不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報専門家がレクチャー 不動産鑑定士が教える 2年連続で地価公示価格は上昇!一部で取引が過熱との声もある中、節目の2020年まで地価はどう動く?

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不動産鑑定士が教える 2年連続で地価公示価格は上昇!一部で取引が過熱との声もある中、節目の2020年まで地価はどう動く?

平成29年の地価公示価格は2017年3月21日に発表され、全国平均では2年連続
の上昇となりました(全用途平均)。イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ
大統領の誕生と予想外の出来事が続いた2016年を乗り越え、日本経済は緩やか
な回復基調にあるといえそうです。一方で用途別、地域別に見ると地価の
上昇・下落のまだら模様はいっそう鮮明なようです。そこにはどのような傾向
があり、将来はどうなっていくのでしょうか? 今回は不動産鑑定士の
嘉藤先生に、地価の現状と今後の見通しについて伺ってみました。

不動産鑑定士が教える 2年連続で地価公示価格は上昇!一部で取引が過熱との声もある中、節目の2020年まで地価はどう動く?

平成29年の地価公示価格は2017年3月21日に発表され、全国平均では2年連続の上昇となりました(全用途平均)。イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ大統領の誕生と予想外の出来事が続いた2016年を乗り越え、日本経済は緩やかな回復基調にあるといえそうです。一方で用途別、地域別に見ると地価の上昇・下落のまだら模様はいっそう鮮明なようです。そこにはどのような傾向があり、将来はどうなっていくのでしょうか? 今回は不動産鑑定士の嘉藤先生に、地価の現状と今後の見通しについて伺ってみました。

嘉藤 良治先生

(有)嘉藤不動産鑑定事務所

不動産鑑定士嘉藤 良治 先生

(有)嘉藤不動産鑑定事務所 代表。東京簡易裁判所民事調停委員
*最高裁判所長官表彰(平成27年10月1日付)
*藍綬褒章受章(平成29年4月29日付)

LECTURE1

堅調な訪日客需要などを背景に
商業地の地価上昇率上位を大阪圏が独占

平成29年の地価公示価格によると全国平均で地価は上昇していますが、これは地価が全国的に回復傾向にあるという意味でしょうか?

嘉藤先生「確かに大まかな数字だけ見るとその通りですが、全用途ではなく用途別、あるいは地域別に細かく見ていくと、地価は相変わらずのまだら模様です。中でも商業地では地価上昇率上位5位までが全て大阪圏となっており、これは非常に特徴的な現象ですね。増え続ける訪日客に対する宿泊施設の建設などが地価上昇につながったのでしょう」

大阪以外の地域別ではどんな特徴がありますか。やはり地方の地価は依然として下落傾向なのですか?

嘉藤先生「いえ、地価上昇の動きは三大都市圏から地方圏へと広がっています。特に札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地価は全用途で三大都市圏を上回る上昇を見せていますね。三大都市圏の地価上昇からやや遅れての上昇ですから、これらの都市は今後もしばらく上昇余地があるということかもしれません。とはいえ、“○○圏”と呼ばれる地域全体が均一に上昇している訳ではない点は要注意です。実際のまだら模様は細かく分かれており、東京圏でも例えば住宅地の場合、交通機関なども含めた生活の利便性が地価の上昇・下落に大きく影響します。今回の結果を見ると、地価公示住宅地の下落率1位はマイナス8.5%となっていますが、これは千葉県柏市の郊外にある、1980年代に分譲されたニュータウンの地域です。住民の高齢化が進み、駅からの利便性が劣る為に、需要が落ちてしまった結果だと考えられます。
このほか、これからは自然災害に対する懸念も地価に影響するケースが多くなるだろうと思います(今後は、各自治体が発行するハザードマップ等は要チェックとなります)」

それでは用途別に見たときの傾向を教えてください。平成29年ならではの特徴はあるのでしょうか?

嘉藤先生「住宅地については地域別の事情を先にお伝えしましたが、全国的には堅調に推移しているといえます。その背景にあるのは雇用情勢の改善、住宅ローン減税等の施策による住宅需要の下支え効果などです。三大都市圏は小幅上昇か横ばい、地方圏は4市が上昇、その他は下落ながらもその幅は縮小しています。商業地の地価も概ね堅調ですね。特に主要都市の中心部などでは訪日客需要や再開発事業の伸展などにより、店舗やホテル等の進出意欲の高まりが見られます。一部の地域ではオフィスの空室率の低下や賃料の改善による収益性の向上も見られます。加えて、金融緩和政策によって投資家は資金を調達しやすい環境にあるため、不動産投資も活発です」

今回は工業地の地価にも特徴的な動きがあったと聞きましたが?

嘉藤先生「工業地の地価も三大都市圏では回復傾向です。埼玉県入間市などのように物流施設の建設に適した土地の需要が旺盛です。これはインターネット通販などの普及による物流需要が後押ししているようです」

LECTURE2

一部で「地域限定バブル」の懸念も

今回の公示価格も含め、ここ数年の地価および不動産市況に関してはどのようにお考えでしょうか?

嘉藤先生「今回の回復基調をけん引しているのは訪日客需要の堅調さ、住まいや生活する場の中心部への回帰傾向、東京五輪関係の動向等だと思います。バブル期には短期的な値上がり益に期待した投機も急増しましたが、現在の地価上昇は着実なニーズにもとづいている点が違いといえるでしょう。しかしながら特定の地域に限っては、取引が必要以上に活発化して過熱気味と捉える声も聞かれますね。東京都心の商業ビルでは、取引がやや過熱していると思われる利回り3%台が多くみられています」

そういった地域ではどんな理由で取引が過熱になっているのでしょうか。

嘉藤先生「東京都心部では、東京五輪開催に伴う都心部の再開発やインフラ整備による地価上昇があります。その他では2015年の相続税増税による対策としてアパートの建築が急増しています。日銀によると2016年の全国の不動産融資は前年から15%増の12兆2806億円に、アパートローンは前年比で21%も増えて3兆7860億円になりました。この数字を見ると過熱気味という見方にも納得できますね。一方、金融機関側はマイナス金利政策に代表される金融緩和によって資金が潤沢になり、不動産取引への貸し出しを強化しています。これも過熱する材料の一つでしょう」

分譲マンションや建売住宅などはどういった状況でしょうか。

嘉藤先生「なかなか実態がつかみにくいところですが、地価上昇に建築費等の値上げが重なり、ここ数年でマンションや戸建ての価格は高騰しました。いくら住宅ローン金利が低くてもなかなか手が出せない、と考える人も増えたのではないでしょうか。完成在庫を抱え、大幅な値引きで売り切ろうとする分譲会社が出てくる可能性も否定できません」

LECTURE3

注意すべきは2020年より2018年。
地価下落の恐れは?

それでは今後の地価や不動産市況はどうなるでしょうか。やはり2020年が節目になってきますか?

嘉藤先生「2020年完成を目指して建設しますから、市況としては2018年あたりが境目になるのではないでしょうか。それ以降の動向は景気情勢に左右されると思われますので不透明感が強くなります。加えて2018年には東京都心で大規模なオフィスビルが次々に完成するため、オフィスの大量供給に対する懸念もあります。一方、カジノを中心とした統合型リゾートの実現を目指す動きが具体化してくるものと思われます。実現すれば施設予定地周辺における地価への影響は大きいものと思われます。また、大阪府が2025年の万博の誘致活動を行っていますが、2017年11月に可否が決定する見込みです」

まずは2018年が要注意なのですね。地域別や用途別ではどのようにお考えでしょうか?

嘉藤先生「三大都市圏の中でも都心部は地価上昇で先行した感があります。ですから今後は、住宅地ならほぼ横ばい、または緩やかな上昇にとどまるのではないでしょうか。もちろんその中でも交通の利便性など、地域特性によってまだら模様は出てくると思います。新築マンションや新築建売住宅の価格や販売動向に注意が必要でしょう。商業地は前述した東京都心部のオフィスビル供給が懸念材料です。また、地価上昇の出遅れ地域の中では、特に利便性の高い地区には堅調な動きが見られると思いますが、利便性に劣る地区や賃貸住宅が今後過剰になっていく地区などは、あまり期待できるとは思えません。付け加えれば、地価の予測には、全体の動きも重要ですが物件ごとの個別要因や地域の要因がより重要になってきます。つまりその物件・その地域に詳しくなければ、精度の高い予測はできません。その意味では不動産取引に詳しい専門会社に相談いただくことをお勧めします」

(作成日 2017年6月15日)