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不動産売買のトラブルQ&A

不動産売買のトラブルQ&A

不動産売買のトラブル
Q&A

弁護士
瀬川徹法律事務所
瀬川徹 瀬川百合子

安心・安全な不動産売買契約を締結するために不動産売買のトラブルが、どのような局面から生じているか、そのトラブルを防ぐには何を注意すれば良いのかを解りやすく解説しています。

本コンテンツは、不動産売買契約における基本的事項を述べたものであり、実際に不動産の売買契約を締結される場合には、売買契約の対象となる不動産の特質や売主・買主のニーズなどに応じて、契約内容についての特別な考慮等が必要になることがあります。また、本コンテンツの内容は、平成27年8月31日現在の法律に基づき作成されております。
不動産の売買契約に関してお役に立つ法律情報を、Q&A形式で解説しています。

一戸建とマンションの比較

Q
不動産の購入を検討するにあたって、一戸建とマンションの場合で違いがありますか?
A

「一戸建」と「マンション」を、以下のように図解し、様々な角度から比較してみれば、不動産売買の際の両者の違いがわかります。

「一戸建」の場合、売買の目的物は、一戸建の住居の「建物」、その敷地の「土地」、及び、「塀」や「樹木」です。「建物」と「土地」を「不動産」、「塀」や「樹木」を「動産」と呼びます。
また、「一戸建」の所有形態、及び、利用形態は、単独所有か親族間の共有が多く、保存・管理・処分も、単独、または、親族間の共有者間で協議して行います。

「マンション」の場合、売買の目的物は、住居の「専有部分」、敷地の「土地(敷地利用権)」、及び、付属物の「樹木」で、「一戸建」の場合と同様に区分できますが、その構造、所有形態、利用形態は、複雑な構造と権利関係、利用の規制が存在しています。

<マンションの構造>

 マンションは、敷地上に建築された大規模な「建築物」で「区分所有建物」と呼び、「不動産登記」上は「一棟の建物」と表示します。「区分所有建物」は、「専有部分」と呼ばれる多数の「住居部分」と、「共用部分」と呼ばれる「玄関、廊下、階段、エレベータ、ベランダ等」から構成されています(区分所有法1条、4条)。

<マンションの権利関係>

 「専有部分」は「区分所有権」と呼ぶ所有の対象に、玄関などの「共用部分」は、「共有物」として「共有持分」の対象になります(区分所有法1条、11条)。

 「区分所有権」は、「専有部分」を他から独立して所有する権利であり、この権利者を「区分所有者」と呼びます(同法2条)。一方、「共用部分」の「共有持分」は、全ての「区分所有者」が定められた割合で取得します(同法14条)。

<「共有持分」の不可分性>

 「マンション」の売買では、「専有部分」の「区分所有権」と「共用部分」の「共有持分」が一体として移転します(同法15条)。

<敷地の権利関係>

 全ての「区分所有者」は、「区分所有建物」の敷地の利用権(「敷地利用権」)をもつ必要があります。

 「敷地利用権」は、所有権や借地権などの利用権ですが、全ての「区分所有者」が定められた割合で「共有(準共有)」します。

 「マンション」の「売買契約書」には、「目的物」として「専有部分」とともに「敷地利用権」を明記する必要があり、また、登記手続きも、「敷地利用権」の移転登記を個別に行う必要があります。ただし、「敷地権の登記」がされている場合には(不動産登記法44条1項9号)、「専有部分」の区分所有権移転登記により「敷地利用権」の移転登記の機能を果たしますので、個別の登記の必要はありません。

<マンション生活のルール>

 「区分所有者」は、「共同生活」のルールを定めた「区分所有法」等の関係法令、「管理規約」、「集会(区分所有者で構成)の決議」に従う必要があります(区分所有法46条)。たとえば、ペットの飼育の禁止や、専有部分内部の改修には管理組合の事前の許可が必要等です。

<共用部分、敷地利用権の維持、管理、処分>

 「共用部分」や「敷地利用権」は、「共有物」ですので、その維持、管理、処分は、下記の関係法令、及び、「集会の決議」(区分所有権者の多数決議)に従って行う必要があります(同法39条、61条、62条、民法)。

<管理費、修繕積立金の負担>

 全ての「区分所有者」は、「共用部分」や「敷地」の「維持・管理等の費用」(管理費、修繕積立金など)を「マンション」の「管理組合」に対し、支払う義務があります。

 「区分所有者」が、「維持・管理等の費用」を滞納した状態で、「マンション」を売買した場合、「管理組合」は、購入した買主に支払いを求めることができます。買主は、売主が滞納した「維持・管理費等」を支払う義務を承継するからです。なお、この維持・管理費等の支払義務の消滅時効は5年ですので(判例)、少なくとも5年前までの滞納した維持・管理費等の支払い義務を承継します。

Q
不動産の売買の「目的物」に含まれる「動産」(塀・樹木等)について詳しく教えてください。
A

 「塀」や「樹木」は、「敷地」に付属する「工作物」や「植栽」として不動産売買の目的物となります。「塀」は、通常、隣地との境界を示す境界標の機能がありますが、その境界線に沿って「敷地の内側に設置する場合」と「境界線上に設置する場合」があります。

 「敷地の内側に設置する場合」には、敷地所有者の所有物として自己費用で自由な塀の形質や形状で設置することができます。ただし、隣地所有者のプライバシーの侵害や日照障害などが生じないように配慮する必要があります。

 「境界線上に設置する場合」には、隣地所有者と協議の上で、共有物として、共同の費用で設置し、維持管理費用も等分で負担します。

 「樹木」は、敷地所有者の植栽ですが、根や枝葉が隣地に越境した場合には紛争の要因となるので管理に注意してください。ちなみに、根が越境した場合には、隣地所有者は、その越境した根を切ることができますが、枝が越境した場合には、勝手に切ることはできず樹木の所有者に対し枝を切るように要求することができます。その要求に応じない場合は裁判で枝の切除を求め、判決に基づき執行することになります。

 このように「塀」や「樹木」の問題は、売主と買主の問題であると同時に、その後の買主と隣地所有者の問題にも発展します。なお、建物の屋根の一部が越境している場合等も同様の問題となります。売買の際に、これらの越境の有無を確認してください。

Q
一戸建とマンションの購入にあたり、それぞれどのような点に注意すべきでしょうか?
A

 一戸建やマンションの購入に際しては、まず、購入する「目的物」を正しく把握することが必要です。

「目的物」の把握は、通常、現物を確認すること、及び、「建物登記(記録)」や「土地登記(記録)」から行います。

「建物登記(記録)」には「所在、家屋番号、種類、構造、床面積」が記載されています。
 なお、「マンション」の場合には、「一棟の建物の表示」と「専有部分の表示」の記載があります。
 「一棟の建物の表示」では「区分所有建物」の全体の構造・規模が、また、「専有部分の表示」では「住居部分」の構造、規模が把握できます。

敷地の「土地登記(記録)」は「所在地、地番、地目、地積」が記載されています。

「建物登記(記録)」の床面積や「土地登記(記録)」の地積が、現実の実測した床面積や地積と異なっている場合があります。その場合には、売買契約において、「実測による面積(実測面積)」と「登記(記録)上の面積(公簿面積)」のどちらを基準にするかを明記し、代金の清算の必要性の有無を記載する必要があります。

〈登記記録〉

「目的物」が「未完成」の場合には、現物の確認や「建物登記(記録)」の把握ができないので「建築確認」に関する資料、建物の「図面資料」等を参照し、完成後の建物の状態を把握することが必要です。なお、建物の床面積を壁心から計算した面積で記載すると「登記(記録)」上の面積と異なりますので注意してください。

「マンション」の「共用部分(廊下、エレベーター等)」は、「建物登記(記録)」に記載されません(規約により専有部分を共用部分とした「規約共用部分(集会室、倉庫等)」を除く)。そのため、「共用部分」は、「重要事項説明書」や「売買契約書」の記載、及び、添付資料で把握する必要があります。

 ちなみに、「バルコニー、ベランダ」も「共用部分」ですが、その「マンション」の「区分所有者」が専用できる利用権(「専用使用権」)を付与されているのが一般的です。

また、「マンション」の利用に関する管理規約、集会の決議、管理費等の負担内容と「滞納の有無」などの把握は、「不動産業者」の調査報告から把握する必要があります。

Q
不動産売買の「目的物」の特定を誤った場合にはどのようなトラブルが発生するのですか?
A

不動産売買の「目的物」である「一戸建」や「マンション」の特定を誤った場合には、以下のような、「売主と買主」、「買主と管理組合」「買主と不動産業者」の各間に紛争が生じる可能性があります。

「売主と買主」の間

「建物」や「敷地」の規模や利用態様が想定したものと異なることを理由に売買契約の「錯誤」による「無効」や「瑕疵担保責任」による契約解除や損害賠償の問題のトラブルが生じます。

「マンション」の場合には、管理規約等による利用の制限を知らないで購入した結果、売買契約を解消したいとか、管理費の滞納を知らずに購入したために、管理組合から想定外の管理費や修繕積立金の負担を求められ、売買代金以外の多額の負担を伴う損害が発生する等のトラブルが生じます(【Q 不動産の購入を検討するにあたって、一戸建とマンションの場合で違いがありますか?】参照)。

「買主と管理組合」の問題

管理組合は、買主に対しても、「管理規約」や「集会決議」を守ることを求め、規約に反する「マンション」の利用の禁止を求め、また、売主が滞納した管理費等の請求を行います。

「買主と不動産業者」の問題

買主は、不動産業者の調査や説明が不十分な場合、仲介(媒介)契約上の債務不履行責任として損害賠償請求を行う場合があります。
買主は、専門家である不動産業者との綿密な協議を行いながら、買主自身が「目的物」を正しく認識し、その価値を正しく把握する努力が大切です。