不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報ついうっかり・・・では済まされない!『相続税』の申告漏れで起こること

専門家がレクチャー

基礎控除額を超える遺産を相続した場合、
相続税の申告をする必要があります。
相続税は、相続開始から10ヶ月以内に申告が必要ですが、
もし申告した額に誤りがあったり、申告をしなかった場合は、
加算税や延滞税などを支払うことになります。

今回は、経験豊富な税理士の先生に、
相続税の申告時に気をつけるべきことを伺いました。
もしもの時のために、ぜひ知っておきましょう。

ついうっかり・・・では済まされない!『相続税』の申告漏れで起こること

基礎控除額を超える遺産を相続した場合、 相続税の申告をする必要があります。
相続税は、相続開始から10ヶ月以内に申告が必要ですが、 もし申告した額に誤りがあったり、申告をしなかった場合は、 加算税や延滞税などを支払うことになります。

今回は、経験豊富な税理士の先生に、 相続税の申告時に気をつけるべきことを伺いました。
もしもの時のために、ぜひ知っておきましょう。

税理士 田中耕司先生
大阪国税局、住友信託銀行(現三井住友信託銀行)勤務を経て、現・日本税務総研代表

税務署は金融機関のお金の動きまでチェックする(イメージ)

『タンス預金』は申告しなくても大丈夫、とたかをくくっていると…(イメージ)

LECTURE1

『相続税』の税務調査は、
10件中3件の割合でやって来る

お話を伺ったのは、実務経験が豊富で、相続税についての著作もお持ちの税理士・田中耕司先生。さっそく、相続税の税務調査の実態について教えていただきました。

田中先生「税務署が調査するのは多額の財産を残した方だけで、ご自分は関係ないと思っていらっしゃる方も多いと思いますが、実はそうではありません。税務署から見ると、『申告されている遺産の額』よりも『申告しなければならない遺産の額』が重要なのです」

……と言いますと?

田中先生「相続税の調査では、当初申告されていた遺産が1億円だったのに、調査してみたら6億円あった、10億円あったなどということがあるわけです」

そういうことがあるんですね!

田中先生「税務署は、亡くなられた方の年齢、職業、先代からの相続の有無、投資経歴、過去の所得税や法人税の申告内容などから、この人ならどれくらいの財産があるはずだと見込をたてます。このような見込額と実際の申告額を比較して、調査対象とする申告書を選びます。国税局・税務署の調査官は、さまざまな資料や経験から申告書をチェックしているのです」

なるほど、税務署は“この人なら、このくらいの財産を残しているはずだ”と推定するのですね。

田中先生「ええ、まるでドイツ語のザイン(目の前にある姿)とゾルレ(あるべき姿)との関係のように、税務署はあるべき遺産の姿を追い求めるのです」

えっ、なんだか恰好よすぎませんか(笑)

田中先生「ええ、まあ」

具体的には、どのような資料収集をするのですか?

田中先生「税務署は、提出された全ての申告書について、記載されている金融機関だけでなく、各種の資料を基に亡くなられた方が取引していた可能性がある金融機関に対し、残高照会や取引履歴などの調査(文書照会)を行います」

相続税の申告書を提出した後、銀行や郵便局、証券会社の口座が知らないうちにチェックされているわけですね。

田中先生「被相続人(亡くなった人)の分だけでなく、配偶者や子供、孫などの口座も照会対象となります。過去に、被相続人から子どもや孫などにお金が流れていないか、税務署はチェックするわけです。また、預貯金の入出金や株式売買などの動きを分析して、申告書に記載されていない金融機関がないかも検討しているのです」

『タンス預金』も優秀な調査官に見破られる!?

金融機関に照会すれば、お金の流れは把握できるということですね。でも、タンス預金(金融機関に預けずに自宅にお金を保管すること)までは把握できないのでは?と思ってしまいますが……

田中先生「いちがいにそうとも言えないのです。金融機関の入出金履歴に行方不明や出所の不明な入出金がある。相続人や親族の過去の預金に不明な入出金がある。同族会社への貸付金の増減と亡くなった方の預金の動きが合わない。所得税の申告で生命保険料控除の欄に記載されていた保険金が申告されていない。過去の収入から見て、金融資産の申告額があまりにも少ない。金の現物取引がないか。……等々、税務署は、さまざまな角度から申告書に漏れがないかを分析しているのです」

それで、タンス預金があるはずだと調査に入ることもあるのですか。

田中先生「ええ、どうしてもご自宅に現金が数千万円あるはずだという観点から調査されることもあります。現金だからわからないはずだ、というのは、甘い判断かもしれません」

自宅に数千万円も現金を置いていたら、おちおち眠れませんよ!

田中先生「いえ、意外に多いのですよ。なぜか、みなさん靴箱にいれていたり、冷蔵庫というのもありました」

……なんだかドキドキしてきました(笑)

田中先生「でも、そういう現金を見つけてしまうのは、たぶん相当優秀な調査官なのです(笑)」

調査官に、優秀な人とそうでない人がいるのですか?

田中先生「もちろん、調査官もサラリーマンですから、優秀な人もいればそうでない人もいます」

なるほど、言われてみればそうですね(笑)。……こっそり教えていただきたいのですが、優秀な調査官が最初に目を付けるのはどんなことですか?

田中先生「優秀な調査官は、亡くなった方の財産を誰が管理していたのかを最初に見ます」

誰が管理していたのか、ですか。

田中先生「そうです。亡くなられたお父さんは亭主関白で、財産の管理から運用まで、何から何まで一人で行っていた場合には、ご本人が亡くなると『いったいどこに預金しているのだろうか。証券会社はどこだろうか。家に現金がないだろうか』等、相続人は財産の所在を必死で探すわけです」

財産がどれだけあるか、一生懸命調べますね。

田中先生「逆に、お父さんは稼ぐだけで、財産管理は奥さんやご長男がしている場合には、お父さんが亡くなっても、そんなにあわてる必要がないのです」

なるほど、財産管理を誰がしていたのかというのは、けっこう重要な調査ポイントなのですね。

田中先生「そうです。ここに、皆様にとって重要なポイントがあります。それは、調査官と同様の観点から、申告に必要な資料や情報を集める能力や気力のあるベテランの税理士に依頼する方が得だということです」

なるほど、相続人から受け取った財産目録だけを基に、申告書を作る税理士よりも、亡くなった方の生い立ちや、生前の財産運用、病歴などを事細かに、うるさいほど質問してくる税理士の方が、最後には頼りになるということですね。職権で調査できる調査官と税理士では、なんとなく調査官の方が有利な気がしますが。

田中先生「なかなか的確なご指摘です。実は、調査官の方が遺産の全貌を把握するには有利な立場にいるのです。ですから、というのも変ですが、相続税の申告書を作成するには、ベテランの税理士の経験と知識だけでなく、相続人の方の積極的な協力が必要になるのです」

税理士に会って「相続税の申告書を作成してください。あとはよろしく!ハワイに行ってきま~す」というわけにはいかないのですね(笑)。

田中先生「ええ、遺産の額が多ければ多いほど、また、亡くなられた方の運用の仕方が複雑であれば複雑なほど、その他、人間関係が入り組んでいたり仲が悪かったりするほど、過不足のない、かつ、相続人に有利な申告書を作るのが困難になるのです」

うーん、資産家にとっては、適切かつ有利な申告書を作るには、それなりの覚悟と時間が必要ですね。

田中先生「そうですね。奥様とお子さまを愛しているなら、まず第一に、節税よりも、ご自分の財産をいかに引き継ぎやすい形にしておくかということが重要なのです。これは、相続人のみなさまの協力を得て、ベテランの税理士が適切かつ有利な申告書を 作るための大前提になると言っても過言ではありません」

遺言も重要ですね。

田中先生「ええ、前回の繰り返しになりますが、遺言施行者を指定した公正証書遺言を作成していただくことは、円満かつ円滑な相続の重要なポイントです」

相続税の調査のお話が、いつの間にか遺言のお話になってしまいました。ちなみに、税務調査はどのくらいの割合でやって来るのでしょうか?

田中先生「税務調査が実施されるのは、10件中3件、約3割です。相続税の申告後、概ね3年以内に行われます」

その3年間は、やっぱりドキドキしてしまいそうです(苦笑)。

LECTURE2

税務調査で『過少申告』と
判断された場合はどうなるか?

税務調査を受けて、故意ではなくうっかりだったとしても、申告財産に漏れがあれば相続税を割増して納めなければならないのですか? いわゆるペナルティというのがあるのでしょうか。

田中先生「あります。税務署が調査を行った結果、申告漏れの財産があったときには修正申告を指導されます。修正申告により増加する税額に対し、『過少申告加算税』が課税されます。税率は原則10%ですが、追加税額が当初の申告税額と50万円のうちどちらか多い方を超えている場合、超えている部分の税額に対し15%課税されます」

『過少申告加算税』以外にもペナルティがあるのでしょうか。

田中先生「もしも、故意の申告漏れで悪質だと判断された場合は、過少申告加算税に換えて『重加算税』が課税されます。税率はなんと35%です」
「加算税とは別に『延滞税』があります。利息のようなものです。相続税法が定める延滞税の税率は、申告期限後2ヶ月以内は年7.3%、2ヶ月を経過した期間は年14.6%ですが、低金利の時代にそぐわないので、措置法で手当てがされ、税率はだいぶ軽減されています。右表のような税率です」

故意であってもなくても、ひとたび申告漏れがあると追徴課税を受け、結局は余計なお金を支払うことになるのですね。相続税の申告は、正確に、そして正直に、ですね。

田中先生「隠していた財産を調査官に厳しく指摘されるのは、とても酷な体験です。そのような嫌な経験をなさらないためにも、いざ相続というときには、相続税に詳しい税理士にご相談いただくことをお勧めします」

故意でなくても過少申告にはペナルティが課されます。相続に詳しい税理士に相談するのが安心です(イメージ)

税金のしくみは複雑。信頼できる専門家を味方につけましょう(イメージ)

LECTURE3

節税したいなら…
『遺言』『贈与』のススメ

田中先生「皆さんには、脱税ではなく“節税”を考えていただきたいのですが、大切なのは“事前に”行うことです。被相続人となるであろう人が、元気なうちに遺言書を残す、また効果的な贈与を行っていただきたいということです」

亡くなった後では、節税対策も難しいということですね。

田中先生「遺言書をきちんと残すことで遺産分割に関するトラブルを防ぎ、分割を円滑に行うことができます。遺言書がなく、遺産分割協議がまとまらない場合、相続税の軽減措置などの特例を受けることができません」
「また、多額の資産を持ち相続税の負担が大きくなりそうな場合は、相続税対策として意外に贈与が有効なのです」

以前は、贈与は相続よりも高率な税金を取られると言われていましたが……

田中先生「平成27年から相続税の基礎控除が40%引き下げられましたが、その見返りとして、20歳以上の子どもや孫に対する贈与税の税率が一部引き下げられました」
「相続税の実行税率を計算して、それより低い贈与税の実行税率の範囲で毎年贈与していくと『え、こんなに違うの!』というくらい節税になります。また、時限措置ではありますが、孫への『教育資金の一括贈与』や子・孫への『住宅取得資金贈与』制度を利用するのもよいでしょう」

子どもや孫に喜ばれ、節税にもなるわけですから、贈与を積極的に活用するのはお勧めですね。

田中先生「ただし、税制は変更も多く、特例の要件などもしばしば変更になるので注意が必要です。贈与したのはいいけれど、子や孫が財産を当てにして怠惰になったなどということがないように配慮することも必要です。不動産を贈与するのがいいか、現金を贈与するのがいいかというのも、大切な選択です。資産の規模、相続人の数など変動要素も多く、どんな方法がベストなのか、その道の専門家である税理士にご相談いただき、大切な資産を上手に守っていただきたいと思います」

(作成日 2015年7月17日)