その結果、買主が、「住宅」の購入後に、土壌汚染を発見しトラブルとなる場合があるのです。

 「不動産業者」は、そうした「敷地」の土壌汚染の可能性を調査する目的で、その「敷地」の過去の利用状況を遡って調査し、過去において有害物質等を排出していた工場敷地などに利用された事実がないか等を「登記記録情報」や聞き取り等により調査確認します。

Q
「安息、安寧」を妨げる「心理的・主観的な欠陥」について教えてください。
A

 「住宅」には、その利用者(居住者)の長い生活の歴史が存在します。その歴史の中には、「住宅」内において「不慮の死(自殺、犯罪等)や火災事故」等が存在する場合があります。

「心理的・主観的な欠陥」

 「不慮の死(自殺、犯罪等)や火災事故」等の事実は、その「住宅」を利用する一般人に対し「嫌悪の情」(忌み嫌う感情)を与える場合があります。この事実の存在は、「住宅」の「安息、安寧」を妨げる「利用上」の「心理的・主観的な欠陥」と考えられます。この「心理的・主観的な欠陥」を知らずに「住宅」を購入した場合、買主は、売主に対し「住宅」に「隠れた瑕疵」が存在したとして「瑕疵担保責任」を追及するトラブルに発展します(売主の瑕疵担保責任の詳細は【Q 瑕疵担保責任について詳しく教えてください。】参照)。

「心理的・主観的な欠陥」の説明義務

 「心理的・主観的な欠陥」を抱えた「住宅」の売主は、売買契約に際し、信義則上、この事実を告知すべき立場にいます。また、「不動産業者」も、最善を尽くしてこの事実の有無を調査確認し、買主に説明する義務があります(重要事項説明義務、仲介契約上の義務)。

「マンション」売買における調査

 「マンション」の売買の場合、「不動産業者」は、その「マンション」の「管理業者」から様々な事項の情報の提供を受けます。その情報の中には、「心理的・主観的な欠陥」に関する事項も含まれています。「マンション」の「管理業者」は、その情報提供が、個人情報の侵害にならない限度及び管理組合の同意などを得た上で、積極的に協力するよう指導されているからです。

 そうした意味で「マンション」の売買契約に関与する「不動産業者」の調査義務(調査の可能性)の範囲は拡大しています。その範囲については、<開示する情報項目>を参照してください。

<開示する情報項目>

国土交通省は、最近、マンション標準管理委託契約書、及び、同コメントの改正を行い、マンション(専有部分)を売却する際に重要事項説明等で必要となる情報について、マンション管理業者が宅建業者から情報提供を依頼された場合に「開示する情報項目」の充実を図りました。

開示の相手方の拡大

宅建業者だけでなく、マンション住人(売却予定者)にも提供する。

開示方法の拡大

書面だけでなく、電磁的方法も可能とする。

マンション内の事件、事故物件等の情報開示のコメント

マンション内の事件事故物件等の情報は、売主または管理組合に確認する。

管理者は、敷地及び共用部分における重大事故、事件のような個別性が高いものは該当事項ごとに管理組合に開示の可否を確認し、承諾を得た上で開示する。

「敷地及び共用部分における重大事故、事件に関する情報」は、特定の個人名等が含まれる場合を除き、個人情報保護法の趣旨等に照らしても提供、開示にあたって特段の配慮が必要となる情報ではない(売主組合員の管理費等などの滞納額を含む)。

Q
「造成宅地防災区域」、「土砂災害警戒区域」、「津波災害警戒区域」について教えてください。
A

 宅地造成に伴う災害や、集中豪雨による河川の氾濫や津波などの自然災害による危険を完全に回避することは困難です。ただし、「住宅」の存在している「区域」が、災害の危険性が高い「区域」であることを知ることで、事前の対応を心がけることができます。宅建業法は、不動産(仲介)業者に対し、災害の危険性がある「区域」かを調査させ、「重要事項説明書」に記載して次の事項を説明する義務を課しています。

「造成宅地防災区域」(宅地造成に伴う災害で相当多数の居住者に危害が生じるおそれが大きい一団の造成地の区域)内にあるか否か。

「土砂災害警戒区域」(土砂災害により建築物に損壊が生じ住民の生命、身体に著しい危害が生じるおそれの区域)内にあるか否か。

「津波災害警戒区域」(津波が発生した場合住民の生命身体に危害が生じるおそれがあると認められる区域)内にあるか否か。

 自治体などには、ハザードマップ、液状化マップ等が備えられており、「区域」の様々な危険性を認識・調査することが可能です。

Q
「アスベスト建材」の使用は禁止されていると聞きますが、詳しく教えてください。
A

 「建物」には「健康上」の安心、安全性が要求されますので、建築に使用する建材も安心、安全であることが必要です。

「アスベスト建材」の使用禁止

 「アスベスト建材」は、過去において不燃建材として「建物」等の建築材料に利用されていましたが、「アスベスト(石綿)」が飛散し人体に長時間にわたり吸引されると肺気腫などの疾病が生じるとの医学的知見が確立した結果、現在は、その使用が禁止されています。

「アスベスト建材」の除去

 使用が認められていた時期に建築された「建物」には、「アスベスト建材」が残存しています。「建物」の利用者の「健康上」の「安心、安全」の観点からは、「アスベスト建材」を除去する必要がありますが、特殊の工法を用いて慎重に行う必要があり、通常の除去と比較すると除去費用が高額になるため、除去されないままの「建物」が存在します。

売買のトラブル

 「アスベスト建材」の存在を知らずに「建物」を購入した場合、買主は、健康被害の危険性があるだけでなく、その除去に伴う多額の費用負担が発生し、売主との間でトラブルとなります。

調査説明義務

 「不動産業者」は、「アスベスト(石綿)」に関する調査の有無を確認し、「アスベスト(石綿)」の調査がされている場合には、調査結果の内容(具体的な箇所等)を、調査がされていない場合には「検査なし」の旨を「重要事項説明書」に記載し、買主に説明する義務があります(業法35条)。

〈重要事項説明事項〉

Q
「住宅」の売買について紛争の特徴を教えてください。
A

 「住宅」の売買は、「住宅」の「安息、安寧」を重視する契約です。「安息、安寧」を損なう要因が存在する場合、「隠れた瑕疵(欠陥)」があるとして売主の瑕疵担保責任が問題となるトラブルが見られます(【Q 瑕疵担保責任について詳しく教えてください。】参照 )。

 「安息、安寧」を損なう要因とは、前述(※1) 記載のように「住宅」の「安心、安全性」を損なう「構造上」、「利用上」、「健康上」等の欠陥が存在することです。近隣に周辺環境に影響を及ぼす恐れのある施設(暴力団事務所、騒音、振動、異臭を生じる工場等)が存在することなどもこの要因となる場合があります。

 こうした要因の調査には、広範囲に亘る調査能力と専門的な知識が必要であり、不動産業者、建築関係者、弁護士等の専門家の助力が必要です。「不動産業者」は、こうした要因の有無について説明する義務を負担していますが、買主自身も、自ら確認調査をすることが大切です。

1

【Q 住宅を購入しようと考えていますが、地震や津波の発生、また、豪雨災害等の報道を耳にすると、一戸建やマンションが「安心、安全」なのか不安です。どのような点に注意すべきでしょうか?】

【Q 建物の「耐震基準」とは、どのような基準ですか?】

【Q 建物が「旧耐震基準」か「新耐震基準」かの調査の方法を教えてください。】

【Q 土地(敷地)の「地耐力」と「土壌」について教えてください。】

【Q 「安息、安寧」を妨げる「心理的・主観的な欠陥」について教えてください。】

【Q 「造成宅地防災区域」、「土砂災害警戒区域」、「津波災害警戒区域」について教えてください。】

【Q 「アスベスト建材」の使用は禁止されていると聞きますが、詳しく教えてください。】