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キャッシュフロー会計
読み:きゃっしゅふろーかいけい
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企業の経営成績をキャッシュ(現金・普通預金・定期預金等)の増減をもとに明らかにするという会計手法のこと。

通常の企業会計では、企業の経営成績は最終的に当期利益によって明らかにされるが、当期利益には売掛金のように現金収入ではない収入が計上されており、また必要経費として減価償却費のように現金支出ではない経費が計上されている。このため、当期利益はキャッシュの増加とは通常一致しないことになる。
これに対してキャッシュフロー会計では、キャッシュの増減が企業活動の種類別に(営業活動・財務活動などの種類別に)表示されるので、企業の経営成績がキャッシュにもとづいて明確に表示されることになる。

欧米では古くからキャッシュフロー会計にもとづく「キャッシュフロー計算書」の作成が企業に義務付けられており、「キャッシュフロー計算書」は、貸借対照表・損益計算書と並ぶ重要な財務諸表のひとつとされてきた。
これに対して従来のわが国では、上場企業の財務会計を規制する証券取引法(財務諸表規則)上は、キャッシュフロー計算書を作成する必要がないものとされていた。
しかしわが国でも1997年から国際会計基準の導入が開始された(「国際会計基準」参照)。この結果、企業会計審議会の意見書により証券取引法が改正され、1999年4月より開始する事業年度からは、上場会社は財務諸表のひとつとしてキャッシュフロー計算書を作成することが法律上義務付けられた。これにより現在では、わが国の上場企業ではキャッシュフロー会計がすでに実施されている。

キャッシュフロー会計では、キャッシュフロー計算書においてキャッシュの増減が原因別に開示されるが、キャッシュを増加させるためには、一般的に売掛金をへらし、買掛金を増やし、商品在庫(会計用語では棚卸資産)を削減することが有効である。また不要不急の有形固定資産(土地・建物・機械設備等)の取得はキャッシュを減少させる要因となる。
そのため、わが国の上場企業ではキャッシュを増加させるため(あるいは減少させないため)に、固定資産を圧縮する方向に動いている。また上場建設会社・上場不動産会社では、商品在庫である販売用土地建物を売却する動きが加速しており、不動産市場における土地・建物の供給を増やす要因の一つとなっている。

本文のリンク用語の解説

減価償却

企業会計において、長期間にわたって使用される資産(有形固定資産のほか、特許権などの無形固定資産を含む)を費用化する手法をいう。 例えば、生産設備などは複数の会計年度にわたって使い続けられるため、その取得費を複数年度に分けて費用として計上する必要があるが、そのための手法が減価償却である。 毎年度の減価償却費は、取得費用と耐用年数をもとに、一定の方法(定額法、定率法、級数法、生産高比例法のいずれか)で計算され、それを計上することによって資産が減価し、費用が発生することとなる。 なお、使用によって減価しない資産は減価償却の対象とならない。その代表的な例が、土地や地上権、借地権などである。 一方で、土地等は減価償却の対象とならない代わりに、地価の変動等に応じて再評価する必要がある。

キャッシュフロー計算書

企業の一会計期間におけるキャッシュ・フロー(現金の出入り)の状況を明らかにする書類をいう。 英語でCash Flow Statementといわれることから、CS(またはC/S)と略されることもある。 損益計算書は、営業収益(売上高)や費用は取引が行なわれた時点で計上すること(発生主義)、設備費用を減価償却により複数年度にわたって計上することから、現実の金銭の出入りをそのまま反映したものではない。だが、取引においては、企業の支払能力が重要であることから、現金の出入りを明確に示すことが要請される。 そこで、キャッシュフロー計算書を作成して、一会計年度、半期または四半期における資金の流入・流出を表示することとされている。 キャッシュフロー計算書は、資金の出入りの原因に対応する形で、営業キャッシュフロー(営業活動に伴う現金の動き)、投資キャッシュフロー(投資活動に伴う現金の動き)、財務キャッシュフロー(財務活動に伴う現金の動き)の3つに分けて表示されている。 キャッシュフロー計算書によって、企業活動による現金の動きを把握し、事業活動の状態等を分析するための基礎的なデータを得ることができる。