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不動産市場の動向

専門家のコラム
大森広司
不動産市場の動向

株式会社オイコス代表取締役

大森 広司

2012年10月号

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公示価格や路線価から読み取る不動産市場の動向に関するコラムです。

2012年基準地価から見えてくる不動産市場の動向

2011年後半から地価下落が縮小中心部などで上昇の動きも広がる

  国土交通省から発表された2012年の基準地価(都道府県地価調査)によると、2011年7月以降の1年間の地価は全国的に依然として下落傾向となっていますが、下落率は縮小する地点が広がり、上昇や横ばいの地点も増えました。
  半年ごとの動きをみると、2011年1月~6月は東日本大震災の影響もあって地価下落率が拡大しましたが、同7月~12月は縮小に転じ、2012年1月~6月はさらに下落率が縮小しており、地価が下げ止まりつつあるといえそうです。
 同省によると下落率が縮小した背景には、低金利や住宅ローン減税などの施策による住宅需要の下支えがあるとのことです。特に住宅地では人口の増加した地域で下落率の縮小がみられ、住環境が良好な地点や交通利便性の高い地点では地価の上昇もみられます。また主要都市の中心部では、耐震性に優れる新築・大規模オフィスに業務機能を集約する動きが活発になり、商業地の地価が一部で下げ止まってきています。
「2009年のリーマン・ショックをきっかけに地価が大幅に下落しましたが、都市部ではここにきて下落に歯止めがかかりつつあるようです。東日本大震災の影響も一部を除いて限定的だったといえるでしょう。最近では消費税増税による駆け込み需要を 見込んだ住宅用地の取得が進んでおり、今後は地価が上昇に転じる動きが強まると予測されます」(東京カンテイ市場調査部上席主任研究員・中山登志朗氏)

東京湾岸でマンション需要が活発川崎市では上昇傾向が強まる

  圏域ごとの住宅地の動きをみると、まず東京圏では東京23区が一戸建て・マンションとも需要が堅調で、住宅地の51地点で地価が横ばいでした。特に湾岸部でマンション 需要が活発化しており、中央区が全体で 前年比マイナス0.4%とほぼ横ばいに近い 状況です。また川崎市が0.5%上昇し、横浜市がマイナス0.4%となるなど、都心に近接した神奈川県の2市でも住宅需要が堅調となっています。さらにさいたま市では今後、東北 本線の東京駅乗り入れや湘南新宿ラインの浦和駅停車など利便性の向上が予想されることから、2地点が上昇し、29地点が横ばいとなりました。
「川崎市では川崎駅や武蔵小杉駅の周辺で再開発が進み、マンションの供給も活発になっていることから、地価が上昇傾向となっています。都心の50~60m² タイプのマンションとほぼ同じ価格で、川崎市では70~80m² タイプが買えることから、子育て世代や若い共働き夫婦などの流入が増えている状況です」 (中山氏)

大阪市中心部や神戸市東部など人気エリアで住宅地の地価が上昇

 大阪圏の住宅地ではまず、大阪市のなかでも交通利便性が高い福島区や文教地区として人気の天王寺区、阿倍野区が区全体で地価が上昇しました。人気の住宅エリアである北摂地区では、豊中市や吹田市などでほぼ下げ止まっています。また兵庫県では神戸市東部や阪神間など住環境や利便性に優れた地域で上昇地点が多く、東灘区・灘区・中央区・西宮市・芦屋市が全体で上昇しました。京都市では京都御苑周辺の人気が高く、人口増加を背景に上京区は区全体で上昇し、中京区と下京区は全体で横ばいとなっています。
「大阪市や京都市、神戸市の中心部と、阪神間・北摂といった人気エリアでは横ばいから上昇に転じている地点も増えていますが、それ以外のエリアは下落が続いています。大阪市の天王寺区・阿倍野区では商業地の再開発が進んでいますが、地価への影響がハッキリと出てくるのは施設が開業してからのことになるでしょう」(中山氏)

名城線東側で地価上昇の動き福岡市でも住宅需要が活発化

 名古屋圏の住宅地をみると、名古屋市が全体で横ばいとなっています。地下鉄駅の整備や区画整理事業が進み、人気の高い住宅地やマンション用地に対する需要が増加しており、16区中5区で地価が上昇し、4区で横ばいとなっています。一方で液状化などの懸念から、中川区や港区では下落率が前年とほぼ変わっていない状況です。また地元企業の従業者などによる住宅取得需要の根強い西三河地区では、刈谷市や安城市などで全体が上昇しています。
「千種区や東区、天白区で住宅地全体が上昇するなど、地下鉄名城線の東側エリアの人気が良好となっています。また商業エリアの混在する名古屋市中心部も需要が堅調で、昭和区・瑞穂区・熱田区で住宅地が横ばいです。刈谷市や安城市、岡崎市などでは宅地造成や再開発によって利便性が向上したエリアで地価が上昇しました」(中山氏)
 このほか福岡市の住宅地では住宅需要が活発化しており、24地点で上昇しました。商業地では九州新幹線の全線開業とJR博多シティの開業により博多駅周辺で上昇地点が出ています。
「福岡市の早良区や西区、中央区などは住宅地の人気が高く全体で地価が上昇しました。また西鉄沿線でも駅前再開発によるマンション供給が盛んになっており、久留米市や大牟田市、熊本市などでも地価が上がりやすい状況です」(中山氏)
 こうしてみると、減税効果や低金利などで住宅需要が高まり、各地で地価が下げ止まりから上昇に転じていることが分かります。2014年から予定されている消費税増税は市場の波乱要因とされていますが、一時的には駆け込み需要による地価上昇が見込まれそうです。

ワンポイント豆知識

●基準地価
  • 都道府県が調査主体となり、毎年7月1日時点の不動産鑑定士による鑑定評価に基づいて都道府県知事が正常価格の判定を行う調査です。2012年は全国2万2264地点の基準地を対象としています。
●住宅ローン減税
  • 住宅ローンを借りて住宅を取得すると、年末のローン残高に応じた額が10年間、所得税などから控除される措置。2012年は最大300万円(一般住宅の場合)の減税が実施されており、今後の消費税増税に合わせて減税の拡充も検討されています。
●消費税増税
  • 消費税率を引き上げる法律が国会で成立し、2014年4月1日から8%に、2015年10月1日から10%に、2段階で引き上げられる予定です。実際に引き上げるかどうかは、2013年秋の時点で政府が判断することになっています。
※本コンテンツの内容は、記事掲載時点の情報に基づき作成されております。

大森 広司Hiroshi Omori

1962年東京生まれ。立命館大学法学部卒業。
編集プロダクション勤務を経て2005年より株式会社オイコス代表取締役。
現在、『SUUMO新築マンション』『スーモジャーナル』『月刊ハウジング』『都心に住む』などで、住宅問題全般にわたって取材・執筆活動を続けているほか、WEBサイト『AllAbout「マンション入門」』で、はじめてマンションを購入する人向けサイトのガイドとして記事を配信。
また、『日経トレンディネット』などで住宅・不動産最新トレンドの執筆を担当している。
主な著書に『はじめてのマイホーム買うときマニュアル』、『マンション購入完全チェックリスト』(共に日本実業出版社)『新築マンション買うなら今だ!』(すばる舎)などがある。