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不動産市場の動向

専門家のコラム
大森広司
不動産市場の動向

株式会社オイコス代表取締役

大森 広司

2014年4月号

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公示価格や路線価から読み取る不動産市場の動向に関するコラムです。

公示地価から読み解く2014年住宅市場の動き

全国平均は下落が続くも都市部では上昇に転じる

 国土交通省から発表された2014年の公示地価では、住宅地の全国平均が前年比マイナス0.6%、商業地が同マイナス0.5%でした。ともに6年連続の下落ですが、下落幅は前年に比べて縮小しています。
 圏域別にみると、三大都市圏平均では住宅地、商業地ともに上昇に転じていますが、地方圏は依然として下落が続いています。ただし地方圏の中でも震災からの復興需要が活発化している宮城県や福島県は上昇し、札幌市や広島市などの中核都市は横ばいから上昇に転じました。ただ、それ以外の地方都市では上昇の動きは限られます。
 こうした全国の動きについて、東京カンテイ市場調査部の髙橋雅之さんは次のように分析してくれました。「大都市の中心部など人やモノ、カネが集まるエリアでは地価上昇の動きが強まっています。一方で地方の中核都市以外には地価上昇が波及しきれておらず、地価の動きに2極化が見られます」
 以下、都市圏別の動きを見ていきましょう。

景況感の改善などを背景に東京圏の地価が6年ぶり上昇

 東京圏は全体で住宅地が0.7%、商業地が1.7%と、ともに6年ぶりに上昇に転じました。特に東京都区部の都心部では住宅地が3.7%、商業地が3.6%と高い上昇率となっています。
 市区別で住宅地の上昇率が高かったのは、千代田区や中央区、港区などの都心部でいずれも5%を超えました。また多摩地域の武蔵野市や立川市、昭島市などで上昇率が2%を超えたほか、さいたま市や横浜市、川崎市で上昇率が1%を超えています。
 また商業地では都心3区の上昇率が4%を超えたほか、渋谷区や新宿区、川崎市などで3%以上の上昇率となっています。「2013年は景況感が改善し、大企業を中心にベースアップや賞与の増額の動きもあり、住宅購入を前向きに検討する人が増えました。また消費税増税を控えた駆け込み需要や、デフレ脱却への期待から金利の先高感が強まったこともあり、利便性の高い都心部などで不動産への買い時感が高まっています。さらに2015年の相続税増税を控えて富裕層の購入意欲が高まったことや、円安効果で外国人投資家が不動産取得に動いていること、加えて2020年の東京オリンピック開催の決定なども地価上昇を後押ししているようです」と、髙橋さんは分析しています。

大阪圏は中心部の商業地で地価が大幅に上昇している

 大阪圏は住宅地が全体でマイナス0.1%と、下落が続いています。ただし上昇に転じたエリアも多く、大阪市や神戸市の中心部では上昇率が2%を超えています。市区別でも芦屋市と西宮市がともに1.3%の上昇率でした。
 一方、商業地は全体で1.4%と上昇に転じました。特に大阪市が3.6%、京都市が2.2%と高い上昇率となっています。さらに区ごとの上昇率を見ると、大阪市では、天王寺区と西区の上昇率が6.0%となったほか、福島区や北区、中央区で5%を超えています。また京都市中京区が4.7%、神戸市灘区が3.3%の上昇など、中心部で大きく上昇しました。
 例えば大阪市北区の大阪駅周辺では、昨年4月にグランフロント大阪が開業したほか、複数の大手百貨店で増床やリニューアルなどの計画が進み、収益性向上の期待から不動産の取引が活発化しています。
「大阪市ではあべのハルカスの開業で周辺のオフィス需要が高まるなど、商業地の中心部で地価が大きく上昇しています。
 また京都市では円安の影響で海外からの観光客の流入が増え、経済が活性化して地価を押し上げました。一方、住宅地も中心部や阪神間エリアでは上昇に転じていますが、上昇の動きはまだ限定的です」(髙橋さん)

自動車や観光産業の復調で名古屋・福岡の地価が上昇

 名古屋圏では住宅地・商業地とも1%台の上昇となっており、特に名古屋市は高い上昇率となっています。愛知県では日進市やみよし市、豊明市などで住宅地の上昇率が3%を超えました。
 また商業地では名古屋駅周辺の再開発が進んでいることから、オフィス需要が高まり、地価上昇につながっています。
「円安の影響で主要産業である自動車関連の業績が回復し、地域経済の復調にともなって地価の上昇が強まっています」(髙橋さん)
  一方、福岡市では中央区が住宅地・商業地とも3%台の上昇率となり、博多区の商業地が4.6%上昇するなど、全体として上昇傾向が強まっています。
「九州のなかでも福岡市は人口が集まり住宅ニーズが高まっており、地価が上昇しています。円安で中国・台湾や東南アジアからの観光客が増えていることも、商業地の地価上昇につながっているでしょう」(髙橋さん)

 今後の地価の見通しについて、髙橋さんは次のように話しています。
「消費税増税の反動を抑えるために住宅ローン控除の拡充など政策面での後押しが打ち出され、分譲マンションや中古住宅を中心に住宅市場は活況が続いています。建設資材のコストアップや人件費の高騰などもあり、住宅価格は今後も上昇基調が続くでしょう」
 景気の回復期待が地価を押し上げ、住宅市場が活性化してさらに景気を刺激する好循環が、今年も続く可能性が高そうです。

※本コンテンツの内容は、記事掲載時点の情報に基づき作成されております。

大森 広司Hiroshi Omori

1962年東京生まれ。立命館大学法学部卒業。
編集プロダクション勤務を経て2005年より株式会社オイコス代表取締役。
現在、『SUUMO新築マンション』『スーモジャーナル』『月刊ハウジング』『都心に住む』などで、住宅問題全般にわたって取材・執筆活動を続けているほか、WEBサイト『AllAbout「マンション入門」』で、はじめてマンションを購入する人向けサイトのガイドとして記事を配信。
また、『日経トレンディネット』などで住宅・不動産最新トレンドの執筆を担当している。
主な著書に『はじめてのマイホーム買うときマニュアル』、『マンション購入完全チェックリスト』(共に日本実業出版社)『新築マンション買うなら今だ!』(すばる舎)などがある。