不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産鑑定士が教える リーマン・ショック後で初!全国平均で上昇した最新路線価で相続税の納税対象者が増える?

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たとえ土地を売買する予定のない方でも、「銀座の一等地でハガキ
1枚分の土地が50万円近く!」といったニュースを耳にしたことが
あるでしょう。この価格は毎年発表される「路線価」にもとづいて
いるのですが、そもそも「路線価」とはどのようなもので、私たちの
暮らしにどう関係するのでしょうか?不動産鑑定士の善本先生に伺いました。

不動産鑑定士が教える リーマン・ショック後で初!全国平均で上昇した最新路線価で相続税の納税対象者が増える?

たとえ土地を売買する予定のない方でも、「銀座の一等地でハガキ1枚分の土地が50万円近く!」といったニュースを耳にしたことがあるでしょう。この価格は毎年発表される「路線価」にもとづいているのですが、そもそも「路線価」とはどのようなもので、私たちの暮らしにどう関係するのでしょうか?不動産鑑定士の善本先生に伺いました。

LECTURE1

相続税を決める基準のひとつ「路線価」
平成28年は全国平均でも上昇傾向に

善本先生「平成28年の路線価が7月1日に発表されましたね。土地の価格は一般的に一物四価と言われていて、経済の専門家でも『土地の価格は4種類』とおっしゃる方もおられますが、実際には、世の中で実際に取引されている価格、『実勢価格や時価』がまずあって、これを元に路線価のほか、公示価格、固定資産税評価額が決められています。それぞれの違いは下表の通りで、単に路線価と言った場合は“相続税路線価”のことを指し、これは国税庁が算定した価格です」

「相続税路線価」ということは、何か相続税に関係する価格なのですか?

バリュー・ジャパン・パートナーズ株式会社 取締役 不動産鑑定士 善本かほり先生

取締役 不動産鑑定士 善本かほり先生

「相続税路線価」ということは、何か相続税に関係する価格なのですか?

善本先生「路線価による土地の評価額が、相続税や贈与税を決める基準になるものです。平成28年の路線価は全国の平均変動率がやや上昇しましたが、これは平成20年のリーマン・ショック直前以来のことです。
平成27年に相続税の基礎控除額が引き下げられましたので、不動産をお持ちの方は、『路線価が上昇したことで、土地の相続税額の基になる評価額が上昇』し、『基礎控除額の上限が下がった』ことで、今までは相続税の課税対象とならなかったにもかかわらず、今後は課税対象となるなど、影響を受ける方が増えたのではないでしょうか」

えっ! それは大変です。今から評価額を調べて、基礎控除額を超えないのかなどを確認する方法はないのでしょうか?

善本先生「もともと路線価は国税庁のウェブサイト『財産評価基準書 路線価図・評価倍率表』で公表されていますから、相続の対象となる土地の路線価は簡単に調べることができますので、試算することはできると思います。
路線価とは『道路に面している標準的な宅地の1平方メートル当たりの千円単位の価額』なので、ごく簡単なケースなら、路線価×土地の面積で評価額が計算できます。また、土地が道路に囲まれている場合は、いくつかの手順を踏んで、対象となる土地全体の1平方メートル当たりの価額を出し、それを土地の面積と掛け合わせます。お持ちの土地の形が単純なら計算方法もさほど複雑ではないですが、形が複雑だったりすると、少し計算は複雑になります。さらに、住宅と裏山が地続きで一緒になっていたり、広大な土地や、農地、貸している土地や建物をお持ちだったりすると、試算するのは難しいかもしれませんね」

そうした場合は、税理士に頼んで計算してもらえるのでしょうか?

善本先生「もちろんしていただけます。ただし、税理士の方も分野によって得手不得手がありますから、できれば相続に詳しい税理士に相談することをお勧めします。相続税に精通されていない方だと、規定通りに計算をしてしまい、実は別の考え方や計算方法による相続税額とは異なってしまっていた……というケースも見受けられるようです。
また、被相続人の方がご存命なら、事前にご自身で信託銀行に相談されるのもいいでしょうね」

平成28年の路線価をご覧になって、何か気づかれたことはあるでしょうか?

善本先生「全国の平均変動率が上昇したことはお話ししましたが、地域別に見ると東京、大阪、名古屋の三大都市圏以外に、東日本大震災の復興需要が大きい仙台、新幹線開通による期待値が高い金沢など、一部の地方都市でも路線価が上昇しています。かといって全国一律に上がった訳ではなく、やはり人口減少が続く地域では下落傾向で、まだら模様というイメージになっていますね。
また注意したいのは、路線価はその年の1月1日の価格という点です。7月の発表時点ではすでに半年前の価格なので、その間に経済状況が大きく変化していた場合は、発表時の景況感とずれている可能性もあります。平成28年の全体傾向をより詳しく把握したいなら、7月1日時点の価格として9月に発表される基準地価格なども参考にするといいでしょう」

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広大地、山林などは要注意!
路線価ベースの計算では決められない

先ほどの路線価と土地面積だけでは試算できないケースについて、もう少し具体的な例を教えてください。

善本先生「路線価は、実勢価格を反映している公示価格の80%程度が目安とされていますが、個別の土地の状況まで考慮して決められている訳ではありません。このため、路線価をそのまま使って計算すると実勢価格とマッチしない場合も出てくるのです。
代表的なものは、広大地と判定されるような大きな土地、崖地を含む土地、住宅地にある山林といった使いづらい土地で、これらの評価額は周囲の土地より低くなる場合があります。中でも広大地と判定できるかどうかは、面積の広さだけでなく、土地をどう活用できるかなどの要因も加わるため、判断が難しいのです」

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路線価や評価倍率は国税庁のウェブサイトに記載されているので確認してみましょう

確かに土地が広ければ、評価額が低くなることで相続税の額も大きく変わりそうですね。こうした特殊な例について正確に知るにはどうしたらよいのでしょうか?

善本先生「広大地の例で言えば、大きな土地が広大地と認められる場合と認められない場合では大きく評価額が変わります。そして、広大地と認められるかどうかは、税の計算の問題というより、その土地の最適な利用方法を踏まえた評価が問題になりますので、不動産鑑定士に相談していただくのが一般的です。この他の使いづらい土地についても、国税庁の路線価に基づいて画一的に算出される評価額と、実際の市場性を反映した適正な鑑定評価額が異なるのであれば、相続税の額が変わることもあるでしょう。またさらに、鑑定評価額を基に計算すれば、そもそも基礎控除額を超えることもなく相続税の課税対象とならないケースも考えられます。
このように、特殊な不動産については不動産鑑定士に相談していただければ、最終的にはその不動産の適正な市場価値を不動産鑑定評価額としてお示しすることができますし、それをもとに相続税の額がどうなるかを考えることができます。ただし、鑑定評価額が路線価による評価とそう変わらない場合もあり得ますので、鑑定料などのコストとの費用対効果を踏まえる必要があります。いずれにしても、まずは相談してみるということが大切です」

路線価が出ていない土地もあるようですが?

善本先生「その様なケースは大きく2つあります。1つめは、市街地内の土地で周りには路線価があるのに、その土地が面している道には路線価がないという場合。2つめは、市街地ではない地域の土地で、その地域全域に路線価がないという場合です。
1つめの場合、その土地に面している道路が行き止まりの場合や、道路そのものが最近開通したばかりという場合です。この場合には、国税庁に路線価の設定を依頼する「特定路線価設定申出」という手続きを行います。
2つめの場合は、市町村が出している固定資産税評価額をもとに、国税庁が地域ごとに定めた計算式(評価倍率)を使って試算する方法で行います。
この評価倍率も路線価と同じ国税庁のウェブサイトで公開されている「評価倍率表」で確認できます。
この2つ以外にも、農地(田や畑)や山林などは、所在する地域によって上記以外の方法で試算する場合があります。評価倍率表を確認すると、全国の町名毎に、市街化区域と市街化調整区域などの土地の区分や、宅地、田、畑、山林といった地目に応じて、相続税の評価ではどういう評価を行う必要があるかが判ります

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路線価上昇傾向の今だからこそ
気をつけたい相続のポイント

ところで、相続税以外に路線価と関係の深い事柄はあるのでしょうか?

善本先生「地方都市の不動産会社の場合、逆に公表された路線価をもとに売買価格を決める傾向も見受けられます。このような場合は路線価と売買価格がある程度連動するはずですから、物件を売りたいという方にとって路線価の上昇は喜ばしいかもしれません。
ただし、めったに出回らない高級住宅地の土地のように、『ほしいと思う方がいくらでも出す』といった特殊な場合は、路線価や公示価格と関係なく実勢価格は高騰します。
また、私の地元エリアでもある大阪市内ではマンション需要、ホテル需要が依然として活発で、土地だけでなくそこに建てる建物の収益性まで含めた価値で取引されるなど、こちらも実勢価格がかなり上昇している状況です」

最後に、大都市圏を中心に路線価が上昇する傾向の中で、相続税を考えるためのアドバイスをお願いします。

善本先生「相続はいつ発生するかは判らないですが、いずれ必ず発生します。被相続人となる方でも相続人となる方でも構いませんから、路線価と土地面積をもとに評価額の試算は是非やっていただきたいですね。いくつも土地をお持ちの場合、こちらの土地は路線価をもとに、こちらの土地は広大地として別途評価を……といった振り分けだけでも、ひと苦労なはずです。こうした作業をゼロから、しかも相続が決まって10カ月間という短い申告期限内に終えようとしたらさらに大変です。事前にできることは少しでも準備していただくといいでしょう。
また、相続はまだまだ先という方でも、みんなで相続について話し合ったり、信託銀行に財産を信託することを相談してみたりといろいろ打つ手は考えられますね。「縁起でも無い」として、こうした準備に理解を示していただけない被相続人となる立場の方もいらっしゃるでしょうが、相続人のみなさんが後で苦労されないよう整理されておくことは、大切だと思います」

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評価額の試算や相続の手続きなどは、できるだけ早い段階から着手しておくことをおすすめします(イメージ)

(作成日 2016年9月1日)