不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産鑑定士が教える いざという時のために知っておきたい、不動産と『民事調停』

専門家がレクチャー

争い事は極力避けたいものですが、お金が絡むとそうもいきません。
賃貸経営で「家賃の増額を聞き入れてもらえない」などのトラブルが
その例でしょう。
そんな時は『調停』という制度を利用することになります。
調停は訴訟よりも手続きが簡易で、話し合いによる円満解決が
期待できます。

今回は、裁判所の民事調停委員を長年務め、
その功績が認められ『最高裁判所長官表彰』を受けられた
不動産鑑定士・嘉藤良治先生に
不動産と民事調停についてのお話を伺いました。

不動産鑑定士が教える いざという時のために知っておきたい、不動産と『民事調停』

争い事は極力避けたいものですが、お金が絡むとそうもいきません。
賃貸経営で「家賃の増額を聞き入れてもらえない」などのトラブルが その例でしょう。
そんな時は『調停』という制度を利用することになります。
調停は訴訟よりも手続きが簡易で、話し合いによる円満解決が 期待できます。

今回は、裁判所の民事調停委員を長年務め、 その功績が認められ『最高裁判所長官表彰』を受けられた 不動産鑑定士・嘉藤良治先生に 不動産と民事調停についてのお話を伺いました。

不動産鑑定士 嘉藤良治先生

嘉藤不動産鑑定事務所代表。
国土交通省土地鑑定委員会鑑定評価員、埼玉県地価調査鑑定評価員、東京簡易裁判所民事調停委員を務める
*最高裁判所長官表彰(平成27年10月1日付)民事調停委員としての功績

LECTURE1

大家さんや、大家さんになる予定の人はぜひ知っておきたい『調停前置主義』

家賃(借家の賃料)、地代(借地の賃料)…等々、不動産はお金が絡む事項が多いだけに、揉め事の種も多そうです。金額をめぐって訴訟(裁判)になるケースもあるのでしょうね。

嘉藤先生「家賃や地代を増額や減額したいと考えた時、当事者同士の交渉で話がまとまれば問題ないのですが、合意に達しない場合は、賃料増減額請求の訴訟を起こすことができます。ただしここで、耳慣れない言葉だと思うのですが『調停前置主義』というものがあり、すぐには裁判(訴訟)へと持ち込めないようになっています」

『調停前置主義(ちょうていぜんちしゅぎ)』とは?

嘉藤先生「賃料増額(減額)請求は、すぐに訴訟を提起できず、まずは調停を申し立てる決まりになっています。これが『調停前置主義』です。調停は、私人間での紛争を解決するために、裁判所(調停委員会)において当事者間の合意を成立させるための手続きです」

平たく言うと、ケンカの仲裁役みたいなものですね(笑)。

嘉藤先生「そうですね(笑)。私は、不動産鑑定士として、東京簡易裁判所の民事調停委員を20年以上務めています。調停委員は、調停に一般市民の良識を反映させるために、社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれます。不動産鑑定士のほか、弁護士や医師、大学教授、公認会計士、建築士などの専門家や、地域社会に密着して幅広く活動してきた人など、さまざまな分野から選ばれているんですよ」

いきなり裁判に持ち込むのではなく、専門家のアドバイスも得ながら、まずは当事者同士で話し合いをしましょう、ということですね。

嘉藤先生「調停は、どちらが正しいかを決めるものではありませんので、双方が納得のいく落としどころを見つけるべく、調停委員は当事者の言い分や気持ちを十分に聴きながら、調停を進めていきます」

LECTURE2

「できれば話し合いで解決を」の考えから、裁判の前に調停を行う

なぜ、賃料増額(減額)請求は『調停前置主義』をとっているのでしょう?

嘉藤先生「大家さんと店子の関係は、家や土地の貸し借りがある限り、長く続く関係なので、なるべく円満な解決をはかることが望ましいという考えからではないでしょうか。ちなみに、賃料増額(減額)請求は民事事件ですが、家事事件で『調停前置主義』が適用されるのは、離婚や相続をめぐる争いなど主に家庭に関する紛争です」

大家と店子以上に、夫婦や親子といった人間関係は、裁判で判決が出た後でも完全に切れてしまうものではありませんよね。できれば話し合って理解し合い、よい関係を維持できるのが望ましいという考えなのでしょうね。

嘉藤先生「民事調停に持ち込まれる事件としては、賃料の見直しを長期間しなかった場合や、相続や売買等で賃貸人等が変わった場合などが多いのですが、民事調停では、希望する値上げ・値下げの額・率が大きい場合は、解決が困難になることが多くあります」
「これらを避けるためには、定期的に家賃や地代の水準を調査しその都度対応する、一気に値上げ・値下げをするのではなく段階的な値上げ・値下げを考える、売買等の場合であれば取得後から請求までに一定の期間をおく等の必要が出てきます」

そして、残念ながら調停によって話がまとまらない場合は、やはり裁判になってしまうわけですね。

嘉藤先生「はい。調停委員は、説得やアドバイスはしても、強制的に意見を押し付けることはしませんし、できません。これが、裁判の判決との違いです。当事者双方が合意しない場合、調停は不成立となり、終了します」
「調停が不成立の場合は、訴訟を提起できます。その場合でも、判決の前に裁判官が当事者に和解勧告をして、和解の成立を促すことが多いようです」

調停において当事者双方が合意しない場合は、裁判で決着をつけることになります(イメージ)

賃貸経営を始める前に、信頼できるプロにアドバイスを受けることをおすすめします(イメージ)

LECTURE3

安易に収益物件のオーナーになるのは失敗のもと?
まずは、その道のプロに相談すべし

また、最近はサブリース※の契約更新の度に、家賃の減額を迫られるケースも多いようですが。
※サブリース:又貸し、転貸のこと。不動産賃貸においては、転貸を目的とした一括借り上げのことを指す

嘉藤先生「『30年間家賃保証』『空室保証』などの売り文句でアパート経営を勧める会社も多いですが、家賃保証に関しては当初の設定賃料が30年間続くわけではありません。契約書をよく読めば“賃料の見直し”という項目があり“2年毎に見直しがあります”等と書いてあります。大家さんにしてみれば、当初見込んでいた家賃収入が減っていくわけですから、特に注意が必要です。賃料見直しの特約がない場合でも、裁判所では経済情勢の急激な変化などによって、家賃減額を認めることもあるようです。賃貸不動産に関しては、家賃保証の有無にかかわらず、貸しっぱなしの状態にはしないで、賃貸物件の維持・管理について注視していく姿勢が必要です」

そうですね。よく考えれば、そんなにうまい話はないはずです(苦笑)。でも“30年間家賃保証”と言われたら、安心して信じてしまいますよね。

嘉藤先生「特に、最近は“賃貸経営”という観点ではなく、“相続対策”から賃貸住宅を建てたり購入したりする人が増えています。そのようなケースの問題として、相続対策としては、ほぼ目的を達成したが、賃貸経営では、家賃が下がった・空室がでた・賃借人とのトラブル等で経営的にうまくいかなくなったという話があります」

素人がよくわからないまま、いきなり賃貸経営を始めてしまうわけですから、怖い話です。まずは知識を得ることが大事でしょうし、信頼できる専門家を味方につけることも必要ですよね。

嘉藤先生「弁護士さんや税理士さんなどの専門家に相談する際は、必ず不動産分野に詳しい人にお願いすることです。専門家にも得意分野・専門分野がありますから」

なるほど。不動産分野に精通していない専門家の先生も、当然いるわけですよね。

嘉藤先生「その道のプロに相談することが肝心です。収益物件の購入なら信頼できる不動産仲介会社に、相続に関することなら信託銀行に相談するのもいいですね」

(作成日 2015年12月10日)