不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産売買のトラブルアドバイス目的物に関する重要な事項(マンションの特徴)(2016年4月号)

不動産売買のトラブルアドバイス

専門家のアドバイス
瀬川徹

不動産売買のトラブルアドバイス

不動産売買のトラブル
アドバイス

弁護士
瀬川徹法律事務所
瀬川徹 瀬川百合子

2016年4月号

不動産売買のトラブルを防ぐために判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。

目的物に関する重要な事項(マンションの特徴)

Q

A(マンションの特徴)

2 マンションの構造と権利関係
(1)マンションの構造
①マンションは、「一棟の建物」と「敷地」の利用権から構成されています。
②「一棟の建物」は「区分所有建物」と呼ばれ、「専有部分」である各「部屋」と「共用部分」である「玄関、廊下、階段、エレベーター、バルコニー、外壁等」に大別されます。
③「敷地」の利用権は、各「部屋」の所有者(区分所有権者)の「共有」ですが、マンション建築の際に敷地所有者との間で借地権(賃借権、地上権等)が設定されている場合には「準共有」といいます。
(2)「一棟の建物」の権利関係
①「一棟の建物」については、独自の所有権を考えません。
②各「部屋」は、所有権(「区分所有権」)の対象で、マンション売買の主要な目的物です。「部屋」の買主が共同の場合には「共有」となります。
③前記の「共用部分」は、各「部屋」の「区分所有者」の「共有」で、共有持分は、「部屋」ごとの床面積等を基準に予め定めています。
④部屋の前の「バルコニー」は、「共用部分」で「共有」ですので、管理規約等に従った管理運営がされます。通常は、接する各「部屋」の区分所有者に専用使用する権限(「専用使用権」)を付与しています。
⑤「共用部分」の随伴性
各部屋の売買に伴い「区分所有権」が移転すると一緒に「共用部分」の「共有持分」も随伴して移転します。分離処分は認められません。
⑥敷地の利用権の必要性
各部屋の所有者は、必ず、後記の「敷地」の利用権を持つことが必要です。
(3)「敷地」の利用権
①「敷地」の利用権の共有(準共有)持分は、部屋ごとの床面積等を基準に予め定めています。
②目的物の独立性
本来、「敷地」は土地ですので建物である「一棟の建物」から独立した権利です。その為、マンション売買の目的物には、「部屋」と一緒に「敷地」の利用権を加える必要があります。各「部屋」の「区分所有者」となるには必ず、「敷地」の利用権が必要ですので必須です。
③駐車場の利用権
ⅰ「敷地」の一部に「駐車場」が設置されることがあります。これは共有の「敷地」の利用形態の一つですので、マンションの管理規約や「区分所有者」の集会の決議で行ないます。
ⅱ駐車場の形態は、区分所有者で構成される「管理組合」が一括で専用使用権を有し各区分所有者等に貸借する場合や「特定の区分所有者(敷地の元の所有者等)」が専用使用権を有し、他の区分所有者等に貸借する場合もあります。
ⅲ前者の場合、利用できない区分所有者から異議が出ること、又、後者の場合、他の区分所有者との紛争が存在することもありますので、事前に良く確認して下さい。
④登記手続と「敷地権の登記」
ⅰマンション売買に伴う登記手続は、本来、「建物」の登記である「部屋」の「区分所有権」の移転登記と、「土地」の登記である「敷地」の利用権の移転登記が必要です。
ⅱしかし、前記のように、マンションの売買は、「部屋」と「敷地の利用権」が一体となった売買ですので、その登記手続を一体にする「敷地権の登記」制度が創設されました。すなわち、「部屋」の登記簿(記録)に「敷地」の利用権と一体となる「敷地権の登記」がされている場合には、「部屋」の「区分所有権」の移転登記手続により、「敷地」の利用権の移転登記がされたものと扱います。
(4)マンションの管理運営
①管理運営の方法
ⅰマンションの管理運営は、「関係法規」、「管理規約」、そして「区分所有者」の「集会」決議により行われます。
ⅱ関係法規には、民法、区分所有法、マンションの建替円滑化法、建築物の耐震改修促進法等があります。
②「部屋」の管理運営
ⅰ「部屋」は、原則、その区分所有者が自由に使用できます。しかし、「一棟の建物」は、各区分所有者の共同の生活の場ですので、共同の利益に反す行為が禁止され、各部屋の利用に際しても、「管理規約」や集会の決議に従う必要があります。
ⅱたとえば、深夜の騒音の禁止、住居以外の用途の禁止、「部屋」の増改築の管理組合の事前承諾の義務、ペットの飼育の禁止等です。
③「共用部分」の管理運営
ⅰ「共用部分」の保存、管理、処分は、関係法規や管理規約等に従います。
ⅱ「共用部分」の保存行為は、集会決議がない限り各区分所有者が自ら行うことができますが、「共用部分」の2分の1以下の滅失損傷の復旧行為は、集会の過半数、2分の1を超える滅失損傷の復旧行為は、集会の4分の3以上の決議で行います。
④敷地の管理運営
 「敷地」の管理運営も、予め定めた管理規約や集会の決議で行ないます。
⑤管理費等の負担
ⅰ区分所有者は、管理規約、又は、集会の決議に従い、毎年の管理費や修繕積立金を区分所有者で構成する「管理組合」に支払う義務があります。管理費はマンションの通常の維持管理に必要な費用の分担金、修繕積立金は、マンションの随時の修繕費用、定期的な修繕費用、大規模な修繕費用の分担金です。
ⅱマンションの買主は、売主の前記義務を当然に承継しますので、売主が滞納していた管理費等の支払義務(消滅時効は5年)を承継します。又、購入後の管理費等の負担義務が続きますので、それらの額を正しく認識することが大切です。
⑥管理規約等の確認
 このように区分所有者は集会の決議や管理規約に拘束されます。マンションの買主も拘束されますので、必ず、集会の決議、管理規約、更には、修繕計画の有無や修繕履歴等も確認することが大切です。
3 マンションの建替、耐震改修、再建等
(1)建替、耐震改修、被災後の再建等の問題
 昨今、マンションの老朽化等に伴う建替、耐震補強の為の改修、災害に伴う再建等が話題となっています。マンションの建替等を実施するには、本来、区分所有者全員の同意が必要ですが、その同意を得ることは極めて困難です。その為、区分所有法、マンション建替え円滑化法(以下、円滑化法)、建築物の耐震改修促進法(以下、耐震改修促進法)、並びに、被災区分所有建物の再建法(以下、被災マンション法)は、後記(2)(3)(4)(5)のような特別な措置を定めています。
(2)マンションの建替決議
①マンションの建替(取壊し、「その敷地、又は、その他の周辺の土地も含めた土地」を敷地として「新たなマンション」を建築)は、集会の区分所有者の「5分の4以上」の賛成で決議ができます(区分所有法)。
②この建替決議をした場合、建替合意者の「4分の3以上」の同意で「マンション建替組合」を設立し、「権利変換手続」(旧建物の権利が、新建物に移行する手法)を用いて建替を円滑にすることができます(円滑化法)。
③「要除去認定マンション」(特定行政庁が耐震診断により除去の必要性があると認定)の建替決議の場合には、新たなマンションの建築に際し「容積率の特例(緩和)」が認められます。(円滑化法)
(3)マンションの耐震改修の軽減(耐震改修促進法)
 「要耐震改修認定建築物」(所管行政庁から「耐震改修の必要がある旨」の認定を受けたマンション)の耐震改修行為は、「共用部分」の2分の1を超える改修行為に該当する場合(本来4分の3決議)でも、「集会の決議(過半数)」で行うことができます。
(4)「要除去認定マンション」の除去(円滑化法)
①マンション及び敷地の売却決議
 「要除去認定マンション」(所管行政庁から「除去の必要がある旨」の認定を受けたマンション)の除去の方法として、集会の区分所有者の「5分の4」以上の賛成で「マンション及び敷地の売却」の決議ができます。
②この売却決議をした場合、合意者の「4分の3以上」で「マンション及び敷地の売却組合」を設立し、売却による除去手続を促進します。
(5)被災マンションの再建策(被災マンション法)
 「政令で指定する大規模災害」により被災したマンション(「被災マンション」)の再建等の特別な措置を以下のように定めました。
①「全部滅失した場合」の措置
 被災マンションが「全部滅失」(マンションの消滅、機能喪失等)し、敷地だけが残ったような場合
ⅰ再建決議
 敷地共有者の「5分の4以上」の賛成で新たなマンションの再建決議ができます。
ⅱ敷地の共有物分割請求の禁止
 明らかに再建決議ができない場合を除き、施行日から3年間は、敷地の共有物分割請求を禁止します。
ⅲ敷地売却決議
 敷地共有者の5分の4以上の賛成で再建せずに、「敷地」を売却する決議ができます。
②「一部滅失した場合」の措置
 被災マンションが「一部滅失」(マンションの一部に損傷)の場合
ⅰ建物及び敷地の売却等の決議
 区分所有者等の「5分の4」以上の決議で「一部滅失した建物」と「敷地」をそのままで売却すること、又は、「建物」を取壊して「敷地」を売却することができます。
ⅱ「建物」の取壊し決議
 政令施行日から1年間は、区分所有者等の「5分の4」以上の決議で、とりあえず、「一部滅失した建物」を取壊すことができます。

4 仲介業者の責任
 仲介業者には、こうしたマンションの特徴を調査確認し重要事項説明書等に記載し、買主等に判り易い説明を行う義務があります。あなたは、その説明を良く聞きながら不安を払拭して下さい。

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